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<ゲブラー編> 138.交戦

138.交戦



 グランヘクサリオス第3ステージ当日。

 闘技場内にはこれまで生き残った30名が並んでいる。

 いつも通りレンスが登場する。


 「グランヘクサリオス第2ステージまで生き残った剣士たちよ!これまでの力と知恵と運を称えよう!」


 『わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』


 大歓声が沸き起こる。


 「鎮まれぃ!」


 アムラセウム全体が震えるほどの大きな声が響く。

 叫んだのはゲントウだった。


 「ここには!‥真の強者ではないものが混じっている!」



 「どういうことだ?!」

 「何を言っているんだゲントウは?!」

 「またゲントウが何か言ってるぞ!」

 「黙らせろ!またグランヘクサリオスを壊されるぞ!」

 「いや、そのままゲントウに発言させろ!面白くなる!」


 観衆から様々な声があがりアムラセウム中がざわつき始める。

 ゲントウは両手を広げて言葉を続けた。


 「真の強者ならば!我のこの攻撃を耐えられるはずだ!」


 ゲントウは両手を広げたまま白目をむいた状態で上を見上げた。


 ジュワァァァァァァ‥‥‥‥


 凄まじい熱気が周囲を襲う。 

 そして徐々にゲントウの体が赤く染まっていく。


 「これはヤバそうだな」


 「攻撃がくる!備えろ!」


 スノウやバルカンたちは只ならぬ事態に構えをとった。

 ムルやホプロマ、ザロたちも同様に構えている。

 闇虎は腕を組んだままで体勢を変えておらず、何も気にしていないようすだ。


 「ムゥゥゥゥン‥‥はぁ!」


 ドッガァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!



 まるで溜め込んだエネルギーを一気に放出するかのようにゲントウを中心に爆発が起こった。

 凄まじい熱風で闘技場内にいる何人かは一瞬で消し炭となった。


 バフォォォォォォォォォン‥‥‥‥


 凄まじい熱波はあっという間に消え去った。

 観客席にも熱波が襲い、防御魔法で守られているVIP席以外の最前列付近に座っている者たちは炎魔法ガードで対処できない場合闘技場内のグラディファイーサー数人のように消し炭となってしまった。


 風で黒煙が流され残ったメンバーが顕になっていく。

 ゲントウは両手をおろすと辺りを見回す。

 闇虎は熱波前と変わらない腕を組んだままの姿だった。

 スノウ、バルカンたちは当然熱波を防ぎきっている。

 ムル、ホプロマのヘクトリオンズやザロたちルデアスもまた防ぎ切っていた。


 「ふん。ざっと半分といったところか」


 そう言うと、ゲントウは大きく息を吸って再度闘技場が震えるほどの声で叫ぶ。


 「貴様ら!よくぞ生き残った!さぁ!その命尽きるまで戦いを楽しもうぞ!」


 『わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』


 大歓声が沸き起こる。


「こんなことは許されない!」


 突如カブラミオが叫んだ。


 「純粋にふたつのステージを勝ち抜いたもの達がこのような不意打ちで消し炭にされるのあどありえない!自分がエンカルジスに返り咲くために、このような茶番で不意打ちして数減らしをしているに過ぎない!そんな卑怯者ゲントウを退場にすべきだ!」


 『わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』


 まるで格闘技の試合である罵り合いのような掛け合いで観衆は沸いた。


 「私が許す!」


 突如VIP席からまるで心が凍りつくような低いのか高いのかよくわからない声が響いた。

 声の主はゾルグ王国宰相のシファール・ヴェンシャーレだった。


 「ヘクトル王の代理であり、このグランヘクサリオスの責任者の一人である私が許す。反論は無用だ。続けよ」


 『わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』


 「横暴だ!あなたこそこの茶番を是正すべき立場のはず!」


 ガシュ・・・


 「な‥‥‥がはぁ!!」


 「カブラミオ!」


 スノウたちが叫ぶ。

 カブラミオの右肩に闇虎の振り下ろされた手刀が刺さっている。

 手刀は肩から鎖骨を折り、胸筋にまで至っている。


 「弱い者ほどよく吠える。レンスとやら、早く先に進めよ」


 闇虎は、スノウたちによって守られ助かったレンスに先に進めるよう促した。


「闇虎‥‥てめぇ‥‥」


 スノウは倒れ込んだカブラミオを抱き抱えながら、闇虎を睨みつけた。

 闇虎はそのスノウの鋭い眼光を静かにみつめていた。

 レンスは再び闘技場の中央になって話始めた。


 「げ、現時点で残っているグラディファイサーは15名!この15名でトーナメント勝ち抜き型フェイターで今回の優勝者、エンカルジスを決めることとします!」


 『わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』


 アムラセウムが震える大歓声が沸き起こる。


 「このボードに後程それぞれグラディファイサーの名前が入ったプレートを貼り付けてトーナメント表を公開‥‥」


 レンスが言いかけたところでまたしてもゲントウがスタスタとレンスの前にたち、ネームプレート一気に掴んでボードに投げつけた。


 バチバチバチバチバチィィッ!!!!


 「ぬるい!小細工不要だ!この対戦でトーナメントを行う!」


 ババン!!


 ゲントウが無造作に放り投げたかに見えたネームプレートは、トーナメント表のボードに見事にが貼り付けられた状態になっていた。


<1回戦>


【Aブロック】


第1試合:スノウ vs ホプロマ

第2試合:ザロ  vs ヒーン

第3試合:シルバーファング vs シャザハ

第4試合:ゼンガ vs クアンタム


【Bブロック】


第5試合:バルカン vs ムル

第6試合:ゲントウ vs コウガ

第7試合:マイン vs ジヌーク

第8試合:闇虎 vs エスカ



<2回戦>


【Aブロック】


 第9試合:第1試合勝者 vs 第2試合勝者

 第10試合:第3試合勝者 vs 第4試合勝者


 【Bブロック】


 第11試合:第5試合勝者 vs 第6試合勝者

 第12試合:第7試合勝者 vs 第8試合勝者



<準決勝>


【Aブロック】


第13試合:第9試合勝者 vs 第10試合勝者


【Bブロック】


第14試合:第11試合勝者 vs 第12試合勝者



<決勝>


第15試合:Aブロック勝者 vs Bブロック勝者



 闇虎とゲントウ以外はトーナメント表を見て驚いていた。

 だが、誰一人それを言葉に出すものはいなかった。



 「それではみなさん一度控室にお戻りください!」

 

 レンスのアナウンスで15名はそれぞれ控室に戻っていった。




―――スノウの控室―――


 「カブラミオは?」


 スノウの控室にはスノウ、バルカン、エスカ、コウガ、マイン、ヒーンがいる中、バルカンが心配そうな表情でスノウたちに問いかけた。

 第2ステージで共に戦ったことからバルカンとしては心配で堪らないといった表情を浮かべていた。


 「命に別状はないが、しばらく休む必要はあるな」


 本当は致命傷で絶命寸前であったが、スノウはカブラミオが担架で運ばれる際にこっそりウルソーの重傷治癒魔法ジノ・レストレーションをかけていたため、無事だったのだ。

 バルカン始め、部屋にいるメンバー全員が安堵して胸を撫で下ろした。



 「見事に散らばったな」


 沈黙を破るようにバルカンが切り出した。


 「ああ。だが、残念ながらカブラミオは出場できなくなったのとおれ達に加勢してくれそうなチャミュじいはあのゲントウの熱波を耐えきれなかったようだ‥‥」


 スノウが答えた。

 それに対してエスカが付け加えた。


 「チャミュじいは姿すら見えなかった。シルバーファングはどうだ?」


 「当然生き残っているがおれ達の仲間になるかどうかはわからない。だが、彼はジェラルド・フィンツのところにいたからな。ジェリーとうまく繋がれば仲間に引き入れることも可能かもしれない。あとで鳥を飛ばしておくよ」


 スノウの説明に納得したエスカが頷きながら言葉を返した。


 「そうだな。彼が加われば表彰式での作戦の成功率が上がる」


 「その通りだ。おれ達がここにいる全員が1回戦を勝ち抜けばTOP10に入れる人数は6名。表彰式でヘクトルに攻撃する体制としては十分な人数だが、強敵も多いのも事実」


 スノウが返した。


 「勝てればな。正直私は闇虎に勝てる気がしない。これは弱音を吐いているとかそういうものではなく、冷静に見た結果だ。すまないが私は表彰式には出られない」


 エスカなりの冷静に戦況を見た結果であり、誰もが納得できる発言だった。

 それだけ闇虎の強さには底無しの何かが感じられたのだ。


 「エスカがそこまで言うなら俺も‥‥。ゲントウに勝つのは、今の俺の実力では相当難しいと思っている」


 「だろうな」

 「間違いない」

 「その通りだ」

 「納得」


 「お、おい!そこはそんなことないとか言うのではないのか?!」


 「ぷ」


 『ぶわはっはっは!』


 不謹慎だが思わず吹き出した全員だった。


 「だが、4人は絶対に勝たなければならない。それ未満の場合、表彰式でヘクトルの首元にヤイバを突きつけるのは相当厳しくなると考えたほうがいい。だが、そう言う意味では今回のこの組み合わせはラッキーだ。おれ達はこの幸運を活かすぞ!」


 『おう!』



―――シルバーファングの控室―――



 シルバーファングともうひとり女性がいた。


 「間違いないのね?」


 「ああ。それにこの世界で炎以外の精霊魔法を使える者はいないからな」


 「いよいよね。それでこの大会ではどうするの?」


 「決まっているだろう?」


 「そうね」


 シルバーファングは肩に刻まれたタトゥーのマークを触りながら目を瞑った。



・・・・・


・・・



 翌日からいよいよグランヘクサリオス最終ステージが始まる。

 一方ゾルグ王国内ではー。



―――ナラカ入口―――



 「いい?あんた達。ここに殺しても死なない巨大ゴキブリがいるわ。もし、捕らえられたら一気に次期ヘクトリオン、もし殺せたら一気にヘクトリオンに昇格よ」


 『おおおおおおおおお!!』


 ナラカ入り口に5000のレティス軍がいた。


 「これから入り口から地下のゴキブリの巣にはいるわ。ゴキブリたちの数は2000。負けるはずのない害虫駆除だけど、油断するんじゃないわよ。腕一本でも相手を殺しない際。中途半端に生き残って何もしない者はあたしが殺すから‥‥いいわね!」


 『おおおおおおおおお!!』


 レティス軍がナラカ入り口から一斉に侵入した。



―――ナラカ第1層トウカツ―――



 「ヤマラージャ様!来ました!」


 「わかった!よし!皆の者!全ては手筈通りだ!よいな死ぬでないぞ!」


 『は!』


 しばらくすると守護神の屋敷に火が放たれた。


 「ヤマラージャ様!火が放たれました!」


 「慌てるな!想定内だ」


 仮に屋敷が全焼し朽ち果てても、強固な素材で作られている階段とそれを支える躯体は残るため、地上への行き来は可能なため元々ヤマラージャは屋敷を捨てるつもりでいた。

 そして燃え盛る屋敷からゾロゾロとレティス軍が出てきた。

 幅広の階段ではあるものの、5000の軍を一気に通すことはできない。


 「ナラカ軍!一斉攻撃!」

 100人の弓使いと200人の炎魔法使いが一斉に遠距離攻撃を繰り出す。


 ドバババババババババババァァァァァァン!!


 凄まじい数の矢と畝る無数の炎の渦がレティス軍に向けて放たれる。


 縦に伸びている階段にいるレティス軍もまた一斉に炎魔法を放つ。


 ドバババババババババババァァァァァァン!!


 炎と炎のぶつかり合いでまるで爆発のような衝撃が訪れる。

 その爆炎の中から飛び出してきた影がひとり。

 凄まじい速さで飛んでくる。

 その影は剣を回転しながら振り下ろしてくる


 ヒュウウウゥゥゥゥゥゥン‥‥‥‥ガキィィィィィィン!!!


 恐ろしく速い動きで回転しながら剣を振り下ろしてきたのはレティスだった。

 それを巨大な錫杖で受けているのはヤマラージャだった。


 「巨大ゴキブリめ。大人しくあたしの軍に殺されろ」


 「レティスか。我に勝とうなど100年早かったな」


 ドガァァァン!!


 ヤマラージャが押し返すと、レティスは宙を回転しながら後方に着地する。

 そしてすぐさま強烈な突きを放つレティス。


 その異常な速さで繰り出される突きを錫杖で受けるヤマラージャ。


 「おおおおお!!」


 シャビ!ズザ!


 全てを避け切るのが難しく、ヤマラージャは傷を負っていく。


 「こざかしい!」


 ヤマラージャは思いっきり錫杖を横振りして距離を取ろうとするが、それをブリッジのように背中を逸らせて避けるレティスは、戻る反動でヤマラージャに突っ込んでいき、剣を振り上げる。


 ザパァン!!


 ヤマラージャの左腕が宙に舞った。


 「ヤマラージャ様!」


 ボトン!!


 地面にヤマラージャの腕が落ちた。

 それを踏みつけて剣を肩に乗せて立つレティス。


 「はい、まずはゴキブリの腕一本!」


 レティスは斬り落としたヤマラージャの腕を踏みつけて潰して叫ぶ。


 「さぁお前達!相手はデクの棒のゴキブリだ!一気に叩くよ!」


 『うおおおおおおおお!』


 レティス軍の兵たちが一斉に雄叫びをあげる。

 5000の兵のほとんどが第1層のトウカツに侵入しきった状態だった。

 対するナラカ軍はトウカツにいる者だけで約1000。

 数で圧倒的に不利な状況にあった。


 ズワン!!


 「レティス!何を斬り落としたと?」


 ヤマラージャの腕はあっという間に再生した。


 「弱者の5000と強者の1000!どちらが勝つか教えてやれい!」


 ヤマラージャはその低く荘厳な声を張り上げてナラカ軍を鼓舞する。


 『おおおおおおおおお!!』


 一斉交戦が始まった。


 シュゥゥゥゥ‥‥‥‥ドッバァァァァン!!


 『ぎやぁぁぁぁぁぁ!』


 ヤマラージャの右手に凄まじい炎の柱が立ち上る。

 そしてそこから無数の炎のトカゲが飛び散ってナラカ軍の兵士たちを襲う。


 「誰が弱者ですって?」


 その男はシルベルトだった。


 シュワワン‥‥‥ガキン!


 「お前だよ」


 ゴッシが巨大な斧をシルベルトに振り下ろした。


 「ぷっ。牛ですか?人ですか?」


 それを軽々と剣で受けるシルベルト。


 「どっちでもいいだろう?どうせお前死ぬんだからよ」


 ガキン!キキキン!


 ジョヴォァァァン!!


 剣撃と炎魔法攻撃の応酬が繰り広げられた。


 左手は大混戦となっていた。

 若干ナラカ軍が押しているが、圧倒的な数の差は埋められずにいた。


 「それそれそれそれそれ!!」


 そんな中、両手に鞭をもって次々にレティス軍を薙ぎたおいしているアッシュが戦況を変えようとしていた。


 「くそ!あいつに近づけねぇ!」

 「弓隊!炎隊!あの馬面に一斉放射だ!」


 その合図の直後、アッシュに向けて矢と炎魔法の一斉放射が放たれた。


 「子供だまし!」


 ヒュルヒュルヒュルヒュル‥‥‥‥‥バシュシュシュシュン!!


 アッシュは鞭を円形に回転させて空気の渦を作りそこに矢と炎を集める気流を生み出し、鞭で弾くようにして矢と炎を一瞬で粉々に砕いた。


 「化け物か!」


 「いや‥‥化け物なのは見た目だけだろう」


 突如レティス兵達の陰からゆっくりと上がってくる者がいた。


 「何者?」


 現れたのはオーガだった。


 「何者だ。なぜここにオーガがいる?しかもオーガに影から登場する芸当などできるわけがない!」


 「オーガ?ああ、そうか。この体はオーガだったな。昔の名前で言えばズイホウ。だがその人格はもう存在しない。私はディアボロス様に仕える魔王サルガタナスだ。まぁ覚えなくてもいい。どうせお前はここで死ぬのだなからな」


 「魔‥‥王‥だとぉ?!」


 「聞けばミトラの呪いを受けてヤマラージャは死なないらしいじゃないか。まぁミトラを殺せば死ぬのだろうが。そしてお前たちヤマラージャの側近もまた、ヤマラージャの分霊として不老の力を得ているとか。まったく旧神の悪戯にも困ったものだ。だが、ヤマラージャは殺せずともお前達分霊は殺せる。楽しませてもらうぞ」


 「くっ!」


 「フハ!なぜそれを知っていると言った表情だな!いいぞその絶望した表情!私は諦めて精気を失った者をなぶり殺す際の生にしがみ付く断末魔の叫びが大好きなんだよ」


 「随分と悪趣味じゃないか!」


 アッシュは鞭で攻撃する。

 それを最も簡単に避けるサルガタナス。


 「!」


 アッシュの背中に悪寒が走る。

 なぜなら、一瞬でサルガタナスの顔が自分の真横に現れたからだ。


 (見えなかった!)


 そして顔面にサルガタナスの手が襲いかかる。

 顔面を掴まれそのまま後方の地面に後頭部から叩きつけられる。


 ドッゴォォォォォン!!!!


 「アッシュ!!」


 地面にアッシュの頭部がめり込んでいる

周りの兵も自分の戦いで必死だったが、あまりの衝撃音で目を向けた先にあったアッシュの状態に思わず叫んでしまった。


 「所詮はニンゲン。力が強いからと言っても物理的限界があるわけだ‥‥ん?」


 ガシ!


 サルガタナスの腕を掴む手がある。

 アッシュだった。


 「こいつ気絶しているのではないのか?」


 「人間‥‥なめるなぁ!」


 アッシュはバク転するように体を後方に回転させながら掴んだサルガタナスを後方に投げ飛ばす。

 そしてすぐさま鞭をサルガタナスに向けて放ち絡ませたあと、それを方々に振り回して連続で地面に叩きつける。


 ドガン!ガゴン!バゴン!ドゴン!


 「フハハハハ!」


 叩きつけられているにも関わらずサルガタナスは笑っている。


 「化け物はどっちだよ!」


 アッシュはサルガタナスを遠くへ放り投げる。


 ブオオオオォォォォォォォ!!


 法螺貝のような音が鳴り響いた。

 ナラカ軍の合図だった。


 「ナラカ軍は一旦コクジョウまで退却する!」


 ヤマラージャの声がトウカツ内に響いた。


 「きゃははは!逃げるんじゃないゴキブリが!」


 ナラカ軍は第2層コクジョウまで撤退した。


・・・・・


・・・



 ―――ガザド軍―――



 パラディン・スレイン率いるガザド軍3万はゼーガン帝国に侵攻を続けていた。

 そして帝都ゼーガンまで30キロメートルのところで大軍に出くわした。


 「総司令!ゼーガン帝国軍です!その数約2万!」


 「ご苦労様です。全軍に告ぐ!これより我がガザド軍は帝国軍と交戦に入ります!帝国軍2万!数は我が軍は敵方の1.5倍ですが、侮ってはなりません!ここは敵国内!どのような罠が敷かれているかも分かりません!攻め時は私が支持を出しますからそれまで油断せず慎重に進軍してください!」


 『おう!!』


 ガザド軍はパラディン・スレイン軍総司令の指示のもと、進軍を続けた。

 そして、両軍の間隔が500メートルまで近づいたところでガザドの炎魔法部隊が攻撃を仕掛けた。

 ダメージを与えたのか、帝国軍はそこから後退し始めた。



 「帝国軍後退!」


 「よし!それでは帝国軍のしっぽをにぎります!全軍前進!」



 帝国軍は帝都ゼーガンへの侵攻を嫌がるように軍を南東へ進めて行く。

 今回のガザド侵攻はゼーガン帝国の足止めのため、帝都へ向かわずに帝国軍を追うことになる。

 ガザド軍は帝国軍を追って南東に進軍した。




―――ジオウガ王国軍―――



 騎馬車に乗り腕を組んだ状態で悠然と軍を引っ張るギーザナ。

 その勇姿にオーガ兵たちは誰しもが憧れる。

 ジオウガ王国において誰に尊敬の念を向けるかは、全て強さで決まる。

 シャナゼン王が長らくジオウガの民に慕われ尊敬され続けているのはオーガ史上最強の強さを誇る強者だからだ。

 そしてこのギーザナは史上2番目に強いとされる強者であり、長らくシャナゼン王を助けこのジオウガ王国を支えてきた人格者でもあった。

 加えて外交にも長けており、しばらく国を空けていた理由は他国との交流のためだったのだが、オーガたちにとっては久方ぶりにギーザナの勇姿が見られるとあって、士気が上がっていた。



 「ギーザナ軍総司令へ伝令!」


 「どうした」


 「前方20キロにエルフ軍あり!その数2万!」


 「どこの軍か?」


 「偵察兵によると、甲冑はバラバラであるため、おそらくグムーン自治区の衛兵を中心とした軍かと!」


 「わかった。それであれば間違いなくネザレンから同等以上の援軍が来るだろう!前衛軍2万は瞬殺だ。一人も死ぬことは許さん!オーガに敗北のふた文字はない!勝ち続けて生き残れ!全軍前進!これよりエルフどもを殲滅する!」


 『おおおおおおおおおおおおお』



 こうして各国で交戦が始まった。

 そしてゲブラーの命運を握る戦いが繰り広げられることになる。





ここから怒涛の流れに突入します。次のアップは月曜日の予定ですが、日を跨ぐ可能性あります。

いつも読んでくださってありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 最新話でディアボロスの配下のサルガタナスが魔王と名乗っていたのが気になりました。魔王に限りなく近い力を持っているという意味でしょうか?厳密には魔王ではないですよね。
2022/05/30 23:26 中村慎太郎
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