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<ゲブラー編> 137.グランヘクサリオス ジャダ その5

137.グランヘクサリオス ジャダ その5



―――第7戦 試合開始2時間前―――



スノウの個別の控室。

チーム・エクサクルーキー4全員がこの個室に集まっていた。

メンバーはスノウの他にエスカ、コウガ、エクサクロスでグラディファイサーランク3位のシルバーファング、そして突如今回のグランヘクサリオスから登場した老剣士の5人だ。



「ルデアスになるだけで、こうも待遇が変わるかね」


コウガは個室を与えられているルデアス以上の者たちとの待遇さを羨んでいた。


「こんなのは重要じゃないだろう?別にここで寝泊まりしているわけじゃないんだから」


「それはそうだが、試合前の精神集中とかな‥‥‥」


「どこででも精神集中できなきゃ心のグラディファイサーとは言えん」


エスカが割って入る。

スノウはまた始まったといった表情でエスカとコウガを見ている。

だが、今回はエスカの言うことがド正論のためコウガは話題を変えようとシルバーファングに話しかける。


「そう言えばあなたはエクサクロスだからもっといい個室なのかい?シルバーファング」


「大して違いはない」


「そ、そうか」


何となく気まずい雰囲気にしてしまったため、コウガはシルバーファングに話しかけたことを後悔した。


「そう言えば、お互い何となく知っている感じではあるけど、きちんとした自己紹介はまだだったな。改めて一応名乗り合おうか」


スノウが気まずい雰囲気を変えるために割って入った。


「まずはおれから。名前はスノウ。武器は使わない。いや、使えなくもないんだが、拳闘を突き詰めたいと思っているんで武器は使わない。だから肉弾戦が中心と思ってくれ。一応魔法‥炎魔法は使えるから、いざとなったら後方支援も可能だ。よろしく。じゃぁ次は‥エスカ」


「私はエスカ。エスカ・カグラミだ。得意な武器は剣。特に細身の軽い剣を使った剣術を得意としている。だが、必要とあらば全ての武器を使いこなすことも可能だ。スノウと同様に炎魔法を使うことは可能だができれば避けたい。武技に特化した訓練を積んできたからな。即席で対応できるほどこのグランヘクサリオスは甘くないだろうから。よろしく」


スノウがコウガに合図し、コウガは頷いて自己紹介を始めた。


「俺はコウガ。今はローラスだが、ルデアスまであと一歩という位置にいるから、ほぼルデアスとして戦闘を信頼してくれて構わない。得意な武器は槍だ。肉弾戦が主だがリーチが長いことと、飛ぶ斬撃や突きを得意としているから中距離攻撃もできる。よろしく」


「じゃぁシルバーファング、自己紹介いいか?」


「ああ。オレはシルバーファング。見ての通りこの長い爪で戦うことを得意としている。爪以外には剣も使えるが、オレの戦闘スタイルは速さだ。速さを生かした戦闘に最も適している武器がこの爪だと思っている。コウガと同様に飛ぶ斬撃もできるが、中距離からちんたら戦うより一瞬で相手の背後に回って斬り刻む方が楽だな。よろしく頼む」


「お、おう。頼もしいな」


コウガ何となく下に見られた感じを受けたが、言い返せずにいた。


「じゃぁ最後に剣士殿」


「ほっほっほ。みな元気でええのう。おお、わしはチャミュじゃ。チャミュじいって呼んでくれ。得意な戦い方は‥‥えっと‥‥なんじゃったかの」


「第1ステージでは剣で戦っていましたね」


「おお、そうじゃった。剣は好きじゃな。だがどっちかって言うと槍の方が好きじゃな。かっこええじゃろ?ああ、それとわしに敬語はいらんよ。もぅあんたらとはトモダチじゃからな。トモダチはタメ口じゃろ?ほっほっへ」


「ははは‥‥じゃ、じゃぁそうさせてもらうよチャミュじい。よろしく。それであなたは魔法は?」


「魔法は‥‥そうじゃな。色々と使えるぞい?お湯沸かしたり、風呂炊いたりな。特に冬場はふんどし洗うのにあったかい湯で洗えるのはとってもありがたいんじゃ」


(ふんどし‥‥)


スノウはこの世界にもふんどしがあるのかと思った。


「自己紹介ありがとう。さて、今日のジャダの戦い方だが、運がいいのか悪いのか第1ステージでかなりの戦闘力を見せつけた新人グラディファイサーのニンジャマスター率いるチームと当たるという状況にあるから、しっかり作戦は持っておこう」


「他の対戦カードは1強って感じだったしな」


「見事に残るべき者たちが残ったことから恣意的な何かが働いている気がしないでもないがな」


「それで作戦は?」


チャミュじいが興味津々といった感じで聞き入ってくる。


「おれの案はこうだ」


・他のカードでもよくあった通り、最も強いチームに対して他の2チームが協力して攻撃してくることを想定して、第7戦でもゼロ率いる闇の軍団とチーム・剛腕力が強力して攻撃してくるとすると、おそらく開始早々に炎魔法と弓矢でそう攻撃をしかけてくるだろう。

・その混乱の中で左右後方から闇の軍団の剣士たちが襲ってくるはずだ。

・よって陣形は、スノウとコウガが前衛、中盤にチャミュじい、後方にシルバーファングとエスカというクレッシドラ陣形を取る。

・まず炎攻撃に対してはスノウが炎魔法のバリアをはって防御、その間にコウガが飛ぶ斬撃を放ちながら前進してチーム・エクサクルーキー4全員が前進していると思わせる。

・それを左右から叩こうとするであろう相手をシルバーファングとエスカが返り討ちにする。

・残りを全員でたたく


「まぁ戦況に応じて臨機応変に対処する形にはなるが、後方にシルバーファングとエスカがいることによって全体の状況が把握できるはずだ。あとは合図を送りながらうまく連携だ」



「十分だ」


シルバーファングが答えた。


「わしの出番、ちょっと少ないけどまぁええよ」


チャミュじいも賛同した。


・・・・・


・・・




ピィィィィィィィィィ‥‥‥


レンスの合図で第7戦が始まった。


ポキポキ‥‥‥


スノウは指を鳴らした。


「さて、ニンジャマスターのお手並み拝見と行こうか」


「作戦開始!」


チーム・闇の軍団と剛腕力の炎魔法の使い手たちが一斉に両手を交互に上げながらスノウたちのいる上空に向けて炎魔法を放っていく。

放たれた炎魔法は集積されて徐々に大きな炎の球体と化す。


「落とせ!」


炎魔法使いたちは一斉に手を下に下ろす。

すると大きな炎の球体は勢いよくスノウ達のいる場所に衝突する。


バッゴオォォォォォン!!


凄まじい爆音と共に闘技場が吹き飛ぶ。

まるで小型隕石が落下したかのように岩や砂埃が舞う。


その隙に左右から二人ずつ影がスノウ達の場所に素早く近づいていくのが見えた。


ジャキキキン!!!


爆炎の内部から武器がかわされる音がする。


「スクリューバレット」


同時にコウガが槍の飛ぶ斬撃を前方に複数放ち突進してくる。

相手側は仕留められなかったと見たのか、焦ったようにコウガに炎魔法攻撃を繰り出す。


バババババ!


ジャッ!


炎魔法攻撃をコウガは軽々といなし、さらに突進する。


「生き残ったのはこいつだけだ!一斉に攻撃しろ!」


どうやら爆炎の中から出てきたのがコウガだけだったので他は全滅したと判断したようだ。


「流星光槍」


シャシャシャババババン!!


「ぐあぁぁ!」


コウガの凄まじい速さの突きによって炎魔法使いたちは一気に倒された。

次第に爆炎が風に流されて、爆炎の中の状況が見え始める。

そこには円盤上の巨大な炎の壁が宙に浮いていた。

スノウが片手を上げてその炎の円盤を操っていた。

その炎の円盤の壁によって相手方の放った炎の球体攻撃は完全に防がれていた。


『わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』


凄まじい魔法の攻防で大歓声が沸き起こる。


炎の円盤の壁の下では激しい剣の戦いが繰り広げられていた。


キンキンカカキン!!


凄まじい剣の戦いが繰り広げられていた。

エスカと三人のニンジャのような剣士が戦っている。


「シルバーファングとチャミュじいはどこへいった?」


スノウは炎の円盤の壁を解除し、二人を探す。


「!」


シルバーファングはニンジャマスター・ゼロと戦っていた。

凄まじい速さのため、簡単には肉眼で捕らえられない。


(チャミュじいは?)


チャミュじいは片手を腰に置いてトコトコと歩いている。


(おいおい!戦う気あんのか?あのじいさん)


エスカと戦っている三人のうちの一人がチャミュじいのへ対象を変えて攻撃を仕掛けた。


「この老人は私に任せろ!お前達はその女を倒せ!」


そういうとニンジャの一人はトリッキーな動きでチャミュじいに近づいて背後に周り短刀を振り上げた。


「もらった!」


シャヴィン!!


「はぐぁ!」


ニンジャの腹に蹴りが突き刺さっている。

チャミュじいは後ろを見ることなく、ありえない角度で背後の上に向けて蹴りを繰り出していたのだ。


「ちょっと寝てておくれ」


バゴーン!


するとチャミュじいは空中で回転しながら反対の足で蹴りを繰り出してニンジャを遠くへ蹴り飛ばした。


ジャキン!


一方エスカは残った二人のニンジャを倒したようだ。


「ふぅ」


「残るはあのすばしっこい御人だけじゃな」



シャキキン!カカカン!カキン!


凄まじい速さの剣の応酬が繰り広げられている。


シャバ!


ゼロが着地する。

シルバーファングも低い体勢で着地した。


「なるほど。さすがエクサクロスだけあって強いなお前。俺のチームは全員やられたか。だらしないな」


「ゼロとかいったか?勝てると思っていたのなら、洞察力と状況判断能力が欠けているとしかいいようがないな」


ゼロの発した言葉にシルバーファングが返した。


「まぁ、元々全員で勝つつもりは無かったからな。計画通りだ。お前らは俺一人で十分。さぁかかってこい」


「口の減らねぇやろうだ!」


そういうとシルバーファングは地を這うように凄まじい速さで移動しゼロの懐に入ったと同時に爪をアッパーカットのように振り上げた。


「!」


ゼロは寸前のところでかろうじて体を反らせて避けたが、続け様に攻撃を繰り出すシルバーファングの一撃を目で捉えた瞬間、片手で目を覆った。


「シルバーファング!目を瞑れ!」


スノウが叫ぶが間に合わなかった。

ゼロとシルバーファングの間の前で凄まじい閃光が放たられる。

まともにそれを見たシルバーファングは一瞬動きを止めるが、続け様に攻撃を繰り出す。


「何?!」


ゼロは閃光で目が見えなくなっているシルバーファングの攻撃が正確に自分を捉え続けていることに驚きを隠せなかったが、一瞬作ることができた隙をついて大きく後方へ飛び退いた。

飛び退いた方向へ地を這うように追いかけるシルバーファングはさらに攻撃を繰り出す。


「お前、なぜ見えないのに正確に攻撃できる?」


「教えると思うのか?」


カキキン!!カキン!


「なるほど、匂いか」


「さぁな」


カキャン!ココカン!


剣と爪の応酬が続く。


「ファング!やつの後ろに気をつけろ!」


スノウが叫ぶ。


「いちいちうるさいやつがいるな」


ゼロは突如しゃがむ。


「!」


シルバーファングは目の前に炎の剣が現れて驚く。

ゼロは戦いながら炎魔法で背後に炎魔法で剣を作り出していたのだ。

炎の剣が凄まじい速さでシルバーファングに向けて放たれた。


シュワ!


シルバーファングはそれをギリギリでかわしながらゼロを追って爪を振り上げる。


「しぶといな」


「お前の攻撃がトロいだけだ」


バオァン!!


ゼロは地面に何かを投げつけた。

その瞬間小さな爆発が起こり、視界が一気に悪くなる。


ガキィィン!!


「逃すかよ!」


ゼロは煙幕で一旦距離を取ろうとしていたが、そこにスノウが登場しゼロの動きを止めた。

周囲にはエスカ、コウガ、シルバーファング、チャミュじいが構えて囲んでいる。


「流石に全員一度に相手するのは骨が折れるか」


スノウは螺旋を込めた手でゼロの短刀を掴んでいるが、さらに螺旋を強めて短刀を折った。


バギン!


「このチームをまとめているのはお前だな雷帝。貴様からは八咫烏の匂いがする。良いだろう、忌々しいが覚えておくとしよう。」


そう言うとゼロはその場から消え去った。

まるで転送したかのようにその場から完全にいなくなったのだ。


「どういうこと?」


「あんな風に消えることができるのか?」


エスカとコウガは驚いている。


「ほっほっほ。あやつなかなかやりおるのう」


チャミュじいは感心している。


バッ!


シルバーファングは爪をレンスの方へ向けた。


「しょ、勝利チームはエクサクルーキー4だぁ!」


『わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』



レンスは大2ステージを勝ち残ったもの達を告げ第3ステージの予告をした後第、2ステージは大歓声の中終了した。


残ったグラディファイサーたちは30名。


・チーム・バルカン:5名

バルカン、マイン、ヒーン、カブラミオ、ヴェラス


・チーム・死神霧無:4名

ザロ、ジヌーク、シャザハ、ゼンガ


・チーム・エンカルジーズ:1名

ゲントウ


・チーム・ダークタイガー:1名

闇虎


・チーム・10セカンズ:4名


・チーム・ドゥームズ:5名

ムル、ホプロマ、他3名


・チーム・エクサクルーキー4:5名

スノウ、エスカ、コウガ、シルバーファング、チャミュじい


・チーム・ピエロ:5名(不戦勝)

クアンタム・他



そして、3日後から最終ステージがスタートする。







いつも読んでくださりありがとうございます!

次は日曜日アップの予定です。

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