<ゲブラー編> 134.グランヘクサリオス ジャダ その2
135.134.グランヘクサリオス ジャダ その2
チーム・バルカーンはバルカンを中心に左右に肉弾戦を得意とするマインとカブラミオが立ち、後方には弓を得意とするヴェラスがおりそのさらに後方に炎魔法を得意とするヒーンがいるバリスタ陣形を形成している。
加えてヴェラスとヒーンは障害物で相手からの飛び道具を避けやすい位置に陣取っているため、有利なロケーション確保を行なっている。
他の2チームもそれぞれ、障害物を活かした場所を陣取って入るものの、近距離攻撃タイプと遠距離攻撃タイプが混在しているチーム・ワンタイムは単純な前後でのフォーメーションを形成しているのである程度攻防バランスの取れた戦闘が期待できるが、チーム劫火勝顰は炎魔法使いのみで形成されたチームのため、障害物の陰に散らばった体制となっていた。
ピィィィィィィィィィィ!
開始の合図とともに第1戦がスタートした。
初っ端の戦いであり、且つグラディファイサー史上あまり見ない形式のジャダのため、3チームとも慎重に戦況を見ていた。
口火を切ったのは劫火勝顰だった。
ある程度散らばって配置している炎魔法の使い手達は一斉に炎魔法を詠唱し始めた。
ボワン!!
それぞれが両掌を前に出してそこからファイヤーボールのような高熱魔法を繰り出した。
合計10個のファイヤボールがそれぞれまばらに弧を描いてチーム・バルカーンとチーム・ワンタイムに向けて飛んでいく。
ドゴァン!バガン!バゴゴン!
凄まじい爆音が響く。
両チームとも、それぞれが盾や炎魔法の防御壁を形成して攻撃を防いでいるが、劫火勝顰からのファイヤボール攻撃は一発で終わらず連続で放たれているため、両チームとも反撃仕切れずにいた。
徐々に爆発によって砂埃が巻き上げられて当たりが靄がかかったかのような状態になってきた。
それに伴ってチーム・ワンタイムのメンバーは攻撃を避けるのが苦しくなってきたようで、後衛にいる弓使いが叫び出した。
「おい!マジックキャスターのふたり!反撃しろ!俺の弓じゃ燃えてしまって届かねぇ!前の二人も避けるのが精一杯で反撃できないからお前らに頼るしかねぇ!」
「了解した!」
チーム・ワンタイムのマジックキャスターズは連携して炎の壁を作り出してファイヤーボールを防ぎつつ、逆に炎攻撃を繰り出した。
『ファイヤーアローレイン!』
繰り出された無数の炎の矢が、劫火勝顰の陣取っているエリアに一斉に降り注ぐ。
『ぐあぁぁぁぁぁぁ!』
どこからともなく数名の悲鳴が聞こえた。
「やったか!」
グザァァァ‥‥‥
「ぐあぁぁ!!」
「ぎあぁぁぁ!!」
続いて別の場所から悲鳴が聞こえた。
辺りはファイヤーアローレインの影響もありさらに砂埃や黒煙が舞っており視界が悪くなっている。
しばらくして、風で砂埃や黒煙が流されて視界が晴れてきた。
「!!」
ふたりのグラディファイサーが倒れてるが、驚くべきはそれがチーム・ワンタイムの二人だったのだ。
「ど、どういうことだ?」
前衛を務めていた剣士ふたりが黒焦げになって倒れている。
「た、確かに俺たちのファイヤーアローレインで劫火勝顰のやつらの方から悲鳴が聞こえたんだ!」
「その後にも悲鳴が聞こえたが、それがこいつらだってのか?!」
「じゃぁ最初の声は?!」
ボワン!!シュゥゥゥゥン・・・ドッゴォォォン!!
攻撃が有効で優位に転じていたはずが、仲間二人を失って呆然としているチーム・ワンタイムの3名の背後から巨大な炎の塊が飛んできて3人に直撃した。
『ぎやあぁぁぁぁ!!』
ブシュゥゥゥ‥‥
炎魔法攻撃が直撃して残っていた3人も黒焦げになってしまった。
かろうじてその中のひとりだけが、最後の力を振り絞るように必死に立ち上がろうとしている。
ギリギリで炎魔法の盾を形成して防御したようだが、衝撃までは吸収できず勢いで自分の繰り出した炎の盾の熱で焼かれてしまったようだ。
「ど、どう‥いう‥ことだ‥‥」
タタタタ‥‥‥
劫火勝顰の5名が一斉に現れてチーム・ワンタイムの残った一人を囲んで魔法を詠唱し始めた。
「さらばだ」
ドォォォン!!
一斉に炎魔法が放たれる。
最後の一人は声もなく焼け焦げてその場に倒れ込んだ。
ダッ!
直後劫火勝顰メンバーは一斉に方々に散っていった。
「どう対処する?」
マインがバルカンに質問した。
「バリスタからフリースタイルに陣形変更だ」
その声を聞いてヒーンは大正解と言わんばかりに微笑んだ。
だが、マインはその意味に気づいていない。
「どういうことだ?」
「いいから指示に従いましょうマイン」
カブラミオも気付いているようで、説明するより行動した方が早いとばかりにマインを促して方々に散っていく。
直後に劫火勝顰メンバーからのファイヤーボール攻撃が一斉に放たれた。
だが、方々に散っているため、なかなか照準が定まらないようでチームバルカーンには当たらない。
「ヒーン!ヴェラス!頼む!」
「はいよ!」
ヒーンは障害物の影に隠れて魔法を詠唱し始めた。
目の前で両掌でバレーボールを掴むかのようなポーズをとっている。
「地獄の公爵‥‥アザゼルの憂い」
ヒーンの両掌の間に赤黒い炎が生まれた。
バッ!
それを思いっきり上に放るように両手を上にあげた。
その瞬間、赤黒い球体は闘技場の上空にとどまって回転し始める。
「動くなよ」
バルカンがカブラミオの側に行き、耳うちする。
そのままチーム・バルカーンの5名はまるでマネキンのように動きを止めた。
赤黒い球体からまるでしずくが垂れるように赤黒い液体が滴ってきた。
次の瞬間急に赤黒い球体が回転し始める。
シュンシュンシュンシュンシュン‥‥‥
赤黒い球体から滴っていた液体が方々に散る。
だが、それはまるで生き物のように不自然な動きで飛んでいく。
バババババン!
『ぐあぁぁ!!』
「一体‥‥」
カブラミオが思わずつぶやく。
「ヒーンのアザゼルの憂鬱‥‥それは地獄業火そのもの。赤い液体は超高熱の炎の液体だ。そしてのその燃える液体は意思を持っているかのように動くものに反応し焼き尽くす。くれぐれも動くんじゃないぜ」
バルカンが小声で返した。
ガタタン‥‥
「ち‥くしょう‥‥ファイヤー‥‥アロー‥‥ス‥トーム‥」
かろうじて生き残った劫火勝顰メンバーの一人が最後の力を振り絞るように炎魔法を放つ。
振り上げた片手から凄まじい炎の巨大な柱が登っていき、その柱は渦を巻くように空に登っていき、向きを地上に変えてると同時にドンドン広がっていき闘技場を覆うほどのに広がっていく。
「全員!焼け死ねぇ!フハハハァ‥‥‥」
そういうと力尽きたかのように術者はその場に崩れた。
「カルマン・毘楼博叉」
バルカンは突如静かに凄まじい跳躍をし、炎の渦に突っ込む。
そして剣を一回転させると、炎が何かに吸い寄せられるようにして一瞬にして消え去った。
スタ‥‥‥
バルカンは静かに着地した。
しばしの沈黙が流れる。
『わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!』
凄まじい大歓声が沸き起こる。
「しょ、勝利チームはバルカーン!!!!」
「ヒーン‥‥」
コウガはこめかみから汗を滴らせて目を見開いて言葉を漏らした。
ルデアス vs ルーキー4の際に対戦したヒーンからさらに強さをました姿を目の当たりにして、悔しさと今すぐにでも戦いたいという気持ちが入り混じった表情を浮かべている。
「あのバルカンの技‥‥‥」
エスカもまたバルカンの技の凄まじさを見て思わず言葉を漏らした。
「強いな、二人とも。おれ達も負けていられない」
「ああ」
「もちろんだ」
スノウの言葉にエスカとコウガは決意新たにした。
「流石はエクサクロスとルデアスといったところか」
「フン‥‥‥大したことないだろう。あれくらいは当然だ」
シャザハの言葉に対し、ジヌークが返した。
ザロは興味なさそうにしている。
ゼンガは相変わらず無言だった。
こうして第1戦が終了した。
次は木曜日のアップ予定です。書き進み具合によっては日付を跨ぐ可能性あります。




