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<ゲブラー編> 133.サバイバル ジャダ

133.サバイバル ジャダ


 「スレイン様!まもなくゼーガン帝国との国境に到着します。


 「承知した。報告ご苦労。国境壁破壊は定刻までに完了するかの確認も頼みます」


「は!」


 パラディン・スレインはガザド軍を率いてガザド公国とゼーガン帝国の国境付近まで差し掛かっていた。

 ガンター砦の西側約1kmの国境壁を破壊して進軍を試みようとしている。

 ガンター砦を抜けようとすると軍が長蛇の列と化し抜けるまでに時間がかかることと、そこを横から攻撃される場合、不利な戦いを強いられるため、敢えて国境壁を破壊する形でゼーガン帝国へ進軍しようと試みたのだ。

 これは本格的にゼーガンと交戦する事を意味している。


 「スレイン様!国境壁の破壊はほぼ完了しております。ほぼと言うのは多少の整地がまだ終わっていないだけですので進軍は可能な状態にございます!」


 「承知した!全軍!これより我が軍はいよいよゼーガン帝国へ進軍する!敵軍が出現し交戦する可能性を考慮し各自武器の携帯を確認!炎魔法投擲器を稼働準備の上進ませよ!皆の者!油断せず心して進軍せよ!」


 『オウ‼︎‼︎』


 ガザド軍は万全の準備でゼーガン帝国へ足を踏み入れた。



ーーーゾルグ王国エンブダイ アムラセウムーーー



 アムラセウムは超満員となっており既に大歓声でアムラセウム内の廊下や部屋の壁がブンブンと振動するほどだった。

 それもそのはず、これからグランヘクサリオスの第2ステージが始まるのだ。


 グラディファイス最高のプロモーターであり今回のグランヘクサリオス総指揮を担っているレンス・ジャニーンが登場した。

 それをきっかけにして鼓膜が割れんばかりの大歓声が沸き起こる。


 バッ!!!!


 レンスは両手を広げて空に向けて高々と掲げた。

 彼の周囲には炎魔法による拡声ブロックが回りながら浮遊している。


 「皆さん !!!! お待たせしてしまったね !!!! さぁ、これから・・・・」


 レンスは大きく息を吸った。


 「グランヘクサリオス 第2ステージを始めます ‼︎‼︎‼︎」


 『わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!! 』


 アムラセウムが震えるほどの大歓声が沸き起こる。

 

 (あぁ、この瞬間が堪らない・・・・。この後の歓喜の刈り取りを前にした盛り上げの種まき・・・・。自分の企画が失敗に終わるかも知れないと言うスリル・・・・)


 レンスは愉悦に浸っていた。

 そして、我に返ったかのように前を向き大観衆に向けて言葉を発する。


 「第2ステージはジャダ(チーム戦)です!」


 『わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!! 』


 「それではグラディファイサー達の入場です!」


 レンスの合図の直後、闘技場内の壁が開き第1ステージを勝ち抜いたグラディファイサー達が入場してきた。

 まずはグラッドたちが入場して来たが、その中には残忍な戦いを見せたクアンタムや相手に気づかれないように倒していくニンジャマスター・ゼロ、優しく相手を倒してのける老剣士がいる。

 続いて入場して来たのは、ローラス達だ。

 コウガやカブラミオをはじめ上位者が残った形だが、ローラスの約半数が第1ステージで姿を消したのは意外だった。

 これも全てゲントウの乱入とルール変更の影響だろう。

 次はルデアス達だ。

 大歓声の中登場して来たのは、エスカ、スノウ、マイン、ヒーン、ジヌーク、ザロ、ゼンガ、シャザハの全てのルデアスだ。

 そして続いてシルバーファング、バルカン、闇虎のエクサクロス(上位3名)が登場した。

 最後はヘクトリオンから出場しているムルとホプロマだ。


 鳴り止まない大歓声の中、レンスが再び声を発する。


 「以上の面々で行われるジャダのチームを発表しま・・・・」


 ドォォォォォン!!!!


 凄まじい爆音が闘技場内に響いた。

 砂煙の中人影が見える。

 どうやら誰かが何処かからジャンプして闘技場内に着地したため爆音と共に砂煙が舞ったようだ。

 次第に砂煙が晴れていくと、そこにいたのは前回エンカルジス(優勝者)の死魂斬波(しこんざんぱ) ゲントウだった。


 「運営が決めたチームなどつまらん!貴様ら!自分で組みたいやつを自らの意思で選択して5人組を作れ!」


 またもやゲントウがレンスがルールを言いかけたところで割り込んできたのだった。


ーーーアムラセウム内運営ーーー


 ガタ‼︎


 炎魔法のホログラム映像で状況を見ている運営メンバーは思わず立ち上がって驚いた。


 「またか‼︎」

 「おいおい!冗談だろ!」

 「いくら前回優勝者って言ったってここまでする権限は無いぞ!いい加減止めに行こう!」


 運営メンバーは大急ぎで闘技場へ向かった。



ーーー闘技場内ーーー


 「いいぞゲントウ!」

 「お前もでろー!」

 「今度は何をやらかしてくれんだぁ?!」


 野次が飛ぶ中、グラディファイサー達は、誰の指示に従えば良いのか判断がつかず動かずにいた。

 丁度そこへ会議室にいた運営メンバー達がレンスのいる所にやってきた。


 「レンスさん!! 彼を止めてください‼︎」

 「これ以上企画が壊されたらもう僕らの手に追えなくなってこのグランヘクサリオスは失敗に終わる可能性ありますよ!」

 「失敗に終わったら恐らく俺たちは王政から罪に問われ処刑対象にされるでしょう!」


 レンスは黙っていた。

 一方ゲントウは両手を広げてさらに叫ぶ。


 「どうした剣闘士達よ!さぁ、誰でもいい!5人ひと組となれ!存分に戦わせてやるぞ!」


 レンスがゲントウの方へ歩いていく。

 そして話始めた。


 「ゲントウさん・・・・。5人ひと組って言っても第1ステージを勝ち残ったのは112名。余りが出てしまいますね」


 それに対してゲントウが周りを見回す。


 ボゴォン!!!!


 「あぎゃぁ!!!!」


 ゲントウの拳が一人のグラディファイサーの腹を背中から突き破って飛び出ている。

 腹を突き破られたグラディファイサーは白目を剥いて絶命していた。

 と同時に別のもう一人のグラディファイサーが倒れた。

 彼の両足は切断されていた。

 辺りに血が吹き飛んでいる。


 「見えたかスノウ⁈」


 「ああ。一瞬だったが蹴りであのグラディファイサーの両足を切り飛ばした後、もう一人の背後から正拳突きで腹をぶち破った」


 「そうだな。前回のエンカルジスということだが、あれだけの強さがありながらなぜ引退した?そしてここまで関わりたがるならなぜ出ないのか?」


 「おれもそれを考えていた。気味が悪いがあいつにも要注意だな。作戦の障壁になりかねない」


 「ああ」


 スノウとバルカンは一連のやり取りを見て小声で話をしていた。

 ゲントウの凄まじい速さの攻撃によって二人のグラディファイサーが参加不能となってしまったが、直後手を引き抜いたゲントウがレンスの方へ向き直り話しかけた。


 「これで良いか?」


 112名という半端な数が110名になった事で5人ひと組が作れるようになったと言いたいのか、ゲントウは無表情のままレンスを見ている。

 するとゲントウの背後から一人のグラディファイサーが剣を振り上げて突進して来た。


 「てめぇよくも俺の仲間を!!」


 ジュワン!!


 斬りかかってきたグラディファイサーの首が宙にまった。

 振り向かないまま左足を振り上げて背面蹴りを放ちそのまま相手の頭部を蹴り抜いたのだった。


 「困りましたね。これではまた数が合わなくなった」


 バッ!


 レンスは言い終える直前に左手を前に出して動かないように制した。


 「これ以上今ここで殺すのは無しですよ、ゲントウさん。数が減ってはグランヘクサリオスが面白くなくなりますからねぇ。こういうにはどうでしょう?ひとり欠けた分、あなたに参加いただくと言うのは」


 『わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!! 』


 大歓声が沸き起こる。


 「ちっ」


 ゲントウは舌打ちをした後、了解した旨を表現して振り向いた。


 「この退屈なグランヘクサリオスを我が盛り上げてやろうではないか!さぁ貴様ら5人ひと組を作れ!」


 「さぁ皆さん!聞こえたでしょう?5人ひと組を作ってください!」


 ゲントウの後にレンスが続いて発言した。

 グラディファイサー達はひとりふたりと動き始めチームを作り始めた。

 バルカンはマイン、ヒーンの3人に加えて、グラッドレベルの革命軍グラディファイサーのヴェラスという名の男と革命軍に協力を示しているカブラミオと組みチームを作った。

 一方スノウは、エスカ、コウガと組んでいるがあと2人足りないため誰か探すことにした。


 「どうするスノウ。下手に弱い奴とか、連携取れない奴と組むと面倒だぞ?」


 コウガが話しかけた。


 「どちらかと言えばお前も連携取るには実力不足だがな」


 エスカが煽るように返す。


 「なに⁈ お前こそ協調性持つべきだぞ!これはチーム戦だからな!」


 「分かっていて言っている」


 「おい、やめろ。それよりあと2人誰がいいか周りを見ろ」


 すると背後から声がする。


 「あのぉ、わしをおたくらのチームに入れてくれんかのぉ」


 スノウは思わず振り向いた。


 (こ、こいつはあの老剣士じゃないか。おれが気配に気づけないなんて・・・・。ってか、このじいさんが入ってくれるなら有難いが、なぜおれ達に接触してきた⁈)


 「ん、なぁに、あんたらの戦い方がわしと合ってると思うたからじゃよ。っそれで答えになっとるかの?」


 「!! 」


 (こいつ心を読んだ⁈・・いや、おれのいつものサトラレ的なやつが思わず出てしまったか?・・・・何にしてもこのじいさんなら悪くないか。言ってる通り戦いに向き合う姿勢はおれ達と似ている気がするしな)


 「いいでしょう、ご老人。貴方の戦闘力も申し分ないことはこれまで見ていて理解しているつもりだ。よろしくお願いします」


 「スノウ!いいのか⁈」


 コウガが思わずスノウに問いかけた。

 これまでのグラディファイスで見かけた事のないどこの馬の骨とも分からない人物と組むのかと言いたげだったがスノウは大丈夫だという表情をコウガに向けた。


 「あとひとりだな」


 エスカが腕を組みながら周りを見ている。


 「オレを入れろ」


 「!! 」


 またしても気配に気づかないまま背後から声が発せられて振り向く3人。


 (こ、こいつは・・・・!)


 「シルバーファング!」


 コウガが思わず叫ぶ。

 そう、目の前に立っているのはエクサクロスとして現在グラディファイサーランク3位に君臨している男、シルバーファングだった。

 明るめのグレーに緋く縁取りされた模様のフードマントをつけており、フードを被っているため顔はハッキリとは見えないが色白の口元は露わになっておりその端正な顔立ちが伺える。

 何より両手に付けられており、マントから少しだけはみ出して見える銀の鉤爪がシルバーファングの二つ名の由来となっているのだが、発せられるオーラでその名が伊達ではないことを示している。


 (こいつ・・・・やはりガザド公国のジェラルドの屋敷で会った奴だ・・・・。あの時立ち会った一瞬でその強さは分かったが、なぜおれ達に接触してきた⁈ ジェリーに言われてきたか?いや、それならそれで鳥でもなんでも連絡してきていいはずだ。だが、こいつが仲間にいれば間違いなく勝率は上がる・・・・)


 コウガだけでなくエスカもスノウに判断を任せており次に発せられる言葉を待っている。


 「いいだろう。歓迎しようシルバーファング。だがその前に理由を聞かせてくれ」


 スノウは駆け引きなしに素直に聞くことにした。


 「簡単だ。オレに見合う強さの者と組みたい・・・・それだけだ」


 「わかった」


 「いいのかスノウ?」


 コウガは不安そうにスノウに問いかけた。


 「かまわない。おれ達の実力を買ってくれただけの事だ。断る理由にはならない」


 「断る理由とかじゃなく信頼できるかどうかだぞスノウ」


 コウガが小声でスノウに返した。


 「おれ達と組むと言うことはおれ達に何か危害を加えたらあいつ自身も負けになるだろう?それにもし裏切るならそこで叩けばいい」


 「わかった。スノウ、お前を信じよう」


 こうしてスノウ、エスカ、コウガ、老剣士、シルバーファングという奇妙なチームが結成された。

 周りもほぼ5人ひと組のチームが作られたようでゲントウが闘技場中心に立って両手を上げた。


 「これから!3チーム同時対決のサバイバルジャダ(チーム戦)を行う!これが第2ステージだ!」


 『わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!! 』


 大歓声が沸き起こる。


 いよいよグランヘクサリオス 第2ステージが始まる。



 


次は火曜日もしくは日にちを跨いで水曜日のアップ予定です。

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