<ホド編> 12.観測者
12.観測者
広く薄暗い厳かな部屋の中央に直径10メートルくらいの円卓がある。
突如ライトもない上空から円卓にスポットライトが当たる。
誰も居なかったはずが、いつの間にか4つの気配がそれぞれ対角に円卓を囲んでいる。
スポットライトが円卓を照らしているので4つの気配はぼやけた色が影になった状態になっている。
「‥‥虚無の侵攻を退けて以降、秩序は沈黙を続けているようですね」
4つの影のうち緑色がかった影が発する。
声は透き通る風のようだ。
「‥被害があるとはいえ、沈黙が長すぎる。故に欲を出す輩が出てくるのだ‥‥」
銀色がかった影が低く鋭い声で断定的に答える。
「変なことするやつら、消しちゃおっか」
黄色がかった影がかぶせる。
声は子供のように無邪気な感じだ。
「‥我々は観察者だ。介入はあり得ない」
白い影が胸に響くような低い声で制止する。
緑の影:「それはあの方たちが大人しくしていれば‥‥の話ですね」
黄の影:「なんか生ぬるいなぁ」
銀の影:「そうだ、生ぬるい。虚無と秩序が沈黙している間に全て滅してしまえばよい」
黄の影:「それじゃぁつまらないじゃん。あまり変なこというと君を消しちゃうよ?」
銀の影:「我を消すなど戯言を。観察に感情を入れすぎると自滅を招くぞ。我は構わんがな」
緑の影:「またですか‥‥。ここで言い合うのは構いませんが理性は保っていて下さいね」
白の影:「今一度言う。我らは観察者。介入はない」
緑の影:「まぁ、もう少し様子を見ましょうか。特異点の動きも気になります」
銀の影:「ふん」
黄の影:「ちょっと微妙だけど、まぁいっか。面白そうだしね」
そう言い終えると4つの影はいつのまにか消えていた。
円卓を照らしていたスポットライトは消え、薄暗い円卓は先ほどの静寂を取り戻した。




