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<ケブラー編> 120.王の手足

120.王の手足



「ああ・・・ずっと探していた・・・グレン・バーン・エヴァリオス・・・父上の腕だ・・・」


驚愕の言葉がエスカとバルカンに伝えられる。


「ど、どういうことだ?」


バルカンは事態を飲み込めずザラメスに質問した。

しかしザラメスはしばらく何も答えられずにその場で固まっていた。


ポタン・・・ポタン・・


瓶にザラメスの涙が落ちる。

エスカはバルカンの肩に手を乗せ、バルカンもまたその意味を理解し、上に上がりザラメスをしばらく一人にすることにした。


バルカンは根っからの優しい面倒見のよい男だった。

先ほどからザラメスを心配し小屋の中で歩き回っていたがエスカにどやされて、小屋の外を歩き回っていた。

ザラメスが言葉を失っているのは自分のせいではないにも関わらず、居ても立っても居られないようだ。

一度仲間と認めた相手を思う気持ちが強いのだろう。


2時間ほど経った頃、下からザラメスが上がってきた。


「だ、大丈夫なのか?」


心配そうにバルカンがザラメスを気遣う。


「ああ。心配かけたな」


「む、無理するんじゃないぜ?オレがお前なら相当なショックだ。むしろこんな短時間でそこのはしご登ってこれるってのは尊敬するぜ」


「そう気遣うなよ。普通でいい。こういうことも元々想定出来てなきゃいけないんだからな。父上がいくら強くても相手はヤマラージャを貶め王位を奪い、200年もの長い間王位を守り続けている男だ。そう簡単に命とれるたまじゃないのは分かっていた」


「あの腕・・・」


エスカが割って入った。


「ああ。さっきも言ったが紛れもない。父上の腕だ」


「でもおかしい。腕などなぜ保管している?それにその腕、まるで瓶の壁面から生えているように肉がへばりついている」


「ああ。ここにメザナの掴んだヘクトルの秘密の一端がある」


「どういうことだ?!ヘクトルの秘密?!」


「このメザナの調査報告書によればこういうことだ」


ザラメスが差し出した羊皮紙には見たこともない記号のようなものが記載されている。

それをザラメスは読むように説明し始めた。


――――――――――――


<調査報告書>


・ジグヴァンテ内マッドサイエンティスト・ゲルグの研究所にてタンク内で培養されていた腕を発見。

・タンクは目クラとなっていたが、獣人の里北の禁断エリア内のゼシアス卿研究所内のタンクと同様のものと推察。

・タンク内で培養されていた腕はエヴァリオス家の紋章が刻印されていることからグレン・バーン・エヴァリオス卿と思われる。

・驚くべきは腕単体にも関わらず脈を打っていることだ。これはこの腕が紛れもなく生きているということに他ならない。

・潜入捜査中のゲルグ博士の会話からヘクトルへ献上する腕と思われる。


<考察>

・ヘクトルへの献上の意味として推察されるのは以下の5点。

  推察1)敵の死を示す一部としての位置付け

  推察2)戦利品とする目的

  推察3)何らかの魔力を帯びたマジックアイテムとしての保管目的

  推察4)手術など何らかの手段で別の生物へ移植する目的(異形ゴブリンロードの例)

  推察5)手術など何らかの手段でヘクトルへ移植する目的

・上記1)と2)は可能性はほぼゼロ。ヘクトルにとって脅威などないため、たった一人反乱を起こしたところで影響はない。ましては戦利品として飾る目的も考えにくい。

・上記3)についてもほぼ可能性はないと思われる。エルフ上流血統家という高貴な血ではあるが、特別魔力を帯びているというものではないからだ。

・上記4)についても可能性は低い。ヘクトルは100年前に既に実験済みであり、腕を移植することで得られる新たな実験成果などメリットがない。

・【結論】推察5)が濃厚。培養によって生きた状態でヘクトルに移植する目的


<仮説>

・ヘクトルは体に他者の様々健康体の部位を切断、培養し老化した部位を交換することで若々しい肉体を維持し続けているのではないだろうか

・ただし部位の本来の持ち主が持ち得た、武技や魔力、魔技、天技などを継承するのかは不明。十分な警戒が必要と思われる。


――――――――――――



「・・・・・」


エスカは口を押さえている。


「・・・な、何と言う・・・」


バルカンも言葉を失っている。

重苦しい空気の中でザラメスは口を開いた。


「これはラガンデで使っている暗号文だ。こんな子供書いたお遊びみたいな記号で表現することで万が一この文書が盗まれても内容を知られることを防いでいる。そして、俺はメザナの仮説が正しいと信じる。この世界に生きるもの全てがただのニンゲンであるヘクトルの寿命をおかしいと思っているのは知っているだろう?200年も生き、さらに若返っている。そんな魔法は存在しないし、ミトラ神がヤマラージャに施した不老不死の加護を与えたとも思えない」


「つまりヘクトルはお前の父親の腕を自分に移植しようとしてたってのか?」


「そうだ」


ドン!!!


バルカンは壁を殴った。


「あり得ねぇ!」


「そうね。あり得ない非道。もはや人間でもない。いえ、あらゆる知的生命体にも値しない鬼畜だ。さしずめ異形ゴブリンロードはその移植手術が成功に至るまでに行われた実験体ってところか。ヘクトルはより若く、長寿で強い肉体へと生まれ変わるために、異種族間の縫合手術でもきちんと機能するかを見ていたのだろう」


エスカもまた怒りを抑えきれない表情で冷静に話す。


「そしてもう一つ」


「何だ?」


「グラディファイスね」


「そうだ」


「・・・・!なんてことだ!やつの娯楽とゾルグ王国の収入源と思っていたが、真の目的はそういうことだったのか!!」


「ああ。ヘクトルは自分がより若く、強い肉体を得るためにグラディファイスをやっている。恐らく過去のグランヘクサリオスの優勝者や上位者で行方知れずとなっている者は少なくないだろう。大方大金と名誉を手にした者は旅にでたとでも触れ回っていたのだろうが、全てやつの体の一部となっていたに違いない」


「表彰式に顔を出すのは品定めでもしてたんだろうな。絶対に許せねぇ!」


「ってことは・・・」


エスカは改めてザラメスの顔を見る。


「いいよ。既に現実を受け止めているからな」


腕が残されているということはグレン・バーン・エヴァリオス卿は既にヘクトル、もしくはその手の者によって殺害されているということを意味していた。

むしろヘクトルの体の一部となってる可能性すらある。


「バルカン、エスカ。すまないが俺はグランヘクサリオスからは離脱させてもらう。わがままを許してくれ。一刻も早くメザナの亡骸とこの父上の腕を故郷へ帰したい」


「もちろんだ!」


「お前如き大した戦力ダウンにもならない」


「すまない、バルカン、エスカ・・・」



・・・・・


・・・



翌日ザラメスは、一人馬車でゼネレスへの帰路についた。

荷馬車にはメザナの亡骸と生きた状態で瓶詰めされたグレン卿の腕が積まれている。

メザナの体は食料を保存する際に使う火食い虫が入った冷たい土で覆っているため、ゼネレスまでは美しい姿を損なうことなく運べるだろう。

火食い虫は熱を食べる虫で、至るところに存在する熱を食べることで生きているが、火食い虫が食べた熱があった場所は熱が消滅し温度が異常に低くなるのだ。


本当なら最も過酷な戦いを強いられ、負けることが許されない役割であるグラディファイサー組にはメザナも加わっていたはずだが、今回の悲劇に加えてザラメスの離脱は予想外であり大きな痛手となった。


だが、一方で謎であったヘクトルの正体に迫る情報を得たとも言える。

まだ仮説の域は出ないものの、これほどの情報が得られていれば、ある程度の対処もとれる。

過去のグランヘクサリオスの上位者で現在行方知れずとなっているグラディファイサーを調べ、どれほどの実力を持っていたかを知ればある程度の戦闘力を想定できると考えたからだ。

メザナが命を賭して得た情報によってヘクトル討伐連合は大きな前進を図ったとも言えた。




・・・・・・


・・・・




―――ゾルグ王国 ジグヴァンテ王城内 王への謁見の間―――




五人のヘクトリオンが膝をつき首を垂れて待機している。

全員の汗だくだ。

もちろん、これから訪れるであろう緊張と恐怖に体が反応してでのことだ。


ヘクトリオン全員にヘクトルから直々に召集命令が下ったのだ。


バァン・・


ヘクトリオンたちは突如開いた扉の音に一瞬びくつくが、出てきたのはヴェンシャーレ宰相だった。


シファール・ヴェンシャーレ宰相。

父であり宰相でもあったシフェルオ・ヴェンシャーレから宰相の座を若くして奪い、国の政一切を取り仕切っているキレ者である。

今のゾルグ王国一強支配が実現出来ている裏の立て役者は間違いなくこのヴェンシャーレ宰相である。

小男で丸メガネをしている姿からは想像できないほどの恐ろしいオーラを放つ人物であり、ヘクトルからの指示を伝えたり、ヘクトルから一切の政を任されるといった最も信頼されている人物だ。

故にいかにヘクトリオンであっても宰相に逆らうことはできない。



「さて。貴様らヘクトル様の手足がなぜ・・・全員この場に呼ばれたか分かっているか?」


一瞬全員凍りついたが、こういう場合、隊長であるトゥラクスが答えるのがお決まりの流れだ。


「は!・・恐れながら革命軍を筆頭に各地で共闘反乱の動きがあり、その件かと」


グワン・・・・


一気に目が回りそうなほどの重圧が一同を襲う。

宰相から放たれたオーラだ。

周囲の景色が歪む。

ただの人間がここまでのオーラを発することができるのかと全員恐れ慄いた。


「そんな事は知っていて当然だ。既に対応策も講じていることも知っている。今更貴様らにそのような話をするために呼んだとでも思うのか?たわけ者が・・・」


ガタン!!!ゴツン!!!


宰相は足をトゥラクスの首を垂れている頭の上に乗せた。

地面に頭が激突し鈍い音聞こえた。

宰相はぐりぐりとトゥラクスの頭を踏みつける。


「セクト」


「は!」


セクトは理由が分かっていた。

自分がゲルグの研究所で逃した賊の話であると。


「理由を言ってみよ」


「は!わ、私めがゲルグ博士の研究所に忍び込んだ賊を取り逃した事・・・であるかと」


「その通りだが、それだけではない」


ガタン!!!ゴツン!!!


今度はセクトの頭が踏みつけられて地面に激突し鈍い音を発した。

この場合、声を漏らすことは許されていない。


「貴様が取り逃した賊が、ヘクトル様へ献上されるはずだったパーツを奪い、そして別日に城へ潜入しこともあろうかヘクトル様の研究室にも忍び込んだのだ」


「!!!」


(インビジブルアロー・メザがどこぞのスパイで王城へ忍び込んだため、捕まえて処刑し十字架に繋ぎ晒したというのは聞いたが、まさかヘクトル様の研究室に忍び込んだのか?!)


セクトは汗が止まらなかった。

頭から噴き出る血と共に汗が混ざり込んで床に流れている。


「そしてその賊を誰が捕らえ殺したと思うのだ?」


「・・・・!!」


一同が凍りついた。



「それくらいにしたらどうだ?シファール」



ザザ!!!


シファール宰相は一瞬で横に移動し膝をついて首を垂れた。

いつの間にか玉座に何者かが座っている。

光の加減で顔は見えないが、明らかに一瞬で殺されたであろう恐ろしい殺気と共に放たれたオーラで皆その人物が誰かを悟った。


ゾルグ王国国王 ヘクトル・イリオースその人だった。


トゥラクスをはじめヘクトリオンはみな生きた心地がしない。


(何度お会いしてもこのオーラには慣れない。既に何度死んだ事か・・・)


ヘクトルから直々に指示を受けることがあるトゥラクスも、普段はもっと離れた場所で謁見しているため、ここまで近い距離はなかなか無い。

それもあってかいつも以上に心臓が潰される感覚を覚え、吐きそうになっている。

他のヘクトリオンはこのように直に謁見する機会もほとんどないため、白目をむいて泡を吹いていながらも必死に意識を保っている状態だった。


(この重圧の中であの宰相・・・どうしてああも平然としていられるのか・・・。この二人がいる限りヘクトル王政が絶えることはあり得ない・・・)



「これは御無礼申し上げました。お出になられているとは気づかず。王の研究室へ足を踏み入れさせるに至った罪でヘクトリオンどもにお灸を据えるのに夢中になっておりまして。そして賊を取り逃したセクトについては、王自ら賊をお討ちいただくに至った罪でこの場で処刑を考えておりました」


「!!!」


セクトの目に涙が滲む。

セクトは死を覚悟した。


「まぁよい。それに革命軍とやらの反乱で駒も必要だ。セクトにはそこで一人でも多くの不届き者どもを殺してもらわないとなるまい」


「は!存分に駒として踊らせます。そしてもし働きが不十分なら殺す。十分であっても生き残ったら殺す。逃げるようなことがあっても殺す。これは私の責任でお約束いたします」


シファール宰相が答えた。


「それでよい」


ヘクトリオンはセクトだけでなく全員が同様の扱いを受けるのだと絶望した。

だが、逃げても殺される。

ヘクトリオンとなった以上は自分の命が尽きるまで敵対勢力を滅し続けなければならない。


「してトゥラクスよ。我に歯向かう不届き者どもの情報は?」


「は、は!やつらの中に潜ませておりますスパイの情報では、既にレグリア、ガザド、ガザナド、ハーポネスが共闘に加わっているとのこと。仕掛けてくるのはグランヘクサリオス開催中。グランヘクサリオスに潜む部隊と軍を率いてゾルグに攻め入る部隊と二手に分かれての作戦と聞いております。そして表彰式の折、王のご登場の際にこともあろうかヤイバを向けようと企んでいるとのことにございます」


「我らの対応は?」


「は!グランヘクサリオスは問題ございません。既にエクサクロスでありグラディファイサーランク一位の闇虎を配下に加えてございます。それ以外でもザロ、ジヌーク、シャザハ、ゼンガがおります上、ヘクトリオンからもムルとホプロマを参戦させます。これでほぼ7割を占める者が表彰式で王をお守り申し上げ、相手を殲滅いたします。また、各国軍への対応も、ゼーガンにレグリアを殲滅させます。北の国々は問題ございません。なによりゼネレスに対処させます故。ハーポネスには一部軍を派遣いたしますが問題ございません。既に国は壊滅状態。大した軍も出せない状態にございます。そして今回我らは異界の悪魔をも使います」


「異界の悪魔?」


「は!冥府の大魔王ディアボロスにございます。やつらから接触してまいりましたが、使えなければ殺すまでです」


「大魔王ディアボロス。面白い。今度我の前へ連れてまいれ」


「は!」


「だが。爪が甘い。ヤマラージャを侮るな」


「は!ナラカへ先行してレティス率いる軍を派遣し、以前所在不明の革命軍のアジトもろとも壊滅させます」


「ふん。ぬかるで無いぞ。戦いの前に死にたくなければな」



気づくとヘクトルは玉座から消えていた。



「シャナゼンも侮るでない。やつはモウハンによる反乱の際の生き残りだ。何か策を弄してるやもしれん。王を失望させるな」


「は!」


そういうとシファール宰相も扉から出て行った。


ヘクトルも宰相もいなくなった後も恐ろしいほどの緊張感がまだ続いている。

ヘクトリオンの五人はしばらくそのまま動けずにいた。

なんとかトゥラクスが立ち上がり、全員を連れて謁見の間を出ようとするが、セクトに至ってはその場で気絶していた。



・・・・・


・・・


―――ヘクトリオンの会議室――――



全員精神的に瀕死の状態だった。


「トゥラクス様・・・私たちには未来はないようだな」


ムルが口を開いた。

彼はゼーガン帝国出身であり、現皇帝ガヌール・ガーランド・ゼーガンの息子にして帝国ムルータ・ガーランド・ゼーガン皇子でもあった。

前皇帝グレザス・ジェルドールを蹴落として皇帝となったガヌールが少しでもゼーガン帝国に発言権を持たせるために幼い頃から徹底的に戦士への育成を行なってきた産物がムルだった。

そして皇帝の念願叶って晴れてヘクトリオンにムルを任命させるに至った。

ヘクトリオンは叩き上げの実力主義で、到達するすれば王と宰相に次ぐゾルグ王国高位の存在となるため、政治的な力も使ってヘクトリオン入りしたムルには、他のヘクトリオンからは七光りと揶揄されているが、その実力は折り紙付だった。


「ああ。まぁそれは私たちに限ったことではない。少しでもしくじろうものなら後で必ず殺される。それが一介の伍長レベルであってもな」


トゥラクスは他のヘクトリオンとは一線を隠している。

みな敬意を払っているのだが、それは単にその強さだけではない。

人格者でもあり、頭脳明晰な切れ者でもあったからだ。

その実力でヘクトリオンの隊長を務めており、他の四人とは格がひとつ上なのだ。

中にはレティスのように面倒な調整事を避けたい一心でトゥラクスに隊長の座を押し付けていると思っている者もいたが。


「スパイによればやっぱり肝心なのはグランヘクサリオスなのよね?」


「そうだ」


「じゃぁ私が出るわ。まともに戦わずに殺されるのはたまったものじゃないもの。いたぶって殺しまくって悔いを残さないようにしないと死んでも死にきれないわ!」


レティスはヘクトリオン副隊長であり、トゥラクス以外で唯一ヘクトルから直接の指示を受けることのあるヘクトリオンだが、その機会は極めて稀である。

レグリア王国を毒で汚染したことからも分かるように、人を殺すことに躊躇がなく手段も選ばない。

その行動全てにおいて人を支配し、気に食わなければ殺すという理念が反映されている。


「残念だが、レティス。お前には先ほどの通りナラカ討伐をお願いしたい。ヤマラージャは多少骨が折れる。それを任せられるのはお前しかいないからだ」


「あいつ死なないのよね?はるか昔、ヘクトル様がナラカの第八層ムゲンでマグマの中に沈めたのにもかかわらず生きていたとか。つまり殺しても死なない。これって何回でも殺せるってことよね?それはいいんでしょ?」


「ああ、構わん」


「じゃぁ仕方ない。受けてあげるわよ」


「すまないな。つまらん任務かも知れないがこれはこれで非常に重要だ。そしてムル、ホプロマ。二人にはグランヘクサリオスに出てもらう。お前たちの実力は闇虎に引けを取らないはずだ。これで表彰式での我らの人数は7人は確定となる。エクサクロスの神速牙シルバーファングは早々と集中攻撃をかけて殺せばいい。そうすればおそらく残ってもバルカン、マイン、ヒーンくらいだ。そうなれば我らの敵ではない」


「当然だ」


「必ずやご期待に沿って見せましょう」


ムルとホプロマがそれぞれ答えた。

ホプロマは仮面を被っている謎の存在だが腕は確かだった。

元々弓矢の名手であり、一回に放つ矢で最高十人仕留めたことのある凄腕だ。

仮面は無表情に涙を流したような面で、その表情が読めない不気味さからも戦場では恐怖される。

嘆きのホプロマと呼ばれ恐れられている。


「そして私とセクトは王城の守備だ。場合によってはセクトに王城を任せて、私はいずれかの軍を仕切ることにもなろう。加えてディアボロスの動向にも目を光らせておかなければならない」


「あ、あやつは上手く使うのがいい・・」


「大丈夫かセクト」


セクトは意識を取り戻した。


「大丈夫だ・・・」


「だらしがないわねぇ・・・って言いたいところだけど、私もあの場であんな風に踏みつけられたら流石に気を失うわね。あんな近距離からヘクトル様のオーラに加えて宰相の殺人オーラを直に受けたわけだから」


「ああ・・・。に、2度と・・ごめんです・・・。まぁ、次はないでしょうがね」


セクト・ゼン・ウーグ。

ヘクトリオンの中でトゥラクスと並ぶ強さを誇る男だ。

いつもは拳闘スタイルだが、グラディウスでも戦える。

頭脳明晰でトゥラクスの右腕となっており、国の防衛についても安心して任せられる冷静さと状況把握能力に長けている。

今回、メザナを捕らえ損ねたのは珍しいミスだったが、これで2度とミスはしないと誓った。


革命軍幹部級を複数相手にしても対等に戦うほどの実力を持っているとされるヘクトリオンたち。

それをオーラだけで圧倒してしまうヘクトルと宰相のいるゾルグ王国に対して、メザナとザラメスの離脱は反乱共闘軍にとって非常に大きな痛手となった。

しかもディアボロス、サルガタナス、ユメ・アミゼンやグラディファイサーランク1位の槍神・闇虎までもが加担している。

反乱共闘軍にスパイもおり作戦が筒抜け状態の中、戦況は少しずつ動き出していた。






次は火曜日のアップ予定です。

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