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<ゲブラー編> 112.アルキナとアストラル

112.アルキナとアストラル



「アノマリー。やるじゃないか。だが次はこうはいかない。覚えておけ」


ディアボロスは捨て台詞のように言い残し、かき消えた。

謁見の間が一瞬にして静寂に包まれる。




「お姉ちゃん・・・」



ミサキに頼まれた姉を救って欲しいという願いは叶えられなかった。

戦う相手がサルガタナスだけであればそれも叶っただろう。

だが、ディアボロスと呼ばれた悪魔は桁違いだった。

スノウはおろかオーガ史上最強のシャナゼンですら戦う前に逃げる選択をしたほどの相手だったが、だからと言って自分を納得させる話にはならない。

スノウは自分がまだまだ力不足であることを改めて痛感した。


(おれは・・・まだ弱い・・・。よくよく考えればティフェレトで遭遇したベルフェゴールもレンに憑依していた大天使ミカエルが消し去ったわけだからな・・・。あのクラスの悪魔・・・いや魔王クラスには歯が立たないってことか。当然ミカエルのような大天使もか・・・。もしあのユメという子がソニアやエスカ、ナージャのようなおれの仲間だったとしたら・・・くそっ!何がリーダーだよ・・・。仲間も守れないリーダーなんて仲間を持つ資格はない!・・・倒せるようになるまで強くならなければならない・・・)


ポン・・・


シャナゼンがスノウの肩に手を置いた。


「まぁそう急くな。お前はもっともっと強くなれる。我には分かる。しばらくお前を見てきたからな」


「???どういうことですか?」


「ははは!もはや敬語などいらん。気楽に話せ。・・・と言ってもこんなところではな。ちょっと待っていろ」」


シャナゼンは誰かを呼びに行った。

その間スノウは姉を連れ去られて項垂れているミサキを立たせ、奥で気を失っているエルガドを担いだ。

数分後にシャナゼンが戻ってくると、謁見の間の奥の部屋へと通された。


30畳ほどの広さのダイニングだった。


「今食事を用意させている。こうして知り合ったのだ。まずは食事だろう?」


シャナゼンは軽くウインクして座るよう促した。

エルガドは相変わらず気を失っているので、奥に椅子を並べて寝かせた。

シャナゼンが誕生日席の位置に座り、右手側にスノウ、左手側にミサキが座った。

しばらくすると料理が運ばれてくる。


「さぁ、まずは乾杯だ。命あっての物種だ。幸運だったかもしれないが、退けたのも事実。こうして飯を食える喜びを今は噛みしめるのだ」


三人は出された酒を飲み干した。

ミサキは酒が飲めないため、果実を絞ったジュースを飲んだ。


「それで一体何が起こっていたんですか?」


「敬語などいらないと言ったろう?やり直せ」


「・・・」


(意外と面倒な人だな・・・)


「じゃぁ、もう一度・・・。一体何が起こったんだい?」


シャナゼンは笑みを浮かべて話始めた。


「細かいところはこのミサキ・アミゼンから話してもらうのがいいが、まずは我の知っていることを話そう」




・・・・・・


5年ほど前―――。


シャナゼンは悩んでいた。

モウハン事変以降ヘクトルのゲブラー全土への圧力は年々増していき、いよいよこのジオウガ王国にもゾルグのヘクトリオン配下が度々訪れるようになったからだ。

理由は明白でジオウガの内情偵察とオーガのグラディファイスへのスカウトだった。

もちろんスカウトとは建前でオーガの中でも戦闘力の高い者を引き抜きジオウガ王国の軍事力低下を目論んでのことだった。

スカウトの条件は、高額報酬と整った訓練環境を与えるということ、そして何より常に戦いに身を置ける環境というのが特に戦闘力の高いオーガにとっては好条件だった。


「どうすれば、ゾルグの猿どもを容易く侵入させることなく、強者たちの流出を止め、更に国の戦闘力の底上げができるのか・・・」


数ヶ月思案の末にたどり着いたのは3つの試練だった。

武闘の試練、戦術の試練、精神鍛錬の試練。

この3つを乗り越えた者には首都ジオウガの王宮の裏手からのみ入ることのできる秘境の村のテンケイの里に行くことが許される。

これはオーガがオーガロードに覚醒するための最終試練、ザンテルーガに挑めるようになることを意味していた。


ザンテルーガ。


オーガに生まれた以上は誰もが憧れるオーガロードに覚醒するための最終試練であり、見事クリアした者は文字通りオーガロードに昇華する。

今でこそゼネレスに奪われてしまったが、オーガにとっての聖なる山ギヴェラザルノ山で行われること以外その内容はジオウガ王家でオーガロードとなった者以外誰も知らない。

なぜなら、ジオウガ王国王家の血を引く者以外がオーガロードになった瞬間にザンテルーガの試練の内容の記憶は消去されてしまうからだ。

一方で過酷な試練であるため、死に至ることが非常に多く、命を落とした者はギヴェラザルノ山に漂う硫酸によって体が溶かされて最終的には跡形もなくなってしまう。

つまり試練に打ち勝っても記憶が消え、試練に負けて終えば姿形何も残らず死に絶えるため、内容を他者が知る術がないのだ。

それほどの危険を冒してまで多くのオーガたちがテンケイの里を目指すのは、オーガロードのその力のためだ。

覚醒した者の戦闘力は一気に2倍から資質によっては5倍の力を得る者もいるという。

だが、闇雲に挑んでも死者が増えるだけというリスクがあった。

そこで思いついたのが、3つの試練と言うわけだ。

シャナゼンは、この3つの試練によってザンテルーガに挑む資格のあるもののみ挑戦できるような仕組みを作ったのだった。

つまり、オーガロードに覚醒することを目標にさせて国力増強を狙ったのだった。

この3つの試練のシステムは最終的にはうまく機能した。

最初は加減がわからず過酷すぎる試験となり、死者はでないものの合格者が全く出ないという状況だったのだが、シャナゼン自ら改善に取り組み試行錯誤の上、ついに3つの試練をクリアする者が現れた。


その名はズイホウ。


ガザンの生まれで小さなか頃から鍛錬を欠かさない真面目な男だった。

その積み重ねによって他のものよりも強靭な肉体を手に入れただけでなく、打撃の打ち方や当てる際の角度、力の抜き具合や入れ具合など技の鍛錬も欠かさなかったため、ガザン一の戦士となっていた。

最初の武闘の試練はなんなく合格したが、戦術の試練には苦戦した。

結局戦術の試練に3度落ちているのだが、持ち前の根気強さによって努力を重ねて学び見事合格し、最後の試練、精神鍛錬の試練については元々の素養からなんとか一発合格するに至ったのだ。


「見事だズイホウ。この過酷な試練を耐え抜きよくぞ合格した。其方ほどの実力があればザンテルーガに挑み合格を掴み取ることも不可能ではない。心して挑め」


「は!ありがたき幸せ。必ずや王のご期待に沿ってみせます!」



そして1ヶ月後。

ズイホウは見事にザンテルーガに耐え抜きオーガロードに覚醒して帰還した。

3つの試練を経てザンテルーガに挑んだ第1号挑戦者の帰還ということでシャナゼンも自ら王宮入り口まで出迎えた。


「よくぞ戻った!そしてオーガロードへの覚醒、褒めてやろう!だが、その前に其方の隣にいる者たちは何者だ?」


「王よ、お許しください。ニンゲンの迷い子にございます。おそらくはエルフによる怪しげな実験の贄になっていたのかと。私がザンテルーガを終え下山する際に倒れていたところを救ったのでございます」


「そうか、慈悲の心もまた強き戦士に欠かせぬ要素。客人としてもてなそう。さぁ、我の配下の兵たちが見守るなかで勲章を授与してやる。近くへ寄れ」


シャナゼンの指示通りにズイホウが前に出て両手を後ろに回して凛々しい姿勢で立つ。

そして勲章を手に持ったシャナゼンがその手をズイホウの胸に勲章をつけようとしたその時、横にいたニンゲンがシャナゼンの手に触れる。

するとその瞬間に黒いオーラのようなものがその手が触れている部分に集まっていき、一気に拡散した。


シャワワワン・・・ファシャァァァン・・・


そしてもう一人のニンゲンもシャナゼンとズイホウの手に触れる。


ガクン!!


その瞬間シャナゼンの体がビクンと波打った。

直後、ズイホウはまるで気絶したかのようにその場に崩れ落ちた。


「どうやらズイホウは試練によって相当な疲れが出ているようだ。誰か王宮内の部屋で寝かせてやれ」


「は!」


シャナゼンの指示に従って突如倒れ込んだズイホウは王宮内の医務室へと運ばれた。

そしてその直後、側近がシャナゼンの側で話しかけた。


「王よ、この二人のニンゲンは先程のご指示通り、どこか宿を手配しそこにしばらく住まわせるということでよろしいでしょうか?」


「ならん。我と共に王室へ来てもらう」


「なんと!!ニンゲンを王宮内に入れるのですか?かつてのモウハン殿のように気の知れた者ならいざ知らず、先程会ったばかりの名も知らぬ者たちですぞ?!」


「我に逆らうならばそれなりの覚悟があるのだろうな?」


「い、いえ・・・。何かお考えあってのことと存ずるのでこれ以上は何も申しますまい」


シャナゼンはズイホウが連れてきた二人のニンゲンと共に王宮内の自室へ向かった。



・・・・・・


・・・


「話が見えないな」


「まぁそう急くな。ここからはミサキから話すのがいいだろう。ズイホウと共にやって来た二人のニンゲンのうちの一人として」


「!!!」


(なるほど・・・そう言うことか・・・)


「はい。・・・実は私たちには特別な力、天技というものがあります」


(!!!・・・天技保持者って極めて稀なんだよな・・・。ここ最近立て続けに遭遇しているってことはガセなのか・・?)


スノウは疑問に思いつつどのような天技かを質問することにした。

自身の命を守る意味では能力をオープンにしてしまうのは得策ではないため、ダメ元質問だった。


「どんな天技だい?」


「私たち双子両方に天技と呼ばれる固有能力が備わっています。姉はアルキナ・コントロール。いわゆる夢の世界を作り出してその夢の中で対象たちに影響を与えるという能力です。特定の対象にアンカーを打ち、その対象の深層心理にダイブして対象が持つ様々な情報から独自の夢の世界を作り出し、周囲の者たちもその対象の夢の世界に呼び込み、夢の世界の中で攻撃したり秘密を聞き出したりといったことができます」


「すごい能力だな。その影響範囲は?」


「アンカーを打ち込む対象の記憶や経験の深さによりますが、今回で言えばアンカーを撃たれていたのはシャナゼン王でその影響範囲はジオウガ王国全土に渡りました。言ってみればシャナゼン王の記憶や経験、強靭さがあってこその影響範囲になったわけです。もしこれが弱く幼い子供であればその影響範囲はせいぜい5メートルほどで巻き込める他者の数も制限されます。さらに、この力による精神的ダメージは大きいためアンカーを打たれた者のほとんどは精神を破壊されてしまいます」


「それって使い方によっては相手を再起不能にする攻撃手段にもなり得るってことか?凄まじい力だな・・・。それで今回の件については過去形ってことはもう消えたってことか?」


「はい。先程ディアボロスと共に消えた際にジオウガ王に打たれていたアンカーは消え、姉のコントロール下から解き放たれました。おそらく3つの試練のルールや道や街を覆っていた壁なども取り払われたものと思います」


「あれも夢の世界として作られたものだったのか!しかしすごい能力だな・・・。それで君のは?」


「私の天技はアストラル・コントロールと言って、いわゆる精神世界に入り込む能力です」


「精神世界?夢とは違う?」


「はい。夢は言い換えれば深層心理。知識や経験によって無意識下で生み出された世界です。無意識の内に抱いている願望なども入ります。深層心理で情報を書き換えることによってさもその世界が現実であるかのように感じてしまいます。だから皆、姉の夢の世界にいながら違和感を感じていなかったのです。一方の精神世界は心の中に入り込む、いわば意識下にある世界です。私はそれを操作することができます」


「うーん・・・洗脳みたいなのかな?・・・例えば?」


「いえ、洗脳とは違います。私の能力は心の中にある精神世界への入り口の扉を開けることと、その中にある意識を取り出したり戻したりできる能力です。聞くより体験した方が早いですね」


そう言うと、ミサキはスノウの胸に手を当てた。

スノウは警戒して一歩下がる。


「大丈夫です。私がスノウさんに何か危害を加えるようなことはもうありません」


「信じていい・・んだな?」


「はい。それにこの状況下、もし私があなたに何かをしてもシャナゼン王が黙ってはいないでしょう」


「ははは。まぁそうだな。スノウに何かあれば我が一瞬でお前を殺してやる」


シャナゼンはウインクした。


「ね?」


ミサキはそれに呼応するように優しく微笑んだ。


「ははは・・・わかったよ」


そう言うとスノウは素直にミサキの手を胸に当てさせる。


「え?!」


「ん?」


「やっぱりだ・・・」


「何が?」


「いえ、本来なら私は相手にここまで触れれば心の中にあるその相手の精神世界へ続く扉をすぐ見つけられるんです。その扉を開ければ中に・・・つまりその対象の精神が住まうアストラル界に入れる。そこから意識体を連れ出して外へ放り投げることも、別の体に移すことも可能なんです。でも・・・」


「でも何?!」


「スノウさんには扉がない。以前にも一度スノウさんの心の内に姉と一緒に侵入したことがあったんですが、その際も見つけられなかったんです」


「どういう事?!おれにはその・・・意識がないって言う事?おれ、自分を認識できているけど、これはおれじゃないって言う事?」


「いえ、そんな例は見たことがないのでありえません。スノウさん・・・もしかして、過度に内気で排他的な性格ではなかいですか?もしくは過去形かもしれませんが」


「!!・・・ま、まぁ・・・」


スノウは突然丸裸にされたような恥ずかしさを感じた。


「なんと!お前が内気!排他的!笑わせてくれるではないか!ぶわっはっは!」


笑っていい事ではない、とスノウはシャナゼンに対して少し苛立ちを覚えた。


「いえ、決して悪い事ではありません。その性格が長年心の内に影響して精神を守るために扉を奥底へと隠す事が稀にあるんです。逃げるとかそういう意味ではなく、あくまで逆境に耐え乗り越えるために心が自らダメージを受けても耐えられるように扉を奥へ仕舞い込んで守っているということです」


「なるほど。そうしたらおれの心の中の扉が見つかる見込みは薄そうだな」


「そうでもないですよ。その人の性格や癖、好き嫌いなんかを知れば見つけやすくなります。扉が隠されるのにはパターンのようなものがありますから」


「パターン?


「はい。パターンは性格や癖、好き嫌いといった自分の意識が生み出し無意識下に溢れ落とす魂の燃えカスのようなものあり、性格や癖、好き嫌いというのを理解することでその痕跡が見やすくなるんです。例えば内気で他者とのつながりが苦手である一方で実は怒りっぽい性格の人だと、人との関わりで怒りが湧き出てイライラを抑えられなくなるという状態を避けるために、心の中の下層奥深くに扉を隠すとか、逆に内気でも極度の恥ずかしがり屋のような人だと、心の中に迷路を形成して扉に辿りにくくするとか・・・ですね」


「なんとなくわかる・・・イライラを鎮めたいからそのイライラという感情が面に出ないように地中深くに沈める感じ・・・恥ずかしがり屋って実はそれに気づいて欲しいって思ってるけど自分からオープンにはできないから迷路のようなもので気づいてくれる者を待っている的な感じか・・・」


「そうです!すごいですね、この感覚がわかる人は初めてです。姉はいつも面倒な能力ねって言ってましたから・・・。それで、その燃えカスのようなもの辿ることによって扉にたどり着くことができるというわけです」


「そっか。まぁ仕組みはわかった。まぁ人と違うわけじゃないってことで安心したよ。少しだけ・・・」


ミサキは優しく微笑んだ。


「それでシャナゼン王の話の続きに戻ると、私たち姉妹はサルガタナスと共にギヴェラザルノ山でオーガロードとなったズイホウさんに会いました。そしてサルガタナスの指示に従い、姉が夢の世界を広げてズイホウさんの動きを止めました。その後私がズイホウさんに直接触れて彼の心の扉を開けました。そして精神体と変化したサルガタナスをズイホウさんの心の扉の中へと誘導したんです。サルガタナスに侵入されたズイホウさんはすぐに精神世界、つまり意識を支配されてしまったんです」


「ズイホウ・・・」


シャナゼンは怒りを露わにしてきた。


「相手は大悪魔。魔王と言ってもいいほどのクラスの悪魔です。ズイホウさんの精神体はサルガタナスのそれの侵入と支配攻撃に争っていたと思いますが、魔王級のそれには歯が立たず・・・。そうしてサルガタナスに操られることになったズイホウさんと共にジオウガへの戻りました」


「それで?」


「その後は先程のシャナゼン王のお話の通りで王がズイホウさんに勲章を授与する際にシャナゼン王に姉が触れてアルキナの世界を発動した直後に私がシャナゼン王の心の内の扉を見つけて開きました」


「サルガタナスをシャナゼン王の精神世界へ招き入れたってことか?」


「はい、その通りです」


「スノウ、シャナゼンで良いと言っておろう?やり直し」


(マジで面倒くさいぞこの最強オーガ)


「シャ、シャナゼン・・・の精神世界の心の扉ってのを見つけてそこへサルガタナスの精神体を移動させた?」


シャナゼンは満足げだ。


「ふふふ・・・。はい、その通りです。ですが、私はサルガタナスの命令に従うことに疑問を持っていました。何か恐ろしい計画に加担しているのではないかと思ったんです。ですのでサルガタナスの精神体をシャナゼン王の扉の奥の精神世界へ移す直前、シャナゼン王の精神体をこっそり取り出して空中を浮遊させたのです。そうとは知らないサルガタナスは思惑通り、シャナゼン王の体を乗っ取ることに成功しました」


「精神体の別の体への移動・・・。憑依みたいなもんか・・・それでシャナゼンお・・シャナゼンの精神体はどうなった?」


「少し上空を彷徨った後、遠くへ飛んで行きました」


「そうだ。我が最初に行き着いたのは、そこに寝ておるエルガドだ」


シャナゼンが割って入ってきたが、その言葉にスノウは驚く。


「!!!・・・。なるほど、そう言うことか・・・でもどうしてエルガドなんだ?」


「上空を彷徨っていた我は、我が入れそうな器となるオーガを探した。その結果として見つかったのがあやつだけだったということだ。ジオウガ王国内はユメの発動したアルキナによって夢の世界と化していたからな。ジオウガの中のオーガに憑依するとユメに見つかってしまうから別の国のオーガを探していたら丁度ゾルグにいたエルガドに行き着いたというわけだ。」


「それで謎が解けた。エルガドの中に居たからおれを知っていたのか・・・」


(ははは。なるほど・・・)


スノウはそれを聞いた瞬間にシャナゼンがエルガドと重なり経緯を表するのが馬鹿馬鹿しくなったと同時にシャナゼンに対して親近感が湧いた。


「だけど、エルガドの中にいただけじゃないよな?おそらく試練の前や試練を受けている最中に出会った人からヒントをもらってたから、そういった人たちへの憑依をシャナゼン自らやっていたんじゃない?」


「ご名答だスノウ。あれはオーガ向けの試練だからな。お前を弱いとは思っていなかったが、試練を乗り越える最低限の情報くらいは教えてやらないとと思っただけだ」


「ははは。なるほどな。そして、自分の体を取り戻すためにおれのシャナゼンとの謁見についてきたんだな」


「その通りだ。このミサキがサルガタナスを我の精神世界へ招き入れる前に我の精神体を外界へ放り投げたのを妙に思ってな。精神体のままズイホウの様子を見に行ったのだが、まるで抜け殻のようになっていた。つまりあの悪魔を我の体から追い出せば我はまた戻れると思ったのだ」


「そして私はジオウガ王国の姉のアルキナ世界に入ってきたスノウさんを見ている内に一緒に行動しているエルガドさんの体に二つの精神があることに気づきました。そして接触を図った際にシャナゼン王に体をお返しすることを約束したんです。姉の安全を約束してもらう代わりに・・・」


「なるほど。経緯はわかった。それであのディアボロスってのは何者で何を企んでシャナゼンの体を乗っ取ったんだ?」


「それは・・・!!!・・・・うぅぅ・・」


急にミサキは頭を抱え出した。


「どうした?!」


「あ、頭が・・・割れるように・・・痛い・・・」


「ミサキ。スノウの質問の答えを考えるのをやめよ」


シャナゼンがゆっくりとした口調でミサキに話しかけた。


(ディアボロスが言ったあの “忘れろ” と言った言葉・・)


「まさか・・・言霊?!」


「その通りだ。ディアボロスが去る直前に発したプネウマによって計画を忘れさせられたのだ。それを無理やり思い出そうとすれば苦痛が襲う」


「言霊って終息条件はないのか?」


「やつは大魔王の一人だ。その場にいなくとも効力を植え付けて縛り続けることができるのだろう」


スノウはウルソーの回復魔法でミサキの痛みを取り除いた。

相当な痛みに耐えていたようでぐったりしているため、部屋の隅に置いてあるソファに寝かせた。


「ディアボロス・・・」


スノウは怒りに震えていた。

相手にと言うより、全く歯が立たなかった自分の不甲斐なさに対してだった。


「スノウ。二人になったところで、本題に入ろう。お前が我を訪ねてここまできた理由とそれに対する答えについてだ」


「!!」


いきなりジオウガ王国にきた目的についてシャナゼンの方から切り出してきたことに少々驚いたが、なんとか本題に行き着いたという安堵感を抱いた。





激務でアップが遅れてしまいました。土日で挽回します!

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