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<ゲブラー編> 101.金剛の旋風七星

101.金剛の旋風七星



「お、俺は・・・人が幸せになるように正しい世の中にしたい!」



・・・・・


・・・



(走馬灯・・・?。幸せになるように・・・か・・・無念・・・。・・・な・・なんだ・・・?空から光が見える・・・いよいよ・・・お迎えか?)


バッガッァァァァン!!!


炎を纏った槍、というより槍の形状をした炎がホロマのいる場所に突き刺さった。

ホロマは寸前のところで後方に退いてダメージを免れたようだ。


シャー・・・・・バッガァァァン!!!


さらに退いて距離をとっているホロマに槍形状の炎が凄まじい速さで飛んでいく。

ホロマはそれを避けるためにさらに遠くに逃れる。


タン・・・


「ふぅ」


槍の炎を放った者が地面に着地した。

ソニアだった。


「ソニア。あと2分だ」


「はい!」


奥ではスノウがトウメイの深傷を魔法で治療している。


「お、お前・・・カム・・ス・・か?」


みるみる内に傷が治癒していく。


「いいですか?出血が激しい。傷は治しますが血を増やす事はできない。輸血というものが必要です。今すぐはできませんからここで大人しくしていて下さい」


ドッガガァァァン!!!


「貴様何者だ?!いや、カムスと一緒にいた女だな。その実力・・・!」


「もう少し付き合ってもらうわよ。と言うよりあなたこそ何者?」


「ふん・・これから死ぬ者に名乗るのは油断して負けるやつと決まっている。名乗った時点で勝ち誇っているからだ」


「あらそう!」


ソニアは槍の炎を両手から一本ずつ投げた。


「フレアブラスター」


ホロマは矢を3本まとめて放った。

さらに続け様にもう3本同様に放つ。

炎の矢はまとまって回転して飛んでいき、まるでソニアの放った槍の炎と同じような形となった。

まるで炎の槍だ。

槍の炎と炎の槍が衝突し、ぶつかった地点から縦に円形状の波動が広がる。


熱波衝撃ヒートウェイヴインパクト!!」


ソニアはさらに2本の槍の炎を放つ。

それは自由自在に操られ、軌道が読めない状態で飛んでいく。

だが、ホロマはそれを冷静に対処して避けながらギリギリ衝撃に巻き込まれない距離を保ってフレアブラスターで撃ち落としていく。


ヒュウウウウン・・・バゴォン!!!


突如ホロマのいた場所の地面がまるで爆弾でも爆発したかのように吹き飛ぶ。

ホロマは間一髪それを避けた。


「何やってる」


スノウが凄まじい速さで跳躍して強烈な蹴りをホロマに向けて放ったのだった。


「貴様・・・カムス!!どこまでも邪魔してくれるやつだ。これ以上邪魔されては面倒だからここで死ね」


そういってホロマは炎の矢を近距離で放った後、スノウの側面に凄まじい速さで近づき正拳のラッシュを繰り出す。

スノウは炎の矢を魔法で凍らせながらホロマの正拳ラッシュを受け切っている。

倍速で再生されるカンフーの戦いのようにお互いのラッシュが繰り広げられる。

その間にソニアはホロマの側近たちを瞬時に気絶させ、激しい出血で顔面蒼白となっているトウメイを抱き抱えてトウメイの部下に預けた。

彼らは突然の出来事と、ホロマの裏切りによって瀕死寸前となったトウメイを守れなかった事を悔やみながらトウメイを馬に乗せてキョウへ向かった。


ガン!パシ!タッ!パパン!!


スノウとホロマの戦いが続く。


「なぜトウメイを殺そうとしたのです?」


「殺そうとした?・・・ちっ!治療でもしたか!面倒かけさせやがって」


「何だかあなたキャラが変わってますね。その醜悪な性格に見合った話し方になっていますよ」


「醜悪?それを言うならこの世界で善人ぶっている偽善者たちの方が醜悪だ。この世は弱肉強食。強き者が支配する。弱者がさらに弱者を助けたところでそれは小さな自己満足だ。それで善人面している方が反吐がでる」


パシ!タッ!パパン!!パシ!タッ!パパン!!


「そうですか。私には長い者に巻かれているだけなのにイキっているあなたの方が醜悪に見えますよ。弱くとも信念を貫く強さを持っているだけで人は輝くものです」


「やめろ、寒気がする!貴様は本当の強さをしらねぇからそんな綺麗事を平気で吐けるんだよ!クルーエルフレア!」


ホロマは炎に包まれた拳を思いっきりスノウに向けて叩き込むが、スノウはそれを避ける。

だがその拳から炎の鞭のようなものが出てきてスノウに巻きつく。


「フハハハハ!!!その鞭は相手もがけばもがくほど温度を上げ体に食い込むまさに拷問だ。俺に深いな思いをさせたことを後悔して死ね」


「これがなんだと言うんです?」


スノウは何なくその炎の鞭を消し去った。

体の表面からリゾーマタの冷気魔法フラッシュフリージングを発して炎の鞭を相殺したのだ。


「き、貴様・・・!その忌々しい狐面でお前の面は拝めなかったが、お前の拳は覚えたぞ。ここは一旦引いてやる。だが次はない。我が主人に勝てる者はいないからだ」


そう言うとホロマはその場から立ち去った。

スノウは追いかけようとするが、あたり一面に炎魔法の地雷が埋まっているのが見え一瞬躊躇したためその隙にホロマは逃げ切ってしまった。


「あいつ、おれと戦いながらこの地雷仕込んでたってのか。意外に抜け目ないな。気づけなかったおれもまだまだってことか。しかしやつの言っていた主人って・・・。まさか!!」


スノウは何かの仮説にたどり着いたようだった。

そして炎の地雷原を冷気魔法で消し去った後、ソニアと合流し休ませているエスカを拾ってボクデン軍の元へ向かった。


ボクデンは何なく本陣の自分のところへ忍び込んできたスノウに驚くばかりだったが、敵意がないことを理解しスノウの話を聞いた。

だが信じられなかったようで自分の目で確かめるとして、軍をその場に待機させスノウと二人で能生万将軍が天帝軍と戦った場所を確認することにした。


「な・・なんという戦闘だったのだ・・?!」


巨大なクレーター、所々にある戦火のあと、そして遠くに見える帰路につく天帝軍。

そこには将軍側の者が一人も見当たらなかった。


「負けたのか・・・」


ボクデンは愕然とした表情を浮かべたあと、優しく微笑んだ。


「カムスとやら。すまないがお願いを聞いてくれまいか?私は剣士としては多少名を馳せたが大将としては無能でたくさんの部下を死なせてしまった。だがそれも天帝の圧政からこの国を救うための聖戦と自分に言い聞かせて戦ってきた。なぜだろう、その感覚も今となってはなぜそう思っていたのかもわからん。ただ今あるのはたくさんの同胞を死なせてしまった自分の不甲斐なさだけだ。・・・後生だ・・・。この私の首を差し出す。それでは足りなかもしれないが、どうか北にいる私の兵たちは見逃してくれ」


「見逃すも何も戦争は終わったんですよ。摂政のトウメイは言いました。今後血を流すことは禁ずるとね。あなたは罪を感じるなら、今ある命がこれから幸せに暮らし続けられるようにすることにあなたの命を使うべきです」


ボクデンは膝をついて泣いた。

漢泣きだった。

そしてしばらくして再度口を開いた。


「カシマ・・・」


「どうしましたか?」


「カズラ・カシマ。それが私の名前だ。ボクデンは能生万将軍がつけた名だ。気に入ってはいたが将軍亡き今この名も不要となった」


「カシマ殿。それではあなたの兵に戦争は終わったと告げて下さい。そして大切な家族のもとへ送り届けるのです。その後、必ずキョウへ来て下さい。大事な話がありますから」


「かたじけない。カムス殿。この恩は一生忘れない」




・・・・・


・・・




―――数日後、帝都キョウ天帝御所―――



大きな墓碑の前で祈りを捧げている幼な子がいる。

10歳にも満たない少年その顔は凛々しかったが少しだけ疲れているのか目の下に隈がみえた。

その少年の後ろに近づく姿があった。


「文帝様」


「トウメイか・・」


現れたのはトウメイだった。

そして少年はこの国を統べる天帝、文仁王ぶんじんのうその人だった。


「母上はひどい人であったが、母は母だ。国か家族かと選択を迫られる瞬間が何度もあったがどうしても母を裏切れなかった。私は無能な君主だ」


「そうですね。君主たるもの守らなければならないのはこの国の民・・・それだけです。私情に流されてしまうようでは君主失格です」


「優しいのだな、トウメイ。今はそのように責められるのが救いだ」


トウメイは少し辛そうな表情を浮かべていた。

一方の天帝は疲れた表情で僅かに微笑んでいる。


「このような時ほど毅然とした態度を。これからこの傷だらけの国を立て直し一刻も早く人々の生活を取り戻さなければなりません。それができるのはあなた様だけです」


「私にその資格はあるのか?」


「資格や能力の話ではありません。全力で取り組むかどうか、それだけです。あたな様はそういう立場にある方なのですから」


「そうか。ならこの命燃え尽きるまでこの身を捧げるしかないな」


「お付き合いしますよ。私もね」


「すまない。お前には辛い役ばかり押し付けてしまった。これからもだが」


「辛い役?いいえ、あなた様がサボらないようにしっかりと見張り、気を抜いた時に叱る役目です。この国の最高権力者を叱りつけられるなんて、これほど優越感に浸れる立場がありましょうか?」


「ははは・・お前には敵わないな」



・・・・・


・・・



その翌日。

天帝御所内の一室に錚々たる面々が集められていた。

スノウ、ソニア、エスカ、エルガドの他に天帝、金剛の槍からはトウメイ、マカム、元将軍側旋風隊からカシマ、リュウソウ、サイゾウ、そして神楽巳流武術の師範代のイシルが同じ部屋に集められた。

1週間前では考えられない面子が一堂に会していることになる。


「カムス、この国を救った功労者の一人として敬意を表して我らはここにいるわけだが、この場をもうけた理由を教えてくれないか?」


トウメイが口火をきってスノウに話しかける。


「端的に申し上げます。この国はとても傷ついた。立て直すためには、国をひとつにし、平和な世をつくるために尽力する者たちが必要だと思うのです」


唐突に発せられたその言葉に異論を感じている者は一人もおらずみな頷いていた。


「ひとつ私から提案です」


一同はスノウに注目する。


「天帝を中心として、お互いを尊敬し且つ監視する関係性の上でこの国を守護する六星ガーディアンを作るという者です」


「六星・・」

「ガーディアン・・」


「そうです。この国の平和維持を目的とした組織で、それを乱す者が現れた際は国内外問わずに先頭に立って戦う。もちろんガーディアン自身が私利私欲に走った場合は他のガーディアンが排除して国を守る責務を果たす」


「それはいい。大賛成だが、六星とは?6名という意味なのか?」


トウメイが質問した。


「その通りです。私の案は、トウメイ、マカム、カシマ、リュウソウ、サイゾウ、そしてイシルです」


「なんですって?!」


イシルは驚いた。


「私にはそんな大役は務まりません!」


「いえ、可能です。ザムザを立派に育てた姉としての責任感と優しさ、そして神楽巳流武術の師範代としての強さと指導力。誰も疑うことなくガーディアンだと皆認めてくれると思います」


「俺は賛成です」


そう口を挟んできたのはリュウソウだった。


「姉さ・・いやイシルさんはカムス殿が言われた通り立派な人物だ。弟子であり、弟分であった俺が言うんです。間違いない」


「リュウソウ。誰も疑うておらんよ」


マカムが優しい笑みを浮かべながら口を挟んだ。


「そのガーディアン。私も入れてもらえるか?」


「!」


スノウは驚いた。

そう発言したのがエスカだったからだ。


「アン、君の強さは知っている。我らの中でも群を抜いて強い。大歓迎だが、カムスとの旅はよいのか?」


トウメイが言葉を返す。


「わがままかもしれないが、このカムス殿と行動を共にしながら国外にある危機を把握してハーポネスを守れるように動きたい。私はこの国の出身だ。だから傷ついたこの国の復興に協力したい。だが今このゲブラーはその復興を許さないほどの恐ろしい支配体制が構築されつつある」


「どういう意味だ?」


エスカはスノウの顔を見て無言で何かを訴えた後、目隠しの布をとった。


「私の名はアンではない。都合があって偽名を名乗っている。本当の名はエスカ。エスカ・カグラミ」


「!!」


イシルは驚きを隠せない表情でエスカを見ている。

仕方ないと言ったジェスチャーをした後、スノウもウカの面をとった。


「!!」

「カムス・・・お前火傷があるのではなかったのか?」


「この後に改めて天帝とみんなにお願いをしようと思っていたんだが、俺のカムスという名も偽名だ。本当の名はスノウ。そしてここにいるのはトーカではなく、ソニア。・・・すまない素顔を晒して口調も変わってしまって。正直少し窮屈で・・・。騙す気はなかったんだが、俺はとある組織や国々と手を組んでこのゲブラーを救うために情報を集めている。それで素性を隠す必要があったんだ」


「カム・・・いやスノウ・・でいいんだな?・・・ゲブラーを救う?どういう意味だ?」


「ゾルグ王国国王ヘクトルの支配からの解放だ」


エスカが変わって説明する。


「約100年前、ゾルグは九国会議でゾルグが九国に序列を作り筆頭国を宣言したのは知っているだろう?このハーポネスには悲しい歴史があるのだが、その後100年あまりゾルグからの影響はないのだろう。だが、他の国々ではゾルグによって虐げられ時には多くの民衆の命が奪われてしまうようなことも起きている。その波は次第に広がっていてこのハーポネスが対象になるのもそう遠くはない」


「いや、既にその魔の手は伸びていたよ、トウメイ。君の脇腹を刺したホロマ。あれはおそらくヘクトルの手の者だ。おそらくヘクトリオンと呼ばれる最強の五人衆がいるのだがそれに近い存在だろう」


「!!」


「君を刺し、皇太后をも暗殺し、この国を意のままに操ろうとしていたのだろう。今回は失敗に終わっているが、これで終わりじゃない。今回俺が六星ガーディアンを提案したのは最終的にヘクトルと戦う力と結束力を持つためでもある」


「結束力・・・」


スノウは天帝の方に向き直り話を続けた。


「天帝様。不躾なお願いですが、既にレグリア王国、ガザド公国、ゼネレスの一部のエルフ、そしてゾルグにいるヘクトルの圧政に抗う組織、これらが結束して打倒ヘクトルに向けて動き始めています。どうかハーポネスも加わっていただきたいのです。ヘクトルの恐ろしさやゾルグの強大な軍事力をご存知ない中で眉唾な情報と思われるでしょうし、今この国に必要なのは治癒ですから他国と共闘といった余裕がないこともわかります」


「スノウ。余の答えは決まっている。我がハーポネスはお前の言葉を信じ共闘する。その話が本当ならいくらこの国を癒したところで攻められてしまえば滅ぶのであろう?ならばそちらへの対処を優先すべきだ。それにこの国の民の心の強さと底力を舐めてもらっては困る」


「天帝様・・・」


トウメイたちは目に涙をためながら感動している。

とくにトウメイにとってはここ数年天帝を側で支えてきたことから立派な言葉が出てきたことに思い一入だったのだろう。


「どうやら決まりのようですね、スノウ」


ソニアが笑顔で言った。


「アン、いやエスカが加わるのなら六星ではなく、七星ね」


イシルが続けて言った。

それに皆頷いた。


「よし!今日からお前たちはこの国を守護する七星ガーディアン、名付けて金剛の旋風七星だ!この国のため、そして世界のためにその命の炎がつきるまで戦いぬくのだ!余はお前たちが動きやすいようにこの国を治めていく!平和のためならなんでもしよう!そしてスノウ、感謝する!共に戦おう!」


紆余曲折あったが、最初のハーポネスに共闘してもらう目的は果たされた。



・・・・・


・・・



―――天帝御所内テラス―――



「エスカ・・・でいいんですよね?」


「イシル・・・。ああ、エスカでいい」


テラスにいるエスカのところにイシルが来て話しかけたが、少しの沈黙が流れ気まずい雰囲気になった。


「あの・・・」


「わかっている。2つだな?」


「ええ・・・」


エスカは、イシルが聞きたそうにしている感心事が二つあることを理解していた。

当然ひとつめはザムザのこと。

そしてもう一つはカグラミという苗字のことだ。


「ザムザは・・。ザムザは生きている」


「!!・・・ど、どこにいるのですか?!」


「わからない。彼は何者かの力によって別の存在に変わってしまった」


「どういう事なのですか?」


「すまない、正直わからないのだ。だが、ただ一つ言えることは彼が私の元から去る時に言った言葉だ」



――ありがとう。君と姉さんに何かあったら必ず助けに行くよ――



「うう・・・」


イシルは泣き出した。


エスカはイシルを優しく抱き寄せた。


しばらく泣いた後、イシルは落ち着いたようだ。



「ありがとう・・・」


「いいよ・・・」



そしてイシルは落ち着きを取り戻して二つめの質問を問いかけた。


「エスカ。あなたの苗字・・・」


「ああ」


「私と同じなのはなせ?あなたは一体何者なの?」


「正直私もわからない。元々私は孤児なのだ。とある里親に育てられた。レグリア王国でジムール王から100年前のモウハン事変についての話を聞いた時に出てきたヨシツネ・カグラミという人物が私と同じ苗字であることから自分のルーツを辿るためこの国に来たのだ」


「そうなのですね・・・。ヨシツネ・カグラミ。彼は神楽巳流武術で最強と謳われた人物です。もちろん私は会ったこともないし、詳細も聞いていませんが、金剛の槍の副頭領を務めており凄まじい強さを誇ったと伝え聞いています。ですが・・・」


「ですが?」


イシルは少し苦しそうな表情を浮かべている。


「彼は一族の恥さらしと言われている存在でもあるのです」


「恥・・さらし?!」


「はい。神楽巳流は元々キョウに大きな道場を持っていたそうです。イードやフーグシー、オザッカにもありました。100年前のゾルグ王国との一戦で彼は共闘軍、そしてハーポネスを裏切ったそうです。そして頭領だったリュウオウを罠に陥れ彼を殺害したとも言われています。それがあったため、彼は追放され、神楽巳流もまた街から追い出されました。戦争のために駆り出されてはいますが、それは単に利用されているだけ・・・なのです」


「そうか・・・だが私が聞いている話はと違う」


「はい、私も伝え聞いている話は違うと思います」


「どういう意味だ?」


「・・・・神楽巳・・・神を己に宿すという意味があるそうです。実は私には、人の魂の色・・・と言いましょうか、そういうものが見えます。見えるというか感じると言った方が正しい・・・」


「?」


「あなたには二つの光を感じます。ひとつは優しい紅。もう一つは透き通った白。優しい紅は神々しい。そして透き通った白は実直で聡明な感覚」


「何が言いたい?」


「このような不思議な力がカグラミ一族にはあります。私の祖母が昔話を語ってくれたことがあります。祖母は一族の魂の居場所を感じることができた不思議な力を持っていました。よく迷子になったザムザを見つけてくれたものです・・・。そして・・・祖母がまだ幼い頃に優しくしてくれた叔父がヨシツネだったのですが、100年前の戦争が終わる直前、彼が神と一緒に天に昇ったと聞きました」


「・・・!」


「祖母は言いました。神に愛される者に一族や国を裏切るものなどいない。周りがなんと言おうと私たちだけはヨシツネおじさんを信じてあげようねと・・・」


エスカの目から自然と涙が溢れてくる。


「その時祖母見た魂の色のひとつは優しい紅。そしてもう一つは透き通った実直で聡明な白だったのです。不思議なことですが、今私はそれをあなたの背後に見ている。これ以上のことはわかりませんが、カグラミに一族や国を裏切るものはいない。誰よりも人を愛し、誰よりも国、世界を愛する・・・それだけは言えます」


「ああぁ・・・」


エスカは上を見上げて大粒の涙を流した。

自分でもなぜ泣いているのかわからなかったが、とにかく涙が溢れ続けた。

イシルはエスカを優しく抱き寄せた。






次の話で舞台はハーポネスから別の場所へ移ります。次の場所でもちょっとしたストーリー展開があります。

そしてその後はいよいよスノウがゾルグが帰還しヘクトルとの最終決戦に入ります。

その前に次かその次あたりで登場人物の整理をしたいと思います。

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