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<ゲブラー編> 20.激しい祝杯

20.激しい祝杯



――次の日の夜――


スノウたちはいつものレストランに来ていた。

頻繁に夕食を共にしているので新鮮さはないが、今回は食事や飲み物が豪華だった。

名目はルデアス対ルーキー4のお疲れ様会と、スノウ、エスカの昇格祝いだ。

流石に当日の夜は4人とも疲れが出たようでぐっすり眠っていたため、翌晩となった。

今回惜しくも昇格を逃したグレンとコウガの顔は沈んでいるわけではなく、むしろ何かを得たような清々しい表情だった。


「いやぁすごかったな!」


グレンが嬉しそうに話始める。


「何がだ?」


コウガが話に乗る。


「俺の華麗な剣捌きだよ!」


「自画自賛か!そういえばお前、剣以外も使ってたな?驚いたよ」


「ま、まぁな!たまたまだ、たまたま!トラクレン時代にちょっと習ったのとお前らの戦いでも学んでたからな、ははは・・」


「ふーん」

「あやしいな・・・」

「ああ、なんかあるぜ、グレンのくせによ」

「そうですね」


グレンの挙動不審な受け答えにコウガ、アンジュロ、ナージャ、ソニアは怪しんでいる表情を浮かべた。


「気にするな。どんな武器を使っても弱い奴は弱い」


エスカがズバッと身も蓋もないツッコミをいれる。


「ポ!ポ!ポ!ポニーテール!てめぇ!」


「お前は鳩か」


「はぁ?!」


「ぎゃははは!」

「あははは!」


笑いが起こる。

スノウはいつのまにか仲の良い関係になっているこのメンバーを気に入っていた。

ホドやティフェレトで共に旅をした仲間ともこんな楽しい会話があったからだ。


(アレックスやニンフィー、ロムロナたちやエスティ、ゴーザ、ケリーたち・・全員と会わせてやりたいな。大勢で食卓囲んで騒げたら楽しいだろうな・・・)


こんな発想は雪斗時代にはなかった。

だが、仲間との大切な時間を考える時、スノウの頭には雪斗時代と比較するようなことは既に無くなっていた。

それだけ越界して以降、大切な仲間と出会い、その環境に馴染んでいるからだった。


「よう、私にも一杯奢らせてくれ。祝杯だ」


そう言って歩み寄ってきたのはスパッツとその取り巻き達だった。


「スパッツ!お前ぇ動けるのか?」


「グレンのくせにスパッツさんを軽くみるんじゃねぇ!」


取り巻きがグレンに噛み付く。


「まぁまぁ、いいんだ。回復力もまたグラディファイサーには重要な要素だ。俺より過酷な戦いをしたカグラミもまた元気にしているじゃないか。俺も高みを志す身。あんなダメージでへたばっていられないからな。それよりも乾杯だ」


「いやぁ、やっぱりここにいましたねぇ!」


スノウ達のいるテーブルに詰め寄ってきたのはレンスだった。


「お!レンスさんじゃないっすか!」


人気者に弱いミーハーなグレンはチャンスとばかりに詰め寄る。


「いやぁ昨日のイベント、最高でしたね!私とても満足してるんですよ!やっぱりあなた達は素晴らしい!ということで私とても機嫌がいいので、本日は全て私の奢りとさせていただきますから何でも食べて飲んでください!」


「マジか!」

「本当に?!」

「ひやっほーい!」

「俺たちもですか?!」


喜ぶナージャたちの後にスパッツの取り巻きがレンスに確認する。


「もちろんです!パーティーですからね!みんなで楽しまないといけません。さぁさぁ!遠慮なく行きましょう!」


『うっひゃーあ!!!』


喜びの声が上がる。


いつの間にか20名を超える食事となった。

グラディファイサーの飲みっぷりは激しく、いつも通り飲み比べやへんな踊り、力比べなど方々さまざまなやりとりが始まってそれはもう騒がしくも楽しい場となるのだが、今回はレンスの奢りとあってリミッターの外れた者たちが続出しいつも以上の騒がしい場となった。


スノウも思いっきり笑いながら会話している。

そんなスノウを見ながらソニアは嬉しそうな顔を浮かべている。

当然表に出てこられないソニックは心の部屋でふて寝しているのだが。


「それでですね、レンスさん!ものは相談なんですがね?また昨日みたいなイベントやっちゃったりしませんかねぇ?」


グレンがレンスに話を持ちかける。


「そ・・そうです!俺たち盛り上げますから!観客が盛り上がればレンスさんも株あがりますよね?!」


慣れないゴマスリをするコウガ。

それを横目で複雑な顔で見つめるアンジュロ。


「ははは、これは失礼しました、もちろんです。すぐにとは行きませんがもちろんまた企画させて頂きますよ荒くれ剣に光槍のお二人」


「おお!」

「本当ですか!」


「ええ、そのためにはまずお二人にはローラス上位に入っていただかないとなりませんね。お二人の実力ならすぐでしょうから。早速今から企画の内容を考えますよ」


腕を組み喜び合うグレンとコウガだった。



ドン!!!


「聞き捨てなりませんね」


「なぜお前が怒り出す?」


「お・・おい」


スノウを真ん中にしてソニアとエスカが対峙している。

それをこめかみから汗を流しながら困った顔で狼狽えているスノウがいる。


「何人たりともスノウの強さを否定することは私が許しません」


「私より弱いという事実を言ったまでだが気に障ったか?」


「気に障ったのではなく憐んでいるのですよ。スノウよりも強いと勘違いをしている弱いあなたにね。ただ、その勘違いは正さなければなりませんのでどちらが強いのかをはっきりとお教えして差し上げようというのです」


「ここで私がスノウと戦えとでも言うのか?構わないが」


「まさか!あなた如きがこのような場でスノウに教えを乞えるとでも思っているとしたら思い上がりも甚だしい。私が相手をして差し上げるといっているのですよ」


「お前はスノウよりも強いのか?」


「つくづく間抜けな方ですね。そんなはずないでしょう?スノウは全ての世界で最も強いお方です。あなたとお相手するのは私ですよ」


「私より弱いスノウよりも弱いお前と戦って何の意味がある」


「思い上がりもそこまでくると病気ですね。あなたの実力が私に遠く及ばないことをその体に叩き込んであげましょう」


「弱いものいじめは気が進まないがそこまで言うなら受けてやろう。ここでやるのか?」


「いえ、他のお客様にご迷惑がかかってはいけませんから外に出ましょう」


遠くでこの会話を聞いていた店の主人は外で喧嘩をやってくれると聞いてホッとしている。

それまで気が気じゃなかったららしく、ちょこちょこと覗きにきては何か言いたげだったようだが、常連の2人の強さは既に知っていたため、何も言い出せなかったようだ。


「お、おい!お前らなんでそういう展開になるんだよ。ちょっと落ち着こうな!な?」



グレンとスパッツがスノウに寄ってくる。

ヒソヒソ話でスノウに話しかけてきた。


「おい、どうしてこうなった?」


「し、知らねぇよ、気づいたらこうなってた」


「粗方カグラミが酒に酔ってスノウより私の方が強いとかなんとか言ったのではないか?」


「なるほど、それにソニアちゃんが怒ったってことか。こりゃ止められねぇな」


「おい!なんとかしてくれよ!」


「無理だ。お前がなんとかしろ。モテる男は辛いねぇ、がっはっは」


「しかしそれにしても見ものだな」


「そうだな!ソニアちゃんはグラディファイサーでこそないがその実力は相当なもんだからな」


「ああ」


「お前ら!」


その奥では気づかずに熱心に次の企画試合をお願いしているコウガがいる。

よほど昇格するチャンスが欲しいのだろう。



「さぁ外に出なさい」


「お前が先に出ろ」


「あなたの方出入り口に近いのだからあなたから出ればいい」


「普通は挑戦者から出るものだぞ」


「面倒くさい人ですね、仕方ありません」


パチン!


ボワ!!!ドッガァン!!


ソニアが指を鳴らした瞬間に横の壁が一瞬にして燃えて消え去った。


「さぁこれでふたり同時で外に出られます。お店の方には迷惑をかけられないので外に出ますよ」


「いいだろう」


「ぎぃぃぃややぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!」


店の壁が直径2メートルほど焼け飛んでしまい、店主はムンクの叫びのような表情で叫び気絶した。

他の客も興味本位で外にでてソニアとエスカを手を振り上げて囲んでいる。

既に50名ほどの野次馬が取り囲んでいる状態だ。

そしてさすがは手慣れたグラディファイスのファン達だけあり、すぐさまどっちが勝つのか賭けが始まった。


「いつでもどうぞ」


「お前のタイミングに合わせてやる」



――ソニアックの頭の中――


(ね・・ねぇさん、一体何考えてんの!)


(うるさわね。引けるわけないでしょ!それよりいざとなったら一瞬だけ出てきて私を助けないさいよ?いいわね!ってか何で私が負ける前提?!いい?何があっても表に出てきちゃだめよ!わかったわね!!)


(もはや何を言っているのかわからない・・・。あぁ、いつもこれだよ全く・・)


お互いが右手を前に出して自分の胸の前あたりで止めた。

そして右手の甲を合わせた。

その瞬間に周りも静まり返る。

武器を使わずに素手の勝負をするようだ。


『ナージャ』


ソニアとエスカは同時にナージャに声をかけ、合図をするよう促した。

ナージャは笑顔で頷いた。


「よぉし!始め!」


その瞬間にカンフーのような打ち合いが始まる。

スノウ自身、ソニアもエスカも素手で戦うところを見たことがないため、思わず見入ってしまう。


バシ!ガシ!ダダン!


一打一打凄まじい威力の打撃や蹴りが繰り出される。

それを避けたり、受けたりしお互いの攻撃がダメージを与えることはなく、拮抗しているようだ。


ドグォアン!!バゴウゥン!!


踏ん張っている地面が沈み壁際の攻防で繰り出された蹴りによって壁が破壊された。

その無数の破片が野次馬達に降り注ぎ、皆怪我で血を流している。

だが、戦いに夢中で気にしていないようだ。


何気にお互い、打撃技の螺旋と流動を織り交ぜているため、破壊力が尋常じゃない。

そのまま受けてはすぐに体が破壊されてしまうため、力の集中の波動の螺旋には力の拡散の流動、流動には螺旋といった形で中和しながら受け切らなければならない。

それを見分けながらお互い完全に受け切っている。


「やるじゃないですか!」


「お前もな!」



「すげぇ・・・」


「ああ・・・」


(ソニアのやつ、いつの間に螺旋と流動を会得してたんだ?全く油断も隙もあったもんじゃないな・・・)


あまりの可憐なカンフーの戦いに、グレンとスノウ、そしてスパッツは思わず見惚れてしまっていた。


「お前、あいつらより強いのか?本当に」


「さぁな。だが一つだけわかったことがある」


『あの2人を怒らせてはならない』


スノウとグレンは口を揃えて思いを口にした。


「だな」

「ああ」


ダガン!!!バゴォォン!!


ガシィ!ググッ!ガッ!


エスカが繰り出すパンチを掴むソニア。

ソニアは蹴りを放つがそれをエスカは脇で挟み込んで固める。


「ぐっ!」


「くっ!」


お互い締め付けを強める。

だが、タイミングを見計らうように同時に解放し、お互い後方に飛びのいて距離を取る。


「基本的な戦闘能力は互角ですか」


「これでは決め手に欠けるな」


「仕方ないですね」


「そうだな」


エスカは歩いて自分の座っていた席に行き剣を取る。

そして元いた場所に戻ってきた。


「待っていてくれるとは律儀なやつだ。礼はいわんぞ」


「ハンデですよ。お気になさらず」


「お・・おい、やばくないか?ポニーテール剣を持ち出したぞ」

「何の騒ぎだ?おい、なぜエスカとソニアさんが戦っているのだ?」


あまりの騒々しさにコウガがやっとその場にやってきた。


「すごい!流剣姫の強さは知っていますが、もう1人の女性は何者ですか?」


レンスも戦いに見入っていた。


「こりゃぁ本格的に止めにはいらねぇとやべぇかもな」


だんだん騒ぎが大きくなっていくのをみて心配するグレン。


「ああ、最悪の事態になる直前で止める」


スノウのこめかみから汗が滴る。



「じゃぁ遠慮なく行かせてもらう」


エスカは剣を構える。


パァン!


ソニアは手を叩いた後に両手を広げて構える。


「ハァ!」


エスカが凄まじい勢いでソニアに向かって突進し剣を振り上げる。

だが、剣を振り下ろすことができない。


「なんだこれは?!」


炎の鞭のようなものが剣に巻き付いており、建物に繋がっている。

その鞭が剣を引っ張る形で振り下ろさせないようにしているのだ。

ソニアの炎の音魔法による炎の鞭が剣を抑え込んでいるのだった。

そしてその隙にソニアは別の炎魔法を繰り出す。


「熱視線!」


ソニアの目からビームが繰り出されるように炎のレーザーがエスカに放たれる。

エスカは後方に飛びそのレーザーを避ける。


ドガァン!!!


飛びのきそのまま炎の鞭が巻き付いている建物を破壊し剣に巻き付いた鞭の呪縛を解放した。


「ふん!」


エスカは炎の鞭を逆に利用し剣を振って鞭をあやつってソニアの首に巻きつける。


「ぐっ!」


ソニアの首が焼ける。

火傷を避けるため、ソニアは炎の鞭を消し去って解除した。

一方、エスカはジャンプし凄まじい勢いでソニアとの距離を詰める。

そして同時に剣を振り下ろす。


「熱視線乱反射!」


ソニアの目から複数の炎のレーザーが一瞬で放出される。

エスカはそれを剣で弾き切り込もうとする。


「ヒートウェイヴ!」


ソニアの体から凄まじい高熱の爆風のような熱波が発せられる。

エスカだけでなく、スノウとグレン以外全員が吹き飛ばされる。

後方に飛ばされたエスカは回転し着地する。


「なかなかやるじゃないか。そろそろ決めようか。本気で行かせてもらう」


「私に本気にさせるとはあなたもなかなかですよ」


「はぁ!」


エスカは剣を振り回し暴風の気流を作り上げそれをソニアに向けて放ち、その中に飛び込んで剣先をソニアに向けて回転して突っ込んでくる。

対するソニアは炎のネットを作り出し地面に固定させて放つ。

そして両手のひらを胸の前で合わせるようなポーズをとり、手のひらの間に超高熱の球体を作り出した。


「おい・・スノウ!」


「ああ!」


エスカのスクリューのような恐ろしいほどの回転で突っ込んでくる勢いを炎のネットは止めることができず、ネットごと巻き上げてソニアに向かって凄まじい回転で突っ込んでくる。

一方ソニアが作り出した超高熱の球体はバスケットボールほどの大きさになっている。

その高熱から周囲の様々なものが燃え出したり、溶け出したりしている。


そしてぶつかる。


シャババババババーーーン!!!!


炎と風と波動が合わさって凄まじい爆風のような波動が周囲100メートルほどにわたって発せられ、建物のガラスを割り、様々なものを吹き飛ばした。

もはや野次馬は身の危険からかなり離れて様子を伺っている状態になっている。


「どうなった?!」


巻き上げられた埃や炎と風の渦で状況が見えない。

次第に晴れていく。

そこに見えたのは3つの影だった。

エスカは剣先をソニアに向けて回転しながら飛んできたそのままの状態で止められており、ソニアはまさにエスカに向けて放とうとしていた灼熱の球体を両手を伸ばし発射する状態のまま止まっていた。

その間でスノウが左手でエスカの剣を人差し指と中指で挟んで止め、右手の人差し指と中指でソニアの灼熱の球体を抑えている。


「何?!」

「スノウ!!」


エスカは剣から手を離し後方に飛びのいた。

そしてソニアは急いで超高熱の球体をかき消した。


「お前らなぁ!やりすぎなんだよ」


そう言いながらスノウは手を捻って回転させて剣をエスカの方に投げた。

その剣をエスカは目線を向けることなくキャッチする。


「白けた。やめだ。腹も減ったし食事を続けることにする」


「そうですね。私も少しお腹が減りました。食事の続きでもしましょうか。スノウ、お手を煩わせてしまって申し訳ありません」


ソニアはスノウに対し、深々と頭を下げた後テーブルに戻っていく。


「ちょっと待てい!」


スノウは声を張り上げる。


「見てみろ周りを!エスカもだぞ!」


『あ・・』


2人はやっと我に返ったようで周辺の破壊し尽くされた状況をみてバツ悪そうな表情を浮かべる。

レストランの壁には大きな穴が空き、周辺の建物のガラスというガラスは割れ、荷馬車や露天商の屋台なども吹き飛ばされ、地面は凸凹になっている。


「これお前らふたりで弁償しろよ?ソニアには金を貸してやるから働いて返せ。いいな」


「ふん」


「申し訳ありません、スノウ!働いて必ずお返しします!」


「わかればいい。じゃぁ食事の続きをしようか」


まるで何事もなかったかのようにエスカとソニアは元の席に座り食事を再開した。

ナージャは興奮しているのかしきりエスカとソニアに話かけている。

アンジュロはエスカの剣技を見て触発されたようでエスカにあの時の剣の持ち方はどうだとか、あの剣の振り方のときの力の入れ具合はどうだとか色々と質問をしているが全て無視されている。

周りでは、恐ろしい破壊力の喧嘩から避難していた野次馬が戻ってきて、引き分けとなった結果で賭け金の払い戻しをやっておりざわついている。

そして間近でみた戦いに興奮して酒を飲みながら騒いでいる。

その横でレンスが目を輝かせてエスカとソニアを見ている。


「いやぁスバラシイ!次の企画が浮かんできましたよぉ!」


レンスの発言を聞き、コウガはまたゴマスリを始めた。


(スノウ・・・。私のあの暴風転斬を指2本で止めるとは・・・。あれにはかなり強めの螺旋を込めて放っていたのだぞ・・。あの強さを見切って同程度の流動で受けたというのか・・・。ソニアのいうことも間違っていないようだな。しばらくあいつの戦い方を見るとしよう)


エスカは食べながらそんなことを考えていた。


一方ソニアは。


(流石はスノウだわ)


(いい加減にしてよ!ねぇさん!どうせどこかで働くことになるんでしょうけど、絶対に僕代わらないからね!これはねぇさんのしでかしたことなんだからねぇさんが自分で何とか稼いでスノウにお返してよ!)


(流石はスノウだわ)


(聞こえてんでしょ!いい加減に大人になってよ!全く!)


(流石はスノウだわ)


ソニアックの頭の中ではこんな会話がなされていた。


・・・・・


・・・


1時間ほど経った後、スノウはグレンたちに断って自宅に戻ると言ってレストランを出ていた。

だが、実は自宅には戻らずある場所に向かっていた。

事前にソニアには伝えていたが、昨日の豪剣神マインとの戦いの際にバーに来るようにいわれていたため、そちらに向かっていたのだ。


「ここか・・」


小さなバーだった。

5人も入れればよいといった程度の大きさの箱だったため、スノウは少し拍子抜けした。

恐る恐るドアを開ける。


チャリーン。


懐かしい昭和の喫茶店のような音が鳴る。

中を見渡すと、カウンターごしにマスターのような男が1人、そして客が2人ほど席に座って酒を飲んでいた。


「いらっしゃい」


マスターは低い声でスノウの来店に反応した。

スノウは言われるままに来たものの、この後どうすればよいかわからずキョロキョロと周りを見渡していた。


「注文は?」


「え?あぁ」


「酒・・飲みに来たんじゃないのかい?」


「あ、いや、まぁ、そうなんだけど」


「頼まないのかい?」


「あぁ、じゃぁエールを」


マスターは無言でグラスを取り出しエールを注ぎ、カウンターに置いた。


「あ、ありがとう」


とりあえず出されたエールを飲むスノウ。


「!」


(まずかったか?!何の警戒もなくだされたものを飲んでしまって・・。毒でも入っていたら・・一応解毒魔法をかけておくか)


スノウは念の為、ウルソーのジノ・デトフィキシケーションをかけた。


「そんなに警戒する必要はないよ」


突然背後から声がした。

思わず振り向く。

そこにいたのはマインだった。

だが、昨日あれだけのダメージを喰らって担架で運ばれたにも関わらず、そこに経っていたマインは至って健康そうに見えた。


「昨日あれだけボッコボコにしてやったのになんでだ?!って顔しているね」


「演技だったか」


「まぁ半分はね。でももう半分はかわしきれずにくらってしまってこの通りひどい有様だよ」


マインは上着を捲し上げて傷を見せた。

見事に数十針縫っている後が見える。


「それでおれを呼び出した理由は?」


「ちょっと込み入った話でね。奥へ行こう」


そう言ってマインはカウンターの奥の小さな扉を開けて中に入っていく。


「さぁ君もおいで」


そう言いながら指をクイクイっと招き入れるような動作をしている。


(一体何なんだ?一応警戒しておくか)


スノウはロゴスのライフソナーを唱えた。


(な・・なんだ?!)


カウンター奥の扉のさらに向こう側に無数の生命反応を感知した。


(奥に開けた部屋のようなものがあるのか・・)


スノウはエル・ウルソーの肉体超強化魔法のバイオニックソーマを自身にかけて扉にはいっていった。






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