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<ゲブラー編> 9.トラクレン その4

9.トラクレン その4



 「既に脱落した者が数名いるため、総勢108名となっている。バトルロイヤルは10名単位で行うから11グループで行う。最後のグループだけ8名だ。つまり本日は最高で11名のグラッドが生まれるということだ。今からグループ表を貼り出す」


 オールバックで尖った髭の男が説明したあと、スタッフと思われる数名がグループ表を壁に貼り出した。

 スノウは最初のグループに名前が書かれていた。


 「他のメンバーは‥‥皆知らないやつか」


 次々に貼り出される。


 「ようスノウ!お前は第1グループか。俺は第4グループだ。一緒のグループじゃなくてよかったよ。一緒だったらお前に確実に負けてたからな!はっはっは」

 「わからないぜ?グレンもあの剣の訓練を耐えた男だし、実はおれよりも余裕があったように見えたからな」

 「そ、そんなことあ、あるわけないだろう!」


 グレンはスノウに褒められたのが嬉しいのか少し顔を赤らめて恥ずかしそうに誤魔化した。


 「そういえばあの黒髪ポニーテールは第3グループだな」

 「そうだな」

 「しかしどういう区分けの仕方なんだ?もしかして区画のクリア数で順位があってその順番で割り振られているとか?‥‥スノウ、お前は8つ全部クリアだから当然1位で第1グループだ。俺は4つだが、第4グループってことは4番目?黒髪ポニーテールは俺より上の3位って感じじゃねぇか?」

 「なるほど。だとすれば、第2グループには黒髪ポニーテールとグレン以上の区画数をクリアしたやつがいるってことか?」

 「悔しいがそういうことになるな」

 「まぁおれたちが戦う相手じゃないから気にすることないんじゃないか?」

 「そ、そうだよな。アムラセウムに上がったら強敵になるかもしれないが、今日のところはどんなやつかを見るだけでよさそうだし」

 「よーし第1グループの者どもせいれーつ!」


 スノウ達第1グループの者達はバトルロワイヤル闘技場に集合した。

 スノウの他には体格的に屈強な男達が8人とひとりだけフードを被った小柄な男が1人いた。


 「よーい!はじめ!!」


 教官の合図でバトルが始まる。

 男達は一斉に各々携えた武器を振り上げてもっとも近場にいる相手に無造作に突進していく。

 周りがだいぶ警戒しているのかスノウには向かってくるものがいなかった。

 ひとり、またひとりと木製武器の攻撃で意識を失って倒れていく。

 しばらくすると、スノウ、小柄なフード男、最も屈強な体つきの男3人が残った。


 (あの程度なら一瞬だが一応油断しないでおこう)


 「あんた8つの訓練区画全てクリアしたスノウだな。過酷な訓練だったからあんたの強さはそれだけで十分理解している。勝てる気はしないが敵前逃亡も性に合わないからな。胸を借りるつもりで全力いくぜ」

 「ああ、かまわないよ」

 「うおおおおおお!!!!」


 ガキィィン!!


 振り下ろされた木製斧をスノウは指一本で受け止めた。


 「なぁにぃぃぃ!!!」


 バキバキバキ!!!バガン!!


 木製斧を受け止めた指のあたりから斧にヒビが入っていき真っ二つに割れてしまった。


 「ま、参った‥‥乾杯だ‥‥」


 ヒュゥゥン‥‥ガキィィン!!


 突如横から蹴りが飛んできた。

 スノウはそれを左手で受けた。


 「へぇさすがだね、あんた。でも8つの区画クリアしたからって威張ってると足元救われるよ?8つもクリアするのが面倒でやってないだけの人って少なくとも3人はいるからね」

 「人を暇人みたいに言いやがって。まぁいいよ。だが人と話すならフードくらいとれ!」


 スノウは蹴りをはじいた後、凄まじい速さの回し蹴りを小柄な男の頭上目掛けて放つ。

 その風圧でフードがめくれる。

 そこに現した姿は、15歳そこそこの子供だった。


 「くっ!」


 フードを取られた少年は後ずさる。


 「一応名前聞いておこうか」

 「ア、アンジュロだ」

 「アンジュウローだな、よろしく。おれはスノウだ」

 「アンジュロだ!それにあんたの名前なんて興味ないよ!」


 アンジュロと名乗った少年は拳を叩き込んできた。


 「!」


 スノウは辛うじてそれを躱す。

 アンジュロは続け様に蹴りを繰り出してくる。

 そのスピードはスノウに引けを取らないほどだ。

 だが、それもスノウは避ける。


 「さっきから避けてばっかりだな!どうした怖いのか?」

 「‥‥」


 スノウは考えていた。

 最初に喰らった蹴りを受けた左手の小指球部分がズタズタになっていたからだ。

 一応怪しまれないよう魔法で完全には治さず止血だけした。


 (あいつ‥‥螺旋を込めて蹴りや打撃を繰り出している。そう言えば、螺旋や流動を打つことは出来るが防ぐのは学んでない。ちくしょぉぉ!無動も教えて貰えばよかったなぁ〜!)

 「さて、どうするか‥‥」

 「ビビったのか?じゃぁ素直にやられろ!」


 そう言いながらアンジュロは激しい打撃と蹴りを無数に繰り出してくる。

 そのひとつひとつは螺旋と流動をランダムに織り交ぜているため、受ける術のないスノウは避けるしかなかった。


 「五月蝿いな!」


 スノウは隙をついて蹴りを放つ。

 イラついた反動で放った蹴りだったが、思わず流動を足に流して放ってしまった。

 それをアンジュロは冷静に見極めて左肘で受ける。

 その際はっきりと見えた波動があった。


 「!!」


 (こいつ流動を螺旋でかき消した!)


 スノウは後方に飛び距離を取る。


 「なるほど‥‥少し試してみるか」

 「逃げんなぁ!!」


 アンジュロは大きくジャンプし飛び蹴りを繰り出す。

 スノウは両手のひらで受けの体勢を作る。


 ジャバザザザン!!


 風が竜巻のように吹き荒れて地面の砂を巻き上げた。


 「!」

 「ふうー!なるほどわかってきたぜ。そういうことだったんだな」

 「クソ!なんだよ!右足の螺旋と左足の流動を見破って受け切りやがった!今までビビりは演技か!」

 「ははは!違うよさっきお前からヒントをもらったから受けられたわけだ。サンキューなアンジュウロー」

 (螺旋は1点集中、流動は拡散の波動。二つは相対するものだ。一点集中は拡散させ、拡散は一点集中で中和する。この逆流は相手の打撃の波動を殺すことができる。しかしかなりの動体視力と体の中を流す波動のコントロールが必要だからな。そう言えば打撃区画の教官が言っていたな。振動を生み出すのは螺旋と流動のバランスだと。振動で力を打ち消すのもふたつのバランスか。それを考えるとこの年でそれをやってのけるこのアンジュウローはやはり只者じゃないな‥‥)


 「アンジュロだ!こんなところで終われねぇ!」


 アンジュロはさらに素早い連打を繰り出してくる。

 しかし実戦でより早く重い攻撃を受けかわしてきているスノウにとって見切るのは容易かった。


 (もうひとつ試したいことがあるんだよな‥‥)


 スノウは構えた。

 そして両手のひらにコグバシラを作った。


 「火傷するなよ?」


 そういうとスノウは凄まじい速さで打撃技を繰り出す。


 ジュワワワァァァ!!!!


 「熱!!」


 スノウは放つ打撃の螺旋と流動にコグバシラから放たれる炎魔法を付与した攻撃を繰り出した。

 それを受けたアンジュロは受けたところを逆流波動で受け流そうとしたが、炎魔法が付与されているため火傷を負ってしまった。


 「だから火傷するなよって言ったんだけどな」


 そういうとスノウは燃える手のひらを流れる動作で振り回しながらクンフーの型をなぞるに構えた。


 「と、とうちゃん‥‥」


 アンジュロの目に映るスノウが一瞬別の人物に見えたアンジュロだったが、そのまま膝をついて首を垂れた。


 「俺の負けだ‥‥」

 「勝負有り!第1グループの勝者はスノウ!」

 『うおおお!!!』


 一斉に歓声が上がる。

 スノウは膝をついて項垂れているアンジュロに手を差し伸べた。


 「おれを勝たせてくれたのはお前だアンジュウロー。ありがとう。お前は強い。だから次は必ず優勝できる。気を落とすな」


 パァン‥‥


 「あんたのことはコウ兄が必ず倒してくれる‥‥」


 スノウの差し伸べた手を払いつつそう言うとアンジュロは静かに立ち上がり、控室に歩いて行った。

 スノウはそれを見送った。


 「お疲れ!やっぱ圧勝だったな!」

 「グレンか。いやそうでもなかったよ。きちんと対処を学ばなかったら今頃控室にいたのはおれだったかもしれない」

 「はいはいご謙遜。お!次が始まるみたいだぞ!全部で11グループの試合があるからな。テキパキやらねぇと終わらないって感じだな」


「よーし!第2グループせいれーつ!すぐ並べ!」


 教官が叫ぶ。

 第2グループは様々なトラクレンがいる。

 手足の長い者、筋骨隆々な者、小柄だが明らかに素早そうな見た目の者。

 そしてスノウが気になったのは青い髪をいくつも束ねた細身の青年だった。

 見るからにひ弱そうなその男からは敗北の雰囲気は全く感じられず、不思議な強さのオーラを放っていたからだ。


 「よーし!始め!」


 合図と共に一斉に戦いが始まる。

 だが、第1グループとは違って9人が1人を襲う構図となっている。

 襲われている1人とは先ほどスノウが気になった青髪の細身の青年だった。

 青年が持っているのは槍だ。

 素早くその持っている槍を背中に向けて中腰の体勢になり、呼吸を整え始めた。

 そして9人の一斉攻撃がまさにその青年にヒットするその直前、中心から凄まじい風が飛び出した。


 シュヴァヴァン!!!


 まるでかまいたちのような切り裂く風に見えた。

 次の瞬間9人が一斉に吹き飛び地面に倒れ込んだ。

 勝負は一瞬だった。


 「しょ、勝者は槍使いのコウガ!」

 『うぉぉぉぉぉおおおお!!!』


 一瞬の攻撃で終わってしまったがその圧倒的強さからか歓声が轟く。


 「なんかつまらない試合だったな。まぁいい。次は例のポニーテールだぜ?名前は‥‥」

 「カグラミだ」

 「そうそう!それ!」

 (さぁて。どういう戦いを見せてくれるかな刀使い)


 「よーし!第3グループせいれーつ!すぐ並べ!」


 一斉に前に出る第3グループの面々。

 その中には黒髪のポニーテール剣士、カグラミもいた。


 「よーし!始め!」


 一斉に動き出すが、カグラミ以外のトラクレンたちは固まって防御体勢を取っている。


 「さっきの試合で学んだぜ。不用意に飛び込むからやられるんだよ。きちんと相手の強さを見てから対処すりゃぁいい。要は情報を得てからの反撃だ。そしてあの女を倒した後にじっくり戦えばいい」

 「お前頭いいな」


 どうやらこの作戦を仕組んだのは褐色肌をしたボウズ頭の男だった。

 9人の男達はカグラミに対峙している正面に3名、周囲に5名、頭上を見るために1名のフォーメーションを組んでおり、褐色ボウズはその頭上担当で真ん中にいた。


 「あのボウズ、ずる賢いのバレバレだな」

 「ああ。さもカグラミの攻撃を全員で協力して受ける体勢だと言いたげだが実際には自分を他の8名に守らせる体勢だからな。大方攻撃が来た時にカウンターでも繰り出そうっていうんだろう。そんなに甘くはないけどな」

 「ははは、ちげぇねぇ!」


 カグラミは木刀を片手に持ち、ゆっくりと9人の砦に向かって歩いてくる。


 「お、おい‥‥なんか攻撃するわけでもなくこっちに歩いてくるぞ?」

 「どうすりゃぁいい?俺たちはまずあの女の攻撃を受けるはずだったよな」

 「隙を見て俺が攻撃するから安心しろ。お前らは防御に徹すればいい!そういう作戦だ」

 「わ、わかった!」


 カグラミは尚もゆっくり平然と9人砦に向かって歩いてくる。

 9人の額に汗が滴る。

 そして目の前でカグラミが足を止めた。


 「どうしたの。攻撃しないの?」


 ビクゥ!!


 男達は突然カグラミに話しかけられて驚いている。


 「じゃぁお望みどおりこちらから行くわ」


 そういうとカグラミはゆっくり優雅に木刀を動かしながら構えを取った。


 「く、来るぞ!」


 ズザザザザザザザザババン!!!


 流れるような動きで外周を囲んでいる男達を一瞬で倒してく。


 「もらったぁ!」


 外周の男たちを倒し終わる自分に背を向けたその瞬間を逃さず、褐色ボウズの男は棍を振り上げ凄まじいスピードでカグラミに向けて攻撃を放つ。

 その棍の動きをまるで後頭部にも目がついているかのようにしなやかにギリギリでかわし、振り向きもせずに木刀の柄頭を褐色ボウズの鳩尾に突き込んだ。


 「ぐっはぁ!!」


 褐色ボウスは白目をむいてその場に倒れ込んで気絶した。

 他の者達も既に気を失っている。


 「勝負あり!勝者カグラミ・エスカ!」

 『おおおおおおわぁぁ!』

 『ヒュゥゥゥゥゥゥゥ!』


 若干黄色い歓声が轟く。


 「やっぱ只者じゃねぇなあのポニーテール。さぁて!俺の番だな。いっちょかましてくるか!」

 「油断するなよ?」

 「おう!ま・か・し・と・け!」

 「やれやれ」


 お調子者のようなグレンにやれやれといった表情のスノウだったが、グレンの実力なら問題ないだろうと考えていた。


 「よーし、第4グループせいれーつ!さっさと並べー!」


 流れ作業のように終わったらすぐに次のグループの試合が始まる。

 第4グループの面々が試合場所に出てきた。

 炎のような髪型の長身男はグレンだ。

 手には木剣を持っている。

 グレンを取り囲むように屈強な体つきの男達が並んでいる。


 「よーし!始めぇ!」


 その合図で一斉にグレンに飛びかかる男達。

 グレンの背後にいた男が2人がかりでグレンの腕を掴み歯がいじめにした。

 左右にいた男2名はグレンの足をつかんで離さない。

 あっという間に完全に身動きの取れない状態で拘束されてしまったグレン。


 「ぐ!テメェら汚ねぇぞ!」


 それを腕を組みながら表情変えずに見ているスノウ。


 (あらら、バレバレか)

 「全員で1人をーなんて卑怯なぁー、なんつって!ふんぬ!」


 掴まれているのをお構いなしといった様子でグレンは体を捻り上半身を振り回した。

 歯がいじめにしていた男2名が吹き飛ばされ、両足に食らい付いていた2名もまた、グレンの蹴りのような動作によって遠くへ吹き飛ばされた。


 ゴキゴキ‥‥


 首や背中を鳴らしながらグレンが準備体操をするかのような動きをした。


 「ちょっとずつ頭使って強者を総攻撃して蹴落とす作戦。悪くないけどなぁ。どうしようもない実力差ってあるんだよなぁ!」


 そう言いながらグレンは木剣を鮮やかに振り回しながら9人全員を次々に倒し気絶させてしまった。


 「勝負有り!勝者グレン!」

 「ひやっほーい!」


 グレンの喜びの雄叫びに反して、なぜか全員気に食わなかったのか歓声は起こらなかった。


 「ふぅー。どうだった俺のバトル」


 疲れてもいないだろうに大変だったかのような表情でスノウのところへ歩み寄るグレン。


 「つまらなかったな」

 「おいおい!」

 「ははは冗談だよ。臭い演技だったのは否定しないがとりあえずお疲れ様」

 「人を大根役者みたいにいうんじゃねぇよ!まぁとりあえずお互い勝てたってことでお疲れ様だな」


 その後7つのグループの試合も無事に終わった。

 最後のグループが終わった頃には日が暮れかけていた。


 「よぉーし勝者達―並べぇ!!」

 「ご苦労。諸君らは晴れてグラッドに昇格だ。明日より早速グラッドとして登録され、グラディファイスに自由に登録し参加できる。覚えておく必要があるのはグラッドには2つのルールがあるということだ」


 オールバックで尖った髭の男が話し出した。


 「一つ目は10日ルールだ。知っての通り強制的に参加させられるものではない。だが、グラディライスに出なければ10日でグラッドクラスを剥奪される厳しい環境だ。自分の実力を見極め、情報収集に務めて勝てる試合に出ることを勧める。二つ目は死の覚悟だ。グラディファイスは今回のような木製武器ではなく本物の武器を使う。つまり戦いの中で死んでも文句を言わない、言えない!これがルールだ。これ以外には何もない。クラスに応じて給料も出るし、それをどう使おうと自由だ。強いものには自由が与えられる。戦いに勝ち続け王を、観客を楽しませろ」

 「返事はどうした!返事はー!!!」

 『はい‥‥』


 そうして3日間の訓練が終わった。


・・・・・


・・・


――宿舎――


 宿舎はトラクレン用からグラッド用へと変わった。

 ボロボロなものから普通の宿舎に変わった。

 大した荷物はなかったが、引っ越しはソニアとナージャが行った。

 特に衛生面が格段に良くなったこともあり、ソニアとナージャは喜んだ。


 「ちぇーせっかく徹底的に綺麗にしたってのにもう引越しかよ」

 「そう言わないの。綺麗なところになってよかったでしょう?」

 「まぁな!」

 「さて、スノウと夕食です。グラッドになった祝杯をあげるらしいから。急がないとスノウを待たせてしまいますよ」

 「あねさんよぉ、どうしてスノウをそんなに持ち上げるんだ?あいつ確かに強いけど、あねさんだって強いじゃねぇかよ。あねさん1人だって生きていけるし、頼らなくたっていいんじゃねぇか?」

 「ふふふ。ナージャには分からないかもね。運命とか宿命とかそんな不確かなものではなく、確実な時を超えて糸で繋がった関係。スノウは私たちのマスター。揺るぎない事実なの」

 「ふーん。そんなもんかねー。オイラには全くわかんねーや」

 「さぁ行きますよ」


 ソニアとナージャはスノウのいる新宿舎近くのレストランに向かった。


・・・・・


 スノウのグラッド昇進を祝っての晩餐に同じくグラッドになったグレンも加わって4名で食事を取ることになった。

 ソニアとナージャはグレンと会うのは初めてだった。


 「スノウ!」

 「ソニアか。待たせたな」

 「いえ、予定通りです。あなたの行動に間違いはありません」

 「おいおい!誰だよこのべっぴんさんはよぉ!スノウ、お前の彼女か?」

 「そそそそそんな滅相もありません!!」


 ドガン!!


 ソニアは顔を真っ赤にしながらグレンの肩を叩いたがその拍子にグレンの肩は外れてしまった。


・・・・・


 「そうだったのですね。失礼しました。初対面にも関わらず‥‥」


 スノウからグレンの冗談だと聞かされソニアは反省している。


 「いやぁ俺がいきなり揶揄っちまったからな。気にしないでくれべっぴんさん‥‥ははは‥‥」


 グレンは苦笑いしている。


 「あ、あんたは!」


 いきなりスノウの前に詰め寄ってきた少年が声を張り上げて話しかけてきた。


 「おお、アンジュウローじゃないか」

 「アンジュロだ!」

 「まぁ気にすんな」

 「あんたが言うのはおかしいだろ!ってかあんたなんかコウ兄にかかれば瞬殺だぞ!なぁコウ兄!」

 「アンジュロが失礼した。アンジュロ行くぞ」

 「な!」待ってくれよコウ兄」


 試合で第2グループに出て一瞬で勝者となったコウガだった。

 コウガは軽く会釈するとすぐにその場を立ち去ろうと歩き始める。


 「おい、コウガとか言ったな。どうだ?一緒に飯でも。同じタイミングでグラッドに上がった仲だ。一晩くらい食事を共にしてもバチは当たらないだろう?それにこのアンジュウローに恨まれている誤解もといておきたいしな」


 スノウはコウガに提案した。


 「いいだろう。アンジュロの無礼も詫びたい。そう言うことならいっぱい奢らせていただきたい」

 「お客様、すみませんー。相席よろしいっすかねー」


 突然店員が相席を申し出てきた。

 周りを見渡すと確かに人でごった返している。


 「一体何があったんだ?いつもこんなに混んでるのか?」

 「いやぁ、本日は新たなローラスを決める大会があってその打ち上げなんすよ、すいやせんねー。他のお客さんにも既に相席お願いしてやして、他にお願いできる席がなくてですねー」

 「なるほど、構わないよ」

 「あざーす!じゃぁこちらへ」


 ローラスとは上位20名にはいるクラスのことだった。

 新たにローラスに入った者たちの祝勝会らしく、取り巻き含めて大勢が店の大部分を占有していたのだ。

 そうして案内されてきたのはなんとカグラミ・エスカだった。


 「ポポポポポニーテール!」


 グレンは驚きで口をパクパクさせている。


 「私のことはお構いなく」

 「確かカグラミさんだったな、よろしく」


 スノウが話しかける。


 「エスカでいいわ」

 「これも何かの縁だ。同じテーブルで別々にってのも変だから一緒にどうだい?」

 「そうね、その方が気を使わずに済むならそれでいいわ」


 こうしてスノウ、ソニア、ナージャ、グレン、コウガ、アンジュロ、エスカの7人という奇妙な晩餐が始まった。



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