<ハノキア踏査編> 55.光の塊の行方
55.光の塊の行方
ルナリたちは遠くからグレイたちの様子を窺っていた。
周囲から少しずつ元人族であった魔物たちがじわじわと隕石に集まってきており、一触即発の状態であった。
「作戦の確認だ。我があの場にいるグレイと魔物たちを触手で抑え込む。その隙に全てのグレイを破壊する。準備は良いか?」
『おう!』
ルナリの発言にシンザ、エルティエル、ケリーが返事をした。
この中で明らかに戦闘力が劣るケリーは空中から鋭い刃となる羽根を利用してルナリが押さえ込んでいるグレイを破壊することに集中し、シンザとエルティエルは触手で押さえ込まれているグレイの破壊は勿論、追加で登場するであろう後続のグレイたちの殲滅も行う。
一方ルナリは触手でグレイ、魔物双方を抑え込むことと隕石の監視に集中する。
グコンレンの隕石同様に突然得体の知れない波動を展開し、魔物たちを魔力結晶に変えないとも限らない。
もしそうなれば、ルナリはできる限り魔物たちを遠方へ投げ飛ばし救うつもりであった。
ギュルルルルン!!ガシガシガシガシィ!
グレイと魔物たちがルナリの触手によって拘束された。
「今だ」
ルナリの合図でシンザ、エルティエルが隕石に向かって凄まじい速さで詰め寄り、ケリーは上空に飛び上がって隕石に向かって急降下し始めた。
ズバババババババババババババァァン!!
シンザとエルティエルは凄まじい速さでグレイたちを破壊していく。
ケリーも急降下からの低空飛行で翼の鋭利な部分を刃にし、グレイたちを破壊し始めた。
コアの場所を理解しているため、流れるような動きで攻撃し、一撃でコアを貫き破壊している。
「やっぱり来たね!」
抑え込まれたグレイたちの半数が破壊されると隕石の中からグレイがぞろぞろと登場し始めた。
「出てきて早々悪いけどみんな眠ってもらうよ!」
シンザとエルティエルは隕石から出てきたグレイたちの殲滅に回り、ケリーは触手で抑え込まれているグレイの破壊に専念した。
ギュィィィィィィィィィィィィィィン!!
「うっ!」
「まさか?!」
「ぐぅぅ!あたまが!痛い!」
突如凄まじい耳鳴りが響き、頭が割れんばかりの頭痛も発症している。
隕石から激しい破壊の周波数が展開されたのだ。
「まずいよルナリ!」
「分かっている。魔物たちを飛ばす!」
ルナリは抑え込んでいる魔物たちを遠方へと吹き飛ばそうとし始めた。
同時に隕石にも負の情念の触手を這わせており、変化を確認出来るようにしておりその分析も行なっていた。
「こ‥‥これは!!」
ルナリは何かに気づいたようだったが、次の瞬間、周囲に激しい破壊波が広がった。
魔物を遠くへと飛ばそうと触手を動かそうとするが、破壊振動によって思うように触手を動かせずに魔物たちは地面に転がってしまった。
ギュィィィィィ‥‥ギュルルルルルルルル‥‥
「まずい!隕石を破壊せねば!」
ルナリは破壊波を止めるべく隕石の破壊に集中した。
ドッゴォォォォォォォォン!!
ルナリの触手の攻撃によって隕石が真っ二つに破壊された。
「念の為粉々にしてや‥‥ぐあっ!!」
バチィン!!
ルナリの触手が破壊された。
シュバァァァァァァァン!!
ズバババババババババァァァァン!!
再び隕石から発せられた破壊波によって凄まじい速さでグレイたちが破壊されていく。
そしてルナリの触手から解放された魔物たちが苦しみ始めた。
触手から解放され逃げられるはずの魔物たちは破壊波のあまりの激しい頭痛で動けなかったのだ。そして体を小刻みに震わせながら頭部や体の一部が膨らみ始めて、断末魔の叫びと共に弾け飛んだ。
『ぎぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
バババババババババァァァン!!ババババァァァァァァァァァン!!
元人族であった魔物たちは魔力結晶へと姿を変えた。
ボトボトボトボトボト!!
地面に魔力結晶が転がる。
ギュルルルルルルルルルル!!
そして隕石に重力波を展開し、魔力結晶が一気に隕石に吸い寄せられていく。
「させないわよ!」
エルティエルが回転しながら剣を真っ二つになった隕石に向かって振り下ろした。
パァァァァ!!バァァン!!
「きゃぁ!」
突如隕石が光だし、エルティエルは何かの力によって吹き飛ばされた。
ガシィ!!
ケリーがエルティエルを受け止め、そのまま20メートルほど上空まで上昇して待機した。
「ありがとうケリー」
「ううん!それよりも隕石が!」
パァッ!!ヒュゥゥゥゥン!!
光の塊となった隕石は西の方へと飛んでいってしまった。
「ルナリ大丈夫?!」
シンザは素早く倒れ込んでいるルナリの側に来てルナリを抱き抱えた。
「大丈夫だ‥‥シンザはやはり優しいな」
「当たり前だよ!それよりも何があったの?!」
スタ‥
エルティエルとケリーが着地してルナリとシンザのもとへとやってきた。
「ルナリ?」
「大丈夫なの?」
心配する二人にルナリは僅かな笑みを見せると触手を使ってゆっくりと立ち上がった。
「隕石の秘密を見た」
『え?!』
ルナリの言葉に3人は驚きの表情を見せた。
「時間がない。移動しながら話す。エルティエル、ケリー、すまないが我とシンザを抱えて飛行して移動できないだろうか?」
「大丈夫よ」
「任せておいて!」
「すまぬ。それで隕石の光の塊は西へ飛んでいったな?」
「うん、確かに西の方だよ」
「もしかしてロロンガ・ルザの隕石に向かったのかしら?確かまだ破壊されていなかったはずよね」
「いや、おそらくメーンザーレの西にあった小規模隕石のところだろう」
「あれ?そこって破壊されていたよね?破壊された隕石のところには行かないじゃないかいルナリ?」
「シンザよ。我を信じるのだ。エルティエル、ケリーすまぬがメーンザーレの西の隕石に向かってくれ」
「了解よ」
「うん!」
エルティエルはルナリを抱え、ケリーはシンザを背負って飛びながら移動を始めた。
空を移動しながらルナリは話し始めた。
「隕石を二つに破り、さらに粉微塵にしようとした際にふたつ気づいたことがある」
「何に気づいたんだいルナリ?」
「ひとつは隕石は粉微塵にしなければ再生するということだ。破った隕石の断面に触手で触れた時、隕石の構造が破壊されたと思っていたのだが、隕石が自ら分離したようになっていたのだ。内部は特殊金属のマクロニウムだ。コアを使ってマクロニウムでグレイアンやグレイを形成しているくらいだから破れたように偽装するのは容易いこと。何故それに気づけなかったと後悔している。粉微塵に破壊しようとした時既に隕石は破壊波を展開していたからな」
「破壊されたことをカムフラージュしたってこと?一体何のために?」
「これは我の推測だが、本当に破壊された隕石はロアース山の麓にある巨大隕石だけだ。後は中途半端な破壊、いや破壊したと思い込んでいただけで破壊していなかったのだ。そして分かったことのもう一つ。グコンレンの北50キロ付近の隕石、我らが破壊しようとして光の塊となって消えたあの隕石のことだが、あれは先ほどのメルセン平原の隕石と融合している」
『え?!』
シンザ、エルティエル、ケリーの3人はルナリの言葉に驚きの声をあげた。
「どういうこと?!」
「大きさ同じだったよ?ケリーが前に見た時とさっき見た時の大きさは大体同じだったんだよ?見間違えしないから!」
「ケリーよ。お前は見間違えてはおらぬ。グコンレンの隕石を取り込んだメルセン平原の隕石は大きさを変えずにその密度を増していたのだ。おそらくロアース山の麓の隕石が5つの隕石の中心であったことは間違いない。だが我らが完全破壊してしまった。故にグレイどもは新たな中心的隕石を形成しようとしていると思うのだ」
「つ、つまり、グコンレンの隕石を吸収したメルセン平原の隕石はさらに他のふたつの隕石を吸収しようとしているってこと?」
「その通りだエルティエル。そして4つの隕石がひとつになった時、ティフェレト全土にあの破壊波が展開される気がするのだ」
「そんなことしたらティフェレトの魔物化した人族が皆魔力結晶になってしまうじゃない!」
「それが奴らの狙いなのだろうな」
「そんな!」
「どうすれば阻止できる?」
「二手に分かれてそれぞれで同時に破壊する。正確にはメーンザーレ近くにある隕石を適度に攻撃し、注意を惹きつけておく間にロロンガ・ルザの隕石を完全破壊する。粉微塵にするのだ。4つの隕石がひとつにならなければおそらくティフェレト全土に広がる破壊波は撃てないはずだ。結合する隕石を失ったメーンザーレの隕石は3つの威力で破壊波を放つはずだ。自暴自棄のようにな」
「それも防ぐってことよね」
「その通りだ」
「分かったわ。どう分かれる?」
「我とエルティエルはメーンザーレの隕石だ。シンザとケリーはロロンガ・ルザに向かうのだ」
「分かったよルナリ。くれぐれも無茶はしないでね?」
「優しいのだなシンザよ」
「はいはい、いちゃいちゃするのは後!とにかくケリーとシンザはロロンガ・ルザに向かって!時間がないわ!」
『おう!』
ケリーはスピードを上げてシンザと共にロロンガ・ルザの跡地から数キロ南にある隕石に向かって飛んでいった。
「さて、気合いを入れなきゃね。簡単な方をふたりに任せたってことはメーンザーレの隕石は相当手強いのよね?」
「分かっていたかエルティエル。グレイどもは隕石同士で繋がりを持っているはず。ロロンガ・ルザの隕石からの信号が途絶えた瞬間に破壊されたと気づくはずだ。そうなればすぐ様自爆行動に出るであろう。それを防がねばならぬ」
「あの割れそうなくらい激しい頭痛を伴う波動の中で隕石を粉微塵にしなきゃならないのよね。はぁ‥‥憂鬱だわ」
「天使ともあろう者が弱音を吐くとは滑稽だなエルティエル。いや、お前は既に天使ではないのかもしれぬな」
「どういう意味!」
「フフフ‥‥冗談だ。だが嫌いではないのだろう?ニンゲンのような感情の振れとそれに一喜一憂してしまう自分自身に」
「まぁね。大天使カマエルがニンゲンに憧れてニンゲンを演じ続けても演者から先に進めないのに対して、私はそれを通り越して感情に振り回されているからね。カマエルが私に優しいのはそれに興味があるからなんだと思うわ」
「そうかもな」
(いや、お前は既に天使の先‥‥いや進化した領域にいるのやもしれんぞエルティエル。それをカマエルは希望と見ているのでろう‥‥。だがこれは本人には言うまい‥‥)
「さて、それでは覚悟はよいか?」
「勿論よ。いつでも行けるわ」
「ふん。では突撃だ」
「おう!」
エルティエルはスピードを上げてルナリと共にメーンザーレから西に20キロ付近にある隕石を目指して飛んでいった。
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