<ハノキア踏査編> 54.光の塊
54.光の塊
突如視界が全く異なった場所に切り替わった。
シンザは周囲をキョロキョロと見回す。
「ここは?」
「私の精神世界よ」
ルナリとシンザが振り向くとそこには戦士の格好をしたエルティエルが立っていた。
「エルティエルさん?!」
「突然呼び込んでしまってごめんなさい。普通に会話や筆談ではミカエルに観られてしまうから私の精神世界に来てもらったの。ここならミカエルも覗くことは出来ないから安心して会話が出来るわ」
「だが我の触手とシンザの額にお前の額を当てている時点で精神世界に呼び込んでいると分かってしまうのではないか?」
「大丈夫よルナリ。私の精神世界での1時間は外の世界の10秒にも満たない調整が出来るの。天使の特権ね。落ち着いていないと使えないから中々戦闘では使えないけれど。それとミカエルが天界に到着するまで20秒近く掛かるのだけど、それまでは下界を観ることが出来ないから気づかないわ」
「便利なものだな」
「便利かぁ。さっきも言ったけど落ち着いて冷静に意識を集中させて時間を調整する必要があってこれが結構難しいのよね。て言うかほぼ初めて使ったわ」
ルナリとシンザは顔を見合わせた。
エルティエルの行き当たりばったり感と天使の優れた力を同時に見せられ混乱したのだった。
「さて。とは言えあまり時間はないわね。端的に言うと、ミカエルが私に語ったマルクトの内容は、私が伝え聞いた話とは違ったの」
「何が違うのだ?」
エルティエルはスノウから聞いたマルクトの2031年までの出来事を説明した。
2025年に発生した大地震やパンデミックによって多くの命が失われた話に対し、ミカエルの話は2026年に隕石が落ち世界の半分が壊滅したと言うのだ。
ゲブラーを知るシンザはナラカが隕石の落下によって形成されたことは知っており、ミカエルの言っていたことが自身同じ理解であると返した。
だがマルクトについてはシンザもルナリも知らないためあまりピンと来ていなかった。
エルティエルも同様であったが、スノウの言葉とミカエルの説明にギャップがあったことについてはスノウを全面的に信じていることもありミカエルを疑った。
「兎に角隕石落下したと言うことはグレイアンの侵略があってもおかしくはない。全く世界は厄介事だらけだがオルダマトラに加え、グレイアンも追跡しなければならない。あやつらの真の目的を明らかにしてな」
「となるとスノウさん達とも相談だけど、次の行き先はゲブラーかマルクトってことになるかもね」
「そう言うことなら順番としてはゲブラーね。その後マルクトになると思うわ」
エルティエルが何もないところに手をかざすとハノキアの世界の配置図がホログラムのように現れた。
コクマ
ネツァク ケセド
マルクト ケテル ビナー
ゲブラー ティフェレト
ホド
「すごいですね!エルティエルさんこんなことも出来ちゃうんですね!」
「ま、まぁね。天使だし!」
「ふん。自分の精神世界を操ることが出来れば容易いことだ。この程度、我にとっては造作もない」
「まぁまぁ‥‥」
シンザは苦笑いしながらルナリを宥めた。
「そろそろ精神世界から出たほうがいいわね」
「取り敢えずミカエルは要注意と言うことだな。そして先ずはこのティフェレトでグレイアンどもが何を企み実行しようとしているのかを突き止めねばならない」
「そうね」
「そう言えば魔物化された人たちが魔力結晶化して隕石に吸い込まれた後、光の塊になって飛んで行ったよね」
「ロアース山の方だったわ。でもあそこの隕石は破壊したから何もないはずよね?」
「確認する必要がある。グレイアンはかなり高等の科学技術を有していると思われる。場合によっては破壊した隕石が修復されておるやも知れぬ」
「ええ?!だとしてあの昆虫グレイアンが出てきたら僕らだけじゃ勝てないんじゃない?!スノウさんやエスティさんがいないと!」
「その通りだ。特殊な振動破出なければあやつを倒すことは不可能だからな。もし隕石が復活しているとなるなら、スノウ達の帰還を待つ他あるまい」
「分かったよルナリ。それじゃぁ早速行こう」
シンザたちはロアース山の麓にあった超巨大隕石を目指して出発した。
・・・・・
シンザたちは途中ラザレ王宮都に寄った。
食事をとるためと食料を手に入れる目的であったが城下町で聞き取りも行った。
数人が空で昼間にも関わらず流れ星を見た、と言う者がおり、明らかに隕石からロアース山に向かって飛んで行った光の塊だと分かった。
だが光の塊を見た者たち全員が光の塊はロアース山では無くメルセン平原の南の方に落ちたと証言していたのだ。
「方向を変えたのかな」
「可能性はあるわね。例えばロアース山麓の巨大隕石に向かって飛んでいたけど、破壊されていたのを知って破壊されていない隕石に向かって方向を変えて飛んで行ったとかね」
「信憑性は高いぞエルティエル」
「じゃぁメルセン平原に行く?」
「その前に念の為、ロアース山麓の隕石を確認すべきだ。修復されているようなら仮説が崩れる。しかと調べる必要がある」
「そうだね」
シンザたちは予定通りロアース山麓の超巨大隕石を確認しに行った。
隕石の近くまで来た3人は距離をとって確認することにした。
エルティエルは遠くからスメラギスコープで隕石を確認する。
「天使のスメラギスコープ使うんですね」
「ら、楽だからよ!千里眼もい、意外と疲れるんだから」
「へぇ、そうなんですか」
「何!疑ってるわけ?シンザ」
「いえ、そう言うわけじゃないですけど」
ふたりの会話を無視するようにルナリが割って入ってきた。
「破壊されたままだ」
『!』
エルティエルはスメラギスコープで隕石を確認したがルナリの言う通り、レヴルストラによって破壊されたままの状態であることが分かった。
「破壊されたままってことはやはりメルセン平原の破壊されていない隕石に向かって飛んで行ったみたいね」
「そのようですね。それじゃぁメルセン平原に行きましょう!」
シンザたちは進路を変え、メルセン平原の南にある小規模の隕石を目指して出発した。
数日かかったが無事に隕石付近に到着した。
そこにあったのは見たことのある光景だった。
「グレイたちが多勢いますね。隕石を囲んでいます。きっとこの後魔物化された人たちが集まってくる感じですよね?」
「そうね」
シンザの予想は当たり、周囲に魔物の気配が広がったかと思うと森や林、岩陰などから次々に魔物が現れた。
グコンレンの隕石の時と同じ状況であった。
『?!』
「何か来るわ!」
凄まじい勢いで近づいてくる存在を感じていた3人であったがその姿を見て安心した。
やって来たのはケリーだった。
ヒュゥゥン‥バッサバッサ‥‥トスン‥
「ケリー!」
「シンザ!みんな!」
ケリーは嬉しそうに近寄って来た。
「無事だったんだね!良かったよ」
ケリーは嬉しそうに言った。
「隕石はあの通り壊れてないよ。それと人だった魔物たちが沢山集まってる。皆怒ってるよ」
3人はケリーの言葉に納得した。
「よし。それでは魔物化された人族たちが魔力結晶化する前にグレイどもを殲滅し隕石を破壊だ」
『おう!』
ルナリたちはすぐに行動を起こした。
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