<ハノキア踏査編> 25.再会
<レヴルストラメンバー>
・スノウ:本編の主人公。アノマリーと呼ばれ、得体の知れない力を持つ強者だが、本人は戸惑っている。
・フランシア:スノウをマスターと慕う謎多き女性
・ソニック:ソニアの弟でひとつの体を共有している人格で冷静な性格。音氷魔法の使い手。
・ソニア:ソニックの姉でひとつの体を共有している人格で思い立ったらすぐ行動する性格。音熱魔法の使い手。
・ワサン:根源種の銀狼だが、大天使カマエルによって人間の容姿を与えられた。
・シンザ:ゲブラーで合流した炎魔法と弓の使い手。
・ルナリ:ホムンクルスが負の情念のエネルギーを取り込み変容した存在。シンザを溺愛している。
・シルゼヴァ:半神。恐ろしい強さを誇る。博識で勉強熱心だが、飽きっぽく自己中心的な性格。
・ヘラクレス:半神。魔法はほぼ使えないが、ずば抜けた筋力と戦闘力で異常な強さを有す。
・アリオク:魔王。愛刀獅子玄常を使って敵を暗殺する。
・ガース:ヴィマナの機関士。レヴルストラ1stのメンバーであり、ヴィマナを心から愛している。
・エストレア:元ホドの巨大キュリアのガルガンチュア総帥だったが、現在はティフェレトのラザレ王国の女王
・ケリー:ハーピーの上位種であるハルピュイアのひとり。特殊な運命を背負っている。
25.再会
「こやつ‥‥生命体ではない」
『え?!』
思いも寄らないルナリの言葉にソニアとシンザは驚いた。
「うそでしょ?これが生き物じゃないって?!そんなことあるの?!」
「生き物の定義の解釈によるが、確かに体は有機物で出来ている。だが、それを動かしているのは機械だ。今破壊したコアなのだ。簡単に言えば死体を動かすカラクリ装置のようなものだな」
「うえぇ‥‥」
「分かりやすく表現した例えですよソニアさん。でも納得です。普通生物なら持っているはずの反射や反応がなかったんですよね」
「あ、分かるわそれ!目の前に剣を振り下ろされた時に思わず瞼を閉じる反射とか、痛みがある時、痛みを堪える反応とか!」
「そうだ。恐らく自身の生命活動を守る必要性を有していないのだろう。遺伝子に組み込まれた種の保存や生存本能といったものが存在しないのだ。だが、体は有機物で構成されている。これを生命体ととることも出来るが、我の解釈で言えばホムンクルスの一種と言える」
「ルナリと一緒じゃない!」
「ソニアさん!」
(姉さん!)
ソニアは自分の発言がルナリを侮辱するものだと気づき驚いた顔を見せた。
ルナリが人ではないと、生き物ですらないと言ったようなものだったからだ。
シンザは複雑な表情でソニアを見たが、その直後ソニックは強引に表に出てきた。
「ルナリ、ごめん。姉さんは、悪気は無かったんだ。今精神の部屋で反省している。謝罪させるから」
「よい。気にするな。我はホムンクルスだ。それを指摘されただ‥」
「違う!」
シンザは声を荒げて言った。
「ルナリはホムンクルスじゃない!ルナリはルナリだよ!」
「シンザ‥‥良いのだ。生ける者皆自分が何者か分かっていないものだ。だが、我にはシンザがおり、レヴルストラの皆がいる。自分が何者かなど関係ない。我はそれでよいと思っている」
ヒュン‥
ソニックに代わりソニアが表に出来きた。
「ルナリ‥‥‥‥ごめん!」
ソニアは思い切り頭を下げた。
美しい紅い髪がバサっと揺れた。
「よいと言っているぞソニア。我が怒りと悲しみを覚えるのはシンザが侮辱されたり攻撃されたりした時と、レヴルストラの仲間では無くなる時だ。だから気にするな。顔を上げろ」
「ルナリ‥‥」
「さて、あの隕石を調べるぞ。隕石の中にニンゲンを元に戻す方法や昆虫型のグレイアンを倒す方法があるやもしれないからな。昆虫型のグレイアンは脅威だ。あれがいる限り完全にグレイどもを消し去ることは難しいだろうからな」
ソニアとシンザは頷いた。
ザザザ‥‥
3人は慎重に隕石に近づいた。
「よくみると脈打っているように見えたのはうっすら光る筋が流れているからなのね。こんな鉱物ってある?」
「分かりませんね。ソニックの意見も聞いて見ていいですか?」
「あ、あぁ、あっそ‥」
ソニアはつまらなそうにソニックに交代した。
ソニックはシンザに苦笑いした。
「‥‥‥‥」
ソニックはゆっくりと手を近づけた。
(熱い‥‥)
キュルルルルキャァァァン‥‥
ソニックは音氷魔法で隕石を凍らせた。
パキイィン‥‥ジョワァァ‥‥
氷はすぐに割れ蒸発した。
「これって‥」
「そうだよ。かなりの熱を持っている。この隕石。触るのも危険なほどだ」
「我なら問題ない」
ルナリは負の情念の触手を隕石に伸ばした。
ジュッ‥‥
一瞬燃え尽きるような音がした後、触手は透過するように隕石の中へと入っていく。
「ふむ‥‥内部は凍るような冷たさだ。金属のようだな。‥‥内部は金属で埋め尽くされている。それ以外は何もないようだ。一体何なのだこれは‥‥グレイどもが潜んでいられるような空間はない」
「どういうこと?!」
「分からぬ。調べる必要があるな。この秘密を解かねば人を戻す方法も昆虫型グレイアンを倒す方法も見つからないだろう」
ヒュン‥
ソニアが表に出来てきた。
「それならここにキャンプを張りましょ。じっくり調べるならそれがいいわ。シンザとソニックに任せれば簡易的な家はすぐに作れるし」
「え?」
(え?)
シンザと精神の部屋にいるソニックはソニアの無茶振りに驚きの表情を見せた。
・・・・・
――二日後――
簡易的な家が完成し、隕石の調査が始まった。
ソニックはスノウたち第1班とワサンたち第2班にこの場所へ集合するように伝えるための鳥を飛ばした。
その間もルナリによる隕石の分析は続いていたが一向に進展はなかった。
そして、その日の夜にスノウとフランシアが簡易拠点に到着した。
「スノウ!」
ソニアは嬉しそうにスノウに抱きつこうとしたが、フランシアに止められた。
すぐさまソニックに代わる。
「スノウ、ご無事で良かった」
「そっちもな。そとの隕石を見たが大変だったようだな」
「ええ。その話は後ほどゆっくりと。そちらの状況は?」
「越界エネルギー充填施設を見つけた。今、シルゼヴァが残ってコントロールルームを調べているところだ。激しい破壊の跡と悪魔たちが守っていたから間違いなくオルダマトラが訪れ他場所だ。やつらがティフェレトに戻ってくるならいずれ再会することになるだろう」
「そうでしたか。流石はスノウ。一方こちらはミッション未達の状態です。見られた通り、隕石の内部をルナリが調べてくれています。ですが、隕石の内部にはグレイのいた痕跡というか潜む空間すらないようなのです」
「なるほど。詳しく知りたいのだが、暗くては調査も難しいだろう。お前の言う通り明日ゆっくり聞かせてくれ」
「はい」
シンザが家から出てきた。
「スノウさん、フランシアさん。晩飯はできていますから食べましょう。道中ではまともな食事はなかったでしょうから」
「ありがとうシンザ。丁度腹が減っていたところだからありがたい」
スノウたちは久しぶりの晩餐を楽しんだ。
・・・・・
――翌朝――
シンザが調理した朝食を皆で囲んで食べている最中に第2班のワサンたちが簡易拠点に到着した。
「戻ったのねみんな!」
ソニアの声で皆が振り向いた。
その先にいたのはワサン、ヘラクレス、エストレア、ケリーだった。
タッタッタ!
エストレアがスノウに向かって駆け出そうとした瞬間、ケリーが凄い勢いでスノウに向かって飛んでいく。
ガシィ!!
「!!」
ケリーはスノウにタックルするように抱きついたのだが、思わず倒れそうになったスノウは驚いた表情でグッと堪えた。
「スノウ!スノウ!」
「え?!‥‥もしかしてケリーか?!」
「そうだよ!スノウ!ケリーだよ!」
「ええ?!」
大きく成長したケリーを見てスノウは一瞬気づかなかったが、声と美しい碧い羽と懐かしい匂いで思い出した。
「大きくなったなケリー!」
「うん!スノウに会うの待っている間ケリー頑張ったよ!スノウのお嫁さんになるから!」
『え?!』
そこ言葉にフランシアとソニア、エストレアが反応した。
「あたし!スノウのお嫁さんになるから!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ‥‥
フランシアから殺意のオーラが、ソニアからは熱波のようなオーラが発せられた。
「お前、いい加減にマスターから離れろ。魔物風情が。今ここで殺してやる」
「その姿、ハーピーね。人を惑わし喰らうハーピーなら消し炭にしていいわよね」
「ちょ、ちょっと待てふたりとも!」
ワサンが慌てて止めに入る。
「こいつはケライノーだ!スノウの仲間だったハルピュイアだよ!殺しても燃やしてもだめだ!」
『はぁ?!ワサン。貴方から死にたいようね』
「な?!」
フランシアは剣を抜き、ソニアは手のひらにファイヤーボールを出現させた。
バッゴォォォォン!
逃げるワサンを追いかけながら本気の攻撃を繰り出すフランシアとソニアだった。
それを無視するようにスノウはケリーの両脇をもって抱き抱えた。
「本当に大きくなったなケリー。皆は無事か?」
「うん!」
「そうか。長旅疲れただろう?おれの仲間のシンザが朝食を作ってくれたんだ。口に合うか分からないが一緒に食べよう」
「うん!」
ケリーは素直に頷き椅子に座った。
それを見たヘラクレスは小声でぼそっと呟く。
「何だよケリーのやつ。スノウの前だと人が変わったように子供みてぇになりやがって。俺なんて何回髪の毛むしられたか。おい、シンザ。俺の分の朝飯もあるんだろうな?」
「ははは‥ありますよ。安心してください。皆さん戻る頃かと思って多めに作っておきましたらかね」
「流石シンザだな。安心するよ。お前やソニックみてぇに他者を気遣える者ってのは少ないからな。特にレヴルストラにはよ」
「ははは‥‥」
(何か嫌なことでもあったのかな‥‥)
シンザは苦笑いで不機嫌そうなヘラクレスを見ていた。
「スノウ‥‥」
エストレアがスノウの後ろから心細そうな声で名を呼んだ。
「エスティ‥‥無事でよかった」
「うん‥‥」
スノウはエストレアの無事を心から喜んでいたのだが、殆ど黙ってティフェレトを去った過去から責められるのではないかと思っていた。
一方のエストレアは何かを言いたいのだが、自分の心の中で感情が複雑に入り組んでおり、整理がつかずに言葉を発せずにいた。
ギョロリ‥‥
「おや、紫髪の小娘。元気だったようだねぇ」
突然スノウの髪の毛に切れ長の目が現れ言葉を発した。
「オボロ?!」
「ああそうだよ。てか気安く名前を呼ぶんじゃないよ小娘が」
「ははは‥‥良かった。私のせいでオボロが死んでしまったのではないかと心配していたから」
「馬鹿者かい。あたしがそれくらいで死ぬわけもなかろうが。そんなことも分からず、この世界を救い、女王やっているとはねぇ。だからあんな機械仕掛けの人形にいいようにやられるんだよ」
「え?オボロ!あれが何か知っているの?!」
エストレは複雑な感情が吹き飛んだのか、オボロに詰め寄りながら言った。
「知るわけないだろうが。観察してりゃぁそれくらいは分かるってもんさ。小童」
「何だババァ」
「隕石、ルナリが調べているんだろう?あたしも手伝ってやるからさっさと飯食っちまいな。お前の体力と魔力であたしは生きてんだ。お前には食って寝る義務があるんだからねぇ。さっさとおし」
「何だよ。命令すんなよババァ」
スノウはオボロを追い払うように髪の毛をかき上げた
そして振り向かずにエストレアに話しかけた。
「エスティ‥‥必ずティフェレトは救う。だから安心しろ。そして‥‥おかえり‥」
「スノウ‥‥」
ピト‥
エストレアはスノウの服の裾を掴むと背中に顔を埋めた。
遠くでフランシアとソニアに本気で攻撃を受けているワサンが必死で逃げている様子を誰も気にしていなかった。
いつも読んで頂き本当にありがとうございます。




