<ハノキア踏査編> 24.グコンレンの隕石
24.グコンレンの隕石
「あれがここの隕石?」
「随分と小さいですね」
「でも異様であることは分かるわ」
「ええ。あの何というか脈打っているような気色悪い感覚‥‥隕石以外では見たことないですからね」
「さて、どうするのだ?どのような相手が出てくるか、蓋を開けて見なければ分からんぞ」
「どうするもこうするも無いわ。いずれ開ける蓋ならすぐにでも開ければいいのよ」
ダシュン!
ソニアは何も言わずに音熱炎魔法で凄まじい勢いで空に舞い上がった。
それを見たシンザはため息をついた。
「はぁ‥‥デジャヴかね‥‥ほんとソニックはよくやってるよ」
「まぁそう言うなシンザ。レヴルストラは個性豊かな仲間で構成されている。ソニアの個性はレヴルストラにとって必要なものだ」
「分かってるよ。頼りになるしね。ただ一緒にいると気疲れするってだけだよ。それにしてもソニアさんのことは高く評価しているんだねルナリ」
「ソニアだけではない。レヴルストラ全員を優秀な者たちだと思っている。さぁシンザよ。話している暇は無いぞ。掴まるのだ」
「はいはい、ついこの間やったやつね」
ルナリは負ぶさったシンザを抱えそのまま負の情念の触手で勢いよく跳躍した。
ダシュン!!
上空からは既にソニアが数体のグレイと戦っていた。
「あれ、数が少ないね。やっぱり隕石の規模が小さいからかな?」
「少ないだけではない。よく見てみるのだ」
「!‥‥ソニアさんの炎で表皮が溶けているね。あれは音振動を凝縮させたファイヤーボールじゃないように見えるけど」
「そうだ。ソニアはこのグレイたちの表皮の強度や戦闘力を推測っているのだ。どうやらロアース山麓の巨大隕石の者たちとは違うようだな」
「ってことはロアースの巨大隕石の昆虫グレイが最強種ってことか‥‥」
「もっと対象を増やさねば判断は出来ないがな。そして恐らくこれらグレイを倒した後に、ワサンの手紙にあったグレイアンとやらが出てくるのだろう」
ルナリの言葉通り、ソニアによってグレイが一掃された後、隕石からグレイとは違う何者かが透過して出てきた。
トス‥‥
ソニアはゆっくりと着地した。
「へぇ‥人型じゃないんだ。グレイの上位種って手紙に書いてあったからてっきり人型かと勝手に思い込んでいたけど」
隕石から出てきたのは四足歩行の動物型だった。
歩き方からすると豹のように見えるが、頭部はグレイに近く、特徴的な巨大な吊り上がった目で、違うのは大きく裂けた口で鋭い牙があることだった。
銀色の豹の体に鼻も耳もない口の裂けたグレイの頭部がついている不気味な姿だった。
スタ‥‥
ルナリとシンザはソニアの側に降り立った。
「どうやらこの世界の生物を分析し、模した形態になっているようだな。グレイが人型なのはこの世界に人族が多く住んでいるからだろう。だが、分析した結果、肉弾戦なら人型より動物型、動物型より昆虫型が強いと判断したのだろうな」
「昆虫‥‥確かに小さい体で凄まじい力を持っているから人と同じサイズになったら最強だわ。気持ち悪いけど」
「その順番ってことは人型より強いってことですよね?」
「そうだな。恐らくは人型の数倍は強いはずだ。見た目通りで動きも素早いだろう。名付けるなら豹グレイアンというところか」
「ネーミングセンスいいじゃないルナリ」
「それよりどうしますか?今にも襲ってき‥‥」
ガキィィィィン!!
突然豹のグレイアンが鋭い鉤爪でシンザを攻撃してきた。
ソニアとルナリは油断していたのか、その速さを目で追うことはできなかったが、シンザは反応し、腰の短剣を抜いて鉤爪の攻撃を受けた。
ギギギ‥‥ドッゴン!
シンザの強烈な蹴りが炸裂し、豹グレイアンは後方に飛ばされたが、それに追従したルナリが豹グレイアンの目の前で負の情念の触手で凄まじい打撃ラッシュを繰り出した。
その表情は怒りに我を忘れているように思えるほどだったが、ルナリにとってはシンザを攻撃した豹グレイアンに対する怒りと攻撃を許してしまった自分への怒りが入り混じったものだった。
「あちゃぁ‥完全にルナリを怒らせちゃったね。でもあの豹の動き、凄まじく速かったわ。あれに反応したシンザはもっと凄いけど」
シンザは驚いた表情でソニアを見ていた。
(褒められた‥‥初めてかも‥‥てか何を冷静に言っているんだろう、この人‥‥)
ダシュン!
シンザは一瞬屈んだあと、凄まじい跳躍を見せて豹グレイアンの背後に回り込み短剣での攻撃を繰り出した。
バァァン!
豹グレイアンはルナリとシンザの攻撃に挟まれたが、一瞬の隙をついて、大きく上方に跳躍し光線を放ち出した。
ビィィィィィィィィ!!
両手両足首に腕輪が付いておりそこからレーザーが放たれていた。
ルナリとシンザは辛うじてそれを避けて後方に下がったが、レーザーは執拗にふたりを追いかけている。
「注意力散漫だわ、お前」
ソニアは豹グレイアンの背後に立ち、両手を振り上げた状態から一気に振り下ろした。
その手のひらには音振動が練り込まれたファイヤーボールが握られており、振り下ろしたと同時にファイヤーボールを豹グレイアンにぶち当てた。
ドッゴォォン!!ドロォォォォ‥‥
豹グレイアンの表皮が溶け始めた。
グググ‥‥ズン!
前足が溶けたことで立っていられずに顎から地面に崩れ落ちた。
ドロォォォォォ‥‥
液体金属のように体が崩れ溶けていく。
ヒュン‥‥
そして溶けた体の中から何かが飛び出し、隕石の中へと戻っていった。
「しまった!」
シンザが叫んだ。
「油断したわ!」
ソニアたちは豹グレイアンを追い詰めたが、コアを破壊することができなかったのだ。
ニュゥゥゥ‥‥
隕石から再び何かが透過して出現した。
「何よあれ‥‥」
「まるでケンタウロスじゃないですか‥‥」
現れたのは、体は豹なのだが、頭部からグレイの上半身が生えている状態で、シンザの表現の通りケンタウルスのような姿だが、頭部はグレイそのもので皮膚も銀色で不気味なオーラを放っている。
ガシィ!!
突如ケンタウロス型のグレイアンの動きが止まった。
ルナリがこっそりと地中を這わせていた負の情念の触手で一瞬のうちにケンタウロスグレイアンを捕捉し身動きを封じたのだ。
「ルナリ!」
「今のうちだ。ソニア、例の火球で攻撃するのだ。こやつは順応し始めている」
「!!‥‥了解!」
ソニアは音振動を練り込んだファイヤーボールを拘束され身動きの取れないグレイアンに向けて放った。
ブジュァァァ‥‥ギュルルル‥‥
ソニアのファイヤーボールによって体が溶けているが、すぐに再生が始まった。
「再生!させないわよ!」
ソニアはいくつもの音振動を練り込んだファイヤーボールを発動し、グレイアンに向けて放った。
「うおおおおおお!!」
バシュバシュバシュ!!
ブジュァァァァ!!
再生速度をソニアの攻撃が上回り徐々に体が溶けていく。
ソニアがファイヤーボールでの攻撃を続けているためグレイアンの体は半分以上が溶解した。
「うおおおおおお!!」
ソニアのファイヤーボール攻撃のラッシュが続く。
ブジュァァァ!!‥‥ドロォォォォォォ‥‥
ヒュン!
ガシ!!‥‥スタ‥
溶解した体から飛び出たコアをシンザが素早い動きでキャッチした。
「流石シンザね」
「いえ、ソニアさんの攻撃の凄さには敵いません。破壊しますがいいですか?」
「ちょっと待てシンザ」
ルナリは触手を伸ばしコアに触れた。
「ふん‥‥やはりな‥‥」
バギィィ!!
ルナリはコアを破壊した。
「どうしたのルナリ?」
「こやつ‥‥生命体ではない」
『え?!』
ソニアとシンザは驚きの表情で壊れたコアを見ていた。
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