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<ハノキア踏査編> 17.謎の金属表皮

17.謎の金属表皮


 「きゃぁぁぁぁぁ!助けてぇぇぇぇ!!」


 巨大な隕石の上に座り、無表情のまま叫んでいる人間にワサンとヘラクレスを戦闘の構えをとった。

 明らかに人間の皮を被ったグレイであったからだ。


 「きゃぁぁぁぁぁ‥‥助けて‥‥」


 叫んでいる人間に扮したグレイは声のトーンを落とした。


 「ドル・ゴモイ・エ・ストロベ・カンダ」


 ジュルル‥‥

 ジュルル‥


 隕石の上に座っているグレイが意味不明な言葉を発した直後、隕石から滲み出るようにして何体かのグレイが現れた。


 「上で踏ん反り返っているやつ以外はぶっ殺してOKだよなワサン」

 「ああ」


 ズババババン!!

 ドゴゴゴォォォン!!


 ワサンは凄まじい速さで短刀を振りグレイを斬り刻んだ。

 ヘラクレスは持ち前の腕力を存分に発揮し、一度で数体のグレイを殴りつけて破壊した。


 「エレ・ベ・カンタ・カンダ・ノゾ・ベレラ」


 ジュルル‥‥


 隕石の上に座るグレイが再び得体の知れない言語で話すと、隕石の中から滲み出るようにして1体のグレイが現れた。


 「おいワサン。気づいているか?」

 「グレイを殺した直後の何か銀色の球体が隕石に向かって吸い込まれたやつか?」

 「そうだ。あれは一体何だ?」

 「オレに聞くなよ。グレイの本体か何かじゃないのか?」

 「じゃぁ、あの銀玉を壊さないとグレイは死なねぇってことか?」

 「だからオレに聞くなって。だがその可能性はある。それよりも今出てきたこいつらへの対処が先だ。こいつらさっきまでのグレイとは違うぞ」

 「ああ分かってる。何だか皮膚がコーティングされているみたいだからな」


 ヘラクレスの言葉通り、現れた1体のグレイの表皮は液体金属で覆われているかのような質感だった。


 「取り敢えず攻撃してみる」


 ダシュン!


 ワサンは凄まじい速さでグレイとの距離を詰め短刀で切りつけた。


 ガキィィィン!


 「何?!」


 トォン‥‥スタ


 一撃を放った後ワサンは後方に飛び退いてヘラクレスの側に着地した。


 「硬いな」


 ワサンが放った短刀の一撃はグレイの皮膚に傷一つ付けることができなかった。

 それどころか、ワサンの短刀の一撃の威力をも吸収したかのようにグレイは微動だにしていなかったのだ。


 「お前の刃が通らないなんて相当な硬さだな。だったら潰すまでだ」


 ドォン!‥ゴォォォン!!


 ヘラクレスは凄まじい跳躍と共にその勢いのまま剛腕を思い切りグレイに叩き込んだのだが、寺院の鐘の音のような低い金属反響音が鳴り響き、殴りつけた頭部が大きく凹んだがグレイ自体は平然としていた。


 「ふん!」


 ゴォォォォン!ゴォォォォン!


 ヘラクレスはその後も何度も殴りつけた。

 鐘の音と共にグレイの体が徐々に凹んでいくが、グレイは平然と立っている。


 (ヘラクレスの剛腕打撃のラッシュを受けてダメージがあるように見えるが、おかしい‥‥特にヘラクレスの攻撃を受けて吹き飛ばないのがあり得ない‥‥一体何が起こっているんだ?!)


 ワサンの見立て通り、グレイはヘラクレスによって殴られた部位は凹んでいるが、殴られた凄まじい衝撃を受けてもまるで地面に固定されているかのように全く動いていないのだ。


 トォォン‥スタ‥


 ヘラクレスは何かを感じ取ったのか後方に飛び退いて防御の構えをとった。


 「何か来るぜ」

 「分かっている」


 ワサンも同様に防御の構えをとった。


 シュシュ‥


 グレイは両手の人差し指をワサン、ヘラクレスそれぞれに向けた。

 その直後、人差し指に黒い光が集まり光球を作り出した。


 バシュゥゥゥン!!

 ビギギギギ!!


 グレイの人差し指から黒い光のレーザーが発せられ、ワサンとヘラクレスを襲った。

 ワサンはエル・ウルソーの肉体強化系クラス3魔法バイオニックソーマを纏って両腕をクロスにして黒光レーザーを受けた。

 ワサンの防御によって黒光レーザーは弾けるように方々に散っている。

 一方ヘラクレスは両手で黒光レーザーを受け、それを上方へと弾き受け流していた。


 バシュゥゥゥ‥‥


 黒光レーザーが止まった。


 「ワサン、大丈夫か?」

 「ああ。問題ない。‥‥それよりお前その手!肉が溶けているじゃないか!」

 「問題ねぇよ。回復魔法かけてもらえりゃ治るやつだろ。それより格段に強いこいつをどう料理するか考えないとな」

 「ああ。オレはてっきりグレイはこの地上でグレイの姿のままでは長く存在できないんじゃないかと勝手に思っていたんだが、こいつ平然としているぜ‥‥グレイはそのままでも行動出来るってことか」

 「いや、お前の推論は当たっているかもしれねぇぞ。今やつらは表面に何か纏ってんだよ。あれをひっぺがしゃぁ他のグレイと同じですぐにぶっ殺せる気がする」

 「確かにな。お前のパンチ喰らって1ミリも動かないなんてあり得ないしな」

 「おそらく、重量を変化させたか纏っている何かが地面深くに杭のように埋まっているかどっちかだろう。重力変化なら、やつらは地面にめり込んで埋まっていくはずだ。俺の鉄拳の威力を考えりゃぁそれくらいの重量増加がないと説明がつかねぇ。となれば杭が埋まっていると見た方がいいな」

 「ってことは機動力は極めて低いってことか。だからあの光線で攻撃ってわけだな」

 「取り敢えず凹んだ部分は直ってな‥‥」


 ボゴン!


 ヘラクレスによって殴られたグレイの凹んだ部位が元通りになった。


 「自己修理機能付きか!面白ぇじゃねぇの!」


 ダシュン!


 「!!」


 バゴォォン!!ズザザァァァ‥‥


 突如グレイが凄まじい速さでヘラクレスの前に詰め寄り巨大に膨れ上がった右腕でヘラクレスを殴りつけた。

 咄嗟に両腕をクロスして受けたが、ヘラクレスはそのあまりの衝撃に後方に吹き飛ばされた。

 体勢を崩さず、後方に吹き飛ばされたため、視線はグレイの方に向けられたままだったが、すぐさま距離を詰めたグレイは再び攻撃を仕掛けてきた。


 ブン!!


 間一髪躱したヘラクレスはそのままカウンターを叩き込む。


 ドゴォォン!!ドズゥゥン!!


 顔面に鉄拳を喰らわせ、そのまま地面に叩きつけた。


 ドゴォォン!ドゴォォン!ドゴォォン!ドゴォォン!


 そしてそのまま何度も顔面を殴りつけた。


「おりゃぁぁぁぁ!!」


 ドゴォォン!ドゴォォン!ドゴォォン!ドゴォォン!


 ガシ!グギィィィィィ‥‥


 ヘラクレスはグレイの頭部を掴んだ後、片足でグレイの胸部を踏みつけ押さえつつグレイの頭部を思い切り引っ張り出した。


 ギギギギィィィィィ‥‥


 金属の軋むような音が鳴り響く。


 シュ‥


 グレイは右手の人差し指をヘラクレスに向けた。


「させねぇよ」


 ワサンが凄まじい蹴りをグレイの人差し指に向けて放った。


 ギュォン‥‥


 グレイの人差し指は折れ曲がり黒光レーザーが放てないようになった。


 「うおぉぉぉぉぉ!!」


 ビギギギギギギ‥‥ギュギャァン!


 グレイの頭部が引きちぎられた。


 バシィ!


 頭部から銀色の球体が飛び出したのをワサンは見逃さずキャッチした。


 「ナイスキャッチじゃねぇかワサン!」

 「ヘラクレス!まだ生きているぞそいつ!」

 「!!」


 ヘラクレスはグレイの胴体部分が蠢いているのを見た。


 「いや違うぜ。これ表皮が動いているだけだ。グレイ本体は死んでる。表皮が生き物のように動き出したぜ!」


 その時ワサンは隕石の上に座っているグレイを見た。

 何やら両手の指を動かして操作しているように見えた。


 「ヘラクレス!そのグレイの胴体を掴め!走るぞ!」

 「はぁ?!気持ち悪ぃよ!」

 「いいから走れ!」


 ワサンとヘラクレスは隕石から遠ざかるようにして走った。

 その間、ヘラクレスが掴んでいるグレイの胴体から表皮が液体金属が蠢きグレイの胴体を操ろうとしていたが、隕石から離れていくにつれて徐々にその動きも鈍くなっていた。


 「あ!おじさんたち!」

 「トマス!エリサ!山脈の方に向かって走れ!」

 「はぁ?!」

 「いいから走れ!」

 「きゃぁぁぁ!ヘラクレスのおじさま!その手に持っているのは何ですの?!」

 「話は後だ!」


 4人はメルセンタカラン山脈の麓の方へと走っていった。

 隕石が視界から消えるほどの距離まで逃げると、蠢いていたグレイの死体は力なくただの死体へと変わっていた。


 「一体何があったのですか?!説明していただきますわ!」


 ワサンは先ほどの出来事をトマスとエリサに説明した。


 「その銀色の球体はグレイの本体なのかもしれないよ!これは発見だよ!こいつを分析すればグレイを全滅させられるかも知れない!」

 「興奮するなトマス。その前にこの死体の表皮にある物質だ」


 ヘラクレスは手に持っている死体となったグレイの胴体の表皮を力任せに剥がし始めた。


 グギギギギィィ‥‥


 金属の軋むような耳障りな音が鳴り響く。


 バゴギィィン!


 グレイの胴体を模った形で表皮が剥がれた。

 それはまさに金属で、美しく深い銀色の見たことのない金属だった。


 「何だこれは」

 「これ、どこかで見たことある気がしますわ。持ち帰りましょう。ルー・サイファノス様ならお分かりになるかもしれません」

 「隕石の上に座っていたグレイが何やら操作していたが、それで勝手に動き出したんだ。これには特殊な力が宿っているのかもしれない。場合によってはグレイがこれを探知する能力もあるかもしれない。そうなれば、オレたちがこれを持っている限り危険が伴うってことだ。トマス、エリサ、お前らはそれでも大丈夫か?」

 「もちろんだよ。僕らはグレイと戦っているんだからね」

 「危険など承知の上ですわ。覚悟は決めています」

 「分かった」


 ワサンはふたりの真剣な表情を見て頷いた。


 「それとこの銀玉だ」

 「その表現は好きではありませんわ」

 「?‥‥まぁいい。この玉はヘラクレスがグレイを破壊した時に飛び出たものだ。トマスの言う通り、こいつにはグレイの秘密が隠されているのかもしれない。持ち帰って調べるとしよう」

 「そうだね。でもそんな物がグレイの中に入っていただなんで。これまで何体かは殺して確認していたんだけど、そんな玉はなかったね」

 「破壊と同時にものすごい速さで飛んでいったんだ。これは丁度目の前で飛んで行こうと飛び出したから咄嗟に掴めた。お前らじゃぁ視認も出来ない速さだな」

 「なるほどねぇ。ワサンのおじさんは自分が如何に素早く動けるかをアピールしたいわけだね。そういうことでいいよ。おじさんは速い。すごいよ」

 「‥‥‥‥」


 ワサンは黙ってしまった。


 「さて、行こうか。その銀色の金属はヘラクレスのおじさんが責任を持って持ち運んでね。銀色の球体はワサンのおじさんの責任で。よろしく」


 ワサンとヘラクレスは顔を見合わせた。


 「このガキども、大物になるよ全く」


 4人はメルセンタカラン山脈沿いに進み始めた。




いつも読んで頂き本当にありがとうございます。

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