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<ハノキア踏査編> 14.道案内の者たち

<レヴルストラ以外の本話の登場人物>


【シュカレトゥーダ・ロロンガイア】

ティフェレトのドワーフ王国ロロンガ・ルザの王家ロロンガイア家の次男の王子。王位継承第2位にあたる存在。兄エンテン・ロロンガイアにロロンガ・ルザを託し、自身はティフェレトに残ってレジスタンスを率いてグレイから人々を守っている。


【トマス】

レジスタンスの一員。

ワサンたちがメルセン地方へ向かうとなり道案内役を買って出た。


【エリサ】

トマスの妹でトマスと共にワサンたちの道案内として同行している。

14.道案内の者たち


――翌日の夜――


 ワサンはヘラクレスを連れて昨晩と同じ場所へ赴き音叉を使った。

 その音に反応し、トマスが再び現れ二人をレジスタンスのアジトへと案内してくれた。

 そしてワサンはレジスタンスのリーダーであるシュカにヘラクレスを紹介した。


 「まさか!貴方はかの有名なヘラクレスですか?!」

 「有名?!ま、まぁな!わっはっは!」


 ヘラクレスは予想だにしないシュカの言葉に豪快に笑って見せたがワサンの耳元で小声で話し始めた。


 「おい、お前俺のこと何か言ったのか?」

 「いいや?お前のことなんて一言も言ってないぞ。言う気も無いし、言えと言われても言わん」

 「じゃぁ何で俺はかの有名なヘラクレスなんだよ」

 「知るか。自分で聞けよ」

 

 ヘラクレスは一瞬ムッとした表情を見せたがシュカに質問し始めた。


 「い、いやぁ、まぁよう、俺が有名なのは納得なんだが、そういえば俺、お前さんとは面識があったっけか?」

 「いえ、ありませんよ!私が幼い頃、ヘラクレスの12の功業の御伽噺を何度も読んだのです!父は元々越界経験があり、ケテルを旅したことがあるのでその時に持ち帰った本だったのですが、本当に面白くて。何度も爺やに読み聞かせを強請っていましたし、本が読めるようになってからは自分で何度も読み返したほどです!実在する人物だったと聞いていたのでお会いできて今、本当に感動しています!」


 シュカは興奮した様子でヘラクレスを見ている。


 「‥‥‥‥」

 (まさか、エウリュステウスのクソじじいが俺に押し付けようとしたやつか‥‥実際にはやったフリで終わっるやつもあるんだけどな‥‥。結局バレて面倒なことになったから逃げ回っていたんだが、いつ本になったんだか‥‥)


 「ま、まぁ、そ、そりゃぁ大変だったんだぜぇ?」

 「そうですよね!特にあの獰猛なケルベロスを生け捕りにした話とか、太陽神ヘリオスに矢を放とうとした話とか!その話を読んだ日は興奮して眠れませんでしたよ!」

 「はっはっは‥そ、そうだろう!そうだろうな!」

 (どっちも失敗したやつだ‥‥ケルベロスは勢い余って異世界にぶっ飛ばしちまったし、ヘリオスについても勢い余った本当に矢で射抜いちまったからな。おかげでヘリオスを殺しかけて神々のクソどもにボコられたんだが‥‥随分と美談で語られてるが、まぁいい、調子合わすか‥‥)


 「シュカ、興奮しているところ申し訳ないが、エスティについて教えてくれるか?」

 「ああ、すみませんでしたワサン。私としたことがつい‥‥このことはレジスタンスの他のメンバーには内密に願いますよ」

 「あ、ああ」

 「それで、こちらの地図を見てください」


 シュカは壁に貼ってある地図を示した。


 「まず今のティフェレト全体を把握してもらう必要があるので説明しますが、隕石の欠片が落下したのはこの5か所です」


 地図上に5つの印が付けられていた。

  1.メーンザーレの西20キロメートル付近

  2.ロアース山南の麓

  3.グコンレンの北50キロメートル付近

  4.ロロンガ・ルザの跡地から南に3キロメートル付近

  5.メルセン平原南


 「女王が向かった先はおそらくメルセン平原南かと思います。そこにはハーピーの村がありますから。お仲間だったケライノー‥‥通称ケリーを探しに行かれたのだと思います。本来女王ですからまずはラザレ王宮都やノーンザーレで人々を救うのが先なのでしょうが、何せ、ロアース山南の麓に落ちた隕石が大きく、そこから現れたグレイの数が多すぎたため、一旦ケリーを探しに行かれたのでしょう。メルセン地方にも小さな村はいくつかありますし、あの一帯に落ちた隕石は小さかったようですから、まだ人々が魔物化せずに生きている可能性も高いと考えられたのだと思います」

 「‥‥‥‥」


 ワサンは地図を眺めて考えていた。

 メルセン地方に行くためにはメルセン樹林を抜けなければならない。


 (この樹林を抜けるのは少ししんどいな。オレのライフソナーは10メートルだ。しばらく使っていなかったからクラス2を思い出すには時間がかかる。ヘラクレスは魔法がだめだからな。こりゃぁスノウの人選ミスかもな‥‥。まぁ最悪グレイに襲われても全滅させれば済むんだが‥‥)


 「分かった。ありがとう。それじゃぁオレ達はメルセン地方の南、メルセンタカラン山脈に沿ってエスティを探すことにするぜ」

 「そうですか、分かりました。でしたら道案内をつけましょう」

 「いや、いいよ。足手纏いだ。もしグレイに襲われて暴れ回ることになってもヘラクレスは死ぬことはないが、道案内のやつの命の保証はできないからな」

 「おおいおいワサンさんよ。まるでお前の方が強いみたいな表現だなぁ?おい!」

 「違うのか?っていちいち会話に割り込んで話の腰を折るなよ」

 「その点なら心配ありませんよワサン。中々優秀な二人ですから」

 「ふたり?!ふたりもかよ!」

 「ええ」


 ワサンは頭を抱えた。

 そんなワサンに見向きもせず、様々な情報が貼り付けてあるボードを見ていたヘラクレスが腕を組みながらシュカに話しかけてきた。


 「そもそも奴らには音魔法で対処出来なかったのか?俺たちにしてみればグレイは弱すぎて相手にもならないんだがな。距離をとって戦えば魔物にされることもないだろうに」

 「ヘラクレスほど強ければ問題はないでしょう。ですが、奴らには音魔法は効かないのです」

 「?!‥‥矛盾していないか?奴らの擬態は振動、つまり音魔法のような振動でも破壊することが出来るのだろう?擬態表皮を破壊できればあとは無防備な体だ。剣でも矢でも倒せると思うんだがな」

 「いえ。音魔法もある程度強力な音魔法でなければ表皮を崩すことはできないのです。一般民のレベルは生活上で使う程度の魔法です。料理するのに火を付けるとか、お風呂の湯を沸かすとか、植物に水をやるとか、中々起きてこない子供を起こすために氷を服の中に忍び込ますとかですね。それに、表皮を崩せても魔法はほぼ効かないのですよ」

 「そうなのか?」

 「ええ。スメラギの研究施設の学者たちが分析した結果では、グレイの肌にはコーティングがなされているらしいのです」

 「コーティング?」

 「ええ。マクロネットのコーティングです。これはスメラギとスノウ・ウルスラグナが隕石を破壊するために作った超音伝導金属です。普通は音叉を鳴らすと数十秒、長くて1分程度しか音の振動は続きませんが、マクロネットに音魔法を付与するといつまでもその音を奏で続けるという性質の特殊金属です。それを奴ら‥‥グレイは利用しているのだと思います。彼らの銀色ともグレーとも言える肌はマクロネットのコーティングがあるからだと分析しました」

 「なるほど。そのマクロネットってのを隕石の中で分析し、自分たちの肌に付着させたっていうことだな」

 「推測ではその通りです。ですが、ワサンの言う通り肉弾戦であれば問題はありません。単純に戦うのであればですがね」

 「魔物化の呪文か」

 「ええ。あれは厄介だ。実際に触れないとだめなので弓矢は有効ですが、何せすばしっこいのですよグレイは。ですので、並大抵の弓士では間に合わず射ることができずに魔物化させられることでしょう。実際に何人もの有名な弓士が既に魔物化していますしね」

 「分かった。だったらグレイのやろうたちを数体とっ捕まえて解剖して分析だな」

 「その結果は是非我々にも共有願いますよ」

 「いいだろう」


 ワサンとヘラクレスは午後に出発することにして解散した。

 

・・・・・


――それから1時間後――


 ワサンとヘラクレスはメルセボーを出発し、メルセン樹林の入り口へと来ていた。


 「おいワサン。本当にいいのか?道案内二人を置いてきちまって」

 「いいんだよ。どうせ足手纏いだ。グレイと戦闘になった時、庇いながらの戦いは面倒だし、巻き添えにしてしまうかもしれない。ましてや、魔物化させてしまったらなんて謝罪すりゃいい?」

 「それもそうだな」


 ワサンの言葉に納得したヘラクレスがメルセン樹林へと足を踏み入れようとした時、頭上から弓が飛んできた。


 「おわ!」


 矢はヘラクレスの足元ギリギリ刺さるか刺さらないかという場所に突き刺さった。


 「僕らが足手纏いだって?」

 「随分と偉そうですわね、おじさま方」

 『!!』


 ワサンとヘラクレスは頭上を見上げたが上から何者かが飛び降りてきた。


 スタスタ‥


 静かに音も殆ど立てずに着地した。


 「お前は!」


 目の前に降り立ったのはトマスだった。

 そしてもう一人はトマスより少し若い少女だった。


 「ワサンさん。それとヘラクレス。僕らを置いて行くなんて自殺行為だよ」

 「そうですわおじさま方。メルセン樹林を甘く見るといくら英雄でも命を落としますわ」

 『‥‥‥‥』


 ワサンとヘラクレスは一瞬顔を見合わせた後、ふたたびトマスたちを見て言った。


 『おじさんじゃねぇ!』


・・・・・


 その後。

 4人はメルセン樹林入り口で火を炊いて食事の準備をしていた。

 ワサンは手際よく料理を作る二人を見ていた。

 青年はトマス、そして少女の方はトマスの妹のエリサという名でトマスは17歳、エリサは15歳だった。

まだ幼く見える二人ではあったが、料理の手際はよく、ヘラクレスはその手捌きに関心して見ているだけだった。


 (こいつら道案内と言いながらこの料理の手際の良さ‥‥。しかも登場した時に気配を感じることが出来なかった。シュカが役に立つと言ったのは本当なようだな。しかも冷静さを欠いていたのはオレたちの方だったようだ。食料も持たずに樹林へ入ろうとしていたんだからな‥‥)


 ワサンたちはエリサからこの周辺の地図を見せられ樹林を抜ける時間を聞いていたのだが、最低でも半日、迷えば1日以上は掛かる距離だと知り、食糧をほぼ持たない状態で樹林へ入ろうとしていた自分たちの浅はかさを反省していた。


 「美味いな!」

 「そりゃそうだよ。これは僕らのママ直伝のスープだからね」

 「私が母直伝のレシピを調整した味付けですから美味しいに決まっていますわ」

 「お前の母さんは料理上手だったんだな」

 「はい、自慢の母でした。でも諦めてはいませんよ。絶対!」

 「そうか」


 ワサンは2人の微笑ましく思って見ていた。

 

 「さて、グズグズしていると日が暮れちゃうよ。さっさと用意して樹林に入るよ!」

 「‥‥‥‥」

 (お前らが飯のんびり作り出したんじゃねぇかよ‥‥)

 「ええ?!飯まだ少し残ってるじゃねぇかよ。ってか美味いし食材残ってるから作ってくれよ」

 「ダメだよ。出発だって」

 「ちぇっ」

 (お前もかよヘラクレス。全くガキが3人も‥‥先が思いやられるぜ‥‥)


 ワサン顔をしかめた。

 そして片付けが終わるとすぐに樹林へと入って行った。



いつも読んで頂きありがとうございます。

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