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<ホド編 第2章> 154.ヴィマナの越界

154.ヴィマナの越界


 謎の神殿から繋がるコントロールルームにはスノウ、フランシア、ワサン、シンザ、ルナリ、シルゼヴァ、ヘラクレス、エルティエル、ロムロナ、ニトロがおり、ヴィマナにはソニック、アリオク、ガースがいてスクリーンを介して繋がった状態で会議が始まった。

 ソニックは自分がコントロールルームにいないことをまだ悔しがっているように見えた。


 「まず状況を整理したい。その上でおれ達の今後の動きにおれの考えを伝えみんなの意見を聞いて決めたいと思っている」


 皆意義なしという反応で頷いた。


 「今回このコントロールルームの設備とヴィマナを繋いで越界のためのエネルギーがフル充填され、越界エンジンも起動出来ることになった。越界回数は3回だが、ハノキアに存在する9つの世界であるホド、ティフェレト、ゲブラー、ケテル、ネツァク、ケセド、マルクト、ビナー、コクマの中で異世界を移動する距離に応じて越界回数が変わることも分かった」


 皆同じ理解であり頷いている。


 「3回越界可能な異世界はゲブラーとティフェレト。2回越界可能な異世界はマルクト、ケテル、ビナーらしい。距離的に2回越界が出来なくなる可能性のあるのはネツァク、ケセドで越界条件や環境に応じて2回を満たせるかどうかが変わる。そして確実に2回の越界が出来ない異世界がコクマということだ」

 「ポンコツのリュクスはハノキアの9つの世界の配置は言えないと言ったが、今のスノウの説明の通りざっくりだが9つの世界の並びが分かることになる。ざっと書いてみたんだが見てくれ」


 シルゼヴァが簡単な絵を書いたようで、スクリーンの右半分にその絵が映し出された。


・・・・・


       コクマ

 

  ネツァク      ケセド


  マルクト ケテル  ビナー


  ゲブラー     ティフェレト


        ホド


・・・・・


 「ねるほどなぁ!俺がいたケテルは真ん中か!」

 「オレたちは結構色々回ったんだな。行ってないところはビナーとコクマか」

 「ゲブラーってホドから近いんですね!」


 ヘラクレス、ワサン、シンザが反応したが他のメンバーもスクリーンを見て何か思いを巡らせているようだった。


 「そうだな。未踏の世界はビナーとコクマだ。ヴィマナの越界回数制限からすればコクマは行けないがビナーなら行って帰って来られる」


 スノウがワサンの発言に返した。


 「これはあくまでポンコツリュクスの発言をもとに俺がざっくり割り振った配置だから正しいとは限らん。位置が違うかも知れないし、配置の形そのものが違うかもしれん。越界先を選ぶ際はそれを留意しておけ」

 「ありがとうシルゼヴァ。これだけでもかなりイメージが湧くよ。そこで本題の次の越界先をだが‥‥」


 全員が固唾を飲んでスノウの次の発言を待った。


 「ふたたびティフェレトへ行こうと思う」

 『!!』

 「師匠。私たちはリーダーである師匠の意向に従いますが理由を聞かせてもらえますか?」


 エルティエルが冷静な表情と声で言った。


 「ありがとうエル。もちろんだ。おれ達の旅の目的は幾つかある。ひとつはオルダマトラの発見と破壊だ。それからもうひとつが三足烏(サンズウー)とニルヴァーナの調査及び壊滅。そして最後が消えたニル・ゼント、ヘクトル、カエーサルの追跡と奴らが何者かの調査だ。他にも色々あるが主だった目的はこの3つだ」


 全員頷きながらスノウの話に聞き入っている。


 「優先順位はまだ決められていない。それに行き先として有力な情報も得られていない。つまり一つひとつハノキアの世界を巡り調べていく必要がある。そして今回ヴィマナの越界機能を手に入れたわけだが、この越界手段を手に入れたのはレヴルストラとしてとても大きい。武器も獲られたしな。だがまだ完璧じゃない。ハノキア全土を巡るには心許ないってことだ」

 「確かにそうねぇ。それってヴィマナの飛ぶ力を取り戻すってのも入っているわよねぇスノウボウヤ」

 「その通りだロムロナ。ヴィマナには飛行エンジンが積まれている。このエンジンが起動すれば越界回数が増えるらしい。だがその前にハノキアの異世界にここと同じような越界エネルギー充填が出来る施設、設備があるのかを探さなければならない。この越界エネルギー充填はヴィマナで旅をする上での生命線になる」

 「確かにそうですね。僕も同様のことを考えていました。そしてティフェレトを選ばれたのは、北西にある禁断区域にその施設があると思われたからですねスノウ」

 「流石はソニックだな。その通りだ。ティフェレトには、第1班が見つけた蒼市地下の古代文明と同じような場所があるんだ。蒼市の古代文明の地下都市からモノリスのポータルで辿り着いたのがここ謎の神殿から南の湖地帯だ。古代文明と謎の神殿の文明の関連性はまだ分からないが繋がっている可能性はあると思うんだ。つまりティフェレトにある禁断区域の古代文明都市の廃墟が蒼市と同じ文明なのだとしたら、そこから越界エネルギー施設にたどり着けるんじゃないかと思ってる」

 「なるほど。そのティフェレトの禁断区域の古代文明に越界エネルギー充填施設があるなら他の世界にも越界エネルギー充填施設が有る証明になるな。そして越界出来る範囲が広がっていく」

 「そうだシルゼヴァ。そして、もう一つ重要な点がオルダマトラも越界エネルギーを活用してハノキアを往来している可能性だ」

 『!』

 「越界エネルギー充填施設を探すことは奴らと遭遇する可能性が上がることを意味している。奴らも越界エネルギー充填施設を利用していることになるからな」

 「確かにな。だがそれは同時に奴らにもオレたちがヴィマナで越界していることが知れてしまうことになるよな?」

 「そうだ。それはつまり奴らの移動経路を読んだ航行になる上、奴らとの戦闘になることにも繋がる」

 『!!』


 皆目を見開いてオルダマトラとの戦いを意識したことでコントロールルーム内に戦闘オーラが一気に広がっていった。


 「落ち着いてくれ。まだすぐ出くわすとは決まったわけじゃない。だがいずれ奴らと戦うことになるだろう。おれ達がオルダマトラと同様の越界手段を持っているということは奴らにとっても多少なりとも脅威なはずだからな」

 「スノウ。お前の意向はわかった。俺はお前に従う。だが俺の理解が正しければ、ホドからティフェレトへ越界する際にコントロールルームに誰か残っていなければならないのではないか?」

 『!!』


 アリオクの発言に皆が驚いたように顔を見合わせた。


 「そうなのかスノウ?」

 「ああ。その通りだワサン。おれが見た過去の残像ではヴィマナの越界航行の管理・サポートをこのコントロールルームで行っているように見えた。その指揮を取っていたのがそこに座っている腐らない死体の者だ」

 『!』


 コントロールルームにいる全員が椅子に座っている常に破壊と再生を繰り返している死体に目を向けた。


 「ってことは誰かがホドに残るってことになるのか?」

 「安心しろハーク。お前は残さん。お前の管理ではヴィマナの航行は死に直結するからお前を残すわけにはいかんからな。まぁ役立たずとして勝手にホドに残るというのはあるがな」

 「がっ!ふざんけんなよシルズ!俺だって指揮官だか司令官だか知らんが立派にやってのけられるぜ!」

 「そうか。じゃぁ残れ」

 「う!」


 ヘラクレスはここでやっとシルゼヴァに遊ばれていることに気づいた。


 「お、俺は残らないぞ!つまらねぇからな!冒険出来ずに隠居するのと同じだからよ、俺は常に現役最前線で戦うぜ!」


 ヘラクレスの言葉を聞いてこの場に残る意味を理解した。


 (そうだよな‥‥)


 スノウはこの話が一番難航すると思っていた。そのためすぐに会議を開いたのだ。

 場合によってはくじ引きもあり得た。

 公平性を期すために自分の参加するつもりだった。


 「あたしが残るわぁ」

 「俺も残るっすよ」

 『!!』


 ロムロナとニトロが残ることを宣言し皆彼女らの方に視線を向けた。


 「ロムロナ‥‥」

 「あらぁスノウボウヤ、あたしと離れ離れで寂しいとかぁ?!じゃぁやっぱり残るにやめようかしらぁ?」

 「いや、全く」

 「うふふ、素直じゃないわねぇ。あたしのことが大好きなんだからぁ」

 「お前なぁ‥‥ん?」


 いつもの如くスノウを揶揄っている様子のロムロナに視線を向けたスノウは彼女の表情を見ていつものロムロナにはない感情になっているに気づいた。


 (ロムロナ‥‥)


 その表情は少し寂しそうだったのだ。

 ロムロナは気分屋に見えるが実は人情味がある気配りの出来る女性なのだが、心の内をあまり見せることがない掴みどころのない性格でもあった。

 そのためか、スノウはロムロナが寂しがっているところを見たことがなかったのだが、その微妙な表情を読み取ったのはスノウだけだった。


 「まぁね、スノウボウヤ達はこれから世界が変わっていく中で明らかにその中心で活躍する存在だわねぇ。そして他のボウヤや女子ちゃんたちを見てもスノウボウヤに引けを取らない強さを持ってるわぁ。それは腕っぷしの強さってことだけじゃなく、心の強さも含めてねぇ」

 「ロムロナ‥‥」

 「あぁ、1人だけ役不足がいたわねぇワサンボウヤ」

 「言ってろ」

 「ウフフ。とにかくあたしはここに残ってみんなの無事を祈りつつサポートすることに決めた。だから遠慮なく暴れまわればいいわ」

 「俺は出来れば皆さんと一緒に行きたかったっすけど、ホドはこんな有様で残された人たちは明日をどう生きるか必死になってるっすよね。。こんな世界にしてしまった原因の一つに三足烏(サンズウー)がいると思ってて、かつて自分がその一員だったんでせめてもの罪滅ぼしじゃないっすけど、この世界の復興の手助けをしたいっすよ。だから俺も残ります。それにロムロナの(あね)さんは冗談で言ってましたけど俺はマジで完全に皆さんの強さについていけない足手纏いですしね‥‥」

 「ニトロ。君は十分に役に立ったと思う。三足烏(サンズウー)の犯した罪の償いをする必要はないよ。そして君は十分に戦える実力を持っていると僕は思う」

 

 ソニックがスクリーン越しに話しかけてきた。

 彼はニトロがコントロールルームに入ることが出来ていること、つまり波動気を一定上使いこなせていることに気づき戦闘力を評価していたのだ。

 

 「ソニックさん‥‥あんたいい人っすね。ありがとうございます。でももう決めたんで。俺は(あね)さんと一緒にここから皆さんをサポートしますよ」

 「分かったよロムロナ、そしてニトロ。お前らの気持ちは尊重するよ」

 

 スノウの言葉にロムロナとニトロは複雑表情の笑みで返してきた。


 「リュクス。コントロールルームは2名で足りるのか?」

 「問題ありません。ここの施設の機械頭脳に私のプログラムをコピーしておきました。もう一つの私がお二人をサポートすると共に様々な対応を行います。そのため2人で十分です」

 「ポンコツリュクスが二つも存在するというのは悪夢だな」

 「お褒めの言葉として受け取っておきます。シルゼヴァチーフエンジニア」

 「ふん‥」


 パン!


 「はい、それじゃぁ決まりねぇ!」


 ロムロナが手を叩いて言った。

 まるで皆の背中を押すような音に聞こえた。


 「よし。それじゃぁ今から3時間後にティフェレトへ向けて越界する。ここにいる者はホドでできる準備を整えてヴィマナへ。ロムロナ、ニトロ、ここは頼んだ」

 「任せておいてぇ」

 「うぃっす!」

 

 ロムロナとニトロ以外はコントロールルームから出て行った。


・・・・・


ーー3時間後ーー


 コントロールルームのスクリーンにヴィマナのブリッジが映し出されていた。


 「皆んな揃ったわねぇ?」

 「ああ。いつでも行ける」

 「コントロールルーム側の準備はOKっす!リュクスジュニアの設定でティフェレトの座標もインプット済みっす!ちゃんと海中の問題ない場所に飛べるっす!いつでも行けますよ!」

 「ありがとうニトロ。それではレヴルストラ!これからティフェレトへ向けて越界する!目的は越界エネルギー充填の出来る施設の存在調査だ。もちろんオルダマトラや三足烏(サンズウー)、ニル・ゼントたちと遭遇した場合には全力で戦う。皆準備はいいか?」

 『おう!』

 「よし!それじゃぁリュクス!カウントダウンだ」

 「承知致しましたスノウ船長。発進前10秒、9、8、7、6、5、4」

 「スノウボウヤ!みんなを頼むわね!」

 「任せておけ」

 「3、2、1」

 「ヴィマナ!ティフェレトへ向けエンゲージ!」

 

 ギュワァァァァン‥‥


 どれほどの時をホドで過ごしたのか誰も分からないが、ヴィマナは下部に巨大な魔法陣を形成し、沈み込むようにしてホドから姿を消した。


いつも読んでくださって本当にありがとうございます。

これでホド第2章は終わり、次章からは様々な世界を巡るフェーズに入ります。

楽しんで頂けたら幸いです。

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