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<ホド編 第2章> 153.ヴィマナの越界能力

153.ヴィマナの越界能力


 ヴィマナの越界エネルギーが充填され始め徐々に満タンに近づいていった。

 

 ギュルルン!


 越界エネルギーがフル充填となった。

 

 「リュクス、これでヴィマナで越界が可能になったってことか?」

 「はい、可能になりました」


 コントロールルームに通信が繋がったリュクスが答えた。

 皆顔を見合わせている。


 「マジかよ‥‥何だか呆気なく見つかったな。越界って何だか簡単に出来るもんなんだな‥‥なんつって」

 「バカかハーク。これはスノウが繋いだ道だ。お前ひとりでは何一つ成し遂げられんぞ」

 「分かってるっつーの!スノウといると何だか何でも出来る気がしちまうってのを言いたかっただけだっての!」

 

 シルゼヴァとヘラクレスのいつものやり取りが始まった。


 「シルゼヴァチーフエンジニア。ヘラクレスガーディアンとまともな会話は不可能と結論づけられています。基本単語300語の中から簡単に組み立てた文章で会話することをお勧めします」

 『ぷっ!』


 リュクスの言葉に皆思わず吹き出してしまった。

 一方馬鹿にされたヘラクレスは顔を真っ赤にして怒っているが、爆発しないように必死に耐えている。


 「おい。リュクス。お前。後で。壊す」


 ヘラクレスは何故かカタコトの言葉でリュクスに恨み節を言った。

 それを無視するようにスノウがリュクスに話しかけた。


 「リュクス、越界回数は何回だ?」


 スノウが見た過去残像では越界エネルギー満充填で5回の越界が可能とスクリーンに映し出されていたのを思い出したのだ。


 (5回越界できるならかなり行動範囲が広がる。これまで行ったことのない世界含めてオルダマトラを探すこともやりやすくなる。それにティフェレトにも行かなければならない。スメラギさんの残した手紙の真相を確かめられるはずだからな。それとネツァクにも戻りたいしな‥‥)


 スノウはリリアラの木を思い出していた。

 リリアラの木とはネツァクにあるスノウの道具屋フラガラッハの中庭に植えられている木だが、かつてスノウと行動を共にしたスノウにとって大切な女性であったが、マルクトから精神転移して天使の体に憑依したズールーによって植物に変えられてしまったのだ。

 リリアラの存在はスノウの心の片隅に常に存在していた。


 「スノウ船長。越界回数は最大3回です」

 「何でだ?!5回のはずだぞ!」

 「よくご存知ですスノウ船長。確かに最大キャパシティは越界5回分となっています。越界エネルギーがフル充填の場合、本来は最大5回の越界が可能なのですが、それは飛行エンジンが稼働している状態という条件がつきます。飛行エンジンから発せられる熱エネルギーを変換して越界エンジンの稼働を補助する連携があって初めて5回の越界が可能になるのです。現在は飛行エンジンが稼働不可となっておりますので、3回が限界となります」

 「何だか面倒だな」

 (まぁでも3回目にここへ戻ってくればいいんだ。大した制約にはならないか)


 スノウは少し安心した。

 

 「スノウ船長。先ほど最大3回と申し上げましたが、ハノキアを越界する上でカルパを渡る距離が影響します。近い場所にある異世界へ越界する場合は最大3回の越界が可能です。一方で遠方の世界へ越界する場合は2回。場合によっては2回の越界ができなくなる可能性があります。越界候補の配置は把握出来ておりますので、越界する際の回数は計算することが可能です」

 「2回‥‥」

 (まぁ毎回ここへ戻ってくればいいんだ。何とかなるはずだ)


 「リュクス。一番遠い異世界へ越界する場合、本当に2回の越界が可能か計算しろ。曖昧な答えを出すならお前を改造してやる」


 シルゼヴァがリュクスを脅すように指示すると、リュクスは数秒沈黙した後答え始めた。


 「最も遠い異世界はコクマですが、ホドからコクマへ行く場合は2回の越界はエネルギー不足で不可能となります」

 「そういうことはきちんと説明しろ。ハノキアの異世界の配置が分かるものを出せ。それで説明しろ」


 威圧的なシルゼヴァの物言いに淡々とリュクスは答えていく。


 「それは出来ません。私のプログラム上それに答えることが許されていないのです」

 「何故だ?」

 「宇宙の秩序を乱すことになる、としかお答え出来ません」

 「宇宙の秩序?何だそれは?そんなものあるわけがないだろう?誰が決めたルールなのだ?」

 「それもお答え出来ません。その問いに対する情報がないのです」

 「ちっ!」


 ドン!ドン!ドン!


 シルゼヴァはリュクスの回答に腹を立てたのか、突如ヘラクレスの腹を殴り始めた。


 「ぐへ!な!なつか!しいな!」


 久しぶりのシルゼヴァの八つ当たりパンチにヘラクレスはどこか嬉しそうにしていた。

 一方スノウは頭の中で越界場所を考えていた。


 (コクマ‥‥まだ足を踏み入れていない異世界だな‥‥もしディアボロスたちがハノキアの異世界の配置を知っていてオルダマトラも同様に越界エネルギーを消費して越界しているのなら、ホドから最も遠い世界へと越界している可能性もある。それが最も見つからない手段だからな。まぁそもそも奴らの目的が分かっていないんだが‥‥。だが仮にそうだとしても越界エネルギーをコクマで補給出来ることが条件になるはずだ‥‥)


 「リュクス、他の異世界で越界エネルギーを充填することは可能なのか?」

 「良いご質問ですスノウ船長。この場所と同様の施設と設備があれば越界エネルギー充填は可能です」

 「質問に答えてないぞリュクス。ここと同様の設備のある場所が他の異世界にもあるかという質問だとどうだ?」

 「そのご質問にはお答え出来ません。その問いに対する情報がないのです」

 「ちっ‥それじゃぁ3回越界可能な異世界と2回越界可能な異世界を教えてくれ」

 「はい、スノウ船長。3回越界可能な異世界はゲブラーとティフェレトです。2回越界可能な異世界はマルクト、ケテル、ビナーです。理論上2回越界が出来る計算ですが、様々な環境影響によって2回越界が出来なくなる可能性のある異世界はネツァク、ケセド、そして確実に2回の越界が出来ない異世界がコクマになります」

 「なるほど‥‥。ちなみにこの設備をおれ達以外が使った形跡はあるか?」

 「ありますが、数百年以上前のようです。詳細データが残っていないため曖昧な回答となります」

 「そうか」


 スノウは思案を巡らせた。


 (オルダマトラは最初ケセドで起動した。そしてホドに現れたわけだが、リュクスの話からすれば2回越界が出来ない。ホドにここの施設のような場所が他にもあるのかも知れないってことか‥‥もしくはケセドからどこかを経由したのかも知れない‥‥いや、オルダマトラは飛行能力がある。もっと越界回数が多いと言うこともあり得る‥‥)


 「リュクス。オルダマトラはヴィマナに対してどれくらいの越界能力に差があるか分かるか?」

 「いえ、情報があまりにも不足しており断言は出来ません」

 「そうか‥‥」

 「ただし、あの大きさと質量を推測すると、どれほどの越界エンジンとエネルギー貯蔵庫を持っていてもヴィマナの半分の能力が出せるかどうかかと思われます。あくまで推測ですので断言は出来ません」

 「半分か‥‥」

 (フル充填で2-3回。コンサバに見て4回行けるとしても遠距離の越界では何処かでエネルギーが枯渇することがあるはずだ。やはり他の異世界にもここと同じような設備があると見た方がいいな。何れにせよ向こうの方が情報を持っているはずだ。下手に追いかけるとヴィマナの越界機動力を失いかねない。先ずは慎重に越界先を選び、ここと同じような施設を探すことから始めるか)

 「師匠、どうかしましたか?」

 「いや大丈夫だ。だいぶ整理出来た。今から今後の動きについて相談したい。全員集まってくれ。ヴィマナにいるメンバーはこのまま通信で繋いでの参加でいい」


 スノウの指示で会議が始まった。



いつも読んで下さって本当にありがとうございます。

次話でホド編第2章が終わり別の異世界へと越界します。

様々勢力がひしめき合う中、物語は更に進み各勢力の全容が見え始めます。

その中でスノウ達レヴルストラは確実に各勢力が争う渦の中心に行き着くことになります。

引き続きお楽しみ頂けると幸いです。

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