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<ホド編 第2章> 144.ネンドウの能力

144.ネンドウの能力


 「返してもらうぞ」


 グザァァ!!


 「?!」


 ネンドウの鳩尾あたりから刀のような刃が飛び出てきた。

 同時に血が飛び散る。

 ネンドウは一瞬何が起こったのか分からなかった。

 何かが食道をせり上がってくる感覚とともに大量の血を吐いた。

 刀が引き抜かれ、ソニックが奪われた。


 「アリオク!」


 ヘラクレスが叫んだその名でネンドウは何が起こったのかを察した。

 突如自分の背後に現れ、長刀を突き刺しソニックを抱え奪ったのは魔王アリオクだったのだ。


 「ありがとうアリオク」

 「遅れてすまない。ヴィマナの転送可能域に入るのに少々時間を要した」

 「いえ、絶妙なタイミングです。ネンドウに致命傷を与えたんですからね」


 ソニックたちはネンドウに視線を向けた。

 ネンドウは手を傷口に当て、そのままゆっくりと上に動かしていく。

 みるみるうちに止血され血で染まっていた衣服すら綺麗な状態へと変わっていく。

 そして何事もなかったかのように平然と立っている。


 「魔王アリオク。流石は暗殺者の頂点に位置する存在。刺された直後まで貴様の気配すら感じ取れずにいた。いいだろう、ソニックの入手は次回に預けておく。我は三足烏(サンズウー)のネンドウ。我らの理念に反する者を滅する者なり」


 シュゥゥゥゥゥン‥‥


 ネンドウは消え去った。

 だが一同は警戒を解いていない。

 透過した状態で潜んでいるかもしれないからだ。

 アリオクはリュクスと交信し確実にレヴルストラメンバーだけを転送するよう指示した。


 キィィィィィィィィン‥‥


 全員がヴィマナへと転送される。

 皆普段使っていない個室に転送された。


 「リュクス、この部屋全体をスキャンしてくれ」

 「了解しました」


 キィィィィィィィィン‥‥


 「スキャン完了。生命反応は6。個体名、アリオク、シルゼヴァ、ソニック、ニトロ、ヘラクレス、ロムロナ。魔力反応6。赤外線反応6。粒子結合エネルギー波50兆以上の塊数6」

 「おいリュクス!いいから結論は?」

 「6名です。それ以上でも以下でもありません」

 「先に言えよ、めんどくせぇな」

 「了解しました。これからはヘラクレスガーディアンへの報告は結論だけにします。詳細のデータや結論の根拠などは理解出来ない思考レベルのクルーとして記録致しました」

 「はぁ?!てめぇリュクス!今何つった?!」

 「‥‥‥‥」


 リュクスはヘラクレスの問いに無言で返した。


 「おい!無視すんなリュクス!」

 「いえ、無視しておりません。ご説明がご理解頂けないので別なご質問に変わるまで待機していたのです」

 「はぁ?!」


 ドン!


 「ふぐ!」

 「うるさいぞハーク。ニトロ、あのネンドウという者は何者だ?」


 シルゼヴァは癇癪を起こしているヘラクレスの鳩尾にニーキックを叩き込むと何事もなかったかのようにニトロに質問に答えよというプレッシャーをかけた。


 「俺とカヤクさんが手に入れた情報では、三足烏の幹部だっていう‥‥」

 「そうではない。やつの使った力についてだ。あれは原初魔法(アルケー)の重力系魔法にも思ったが、魔力を感じなかった。マジックソナーでも確認したがやつの力の発動領域に魔力反応はなかった。断言は出来ないが、どう考えてもあれは魔法ではない別の力だ」

 「得体の知れない力を使うのは以前言った通りです。グルトネイやアーリカを動かす装置を復活させたのもやつだと‥‥それ以外は分からないっす‥‥」

 「天技の一種かもしれない」


 アリオクが割って入ってきた。


 「天技‥‥スノウが使いこなす、見ただけで技や魔法を使えるというあれか?」

 「そうだシルゼヴァ。スノウの天技は確か感応(エンパス)だったか。お前たち半神や神の使う神技とは違う、そして魔法とも違う不思議な能力天技は魔王界隈でも度々話題にあがる。スノウやディアボロスが使っていたニンゲン、確かアミゼン姉妹だったか。他にも何名も存在していると言われているが、いずれもマルクトに住んでいた者が越界させられたことで開花する能力だと言われている。その力は凄まじい。中には街一つを支配する力すらあるとも言われている。事実アミゼン・ユメの夢を支配する力、アルキナ・コントロールは国一つを支配していたほどだ」

 「あのネンドウも天技の使い手だということか」

 「その可能性は高い。だが肝心なその能力が掴めていないことだ。推測では物質を操る力」

 「物質を操る力?なんだよそりゃぁ」

 

 そう言うヘラクレスの腕を掴んでソニックが前に出てきた。


 「僕は納得です。まず透過していた状態‥あれは体を変化させて光を屈折させていたんじゃないかって思うんです。昔ティフェレトでスメラギさんが似たような実験をやっていました。そして重力波。あれは重力波ではなく僕ら自身を地面に押し付けるように操っていたんじゃないかって思うんです。上手く説明できませんが、僕らが地面に押し付けられていた時に微風が吹いていたんです。風も重力波の影響を受けるはずですが、それがなかった。あれは原初魔法(アルケー)に見せかけた天技だったんじゃないかって思います」

 「流石は俺たちのサブリーダーだ。あの状況下でそんなことを分析していたとはな。ソニック、お前の説明は論理的であり説得力がある」

 「おいおい、物質を操る力っつうんなら、俺たちを一瞬で爆発させることも出来るんじゃねぇのか?」

 「お前にしてはいい質問だハーク。これは推測だが、やつは俺たちを物体として捉え、操れるのかもしれないが、それは表面的な部分だけだということだ。おそらくだが、物質を操る対象として認識出来ていないと効果がないということだろう。想像ではだめだ。視認し理解出来ていることが条件なんだろうな」

 「だったら爆発させられることはねぇってことか。少しは安心だが、そんな万能な力を持ったやつに勝てるのか?」

 「問題ない。奴が認識できない攻撃をすればいい。俺たちレヴルストラは強い。個々の実力値が高い上にその数も既に10名を超える。何よりレヴルストラの強さはその連携力だ。最初はスノウやソニックの統率力からくる連携かと思ったが、こと戦いにおいてはむしろ指示や統率された動きなどひとつもない。個々がまるで全員の動きを理解しているかのようにそれぞれの役割を認識し、絶妙なタイミングで行動する。これは自分自身を信じ、仲間を信じていることで成せる技だ。俺の知る限り、悪魔や天使にはできない。まるで集まるべくして集まったかのような仲間だ」


 皆アリオクの言葉を聞いて納得の表情を浮かべた。

 それを見ながらソニックがさらに前に出て話し始めた。


 「とはいえ、です。三足烏(サンズウー)の残党を取り逃したことは事実。僕ら2班のミッションは失敗に終わったということになります。ですが失敗を失敗のままで終わらせる気はありません。彼らの残したグルトネイを分析して、ヴィマナに活かせるものは全て頂きましょう!リュクス、グルトネイにあるものをヴィマナに転用することは可能かい?」

 「もちろんですソニック副船長。全てではありませんし、装備させるための調整は必要になります」

 「一番転用したいのは今ヴィマナにない武器なんだけど、グルトネイにある猛魅禍槌(タケミカヅチ)は転用可能かな?」

 「時間は掛かるかと思いますが不可能ではりません。既にアーリカが搭載している禍槌(カヅチ)については分析終了しておりますが、空気を調光圧縮する工程とエネルギー連動操作を行う機能をヴィマナの機関システムと接続することが出来れば理論的には可能であることが判明しています」

 「ありがとう。それじゃぁ三足烏(サンズウー)と元老院たちの技術を頂きに行きましょう」

 

 2班はグルトネイの調査を開始した。


・・・・・


――蒼市のダンジョン内――


 ダンジョンを探索しているのはスノウ率いる1班だ。

 1班はスノウをリーダーに、フランシア、ワサン、シンザ、ルナリ、エルティエルの5名え構成されている。

 アレックスたちレヴルストラ1stとホウゲキ率いる三足烏(サンズウー)・烈と戦った場所はスノウの放ったリゾーマタ天変地異的豪雷暴風雨クラス5魔法のウィリウォーによって大きく破壊されたのに加え、オルダマトラによる大陸引きによって起きた大地震でかなり崩壊していた。

 洞窟というより、通れる場所を探しながら時には魔法で岩を破壊しつつ進んでいるため予想以上に時間がかかっているのだが、ルナリの負の情念の触手を這わせながら安全な場所を確認しながら進んでおり、まだマシな状態であった。


 「まるで道なき道を行くって感じだな」

 「安心しろワサン。我の周辺の感知によって道は把握できている」

 「そこは安心しているんだが、もうちょっと通りやすい場所を探してくれルナリ。お前は間接をあらぬ方向に曲げられるからいいけど、オレたちはそうはいかないんだよ」

 「ふん。我の知ったことではない。シンザが安心して通れさえすればよいのだ」

 「ありがとうルナリ。でもみんなが通りやすい道を探して誘導してくれると嬉しいよ」

 「分かったシンザ。たった今からその進路設定へと切り替えよう」

 「ありがとうルナリ」

 「おい‥‥そういうのは他所でやってくれよ、全く」

 「まぁそう言うなってワサン。お互い尊重し合うのが仲間だ」

 「スノウ、お前はいいよ。皆んなから慕われているからな。一方オレの扱いが酷いのは知っているだろ?ケテルでいきなり高い高度に放り出された時もさ?、ケセドで空飛ぶ絨毯に乗せられた時もよ?オレが高所恐怖症というか飛行恐怖症なの知ってて面白がってたんだぜ?これが仲間と言えるのかって話だよ」

 「ははは、でもまぁ乗り切ったじゃないか。皆お前を信頼しているってことだよ」

 「なんか誤魔化されたな‥‥」

 「しかし中々辿りつきませんね。マグマが見えたんですよね師匠」

 「ああ」

 

 エルティエルは岩肌に手を置き、何かを感じ取っているようだ。


 「やはりまだマグマ帯は程遠いようです」

 「そうか。とにかく下に降りていく。もはや今が地下何層なのかも分からないが、それほど地下には潜っていなかった認識だ」

 「いっそのことこのダンジョンごと吹き飛ばしましょうか?一気にマグマ帯まで吹き飛ばせば話は早いかと思います」

 「だめだシア。それじゃぁ越界の方法も失われてしまうかもしれない。とにかく面倒だが地道に進むしかない」

 「分かりました」


 ピィン‥


 「どうしたのルナリ?」


 シンザがルナリの変化に気づき問いかけた。

 ルナリは何かを捉えたようだ。


 「全員警戒するのだ。ここより10メートルほど下方に恐ろしく強い生命反応を感知した」


 スノウたちはいつでも戦闘に入れるように警戒を強めさらに進んでいった。




いつも読んで下さって本当にありがとうございます。

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