<ホド編 第2章> 142.再会
142.再会
その日の午後に2班に分かれたメンバーはそれぞれの目的のために出発していた。
1班は越界方法を探す役割を担っており、蒼市のダンジョンを目指す。
メンバーはスノウ、フランシア、ワサン、エルティエル、シンザ、ルナリだ。
既に蒼市に入り込んでいた。
一方第2班は三足烏の残党を探し捉える役割を担っており、ヴィマナで蒼市周辺を探索していた。
メンバーはソニック、ロムロナ、シルゼヴァ、ヘラクレス、ニトロだった。
アリオクはヴィマナで全体の指揮、ガースはヴィマナの機関室を担当する。
1班のリーダーはスノウ、2班のリーダーはソニックとなっている。
――2班――
ヴィマナで探索を続けている2班は会議室で待機していた。
「何だか2班はつまらねぇな。こんなに暇になるとは思わなかったぜ」
「1班よりは忙しいぞヘラクレス。1班は探索だからな」
「まぁそうだけどよ。お前は居残りでつまらないんじゃないのかアリオク?」
「いや、むしろ逆だ。俺の役割は1班と2班が上手く動けるように状況を監視し都度指示を送る司令塔だ。これまで単独行動だったからな。こういう連携は正直楽しみだ」
「変わってんなお前」
アリオクとヘラクレスの会話にシルゼヴァがいつもの如くヘラクレスをバカにするように割り込む。
「お前が単純なのだハーク。思考を回す行動の出来ないお前では司令塔を担うのは不可能だな」
「はぁ?!お前だってスリルがどうとか言ってたじゃねぇかよシルズ!お前こそ司令塔みたいなのは退屈で出来ねぇよ!」
「やはり単純脳筋バカだなハーク。出来ないのとやらないのとでは全く違う。俺はやらないだけだ。お前は出来ない。その間には天地ほどの差があるのだぞ」
「だっは!アホか!俺でも出来るわ!」
「ちょっとそこの凸凹コンビ!うるさいわよ!こっちはソナー使って三足烏の残党の動き探ってんだから!」
ソニアが怒り露わにふたりに吠えた。
シルゼヴァは無視し、ヘラクレスは舌を出してニヤついている。
ジライたち三足烏の残党はグルトネイで移動している可能性があり、グルトネイには潜航機能があるということでソニアがヴィマナのソナー機能を活用して探索していたのだ。
本来ソナー技師はワサンなのだが、1班のメンバーとして蒼市に出向いているため代わりにソナーを担当しているのだが、元々今回ソニアには主な役回りは回ってこなかったので不貞腐れていたのを見たソニックがソニアさえよければと役割を与えたのだ。
しかし退屈であるにも関わらず神経を使う仕事に早くも短気なソニアは苛々を爆発させようとしていた。
(姉さん代わろうか?)
「煩いわね!」
「何だぁ?!」
「煩いっつってんのよ!」
ソニックに叫んだ煩いという言葉にヘラクレスが反応すると、今度はヘラクレスがソニアに指摘を食らった。
ヘラクレスはソニアに殴り掛かろうとしたが、ニトロに止められた。
・・・・・
それから5時間ほど経過した頃、ソニアが突然叫び出した。
「あ!!」
ガタタン!
「どした?!」
ヘラクレスたちがソニアのもとへ駆けつけた。
「見つけたわ!」
ソニアはニトロに指示してモニターを起動させた。
海面が映されている。
「何も映ってねぇぞ!」
「ニトロ!どこ映してんの!」
「す、すいませんっす!」
ニトロがパネルを操作するとモニターは海面から海中へと潜っていった。
画面が潜航していくにつれて徐々に黒い球体が見えてきた。
「これ、グルトネイじゃないっすか?!」
「どうやらそのようだな」
シルゼヴァが腕を組みながらニトロの発言に返した。
「厄介だな」
「ああ」
「何がだ?!」
アリオクとシルゼヴァの反応にヘラクレスが質問するとシルゼヴァはうんざりした表情でアリオクに説明しろと促した。
「グルトネイには強力な武器が搭載されていたはずだ。確か猛魅禍槌だったか。ヴィマナには武器は搭載されていない。攻撃手段としてアーリカもあるが、アーリカではあの深度まで潜航は出来ない。下手に近づけばヴィマナを攻撃される。ヴィマナにはバリアがないから攻撃されればひとたまりもない」
「何だよ。なんつー脆い船なんだヴィマナは」
ボッゴォォン!!
「いで!」
突如背後からガースがヘラクレスの後頭部を殴りつけた。
「お前ヴィマナをバカにするんじゃないでガースよ!ヴィマナは機能が使えてないだけでガスよ!全ての機能が使えたならヴィマナは最強の飛行戦艦になるでガス!」
「なんだよガースのおっさん。いつからここにいたんだよ。ってまぁいい。ヴィマナでどうにも出来ないなら、俺たちが単独でグルトネイのところへ行って破壊すりゃぁいいじゃねぇか。こっちにはロムロナって海の申し子がいるし、俺も10分くらいなら無呼吸で動けるしよ」
「なるほどね。お安い御用だわねぇ。早速行く?ハークボウヤ」
「いいぜ!他に行きたいやつはいるか?」
「僕が行きますよ。僕なら氷の膜を張れます。姉と入れ借りながら移動すれば空気も作り出せると思うので、時間制限なく戦えます」
「流石はソニックボウヤね。確か潜水具もあったはずだけど、壊したら大変だからねぇ。シルズボウヤはグルトネイが浮上したら一人残らず三足烏の残党を捕らえて頂戴ねぇ。それじゃぁ早速行きましょう」
『おう!』
早速ロムロナ、ヘラクレス、ソニックは転送準備に入った。
「お前たちなら問題ないと思うが、グルトネイ付近の水深はかなりの水圧のはずだ。忘れるな」
アリオクの言葉に3人は頷いた。
「それではシルゼヴァ、転送を頼む」
「ああ」
キィィィィィィィィィィン‥‥
グボォン‥‥
3人はグルトネイの近くに転送された。
ソニックはかなりの水圧に押しつぶされそうになるが、氷のバリアを張り巡らせて空間を作って防いだ。
ヘラクレスとロムロナは問題ないようで普通に水の中で余裕の表情を見せていた。
クイクイ‥
ロムロナがふたりの状態を確認すると、グルトネイに向かって合図した。
ヘラクレスとソニックは頷くと3人はグルトネイに向かって進んでいく。
「!」
突如ロムロナが離れるよう合図した。
ギュルルルルロオォォォ‥‥
突如猛魅禍槌が放たれたのだ。
しかし、海中であるためにそのスピードは大きく殺されていた。
だが、威力は衰えておらず、海水がしばらく斬られたままとなるという不思議な状態になっていた。
ロムロナは三手に分かれるように指示すると、ひとり凄まじい勢いでグルトネイに接近し始めた。
ロムロナが囮になり、猛魅禍槌を一手に引き受け、その隙にヘラクレスとソニックがグルトネイの扉に辿り着きこじ開けるという作戦に出たのだ。
ギュゥン‥シュワァン‥
ロムロナはまるでイルカのように凄まじい速さで動き猛魅禍槌の連続攻撃を軽々と避けている。
引きつけは成功しており、ヘラクレスとソニックは回り込みながらグルトネイの扉の前に辿り着いた。
クイ‥
クイ‥
ヘラクレスが扉を指さすと、ソニックは頷いて扉に触れた。
キュルルルル‥‥
一気に扉が凍っていく。
ガキィィィン‥‥
扉が完全に凍りついたのを確認すると、ヘラクレスは右腕に凄まじい力を込め始めた。
腕が1.5倍以上膨れ上がり、血管が浮き出ている。
そして凄まじい勢いで扉を殴り始めた。
ゴオォォォォォン!!
ゴォォォォン!!
ゴォォォォォォォン!!
バリリ!‥‥バリィィン!!
3回殴りつけると、凍りついた扉に亀裂が入り、一気に破壊された。
破壊された扉から海水が一気に内部へと入り込む。
ギュゥゥゥン‥‥
突如グルトネイが急浮上し始めた。
クイクィ‥‥
ソニックがヴィマナに転送の合図を送る。
キィィィィィン‥‥
ズバァ‥‥
3人はヴィマナに帰還した。
「ぶはぁ!なっはっは!見事扉ぶっ壊してやったぜ!ソニックがめちゃくちゃ凍らせるもんだから壊すの簡単だったな!以前もそうすりゃよかったんじゃねぇのか?わっはっは!」
「ヘラクレスさんの怪力あっての破壊ですよ。そしてロムロナさんが猛魅禍槌そ一手に引き受けてくれていたから出来たんです」
「流石分かってるじゃないのソニックボウヤ」
アリオクが前に出てきた。
「3人ともよくやった。ガース浮上だ」
「了解ガース!」
ヴィマナは一気に浮上し始めた。
「これから残党を捕獲する。皆準備はいいか?」
「え?シルズだけじゃないのかよ!」
「当たり前だハーク。俺一人で捕獲となったら全員殺しかねないだろう?捕らえるより殺した方が簡単だからな」
「分かったって!」
「よし、グルトネイは海上に辿り着いたようだ。今から転送する。頼んだぞ」
『おう!』
ソニック、シルゼヴァ、ヘラクレス、ロムロナ、ニトロの5人は海面に浮上したグルトネイに転送された。
そこには堪らず外に出てきた三足烏の残党が全員甲板に立っていた。
そこから少し離れた場所にソニックたち5人は着地したのだが、真っ先にロムロナの視界に入ってきたのは懐かしい顔だった。
「ジライボウヤ‥‥」
5人は戦闘体勢に入った。
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