<ホド編 第2章> 117.増軍
<レヴルストラ以外の本話の主な登場人物>
◾️ 天使たち
【メタトロン】:神衣を纏い仮面を被った騎士の姿の守護天使長。ケテルを守護している。スノウと友であった記憶を持っている。
【カマエル】:痴呆の老人姿の守護天使で神を見る者と言われている。ゲブラーを守護している。銀狼の頭部であったワサンにニンゲンの頭部を与えた。
【ミカエル】:少年の姿の守護天使。ティフェレトを守護している。スノウの仲間であったレンに憑依していた。ベルフェゴールを冥府へと還している。
【ラファエル】:ホドの守護天使。黒いスーツに身を包んだ金髪の女性の姿をしている。瑜伽変容をロンギヌスの槍で阻止し裏切ったザドキエルを追い詰めたが、突如現れたディアボロスによって退けられた。
【ラツィエル】:Tシャツにジャケットを着てメガネをかけたの姿の守護天使。コクマを守護している。神の神秘と言われている不思議なオーラを放つ天使。
【ザフキエル】:青いスーツを着た黒人の姿の守護天使。ビナーを守護している。気性が荒いが、守護天使の責務を最も重要視している責任感ある天使。
【サンダルフォン】:最高級のスーツに身を包んだ紳士の姿の守護天使。メタトロンと兄弟でマルクトを守護している。罪を犯した天使たちを永遠に閉じ込めておく幽閉所の支配者と言われている。
【エルティエル】:美しい金色の髪の女性の姿の守護天使。ネツァクを守護しているが消滅してしまった本来の守護天使のハニエルから守護天使の任を引き継いだ。スノウがネツァクにいた頃に行動を共にしていた。
◾️ 悪魔たち
【アドラメレク】:ホドを拠点としている魔王。何かの計画に沿って行動しており、アレックスを巨大亀ロン・ギボールに幽閉した。瑜伽変容を引き起こした。
【剛力王バラム】:凄まじい怪力の持ち主で結界杭ではヘラクレスを幽閉していた。
【智慧の悪魔ストラス】:結界杭でワサン、ソニック、シンザを幽閉していた。王冠を被っ梟の姿をしている。
◾️ 元三足烏
【カヤク】:元三足烏の分隊長だったが、エントワによって人生を変えられたことで改心し、現在はレヴルストラの見習いメンバーとして信用をえるために三足烏に潜入し情報収集に努めていたが、ニル・ゼントの護衛となった際に洗脳された。
【ニトロ】:元三足烏カヤク隊の隊員だったが、カヤクと共に改心しレヴルストラ見習いメンバーとしてカヤクと行動を共にしている。レヴルストラメンバーとして認めてもらうために、カヤクと共に蒼市へと潜入し、現在はニル・ゼント最高議長の護衛をとして活動しつつ情報収集に努めている。
117.増軍
――デヴァリエ――
カマエルとミカエルはケテルにあるデヴァリエの一部をホドに越界させている中、エルティエルと共に神の咆哮生成器のあるドーム内に映し出された映像を見ていた。
そこにはオルダマトラによって持ち上げられ空中に浮いた状態となっているアヴァロンの一部の地表で繰り広げられている戦いの状況が映し出されていた。
「一体何が起こっておるのじゃ?!」
「ザフキエルたちは何故アノマリーたちを攻撃しているのですか?!」
「アドラメレクと戦っていたのを放棄したのか?!あやつらのミッションはオルダマトラの “大陸引き” を止めるため。そのためにアドラメレクらを冥府に還そうと戦っていたのではないのか?!」
「分かりません。音はここまで届かないのです。そして私たちもこの場を離れられない。体を失ったメタトロンはこの世界に顕現出来ません」
「ラファエルは一体何をしておるじゃ!あやつまでアノマリーらを攻撃するとは考えられんのじゃが!」
「よく見てください!ラファエルがいません!」
『!!』
エルティエルの言葉にカマエルとミカエルは絶句した。
「ラファエルはどうなったのじゃ?!エルティエル、ラファエルを映してくれ」
「はい!」
嫌な予感は的中した。
映像は切り替わり海に浮かんでいるラファエルが映し出されたのだが、体がバラバラになって海に浮かんでいたのだ。
「な‥‥」
「一体何が起こっておるのじゃ?!」
「エルティエル!メタトロンに繋いでください!」
エルティエルは操作版を動かし映像を天界へと切り替えた。
「メタトロン!ラファエルが!」
「分っている。そちらの映像はこちらでも確認できるからな。ラファエルに何が起こったのかはザフキエルたちが戻り次第確認する必要があるが、先ずはラファエルが機動可能かどうかの確認を優先すべきだ」
「事と次第によっては天界審問にかけることになるだろう。有罪となれば煉獄行きとなる」
「メタトロン!それはそうかもしれませんが、ザフキエルたちは今、スノウたちを攻撃しているのです!止めるべきでは?!」
「エルティエル、そうしたいのは山々だが、守護天使でそこに向かえる者がいない。デヴァリエは部分越界状態を解除することは出来ない。オルダマトラから降ろされている黒雷鳴の鎖を完全に断ち切らねばならないからだ。エネルギー充填が30%を超えた時点で神の炙朶破を撃てばおそらく黒雷鳴の鎖は断ち切られ、アヴァロンは地上へと落下する。それまでは傍観するしかないのだ」
「!」
カマエル、ミカエルは無表情のまま映像を見ていた。
「仕方あるまい‥‥残念じゃが儂らにはどうすることもできん。最優先はアヴァロンを地表に戻すことじゃ‥‥」
「神の炙朶破を撃ち次第現場に向かう。これが最善の対応です‥‥」
「通信は以上だ。引き続き神の炙朶破発射に備えつつ観察を続けてくれ」
ビン‥
映像は守護天使3体とスノウ、カヤクの戦いが続いていた。
「‥‥‥‥」
エルティエルは苦しそうな表情で映像を見るしかなかった。
・・・・・
ガキィン!キキィン!ドッゴォォォォン!!バシュン!ドッゴォォン!
剣と魔法の凄まじい攻防が続いている。
スノウとカヤクはぎこちないながらも連携し、守護天使3体を相手に拮抗した戦いを繰り広げている。
「アノマリーめ!ここまでの力とは!やはりこの場で殺す必要がある!」
「同感ですね。この力は今後の世界にとって脅威でしょう」
「ここでアノマリーを排除。承知した」
守護天使3体は無表情で意思の疎通を図り、スノウを集中的に攻撃し始める。
ドッゴォォォォン!!バキキン!ゴゴォォォォン!!
守護天使たちの凄まじい攻撃がスノウに向かって一斉に向けられた。
スノウは魔法と波動気の流動を込めた剣技で攻撃を防ぎ躱していくが、徐々に押されていた。
「カヤク!防御を手伝え!」
「‥‥‥‥」
天使たちの攻撃がスノウの防御によって拡散される飛び火した攻撃波を弾くだけでカヤクは一向に加勢に入らない。
「カヤクお前!」
「私はニル・ゼント様の護衛です。そもそもお前と共闘する謂れはない。天使共の標的はお前のようですから、私はここで引かせてもらいます。せいぜい天使たちの戦力を削っておいて下さい。その後、私が天使たちを容易に破壊できるようにね」
そう言うとカヤクはその場から立ち去った。
「カヤク!!」
スノウは怒りの表情で叫んだがすぐに防御に集中した。
その状況に気づいたシルゼヴァがフランシアとルナリにスノウの加勢に行くように指示を出すが、突如空から黒い無数の塊が飛来してきた。
ズドドドドドドドドドドドドドォォォン!!
『!!』
空から飛来し、地面に着地したのは悪魔達だった。
「ヌハハハハ!そう簡単に行かせませんよ!さぁお前たち!殺してしまいなさい!」
軽く数えても300はいるであろう悪魔たちがアドラメレクの指示を受け、一斉にシルゼヴァたちへ襲いかかる。
「流石に骨が折れそうだな」
「まさか怖気付いたわけじゃないわよね、シルゼヴァ」
「ハハハ!冗談が言えるようになったかシア!300を超える悪魔ども!これほど刺激的なことはないぞ!」
「その通りだ。我らはレヴルストラ。ハノキア最強のトライブなのだ。我がいる限りレヴルストラに敗北の二文字はない」
「そうだね。ルナリの言うとおりだ!」
「あたしも本気を出すわ‥‥そしてカヤクボウヤを救い出すのよぉ!」
「姉さん、俺も手伝いますよ!」
シルゼヴァ、フランシア、ルナリ、シンザ、ロムロナ、ニトロが戦闘の構えをとった。
「儂らと戦っているのもやっとのお前らが勝てるはずもない!一気にすりつぶす!」
シルゼヴァたちに襲いかかる300もの悪魔たちの背後から剛力王バラムが追い討ちをかけるように襲いかかってきた。
ドッゴォォォォン!!
シルゼヴァとフランシア、ロムロナの強力なリゾーマタのエレメント系攻撃魔法に加え、ルナリの負の情念の無数の触手が悪魔たちを襲う。
さらに隙をついてシンザとニトロが弓と剣で悪魔たちの首や眉間を攻撃して次々と悪魔たちを倒していく。
バゴォォォォン!!ドゴォォォン!
レヴルストラの攻撃にいきなり押され気味となったアドラメレク軍だったが、剛力王バラムが剛腕を振り回して魔法攻撃を跳ね除け始めた。
一方アドラメレク配下の幹部悪魔のストラスも魔法で防御しレヴルストラの攻撃を止め始めた。
ズババババン!
ズリュリュリュリュン!
シュザザザザザン!
ロムロナが魔法攻撃を継続する中、ルナリが悪魔たちの動きを触手で封じつつ、シルゼヴァ、フランシアは肉弾戦に切り替え凄まじい速さで悪魔たちを攻撃し始めた。
シンザとニトロは側面から攻撃する陣形をとっている。
「あのデカいのと防御しまくっている梟頭の悪魔を先に始末するぞシア!」
「ええ!連携が必要ね!私に上手く合わせるのよシルゼヴァ!」
「お前が俺に合わせろ!」
ズバババババババン!!
「俺は誰かに合わせるなどやらんぞ!お前が合わせろ!」
「お断りよ!私が合わせるのはマスターだけなのだから!」
それを見ていたシンザは顔を顰めながら弓で攻撃していた。
(うわぁ、最悪のコンビだ‥‥僕が何とかしなきゃ‥‥)
(大丈夫だシンザ)
触手でシンザを守っているルナリが心の中に語りかけてきた。
(大丈夫ってどこが?!)
(見ているがいい)
ドッゴォォォォン!!
ストラスは揉めているシルゼヴァとフランシアに向かって強力な攻撃魔法を連発した。
ドッゴゴゴォォォォン!!
「呆気ないことですねぇ!」
ストラスは更に魔法を打ち込む。
シュババババババァァァ‥‥
爆炎の中から何か剣で斬り裂くような音が聞こえてきた。
『?!』
ズッバァァン!!
突如黒煙の中からシルゼヴァとフランシアが出現した。
それを見た悪魔たちが一斉に襲いかかる。
ズバババババババン!
シルゼヴァとフランシアはそれらを見事なスイッチ攻撃で殲滅していく。
「え?何で?!あんなに言い合ってたのに?!」
「スノウだ。お互いスノウがいることをイメージして3人の連携で戦っているのだ。シルゼヴァとシアのスノウのイメージは完全に一致していることが前提だが、そこが見事に一致しているからこそ出来る芸当だな」
「なるほど‥‥」
「さぁシンザよ。援護を頼む。我も前線に出る必要がある。アドラメレクを倒さねばならんからな」
「分かったよ!でも気をつけるんだよルナリ!」
「当然だ。勝てなければシンザを連れて逃げる」
「ハハハ、了解だ!」
ドォォォン!!
『?!』
シルゼヴァとフランシアが戦っていた場所から凄まじい爆音が響いてきた。
その上空には孔雀の羽で出来た翼をはためかせて浮遊しているアドラメレクがいた。
爆炎が収まるとそこには膝を付いて項垂れているシルゼヴァとフランシアがいた。
「シルゼヴァさん!シアさん!」
シンザが叫ぶが反応はない。
「この魔王アドラメレクにかかればどのような相手もこうして平伏すのですよ!フハハ!さぁやってしまいなさい!」
アドラメレクの号令で剛力王バラムと無数の悪魔たちが一斉にシルゼヴァたちに襲いかかる。
シュシュシュシュシュシュシュシュシュシュ!!
ギュワァァァァァァァン!!
ルナリはシルゼヴァたちを襲おうとしている悪魔たちの足に負の情念の触手を絡ませ、生命力を奪い始めた。
悪魔たちはその場から動けずに徐々に力が抜けていき、その場に膝をつき倒れんだ。
「ルナリ!」
シンザはルナリの活躍に歓喜して彼女を見た。
だが、その姿を見て目を見開いて驚いた。
「ルナリ?!」
ルナリは青白く苦しそうな表情に変わり、今にも倒れ込みそうになっていたのだ。
「どうしたのルナリ?!」
「逆負の情念を吸い込んだのだ‥‥悪魔は快楽を求める‥‥快楽は負ではない‥‥正でもない‥‥負の対極にある情念‥‥エネルギーを生み出す怒りや憎しみ、恨みや妬みとは違う、生きる者たちから意欲と活力を奪う逆負なのだ‥‥それを大量に吸い込んでしまったために‥‥体に力が入らぬ‥‥」
「ルナリ!しっかりするんだ!はっ!!」
突如ルナリの背後に巨大な影が現れた。
「こいつがいなければ悪魔兵たちは行動不能にはならんな!」
剛力王バラムが異常に太い腕を振り上げていた。
いつも読んで下さって本当にありがとうございます。




