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<ホド編 第2章> 116.カヤクの変貌

<レヴルストラ以外の本話の主な登場人物>

【カヤク】:元三足烏(サンズウー)の分隊長だったが、エントワによって人生を変えられたことで改心し、現在はレヴルストラの見習いメンバーとして信用をえるために三足烏(サンズウー)に潜入し情報収集に努めていたが、ニル・ゼントの護衛となった際に洗脳された。

【ニトロ】:元三足烏(サンズウー)カヤク隊の隊員だったが、カヤクと共に改心しレヴルストラ見習いメンバーとしてカヤクと行動を共にしている。レヴルストラメンバーとして認めてもらうために、カヤクと共に蒼市へと潜入し、現在はニル・ゼント最高議長の護衛をとして活動しつつ情報収集に努めている。

116.カヤクの変貌


 「ニトロボウヤ!」


 ロムロナは叫ぶようにニトロの名を呼ぶと駆け寄って回復魔法を唱えた。


 「あ、姉さん‥‥カヤクさんを‥」


 ロムロナはカヤクを見た。

 そこにいたのは別人のような目つきのカヤクがいた。


 ユラァァ‥‥


 カヤクは体をゆっくりと揺らしながら周囲を確認している。


 ヒュン‥‥ガキィィン!!


 カヤクは円月輪をザザナールに振り下ろしたが、ザザナールは余裕の表情で剣でそれを受けた。


 「おいおい間違えるんじゃねぇよぉ。俺だ俺。ザザナールだ」

 「ザザナールですか」

 「お前、目ぇ見えてねぇのか?」

 「ニトロ(あの者)の炎魔法で視力を失いました。何故だか知りませんが治癒が進まないのです」

 「だったら気配を感じ取って戦いなよ。相手を間違えるんじゃねぇ。俺はゼントさんをここから逃す。その時間稼ぎをしな?」

 「ふむ。逃す?逃すといってもどこへ逃すのですか?」

 「お前には関係ねぇな。ゼントさんの護衛なんだからその役目を果たしな」


 ザザナールはそう言うとニル・ゼントの方へと向かう。


 グザン!


 「な?!」


 突如カヤクはザザナールの背後から円月輪を凄まじい速さで振り下ろした。

 ギリギリで体を前に出し致命傷は避けたようだが、ザザナールの背中には大きく斜めの傷が入り血が吹き出した。


 「お前‥何してんだよ‥」

 「誰もここから逃しませんよ。ニル・ゼント様のご指示です」

 「!‥‥馬鹿な‥‥ゼントさんがそんな指示を出したってのか?」


 シャヴァン‥


 カヤクは円月輪を素早く振ると、ザザナールの血が飛び散った。


 ザン‥‥


 カヤクはスノウ達の方を向いて円月輪を構えた。

 それを見てスノウ達も武器を構えた。


 「スノウさん、カヤクさんは洗脳されているんです」

 「そうなのか?」


 シンザがスノウに助言した。


 「はい。ニル・ゼントのところに潜入しようとした際に洗脳を施されたらしいです。ニトロさんは何とか洗脳を免れたらしいんですが、カヤクさんは完全にニル・ゼントの意思のままに動く人形のようになってしまったと聞きました」

 「‥‥‥‥」


 そこにシルゼヴァとフランシアが話に加わってきた。


 「俺たちの敵であるならば斬るしかあるまい」

 「洗脳される時点でレヴルストラにとっては不要な存在だわ。異様なオーラが発せられているけど私たち全員でかかれば問題ないわね」

 「ちょっと待って!」


 そこにロムロナが割り込んできた。


 「カヤクボウヤはあたしたちに有用な情報を掴んで伝えようとしてああなっているのよぉ!助けてあげるのが筋じゃ無いの?」

 「くだらんな。結果も出せず頑張ったから助けるなどできるわけがない。元々仲間であったならまだしも、あれは元三足烏だ。感情に流されて判断を見誤れば、仲間を失いかねない。却下だ」

 「シルゼヴァボウヤ!‥‥スノウボウヤはどう?!エントワの意志を汲んでカヤクボウヤはあたしたちのために行動し、ああなったのよ?!」

 「‥‥‥‥」


 無言のままスノウは前に出た。


 ブワァァァン‥‥


 スノウから戦闘のオーラが発せられた。


 「スノウボウヤ!」

 「‥‥悪いなロムロナ。やはりおれは仲間を危険に晒すようなことは出来ない。だが、ここはおれがケリをつける。こうなったのにはおれにも原因があるからな。おれの判断ひとつひとつがこの結果に結びついているというなら、おれが収束させなければならない。シルゼヴァ、シア。皆を連れてここから撤退する準備をしてくれ」

 「分った」

 「はい!」

 「スノウボウヤ!」


 シャキン‥


 スノウはフラガラッハを構えた。


 ヒュン‥スタ‥


 「!」


 ロムロナはカヤクの前で両腕を広げてスノウの攻撃を妨げようとした。


 「スノウボウヤ!カヤク(この子)を殺すというならあたしを殺してからにしなよぉ!」

 「‥‥‥‥」


 ダシュン‥ガキン!


 「!!」


 スノウは凄まじい勢いで跳躍しロムロナとの距離を詰めるとフラガラッハを振り上げたのだが、その先にはカヤクが振り下ろしている円月輪があった。

 カヤクは背後からロムロナに円月輪を振り下ろし殺そうとしていたのだ。


 ガシ‥バァァン‥ズザザァ!


 スノウはロムロナを掴み後方へと放り投げた。


 「シンザ、ルナリ!ロムロナを頼む!」

 「分かりました!」


 シンザはルナリに目配せしてはロムロナを触手で抱えさせ逃げる準備をし始めた。

 ロムロナはカヤクに攻撃されたことがショックだったのか言葉を失っている。


 「スノウ・ウルスラグナですね。レヴルストラを率いるリーダー。アノマリー。厄介な者をここで消せるとは良い展開です」

 「おれに勝った気でいるのか。だがおれは強いぞ。忘れたと言うなら思い出させてやる」

 「さぁ、それはどうでしょうかね。ザザナールに遅れをとっていたように見えます。その程度で私に勝てると思っているのなら‥‥あなたはここで消えることになるでしょう」

 「やってみろ」


 スノウはフラガラッハをさらに振り上げてカヤクの円月輪を弾いた。

 そしてそのまま凄まじい速さと強さで攻撃を繰り出す。

 カヤクは柔軟な体の動きで円月輪を巧みに操りその攻撃を防ぐ。


 (おかしいな‥‥いくら洗脳されているとはいえ、ここまでおれの攻撃に対応できるとは‥‥しかもこいつ、視力が失われているのに‥‥)


 初めて越界した頃のスノウであれば、カヤクと戦っても負けていた可能性が高い。

 だが、幾つもの世界を巡り異常なまでに強くなったスノウであればカヤクに遅れをとることなどないはずだった。

 だが、以前エントワやワサンと戦った時の実力とはかけ離れている強さを見せている。

 しかもスノウが敗北感を味わった相手のザザナールに不意打ちとはいえ深傷を負わせている。


 ダシュン‥ダダダン!!ドッゴォォン!!


 スノウは凄まじい勢いで距離を詰めるとリゾーマタのクラス3のエレメント魔法を連発でカヤクに叩き込んだ。

 スノウの知るカヤクであれば、ここまでの攻撃を受けてしまうと致命傷になりかねない戦闘力の差であったが、スノウにとってこの攻撃すらジャブ程度にしかならない感覚があったのだ。


 ガキィン!ガキキン!!


 爆発炎の中、カヤクが突如小型ナイフをスノウに投げつけてきた。

 スノウはそれをフラガラッハで軽々と弾き返すと距離を詰めて剣を振り下ろす。


 カァン!ガキキン!カキィン!カキキン!ガキィン!


 凄まじい攻撃の応酬が始まった。


 その間にシルゼヴァたちは空中に引き上げられた大地から退避しようと進んでいた。


 ズドォォォォォン!!


 「おやおや逃亡?感心しないわねぇ」


 シルゼヴァたちの行手を阻んだ者たちが現れた。

 守護天使たちと戦っていたはずのアドラメレクたち悪魔だった。


 「こいつは魔王!守護天使たちと戦っていたんじゃ」

 「シンザ、下がるのだ」


 シンザはニトロを抱えて後方に下がった。

 シルゼヴァ、ルナリ、フランシアが前に出て武器を構えた。


 「天使どもは死んだか」


 シルゼヴァが余裕の表情でアドラメレクに話しかけた。


 「いえいえ、我らは一時的に協定を結んだのですよ。あなた方を抹殺してから再度戦うということでねぇ。あなた方の力は面倒なので、今ここで消しておくことにしたの。我々が天使どもと戦い、傷ついたところをあなた方に攻撃されては堪らないからねぇ」

 「なるほど。面白い。ならばお前らを殺し、天使共も殺しこのゴタゴタを終わらせてやろう」

 「ヌハハハハ!可愛い坊やだこと。やれるものならやってみなさい!」


 アドラメレクたちはシルゼヴァたちに襲いかかった。


 一方スノウはカヤクと攻撃の応酬を続けていた。


 ドォォォン!


 突如スノウとカヤクの戦いの場に守護天使たちが降り立った。


 ガキィン!‥‥ヒュゥゥン‥‥スタタ‥


 スノウとカヤクは剣と円月輪をぶつけ合った後、其々後方へ飛び退いて回転しながら静かに着地した。


 「なんだお前ら」

 「アノマリー、スノウ・ウルスラグナ。そしてニル・ゼントの護衛。貴様らに粛清を施しに降り立った。アドラメレクらとの戦いに決着をつけるには時間がかかる。当然我らが勝利し、やつらを冥府へと送り還すのだが、我らがアドラメレクと戦っている間に何か小細工をされても面倒だと判断した。さぁ、己の愚行を神に懺悔しその罪を償え」


 スノウ、カヤクと守護天使たちという構図に変わり戦闘が始まった。



いつも読んで下さって本当にありがとうございます。

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