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<ティフェレト編>49.キタラ

49.キタラ



――ブロンテース鍛治工房小屋の外――


 「花火みたい‥‥」

 「すごぉーい!きれー!」


 空一面に広がる破壊破が花火のように美しく弾けている。

 エスティやケリーはその光景に思わず感嘆の声をあげた。

 その破壊破によって隕石が3つに割れ、そのうちの一番小さな隕石がネットの破壊破で粉々に飛び散り、火花が落下する花火のようにさらに空を美しく彩った。


 「なんなんすか?!この状況!すごすぎるっすよ!」


 レンも驚きを隠せないでいる。


 「ちょっと待て!様子が変だ!」


 スノウの声に反応し、一同は異変に気づく。

 破壊破の花火の端が寄れるような形になり、残りの二つの隕石のうちの一つが角度を変えて落下しようとしているのが見えたのだ。


 「し、失敗?!」


 思わずエスティの口から絶望の声が漏れる。


 (スメラギさん‥‥まさか失敗したのか?)


 次の瞬間、耳を疑う声が、屋外放送のような音質で響き渡る。


 「みなさん‥‥私は‥‥キタラ聖教会の大司教、ユーダ・マッカーバイです」


 ユーダの声だった。


 「大司教様?!」


 ソニックは複雑な表情を浮かべ動揺を隠せいないでいる。


 「な、なんなの?!こんなティフェレト全土に響くような声を出す魔法を使えたなんて‥‥」

 「いえ、これは大司教様の音魔法ではありません。ましてやキタラ聖教会大司教として持っている力でもありません。おそらく何らかの形であのマクロネットを支える支柱を使ってティフェレト全土に声を発しているのだと思われます」

 「な!で、でも何の目的でそんなことするっすか?!」

 「わかりません。ただ‥‥とても嫌な予感がします」

 「そうね」

 「同感だ。一体何を考えているユーダ‥‥」

 「マスター。私が赴いてユーダ・マッカーバイを滅して参りましょう」

 「待て、今はそんなことやってる場合じゃない。あの隕石を見ろ。最後はおれたちでどんな手段を使ってでも防ぐしかないんだ。その時にお前の力が必要だ、セリア」

 「‥‥出過ぎたことでございました。承知しました、マスター」


 「みなさん‥‥これから‥‥私がこの世界の救世主として‥‥あの隕石と言われるこの地を破壊しようとする物体を消し去ります‥‥」


 ユーダの声が全土にこだまする。

 隕石が迫り来る状況の中で藁にもすがる思いで聞き入る民衆にとって希望の言葉となった。


 「!!!」

 「何言ってんの?!どうやってやるのよ!」

 「ま、まさか!」

 「王室から盗んだと言われる国宝の楽器か?!」

 「そ、そうです。国宝級楽器とは “キタラ”」

 「キタラ?ユーダの宗教の名前と一緒じゃない?!」

 「そうです。キタラとは、王家だけが使える楽器で意思を込めて奏でることで人を強制的に従わせることのできる楽器、以前スノウが仰っていた言霊というものを発動させることのできる楽器だと聞いています」

 「言霊‥‥だけど、言霊であの隕石をどうにかできるの?!」

 「わかりません。ですが、このマクロニウムでティフェレト全土が覆われた状態でキタラを奏でるということは‥‥」

 「ティフェレト全生物を言霊で従わせることができるってことだ‥‥」

 「!!!」

 「で、でもいくらこの世界を支配する力を得たところで隕石で滅亡したら意味ないじゃない!」

 「いや、大司教様のことです。何か策があるのだと思います。数年お仕えしただけですが、あのお優しい表情や言葉の奥の冷たく底なしの思考に最後までこの心をお預けすることができなかった方です。そして、あのお方が何かを計画された中で過去に失敗したことはありません‥‥」

 「そ、そんな‥‥」


 「さぁ、みなさん!‥‥みなさんの声を私に分けてください。‥‥私たちは音の世界の民。‥‥音とは波動。‥‥震わせる力に敵う物質は‥‥この世界どこにも存在しません。‥‥さぁみなさん!両手を挙げて祈るのです!」


 ポロロロォォォォォン‥‥


 その直後、美しくも恐ろしい脳に響くようなハープに似た音がティフェレト中に響いた。

 ティフェレト中の言葉を理解できる種族、存在の全てがユーダの言葉通りに両手を挙げた。


 「え?!レン?ケリー?貴方たちいったいどうしたっていうの?!」


 レンとケリーは目が瞳孔が開いたかのような無表情になったかと思うと、不気味に無理矢理笑顔にさせられているような表情で両手を挙げた。


 「さぁ、みなさん!‥‥そして歌いましょう!‥‥世界を震わせ‥‥隕石を震わせ‥‥粉々にするのです」


 ポロロロォォォォォン‥‥


 音色と共に世界中の生き物が口を大きく開け、隕石の方を向いて通常発することのできないような超音波のような声を絞り出しながら発し始めた。


 『パアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ』


 世界中で発せられる超音波のような声はひとつの波動となって、隕石の方に向かって空気を伝わって飛んでいく。

 恐ろしいほどの振動で世界が地震のように震える。


 「もっと!もっとです!」


 『パアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア』


 世界中の生き物が不気味に喜びに満ちた顔で隕石に向かって声を発している。

 その顔とは裏腹に、いや笑顔の中の不気味さを象徴するかのように人々は目や耳、鼻から血を流し始めた。


 「レン!ケリー!」


 レンとケリーも同様に目や鼻、耳から血を流しながら、ひたすらどうやって出しているかわからない超音波を発している。


 「セリア!」

 「は!マスター!」


 なぜか、スノウ、エスティ、ソニアック、セリアの5名にはキタラの言霊影響はなかった。

 スノウはセリアにホワイトドラゴンの姿になるように指示し、背中に飛び乗った。


 「待ってください、マスター。空から何か来ます」


 ヘリコプターが1機、スノウたちのいる鍛治小屋の方に飛んでくる。


 「何か様子が変ですね」


 ヘリコプターは蛇行しながら飛んでおり、今にも墜落しそうな状態だった。


 「セリア」

 「承知しました」


 セリアはスノウを乗せ、ヘリコプターの方に飛ぶ。

 ヘリコプターと並行して飛ぶと操縦席にいるパイロットは両手を挙げて超音波を発していた。

後ろで必死に捕まっている姿が見えた。


 「あれは!」


 スノウはヘリコプターに飛び乗り、ドアを壊した。

 そして中にいる人をセリアの背中に投げた。


 「セリア!その人たちを地上へ!」

 「かしこまりました」


 スノウはそのまま飛び降りセリアの横に着地した。

 ヘリコプター蛇行しながら遠くに飛び墜落した。

 着地したセリアの背から降りてきたのはムーサ王だった。

 それ以外の乗員はユーダの奏でるキタラの音に支配されていた。

 なぜかムーサ王だけはキタラの影響を受けていなかった。


 ドン!!


 と同時に鍛治小屋からゴーザが出てきた。

 

 「できたぞー!!」


 次の瞬間キタラの影響で両手を挙げて超音波を発し始めた。

 手を振り上げた時に持っていた剣のようなものが宙に舞った。

 飛んでそれをキャッチしたのはムーサ王だった。


 「間に合ったか!」

 「王様!どうしてこのようなところへ!」


 エスティとソニックは膝をついて首を垂れ敬意を示した。


 「そんなことはよい、時間がないのだ!立つのだエストレアよ!」

 「??」


 エスティは言われるままに立ち上がる。


 「これは聖なるタクト。王家純粋血統の者だけが使えるタクトだ。今起こっている状況は把握しておるな?キタラに対抗するためにはこの聖なるタクトを使ってティフェレトに生きる者たちの心の声を呼び起こすしかないのだ!」

 「はい!サポートさせていただきます!さぁ王様!あたしたちがお守りしますので存分にタクトをお振いください!」

 「違うのだ!」

 「はい?」

 「タクトを振るうのは我ではない」

 「は?!」

 「エストレア、そなただ!」

 『はいいいい?!』

 「説明は後だ。よいかエストレア。そなたのフルーレの剣技は芸術的センスがある。このタクトはいわばフルーレのようなもの。この世界を救いたい、生きとし生ける者を救いたいという強い思いを剣の舞いにこめるのだ」

 「で、できません!」

 「頼む!そなたしかこの世界を救えぬのだ!何もできぬ我に代わって‥‥頼む‥‥救ってくれ‥‥」


 ムーサ王はエスティに聖なるタクトを手渡し頼み込むため膝をついた。


 「王様!や、やめてください!あたし‥‥」


 エスティは戸惑いながらもそばで血を流しながら声を発し続けるレンやケリー、ゴーザを見て心を痛めた。


 (あたしなんかにそんな‥‥できるの?!)



 ドッッゴォォォォォン!!


 全土から捻り出すような苦痛の超音波が隕石に届き、一部を破壊した。


 「ぶはぁ!!」


 ゴーザは血を吐いた。


 「ゴーザ!大丈夫ですか?!」


 ソニックが慌てて詰め寄るが、全く見えておらず洗脳されているかのように不気味な笑顔で超音波を発し続けている。


 (違う!やれるかじゃない!やるんだ!)


 表情が引き締まったエスティは、王に一礼し聖なるタクトを受け取った。


 「あたし、やります!みんなを救いたい!救いたいんです!」

 「ありがとう!エストレア!その聖なるタクト‥アウロスを振り、祈りの舞いと共に人々の心をキタラから解き放ち、あの隕石とやらを滅してくれ」

 「エスティ乗れ!」


 セリアの背に乗っているスノウはエスティに声を掛ける。


 「おそらくマクロニウムのピラーの近くでアウロスを振るうのがいいはずだ!お前の心の音をマクロニウムからティフェレト全土へ届けるんだ」

 「はい!」


 セリアはスノウとエスティを乗せてセンターピラーへの飛び立った。

 凄まじい速さで飛びあっという間にセンターピラーに到着する。


 「さぁ、エスティ!世界を救ってくれ!おれはユーダに挨拶してくる」


 スノウはエスティを降ろし飛び立とうとしている。


 「ありがとうスノウ!」

 「エスティ!おれの心もお前に預ける。おれの分まで想いを世界に伝えてくれ」


 そういうとスノウは飛び立った。


 (あたしの世界を救いたいという想い‥‥全身からこのマクロニウムピラーに伝えるんだ!)


 エスティはアウロスを握りしめ静かに舞い始めた。

 一方セリアはスノウを乗せ凄まじいスピードで飛んでいく。

 行き先はノーンザーレの白の塔の屋上だ。


 「見えた!」

 「がは!」


 塔が見えたところで急にセリアが悲鳴をあげた。


 「どうした!」

 「不覚‥‥申し訳ありません、マスター。何者かの攻撃を受けてしまいました‥‥」


 セリアの腹には強靭な鱗をも切り裂いた傷が見える。


 「なるほど‥‥セリア、一旦猫の姿になっておれに捕まっていろ。的がデカイ分攻撃を受けやすくなっている」

 「申し訳ありません」


 セリアは翼の生えた猫に変化しスノウ頭にしがみついている。

 スノウは飛んできた勢いのまま白の塔の屋上に突っ込んでいく。


 シャヴァァァン!!


 どこからともなく飛んでくる斬撃をフラガラッハで弾く。

 スノウは、白の塔の屋上の少ししたの壁を蹴って一旦地上に降り立つ。


 「セリア。これから派手な攻撃を繰り出すからその隙に一旦ブロンテースの鍛治工房へ戻れ」

 「申し訳ありませんマスター。仰せのままに」


 そう言うとスノウは周辺にジオエクスプロージョンを複数放ち爆裂による煙幕をはった。

 その隙をみてセリアは退避した。


 「隠れてないで出てこいよ。相手してやるから」


 シャヴァヴァン!!!!


 飛んでくる斬撃を見ることもなく軽く弾くスノウ。

 突如背後から剣撃が飛んでくる。

 それも簡単に弾くスノウ。

 斬撃を弾かれた影は少し後方に飛びのいて着地した。


 「悪いが時間がないんだよ。さっさと来い。レーノス・ムーザント!」

 「ほう‥‥僕の名を知っているとはね。ソニア、ソニックから聞いたようだね。ご要望にお答えして早速斬らせてもらうよ。言っておくが、僕をソニアやソニックのようなレベルと見ているならやめた方がいい。そんな油断されると僕の音速の剣撃の前では一瞬で終わってしまってつまらないからね。最初から全力でくることをお勧めするよ」


 ドガッ!!!


 「がはぁっ!!」


 スノウの放ったパンチがレーノスの鳩尾に食い込む。


 「ごちゃごちゃうるせぇんだよ。こっちは仲間が血を流しながら叫ばされて気分が悪いんだ。邪魔するな」


 レーノスは剣を大ぶりしスノウと距離をとる。


 「く!汚いぞ‥‥まだ喋ってる途中だったのに!貴様‥‥許さん!」


 レーノスは凄まじいスピードで動きながらいくつもの斬撃を放った。

 音速と言われるだけあり、目で追えないほどのスピードで動き飛ぶ斬撃を繰り出してくる。

 だがそれもスノウの前では無意味だった。

 片手はポケットに突っ込んだまま、フラガラッハで全て軽く防いだ。


 「あ、ありえない!」

 「そう、ありえないんだよ。お前如きがおれに傷をつけようなんて。音速?本当の速さってのを教えてやるよ」


 スノウは魔法で素早さをあげた。


 「じゃぁ今から動くからな?いちいち卑怯とかうるさいから予め宣言した上で動いてやるから。行くぞ?」

 「ドン!!」

 「うわぁ!!」

 「見えてねぇんだろ?声が斬撃だったらお前今頃死んでたぞ?お前には聞きたいことがあるんだ。殺しはしない。少し寝ていてくれ」


 そういうとスノウは峰打ちで気絶させようとする。

 その時。


 ザッパァァァァン!!


 スノウとレーノスのいた場所が一瞬にして砂煙に覆われた。

 徐々に砂煙が晴れていく。

 立っていたのはスノウだけだった。


 「へぇ。よい反応だね。僕の音の波動波を的確に剣で受けるとはね。さすがはスノウ君。あの方が一目置かれる存在だ」

 「あんた誰だ?」

 「ああ、すまない。初対面だったね。僕はゼノルファス・ガロン。リュラーを統べる者だよ」

 「‥‥‥‥」

 「あれ?ソニアかソニックから聞いてなかったかい?」

 「聞いている」

 「それならこれ以上の自己紹介はいらないね」

 「聞いてはいるが、失踪しているとも聞いたぞ」

 「ははは。まぁ側から見たらそうなるだろうね」

 「どういうことだ?」

 「君は知る必要のないことだよ。なぜなら、君はここで死ぬからね!」


 そう言い放つと素早く横に動き始めた。

 そして両人差し指と両親指で写角をみるような手の形をした直後にスノウの肩のあたりで小さな爆発のような現象が起こった。


 ボン!!


 「!!!」


 スノウはエントワ直伝の飛ぶ魔法斬撃をゼノルファスに向けて放つ。


 「!!」


 間一発避けるゼノルファス。


 「ふぅー危ない危ない!しかし、噂以上の強さだね。大概今の攻撃で相手は攻撃力を削がれてしまうからあとは簡単に倒せるんだけど、君には通用しないどころか、カウンター食らいそうになっちゃったよ。だけど負けることもなさそうだ。予定変更してここで足止めさせてもらうよ」

 「させるか!随分自分の力量を過信しているようだな!」


 ボン!!


 「くっ!!」


 今度は膝のあたりがボンと爆ぜた。

 ゼノルファスはさらに画角を見るような仕草から少しずつ距離を取り始める。


 ボボボン!!!


 「がはっ!!」

 「やはり。最初の一撃は見事に防がれちゃってるけど、それはただ遠方からの飛ぶ斬撃に反応できただけだったかな?でもこの近い間合いではさすがに見えないよね!」


 スノウは脇腹が破裂するような衝撃を受けた。

 スノウの中でゼノルファスに対する苛立ちの感情が芽生えた。

 同時に攻撃を防げない自分の力量に対してもイラついていた。


 (見えない距離じゃないんだけど、なんでこんなにダメージを喰らうんだ?そんなに速い斬撃か?)


 「クソ!めんどくせぇな!早くユーダのところに行きたいんだけど、あんたらなんで邪魔すんだよ」

 「それは仕方のないことなんだよね」

 「仕方がない?なんだかイラつくおっさんだな!」

 「おっさんとは‥‥言うねぇ‥‥こう見えても30代なんだけどさ。まぁいいや。仕方がない理由は、僕とこのレーノスはユーダ様の忠実な守護者だからね」

 「はぁ?それはソニアとソニックだろう?しかも既に2人はユーダの下から抜けている。一体あんたらは何なんだよ」

 「一度で理解出来なかったかい?僕とこのレーノスこそが、ユーダ様の本当の守護リュラーだということだ。とある計画のために身を隠していたがね。ソニアとソニックの2人は何も知らずに流れで表面的にユーダ様に仕えていたに過ぎない。あの子達も立派なリュラーだから、十分に役になってくれたけどね」

 「ごちゃごちゃうるさいな。あんたら2人がユーダにどういう理由で付き従っているなんて今はどうでもいい。シンプルにおれはユーダを止めに行きたいだけなんだがあくまで邪魔するっていうんだな?」

 「そうだね、今ユーダ様を止められると困るからな。足止めさせてもらうよ。君に敵う気はしないが、今は時間勝負だからね。ユーダ様が必要な時間くらいは稼がないとな」

 「ああそうかい」


 時間が惜しいため、スノウは肉体強化系魔法をマックスで付与し凄まじいスピードでゼノルファスに詰め寄り、ゼノとレーノスの両方の鳩尾に拳を叩き込んだ。


 「がはぁ!」

 「ぐぶぁ!!」

 「ここで倒れてろ」

 「ははは‥‥捕まえた」


 ゼノルファスはそう言うとスノウの腕を掴んでなんらかの攻撃を繰り出す。


 ボボボン!!!


 「うぐぅ!」


 いきなりスノウの肩が破裂する。

 スノウは瞬時に後方に下がり間合いを取る。


 (なんなんだよこの攻撃は。ゼノルファスは確かにおれの腕を両手で掴んでいた。物理攻撃するなら手を使わずできるのか?口から吹き矢の要領で何か飛ばしたか?いや‥‥喋っていたしそんな素振りもなかった。やはり音魔法か。無詠唱で魔法を放てるのか?だが、音魔法も何かきっかけとなる事象がないとあんな破裂破を音にこめることなんてできないんじゃないか?!)


 ボボン!!


 「痛!!」

 「ははは!考えてるねぇ!でも油断してちゃダメだよ。またどこか破裂しちゃうからね」


 (考える暇も与えてくれないとはな)


 「わかったよ。面倒だから一気に終わらせてもらうよ」


 スノウはジオエクスプロージョンとジオライゴウを連続発動した。


 「!!正気かい!レーノス避けろ!」


 ゼノルファスとレーノスは超爆烈と超電撃の攻撃を避けるべく移動するが、先を読まれて直撃を受けてしまう。


 「うぐあぁ!!」

 「おおお!!」


 2人はその場に膝をついた。


 ボボボン!!!


 「うぐ!」


 ダメージを負っているにもかかわらずゼノルファスは好きあらば破裂破を繰り出してくる。


 (なんだよ!うるさい蝿みたいだな全く!)


 シャバババン!!


 フラガラッハでレーノスの斬撃を弾く。


 「僕も‥いるのを忘れてもらっては困る!」


 (忘れてねぇよ!)


 スノウはバリアオブウォーターウォールを繰り出す。


 ボボン!!


 水の壁には何かが通過したような痕跡がないにも関わらず相変わらずの破裂破がスノウを襲う。


 (一体どうなってる?何か物理的に飛ばす音魔法じゃないのか?音なら空気の振動だから水の壁になんらかの変化があるはずなのになにもないとは‥‥くそ!考えてる場合じゃない)


 「止まらなきゃいいんだろ!」


 スノウは素早く動き続けながら飛ぶ魔法斬撃をゼノルファスに向けて繰り出す。

 だが、レーノスの飛ぶ音撃に弾かれてしまう。

 そして一瞬でも動きを止めるとゼノルファスの破裂破がスノウにダメージを負わせる。

 動きながらすぐ回復魔法で傷を治しながら今度はレーノスに魔法斬撃を放つ。

 レーノスも辛うじてスノウの魔法斬撃を防ぐ。

 レーノスに意識を向けるとその隙にゼノルファスの破裂破が襲ってくる。

 この2人は非常に相性の良いコンビのようだ。

 2人とも遠隔攻撃が可能であり、止まった瞬間に破裂破が襲い、ダメージを負うと追い討ちのようにレーノスの斬撃が飛んでくる。

 ゼノルファスに攻撃を向けてもレーノスの斬撃がそれを防ぎ、その隙に破裂破が襲い、レーノスに攻撃を向けても破裂破が隙をついて襲ってくる。

 基本的にゼノルファスの攻撃は見えないため、どうしても視認できるレーノスの斬撃に意識が向いてしまいそれも隙となってしまう。

 いや、ゼノルファスの能力と連携力が万能といった方がいいだろう。

 他の全てのリュラーとの相性がいい。攻撃の主力にもなりえ、後方支援にもなりえる。

 そして自由に戦わせてそれにうまく合わせて勝利へ導くその判断力、連携力はさすがリュラーを統べる立場と言える。


 (おれも一応新生レヴルストラまとめてるんだけどな。表に立っているようで実は裏で支援しながらの司令塔か‥‥戦闘力はおれが遥かに上だけど、戦術はゼノルファスの方が断然上だな。あんな飄々としてるけどなるほど、学ぶところが多いな)


 「だが、それももう終わりだ」


 スノウはジオエクスプロージョンとジオライゴウの連続発動と同時に素早い動きで魔法斬撃をレーノスに放ちながらゼノルファスに詰め寄りフラガラッハの連撃を放つ。


 「うおおおおお!!!」

 「ゼノ!」


 ゼノルファスは至近距離での剣撃には弱いらしく、数度切られダメージを負ってしまう。

 すかさずレーノスが加勢するために詰め寄り剣撃をスノウに放つ。

 スノウは一旦距離を置くため後方に下がる。


 「がはぁ!!」


 ゼノルファスは血を吐いた。


 「バケモノだね‥‥君。もう少し引き延ばせればと思ったんだが、どうにもやばいね。なので奥の手を出させてもらうよ。迷図乱奴メイズランナー!」


 ゼノルファスは両手を上に挙げたかと思うと、何かの舞いのようにそれを上下左右に動かし始めた。


 「タイガーファングロンド!」


 レーノスは50を超える飛ぶ斬撃を縦に連ねてスノウに向けて放つ。

 スノウは軽々とレーノスの斬撃をフラガラッハで弾くが、3歩横にずれた瞬間に破裂破が襲う。


 ボボボン!


 「何?!」


 一瞬態勢を崩すもひっきりなしに飛んでくる斬撃をかわす。

 2歩後ろに下がった瞬間にまた破裂破が襲う。


 ボボボン!


 「ぐふ!」


 (なんだ?!まるで狭い部屋に閉じ込められたような感覚だ‥‥部分的な破裂攻撃じゃない。何か壁のようなものを感じる)



 次の瞬間、周辺が急激に冷え込むのを感じた。

 すると、スノウの周りに白く輝く空気が凍った結晶のようなものが見えてくる。


 「こ、これは?!」


 空気の結晶のようなものを見渡すとスノウの周りにまるで迷路のように入り組んで展開されているのが見えた。


 「迷図‥‥なるほど!そういうことか!しかしこの温度低下は‥‥」

 「この寒さ‥‥ま、まさか!」

 「ああそのようだね。ゆっくり昔話でもしようか?なんてそんな訳にはいかないか、ははは。さぁ姿を見せてくれよ!いるんだろう?」


 木々の奥から人影が見える。


 「絶対零度!」


 その声とともにゼノルファスの展開した空気の破裂破迷路は一瞬で凍りつき砕け散った。


 「師匠、そしてレーノス。一体どういうことか説明してもらいましょうか」

 「ははは、久しぶりの再会だっていうのに怖い顔だねぇ。まるで初めて会った時のようだ」


 姿を現したのはソニックだった。



この連休で一気にクライマックスまで行きたいと思います!

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