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<ホド編 第2章> 108.夢

<レヴルストラ以外の本話の登場人物>

【ニル・ゼント】:ガレム・アセドーの後を継ぎ、元老院最高議長となった人物で、謎多き存在。ガレム・アセドーを大聖堂の最上階テラスから突き落とし殺害している。その後、ホド中央元老院の最高議長となった。また、普通では不可能とされるオーラを自在に操る力を持つ。

【ザザナール】:ニル・ゼントの配下の剣士 昔は冒険者でレッドダイヤモンド級を超えるレベルだったが、その後殺戮への快楽に目覚め悪に堕ちた。その後ニル・ゼントに拾われ用心棒兼ゼントの護衛部隊の隊長を務めている。

 108.夢


 数日前。

 スノウは微睡の中にいた。

 何処となくホドにいる感覚があった。

 辺りはまだ薄暗いのだが、東の空が僅かに明るさを見せていることから夜明け前だということが窺えた。

 両足は大地を踏み締めており、自分がホドカンではなく永劫の地にいることは認識していたが、自分の立っている場所が何処何かは分からなかった。


 (ここは何処だ?)


 スノウはその場から風魔法でゆっくりと上昇し視点を高めていく。

 徐々に東の空から陽が昇るのが見えた。

 朝陽に照らされ次第にホドの全景が美しい輝きと共に姿を現していく。

 蒼市(あおし)素市(もとし)緋市(あけし)、そして破壊された漆市(しつし)跡の4つの隆起したホドカンと内海、それを囲むようにして広がる広大な陸地。

 その外側には果てしなく広がる外海がある。

 南側には天使たちによる神の裁きで生まれた巨大なクレーターが見えた。


 (ん?)


 スノウは何故か西側の内海と外海を結ぶ海峡が気になって目を向けた。

 既に朝陽によって視界は確保されている。


 ピカッ!

 ビリリリリ‥‥


 突如眩しい光がホド全土を覆った。

 その直後スノウの全身にビリリと振動が伝わって来た。

 どうやら音は聞こえないらしい。

 視覚と触覚だけが目の前で起こっている状況を捉えていた。

 西の海峡部分から巨大な黒いキノコ雲が発生した。

 その爆風は凄まじく、風魔法から炎魔法へと変えてスノウは体勢を維持した。


 (何が起こった?!まさかまた神の裁きか?)


 シュッ‥‥


 爆風で飛んできたと思われる破片でスノウは右腕に切り傷が出来たのを見た。

 痛みが現実味を感じさせる。


 キュワァァァン‥‥


 (?!)


 突如スノウは胸の中に何者かの存在を感じ取った。

 それは突如体から飛び出し、スノウの横に浮遊した。

 ただ小さく光るだけの存在で何者かは分からない。

 だが、レヴルストラのメンバーでもなく、天使とも違う感覚だけはあった。


 "ふたたび破壊が始まる"


 (?!)


 突如光はスノウに語りかけて来た。


 "スノウ。これから起こる破壊は世界を誤った方向へと変えていくだろう。だが好機でもある。取り戻せ。そして本来のあるべき世界へと導くのだ"


 (あんたは何者だ?一体何を言っている?)


 光はスノウの問いには答えなかった。


 ビリリリリ!!


 (?!)


 突如東の大地に異変が起こるのを感じた。


 (何だ?‥‥何かが来る!?)


 スノウは上空を見上げた。

 巨大な魔法陣が何重にも重なっている。


 (魔法陣?!何だ?見たこともない魔法陣だぞ?!)


 突如魔法陣から黒い稲妻のような何かが東の陸地へと突き刺さった。

 その直後ホド全土が凄まじい地鳴りを始めた。


 ビリリリリリリ!!


 音は聞こえないのだが大地が叫びをあげるような振動が肌に伝わってくる。


 ビリリリリリリ!!


 突然大地が隆起し始めた。

 南西部分だけを残し、永劫の大地の殆どが徐々に隆起していく。

 大地は裂け、巨大な津波が発生している。


 (何なんだこれは?!)


 "この光景を現実のものとしてはならない。スノウ。お前がこれを変えるのだ。ここまでこの地を裂いてしまっては再生は困難となろう。この光景を現実のものとしてはならない"


 (どういう意味だ?!説明してくれ!一体これは何なんだ?!)


 光はふたたびスノウの胸の中へと入っていった。


 (おい!)


 胸を弄ってみるが光の存在は完全にスノウの体の中に消えてしまった。

 次の瞬間、突如目の前が真っ暗になった。

 全身に別の感触があるのを感じた。

 ゆっくりと目を開けてみる。


「?!」


 目の前に見えたのは見覚えのある天井だった。

 そこ謎の神殿の地下にある街の中のとある建物の中の自室の天井だった。

 それを見て初めて先ほどの光景は夢だったのだと理解した。


 (夢‥‥だったんだよな‥‥)


 バサ‥


 全身汗だく状態だったようで、毛布を退けて起き上がった。


「何だ?!」


 スノウは右腕から血が出ているのを見つけた。

 これは夢の中で凄まじく爆発が生じた直後、その欠片が飛んできて怪我したものと同じだった。


(夢じゃなかったってのか?)


 "この光景を現実のものとしてはならない"


 スノウは夢の中で光が語りかけて来た言葉を思い出していた。


(何なんだ‥‥おれに何をしろっていうんだ?)


 スノウは夢で光が消えて行った自分の胸を見ながら思った。


 ・・・・・


 時は戻ってグルトネイを操るザザナールがタケミカヅチを放った直後。


 パシュゥゥゥン‥‥パァァ‥‥


 元老院の調査団が占拠しているアヴァロンの拠点から青い閃光弾が海上に放たれた。

 ニル・ゼントの指示であり、放ったのはカヤクだった。


「いよいよですね」


 ニル・ゼントは自信に満ち溢れた表情で青い光を見ていた。

 それから数分後、沖に巨大な要塞グルトネイが浮上して来た。

 その勢いでかなりの高さの津波が発生するほどだった。


「何だあれは?!」

「グルトネイ‥‥いや、違うぞ!」

「異様なもん背負ってんな」


 元老院の調査団の拠点の中心に位置する三足烏の拠点の一室に集まっている分隊長、副分隊長たちは窓からグルトネイの異様な姿を目の当たりにして驚きの声をあげていた。


 (あれは‥‥ジライ様が言っていた恐ろしい兵器を積んだグルトネイ‥‥何と禍々しい姿‥‥今ジライ様は我らを守りニル・ゼント様のお相手をしているのか‥‥)


 シュリュウは事前にジライからグルトネイのことを聞いており、三足烏の面々を守るように指示を受けていたのだ。


(ジライ様に代わり私が三足烏・烈を守るのだ)


 シュリュウは決意新たに異様な姿をしたグルトネイを見ていた。


 ・・・・・・


ーーグルトネイ内部コックピットーー


 「ジライの魔力と生命力を吸い取ってジルアースのエネルギーは発動可能点を超えたな」


 ザザナールはコックピットにある計器を見ながら言った。

 計器には生き物であるかのように血管のような不規則に這う線が繋がっており、脈打っている。


 「貧困街の者ども2000名を積み、そいつらからも魔力と生命力を吸っているがそれでも半分しかエネルギーゲージは貯まらないのにジライひとりで残りを埋めちまうんだから、人間にこれ以上ないほどの感情の昂りを与えると魔力と生命力が大幅に上がるってのは本当らしい。ましてやジライほどの戦闘力の高さだ。やつレベルを怒らせて100人ほど積めば、ハノキア全部手中に治められるんじゃねぇかって思ってしまうほどぜ」


 ザザナールは笑を見せながら横に立てかけてあるヘルメットを被り、両脇にあるモグラの巣穴のような部分に腕を突っ込んだ。

 ヘルメットからは細い数本の触手が飛び出てザザナールの頭部に突き刺さる。

 腕にも同様に挿入部付近から数本の細い触手が出て来て腕に突き刺さった。


 「どうにも慣れんな、これだけは」


 ガクン!


 ザザナールは若干そり返るような体勢になった後、力無く椅子に寄りかかった。

 精神がグルトネイ内にある仮想空間へと転送されたのだ。

 ザザナールは空中に浮いている状態で立っている。

 360度視界が確保された状態のため、足元には海面が広がり、前方には永劫の地が広がっている。


 「さて、グルトネイよ、ジルアース起動だ」


 ギュワァァァン‥‥


 目の前にリアルなホログラムが出現した。

 ホドの永劫の地が全て映し出されている規模の地図だ。


 「ジルアースの目標座標セット。地表の構成、地盤の強度、岩盤の特性分析完了。ジルアース出力調整完了」


 ザザナールは腕を組んだ状態でジルアース発射準備を完了した。


 「モニターを目標座標から手前3キロ地点で固定。さぁて、どれほどの破壊力なんだ古の破壊兵器よ。その実力を見せてもらうぜ」


 バッ!


 ザザナールは右手を前にかざした。


 「ぶちかませ」


 その瞬間、ジルアースに装備されている異様な形状の砲台の先端から、絨毯が敷かれていくように半透明で輝く平たい面が凄まじ速さで発射された。

 大きな音も振動もなく発射された平たい光線は上空へと昇っていき途中から放物線を描くようにして永劫の地の西側にある海峡目掛けて飛んでいく。

 そして数秒後平たい光線は海峡に着弾した。


 パァァァ‥‥


 目が潰れてしまいそうなほどの閃光がホド全土に広がった。

 次の瞬間、鼓膜破れそうなほどの凄まじい爆裂音が遅い、そして遅れてとてつもない爆風がホドに広がっていった。


 ドッゴォォォォォォォォォン!!

 バシュアァァァァァァ!!


 まさに古の世界を滅ぼしたと伝承のある禍々しい炎の破壊破だった。



いつも読んでくださって本当にありがとうございます。

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