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<ホド編 第2章> 97.不思議な街

<レヴルストラメンバー>

・スノウ:レヴルストラのリーダーで本編の主人公。ヴィマナの船長。

・フランシア:謎多き女性。スノウをマスターと慕っている。どこか人の心が欠けている。ヴィマナのチーフガーディアン。

・ソニック/ソニア:ひとつ体を双子の姉弟で共有している存在。音熱、音氷魔法を使う。フィマナの副船長兼料理長。

・ワサン:根源種で元々は狼の獣人だったが、とある老人に人間の姿へと変えられた。ヴィマナのソナー技師。

・シンザ:ゲブラーで仲間となった。潜入調査に長けている。ヴィマナの諜報員兼副料理長。

・ルナリ:ホムンクルスに負の情念のエネルギーが融合した存在。シンザに無償の愛を抱いている。ヴィマナのカウンセラー。

・ヘラクレス:ケテルで仲間になった怪力の半神。魔法は不得意。ヴィマナのガーディアン。

・シルゼヴァ:で仲間になった驚異的な強さを誇る半神。ヴィマナのチーフエンジニア。

・アリオク:ケセドで仲間になった魔王。現在は行方知れずとなっている。

・ロムロナ:ホドで最初に仲間となったイルカの亞人。拷問好き。ヴィマナの操舵手。

・ガース:ホドで最初に仲間になった人間。ヴィマナの機関士。ヴィマナのエンジニア。


97.不思議な街


 「人の気配はないようだな」


 3人はほぼ歩き尽くしたことでこの地下の街が人気のないゴーストタウンであることが窺えた。

 不思議な構造をしており、家々は不規則に並んでいるのだが、それらの家に通ずる道がないのだ。

 中央に走る幹線のような道路が一本あるだけで、それ以外の道がないため、生活動線をどのように確保していたのか全く分からない街の造りだった。

 しかもどの家も色は白で統一されているのだが、形は個性豊かで、日本の古き良き家屋もあればドーム状の家もある。

 真っ白な日本家屋は寧ろ斬新だとスノウは感じた。

 意外にも高層の建物は無いようで殆どが3階建てまでだった。

 高度文明と言えば高層の建物が乱立しているイメージだが、それとは全く似ても似つかない街の造りだった。

 家々には必ずと言って良いほど植物が手入れされたかのように生えており、自然との一体感もある。

 信号や標識などもなく、そもそも車のような移動手段も見当たらない。


 「そうみたいだな。誰も住まなくなって久しいようだ。だが神殿同様建物、舗装道路などは新しいままだ。見た目新しい街に見えるがどこか古く寂れた雰囲気もある」

 「マスター。どこの家も鍵が無いようです。簡単に開きます」


 スノウは試しに目の前の家のドアを開けてみた。


 ス‥‥


 「確かに。鍵穴も無いし。この文明にセキュリティは必要なかったのか?兎に角家の中も調べてみよう。誰かがいたらその時に弁明すればいい」


 そう言ってスノウは目の前の家の中へと入る。


 「おいおい、一体何なんだよここは‥‥」


 スノウは思わず驚きの言葉を発した。


 「どうしたスノウ」

「家具から食器から何から何まで神殿の構造と同様に因を繋がりに破壊と再生を同時に行う例の呪文みたいなのが絡みついてる。つまり家の中の物体全て常に新しいってことだ」

 「このコップひとつとってみても常に新しいっていいことか」

 「そうだ。あと不思議なのはこの家には写真や絵がない」

 (ついでに言えばテレビもないな。まぁテレビ自体、日本でも廃れていたから、この文明でも使わなくなったのかもしれないな。そもそもそういうメディアがあったのかも分からんが、皆何かのデバイスを使ってホログラムで情報を得たりエンタメを楽しんでいたのかもしれないな)

 「2階と3階を調べましたが寝室らしきものもありませんね。ベッドがありませんでしたから」

 「元々人は住んでいなかったのか?」

 「立って寝る種族かもしれんぞ。とりあえず整理すると、ここは大きな街であり、誰も住んでいない。全てが常に新しい。陽の光も差し込み昼夜も感じられる。水は蛇口らしきものから出てくるから問題もない。つまり、ここへ素市の者どもは移住可能と言うことになるな」

 「天使たちに見つからずに暮らせるのなら好都合だな。移住手段は考えないとならないが。だが食糧はどうする?家庭菜園的なものはそれぞれの家にあったけどな。それじゃぁ流石に足りず3ヶ月も持たずに全員餓死だ」

 「向こうに土にが敷かれた広い場所がありました。もしかするとそこで穀物か何かを栽培していた可能性はあります」

 「調べてみよう」


 3人は土で覆われた広い空間へとやって来た。


 「かなり広いな」


 スノウは土を確認してみる。


 「確かに土はあるがここは田畑ではないようだな。用水路がないから水を供給出来ない。これだけの敷地だ。人手で水を撒くわけにもいかないだろう」

 「何を言っている?水を引けばいいだけだ。ハークにでもやらせればいい」

 「そう言えばヘラクレスはどこへ行ったんだ?」

 「あのグズめ。どこかでサボっているのだろう」

 「確かシルゼヴァに殴られて気絶したまま放置しているかと思うわ」

 「マジか!言ってくれれば起こして来たのに」

 「マスターも気に留めていませんでしたし、特に必要ないと思っていましたので放置していました。引き摺って来ましょうか?」

 (引き摺ってって‥‥ちゃんと起こして自分の足で歩かせて連れてこようよシア‥‥)


 スノウは数秒無言になったが気を取り直して自分で呼んでくることにした。


 数分後。

 スノウはヘラクレスを連れて戻って来た。

 見えない壁に頭をぶつけてシルゼヴァに伸された記憶がないのか、落ち込むどころか異様に元気に歩いて来ている。

 特に高度な文明の数々に胸躍るといった感じだった。


 「おお、随分と広い土地だな。水が引かれてないんだってな。俺が何とかしてやるぜ」

 「待てハーク。設計図はスノウに書いてもらうんだ。お前の設計では1日と保たない」

 「はぁ?!聞き捨てならねぇな!」

 「何だ、懲りずにまた戦って大負けしたいというんだな?」

 「あぁ?!大負けだ?!バカ言えシルズ。俺がお前に負けることはあっても大負けはねぇぞ?!」


 スノウは負けと大負けの違いが分からないため、聞こうと思ったのだがどうでもいい話だと気づいて無視した。


 「兎に角スノウに設計図を書いてもらってそれをお前が作ればいい。分かったか?」

 「おお、スノウと共同作業だな!」


 ガン!


 「いで!何だいきなり!」


 フランシアはなぜか突然ヘラクレスの脛を蹴った。


 「何でもないわ。何かちょっとイラついただけよ」

 「お前、絶対に嫁の貰い手ねぇタイプだな。スノウが呆れてるぞ」

 「え?!」

 「は?」


 急なとばっちりを喰らって驚くスノウは不安そうな表情のフランシアを見てどうすればいいか分からなくなり、その場から無言で立ち去った。


 ガン!


「いで!いい加減にしろ!俺ぁお前のストレス発散サンドバッグじゃねぇんだからな!」


 フランシアは悲しそうで苛立っている複雑な表情を見せていた。

 スノウはこのバラバラ感満載の4人で暫くここに住まなければならないことにウンザリしていた。


 ・・・・・


ーーヴィマナ内ブリッジーー


 ヴィマナは蒼市に向けて進路をとっていた。

 目的は蒼市への潜入調査だった。

 ソニック副船長はスノウとリュクスを介して会話しており、ヨルムンガンドの鍵情報を得るために蒼市に潜入調査するという指示を受けていたのだ。


 「ソニック副船長。間も無く蒼市(あおし)近郊への転送可能域に到着します」

 「分かった。ありがとうリュクス。目的地へ到着したら停止してくれるかい。あとこれから会議をやりたいから全員会議室へ呼んでおいてくれるかい?」

 「承知しました」


 それから10分後。

 謎の神殿にいるスノウ、フランシア、シルゼヴァ、ヘラクレス以外のレヴルストラメンバーが会議室に集まった。


 「みんな集まってくれてありがとう。スノウからの指示で僕らは蒼市(あおし)への潜入調査を行うために現在蒼市(あおし)近海の転送可能ポイント目指して進んでいるわけですが、潜入調査の人選と作戦を決めたいと思って集まって貰いました」

 「潜入調査と言ったらシンザか」


 ワサンは腕を組みながら言った。


 「シンザなら蒼市(あおし)の者たちに面が割れていないはずだな。俺もシンザで賛成だ」


 魔王アリオクに評価された気がしてシンザは少し嬉しそうな表情を見せた。


 「シンザは異論はないかい?」

 「僕は大丈夫だよソニック」

 「異議ありだ」


 低い声で異議を唱えたのはルナリだった。


 「シンザが行くなら我も行く。我はシンザと一心同体なのだからな。我の全ては愛するシンザのものであり、シンザと離れることは我にとっての死であると知れ」


 一瞬、場が静まり返った。


 「あらら、随分と大胆な愛の告白ねぇ」


 ロムロナが面白そうにほくそ笑みながら言うと、シンザは顔を真っ赤にして恥ずかしそうに俯いた。

 何故かソニックも顔を赤らめている。


 「これが愛の告白なのか。俺には分からんが、恋愛プロと自負しているロムロナが言うならそうなのだろう」


 アリオクの真面目なコメントでシンザとそして何故かソニックはさらに顔を赤らめた。


 「まぁいいんじゃない?ホムンクルスとか言うやつらしいけど、ホドにはいないし、見た目はニンゲンと変わらないんだし。それにルナリちゃん強いからねぇ。頼もしいじゃない?」

 「分かっているではないかロムロナ」

 「ウフフ。それにあたしも同行するから大丈夫よぉ」

 「え?」

 「ん?」

 「ロムロナ、同行するって3人もいなくなったらヴィマナの防衛力が不十分になりますよ。グルトネイやアーリカが襲ってきた場合、海での戦闘が得意な貴方がヴィマナにいないと‥‥」

 「ソニックボウヤぁ‥‥あなたが何とかするんでしょ?副船長ぉ」

 「おい、ロムロナ。甘えても無駄だぜ?ソニックは副船長だ。だからこそ、全員の身の安全を第一に考えて判断する。副船長がお前は残れって言ってんだ。我儘言うなよ」


 言いづらそうなソニックを察した旧友のワサンが言った。


 「あなたは黙ってなさいワサンボウヤ。ソニックボウヤお願い。あたし、向こうに潜入しているカヤクとニトロが気になって仕方がないのよ。あの二人はあたしたちに認められたくて無茶していると思うのよ。下手したら捕まって殺される可能性だってあるわ。暫く連絡が取れていないから心配なの」


 ダンッ!


 「あの二人が何だってんだよロムロナ!いい加減あいつらを気に掛けるのやめろ!」


 ワサンは怒りに任せてテーブルを叩きながら声を荒げて言った。


 「そんなの出来るわけないわよ!彼らはエントワボウヤが生かし繋いだ命なんだよ?それを無碍に扱うってことはエントワボウヤの心を踏み躙るってことにもなるの分からないのこのハグれ狼!」

 「ハグれ‥‥チッ!」


 ワサンは言い返す言葉が見つからなかった。

 なぜエントワが敵であるカヤクたちを救ったのか、本人が亡くなった今では確認しようがないのだが、ロムロナはワサンの気持ちが痛いほど分かっており、ワサンもまた、ロムロナの気持ちを理解していた。

 だが、心が納得できていなかったのだ。


 「分かりました。いいですよロムロナ。潜入調査頼みます」

 「!!‥‥ソニックボウヤ‥‥」

 「スノウから預かったこのヴィマナ。僕の全身全霊をかけて守りますから安心してください」

 「俺もいる。魔王の力はお前達の数百倍だ。ロムロナひとり抜けたところで総戦力は変わらない」

 「チッ!‥‥絶対にヨルムンガンドの鍵、取ってこいよ、我儘イルカ女」


 ソニックに続き、アリオク、そしてワサンが言った。


 「3人ボウヤ‥‥大好きよぉぉ!」


 ロムロナはソニックたちに抱きついてきた。

 ソニックは顔を赤らめて固まり、アリオクは素早く避け、ワサンは足でロムロナを遠ざけている。


 「今回は!ちょっと放して下さいよロムロナ!今回はヤガトの手助けは貰えません!ただし、三足烏(サンズウー)の大半は陸地の開拓に出払っているという情報が入っていますから、何とか上手く忍び込んで下さいね!」

 「わかってるわぁ〜!」

 「助けて姉さん!」


 ソニックの叫びを精神の部屋でソニアは腹を抱えて大笑いしながら見ていた。


 その日の午後、シンザ、ルナリ、ロムロナは蒼市の近くの海域へと小舟で転送した。



いつも読んで下さって本当にありがとうございます。

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