<ホド編 第2章> 94.破壊の後
<レヴルストラ以外の本話の主な登場人物>
【ラファエル】:黒いスーツに身を包んだ金髪の女性の姿をしている守護天使。ホドを守護している。
【カマエル】:痴呆の老人姿の守護天使で神を見る者と言われている。ゲブラーを守護している。銀狼の頭部であったワサンにニンゲンの頭部を与えた。
【ミカエル】:少年の姿の守護天使。ティフェレトを守護している。スノウの仲間であったレンに憑依していた。ベルフェゴールを冥府へと還している。
【ラツィエル】:Tシャツにジャケットを着てメガネをかけたの姿の守護天使。コクマを守護している。神の神秘と言われている不思議なオーラを放つ天使。
【ザフキエル】:青いスーツを着た黒人の姿の守護天使。ビナーを守護している。気性が荒いが、守護天使の責務を最も重要視している責任感ある天使。
【サンダルフォン】:最高級のスーツに身を包んだ紳士の姿の守護天使。メタトロンと兄弟でマルクトを守護している。罪を犯した天使たちを永遠に閉じ込めておく幽閉所の支配者と言われている。
【ルシファー】:唯一神の支配する世界の大天使総長であった存在。異系の神含め天使の約半数を従えて唯一神に反旗を翻し戦いを挑んだが敗れ、現在は冥界、地獄を支配する大魔王を統べる王の中の王。神出鬼没でいくつもの分霊をハノキアに放っている。
94.破壊の後
ーー素市の村ーー
「何が起こった?!」
「神の滅祇怒がおとされたのはここじゃないぞ?!」
スノウ達は危険を承知で外へ出た。
『!!』
全員あまりの破壊力に絶句している。
「ありゃぁ神の滅祇怒じゃねぇな」
「神の滅祇怒じゃないなら一体何なんだ?」
「俺には分からん。シルズ、何か知ってるか?」
「いや、知らん。だが奇妙なのはそれだけじゃない。あの場所だ。あの位置、おそらく蒼市と素市の中間あたりだろう。蒼市の元老院どもが領土を拡大するペースが早いとしても流石に3ヶ月足らずであそこまでの拡大は無理だろう。元々あの辺りの少し手前で奴らと戦うことを想定していたからな。旗を立てるくらいは出来るだろうが、神の破壊兵器を使うほどの拠点は築けていないはずだ」
「確かに。だとしたら一体何が起こってるんだ?」
(エル‥‥)
「!!」
スノウは何か嫌な予感がして真上を見た。
「魔法陣が真上に出てきたぞ!!」
その直後光の粒子が収束され始めた。
「やっべぇ!中に入れ!」
4人は謎の神殿の中へと入り扉を閉めた。
神の滅祇怒の威力の凄まじさは知っているため、扉はしっかりと閉じ切っていた。
魔法が使えないため、灯りを設置してあるので扉を閉めても視界は確保できている。
それから1分足らずで凄まじい轟音と振動が神殿を襲った。
神の滅祇怒がおとされたのだった。
その後、越界魔法陣が維持できなくなったことから、一旦ミッションは終了となり、ホドの空からは魔法陣もデヴァリエも消え、暗雲も消え去ったことでいつもの陽の光がホド全土を照らし始めた。
・・・・・
ーー三足烏調査団の拠点ーー
轟音と地震のような激しい振動が拠点一帯を襲った。
三足烏の調査団員たちはいよいよ最期の時が来たと皆怯えた。
ある者は酒を飲み激しく酔うことで恐怖を誤魔化し、ある者は部屋で泣き叫んでいた。
だが轟音と地震だけで一向に自分たちのいる拠点への神の裁きの攻撃が来ないことを受けて様子を窺うために皆外へ出てきた。
暗雲によって闇に包まれている世界で激しく舞い上がる巨大な黒煙は視界が悪い状況でも確認が出来た。
その凄まじい破壊力から調査団員たちの恐怖はさらに増したのだが、それから一向に攻撃の気配がないことが蛇の生殺しのようにさらに死への恐怖を助長した。
ーージライの執務室ーー
「一体何が起こっているんだ?」
ジライは窓から外を見ていた。
シュワァン‥‥
「!」
ササッ!
ジライは背後に気配を感じ振り向いた瞬間、目の前に現れた人物を見て素早く片膝をついて首を垂れた。
突如現れたのはネンドウだった。
「神の裁き‥‥中々の破壊力と見えるな」
「はい。ここからでは何が起こっているのか分かりません。把握出来ているのは凄まじい轟音と黒煙からの推測に過ぎませんが、ホドでは見たことのない規模の被害が想定出来るということです。あれがこの地に落とされるのは間も無くかと‥‥」
「ふん。案ずるな。計画通りここは我の力で守る。貴様は恐怖で隊を縛っていれば良い」
「さ、流石はネンドウ様。蒼市の防御障壁に加えてこの地までお守り頂く力をお持ちでおられる。何よりこの隊を恐怖で取りまとめるのをご存知とは恐れ入りました。これは私の心の中で決めたこと。他の誰にも話してはおりません。どうやってお知りになられたのですか?」
「ふん。くだらん。我の前で隠し事など不可能なのだ。だが、そんなことはどうでもよい。神の裁きとやらは何やら邪魔が入ったと見える」
「!!‥‥どういうことでしょうか?」
「合計3発。これが神の裁きだ。この3発は天使どもが神の土地と主張しているここに土足で踏み入っている者への一方的な報復だが、その対象は、緋市の者ども、素市の者ども、そして我々となる。最初の1発目は緋市の者どもへ下された。だが2発目は異常に強力でありながら全く何もない場所へと裁きが下された。そして3発目の裁きは1発目と同様の威力で素市の者どもへ下されている。そして今、空は元通り陽が流石昼間へと変わった。これは天使どもの神に裁きが終わったことを意味しているのだが、何故我らの拠点には裁きが落とされないのか?ということだ」
「!‥‥我々が天使に赦されたわけではない以上、向こう側で何かトラブルが発生し、神の裁きを下せなくなった‥‥そういうことですね?!」
「そうだ。だが安心は出来まい。天使は非情だ。一度決めたら相手の事情などお構いなしに彼奴等の理屈を押し付けてくる。その時はまたやってくるであろうから我は暫くこの地にとどまることにする」
「!‥‥そ、それは心強いお言葉です!本部との行き来はあるかと思いますので逐次状況ご報告は継続致します」
「小賢しいぞジライ。貴様ごときが我の行動を知ろうとするな。天使どもの動きは我が把握しておく。貴様は貴様のやるべきことを確実に進めよ」
「はっ!」
「それと、間も無く新最高議長がこの地へやって来る。彼奴は我ら三足烏の主人の組織の一員だが、何か怪しい動きを感じるのだ。我は天使どもの警戒で身動きを取りづらい。あまり近づくなとは言ったが、彼奴に近づき彼奴の真意を探れ」
「は、はい!」
「これは忠告ではなく命令だが、決して彼奴にのまれるな。彼奴は人の心を喰うバケモノだ」
シュゥゥゥ‥‥
そういうとネンドウはその場から消え去った。
(人の心を喰うバケモノ‥‥)
ジライはネンドウもまた得体の知れないバケモノだと想像しようと思ったが、心の中を見透かされてしまうのを恐れ、考えるのをやめ窓の外を見た。
「!」
窓の外にはネンドウの言葉通り、3箇所から巨大な黒煙が空高く伸びているのが確認できた。
緋市と素市は距離が遠いため黒煙も霞んで見えたが逆に見えていること自体が凄まじい破壊力であったことを物語っていた。
そして三足烏調査団の拠点から真東に見える超巨大な黒煙。
他のものとは異なり、かなりの土砂や粉塵を巻き上げていることが見てとれた。
(風向きを確認しなければならないな。巻き上げられた粉塵がこの地に降って来るとなれば、家屋の破損は免れないだろう。エレメント系のバリアを構成する必要がある)
ガチャ‥‥
ジライは窓を開けた。
風が自分に向かって吹いている。
「チッ!」
ジライはすぐさま執務室を出てシュリュウのいる待機所へと向かった。
「シュリュウ!」
「!!‥‥ジライ様!神の裁きはないのでしょうか?!」
「見ればわかるだろう!それよりあの超巨大な黒煙が見えないのですか?!」
「いえ、見えておりますがここへの被害がなく安堵しております」
「そうじゃない!あの黒煙が巻き上げている土砂粉塵が間も無くここへ降って来るのですよ!急ぎ魔法部隊をかき集めて拠点全域を覆うエレメント系バリアを張らせなさい!さもなければ家屋は大量の土砂がガトリングガンのように降り注いで全壊します!急いで!一刻を争いますよ!」
「何と!!しょ、承知しました!!」
シュリュウは素早く行動し、三足烏調査団の拠点にはエレメント系バリア張られ、巨大なドームが完成した。
強度は十分ではないかも知れないため、土砂粉塵の雨を完全に防ぎ切ることはできないかも知れないが、かなり破損は防ぐことが出来る状態となった。
・・・・・
ーー謎の神殿ーー
「轟音も振動も無くなったように感じるが、神の滅祇怒攻撃は終わったようだな」
「扉、開けてみるがいいか?」
「ああ、だが慎重に頼むぞヘラクレス」
「任せとけ」
スノウの指示でヘラクレスがゆっくりと扉を開ける。
ギギギィィィ‥‥‥
『!!』
一瞬眩い光で視界が真っ白になったが、徐々に回復し周囲の景色が確認できるようになった。
驚いたのは、周囲にあった建物が全て跡形もなく消え去っていたことだ。
破壊の後の瓦礫もなく、建物を建設する前の更地の状態に戻ったように見える。
「ほぇー、灰すら残ってねぇよ」
「神の滅祇怒恐るべしだが、それ以上に凄いのはこの謎の神殿の強度というか構造だな」
「ああ。今の所この分子構造はスノウの万空理でしか確認できない上に、視えたところで造り方が分からんうちは応用も出来ない。それが残念だな。ここ構造を利用して建物を建てれば神の滅祇怒に怯える必要もない。天使どもが直接攻撃して来たとしても今の俺たちの敵ではないからな」
「ははは‥‥まぁそうだな」
スノウはシルゼヴァのレヴルストラの評価が異常に高いことがしっくり来ていなかったのだが、シルゼヴァが言うと、本当にそうなのだと思ってしまう根拠のない安心感があることも感じとっていた。
「よし、これで俺たちは一旦死んだことになったわけだ。暫く様子を見て問題なさそうであればタイミングを見計らって行動に出ることにしよう」
「俺は暫く資材を置いている谷底を調べることにするがいいか?」
「どうしてだ?何かあったか?」
「ああ。奥から風を感じてな。おそらくどこかへ通ずる穴があるのだろう。酸素供給用の通気口かも知れんがな」
「分かった。それはおれも同行しよう。シアとヘラクレスはここの見張りと暫くここで過ごすことになるから簡単に生活基盤を整えておいてくれ。衣食住は揃っているから然程時間はかからないと思うが」
「おう!任せておけ!」
「分かりました‥‥」
フランシアはあからさまに落胆した様子だった。
「何だシア!元気ねぇじゃねぇの!穴蔵暮らしが憂鬱か?」
「いえ、あなたと組まされたことがショックなだだけよ」
「はぁっ?!」
いつものやり取りが始まった。
スノウは扉の影から空を見上げた。
アレックスが救えなかった今、自分は何をすべきなのかがぐらついてしまう不安感があったのだ。
(今はヨルムンガンドの解放を優先だ‥‥)
スノウは拳を強く握っていた。
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