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5、偽物の恋人


「アンちゃん!アンちゃん!」


誰もいない教室の奥で腕時計に話しかける私は他の人からどう見えるだろう。けどそんな事今は気にしていられない。


「おおどうしたん桃ちゃん。」


良かったすぐに返事をしてくれた。


「マリアってバレたよ!」


「えっ!なんで何があったん?」


私は今日あった事を話した。


「うーん私は知らんなぁ。とにかく私は外に出られへんし学校に協力者がいるならぐっと桃ちゃんの安全は高まるけどなー。これからやたらと恋愛イベント増えるねんで?新しい人と関わる事がめちゃくちゃ増えるで。桃ちゃんは男の子が好きやんね?それやったら男の子とのイベントがめちゃくちゃ増える。その中に居たらまあまあヤバいで。とにかく何かあったらブレスレットに頼る!でも桃ちゃんが違和感を感じなかったって事は全部真実やわ。」


確かに色んな所でナンパされてたし、絡まれて誰かが助けてたりというのを今日だけでたくさん見た。1度も違和感を感じなかったという事は皆、嘘をついていないという事。


「分かった。皆、本当の事を話してると思う。ともかく話を聞いてみるよ。アンちゃん家で報告するね。」


「うん。じゃあね。今ゲームちょうどええとこやねん。気を付けてな!」


その後声はしなくなった。人がとんでもない状況にいるのにゲームって猫のくせに。まあいいかとにかく授業を受けて終わったら詳しい話をエイクから聞こう。お昼も食べられなかったし休憩もろくにしていないし大変な日になったな。少しだけ重い足取りで教室へと向かった。

さっきまでとは違い今はお昼を抜いて本当に良かったと心からそう思っている。2時間ぶっ通しのこの授業、内容は分かりやすいのに教授の声と話すトーンが眠りを誘う。ほとんど全員寝てるぞ先生!でもわかりやすいぞ!この授業は基礎講座だから、教えるのが上手い先生が担当なんだろうな。

なんとかノートをまとめているとマコちゃんが目に入った。マコちゃんは完全に寝ていてその後ろの男の子は寝ているマコちゃんをガン見している。マコちゃんはたくさん友達がいるしとても可愛いし性格もいいから仕方ないのだろうけど。好きなのかな?いやとにかく今は自分の心配をしよう。後5分もすれば授業が終わるしこれからどうするか考えなくちゃ。

授業が終わって少し迷いながら寮に着いた。ここまで来て入るかどうか悩んでいると先程の男性が出てきた。


「おい。綺麗な女の子が寮の前にいるぞナンパするか?ってもちきりだぞ。早く入ってこい。」


「えっ。怖い。入りますよ。」


私が数分立っていただけで噂になるのか。昨日までとは本当に違ってしまったようだ。さっと移動しよう。男性の後を素直について行く。


「さあ入れよ。」


「ええ入りますよ。」


少し悪態をついてさっきと同じように椅子に座る。男性もベッドに座る。1時間目で完璧に隠し通せたのにこんな形でバレてしまってるのが少し不服だ。


「さあどこまで話したっけ?」


「ほとんど何も話してない。」


「あれそうだっけ?まあこれ飲めよ。」


そう言ってペットボトルのミルクティーを机に置いた。


「好きだったろ。」


「マリアがね。」


「お前は嫌いか?」


「普通かな。でもありがとう結局、お昼も食べられなかったし。」


「そうかじゃあこれ食っていいぞ。」


そう言ってコンビニのサンドイッチを紅茶の横に置いてくれる。そういえばエイクはいつもそうだった。私が欲しいものとかしたい事をすぐに察して出してくれた。準備がいい人だった。


「ありがとう。いただきます。」


とりあえず紅茶をのんでサンドイッチのビニールを取る。口に運ぶとハムのサンドイッチはなんだか久しぶりで美味しく感じる。


「食いながらでいいから聞いてくれ。とにかく主人公が卒業するまでこの阿呆な恋愛モードは終わらない。最悪な事に主人公はお前と一緒の学年だ。それに1番ヤバいやつがこっちに来てるんだ。デレクだよ怒りのデレクだ。あいつは冷徹でずる賢いそれにマリアに心酔している。ここまで聞いたんだ。そこで考えたんだ俺達、付き合っている事にしないか?そしたらお前は何があっても彼氏がいるからで大体通せるし、俺がそばにいるのも変じゃない。恋愛イベントを俺とスルーすれば他の奴とイベントが起きずに済む。」


色んな事が衝撃だったけど1番はデレクだ。デレクは唯一デッドエンドがあるはず…。最後デレクの言う事を聞かないからと監禁され殺される、同級生のデレク。


「後、お前は病んでいるキャラクターから逃げると言ってる割に素直過ぎる。男について行くし二人っきりの部屋に入るし、極めつけは出されたものを飲食する。薬が入ってたらどうするんだ。もっと考えて行動しろよ。」


「すみません。その点は気を付けます。じゃあちょっと整理させて。とりあえず6人のキャラクターの内この世界に来たのは5人。3人分かっていて、アランとデレクとエイクのあなた。アランは前世の記憶を持っていた。あなたも。でもデレクは?もっているのかな?」


「どうだろうな。デレクは記憶があればがむしゃらに探しそうだけどな。それに俺は昨日思い出すように促されて思い出した。それと考えていたんだけど、貪欲、怒り、嫉妬。これって七つの大罪をモチーフにしてキャラクターが作られてるだろ。じゃあさ全員で7人じゃないか?もしカウントに入ってなくて、もう1人来ていたら6人探して把握しなくちゃならない。これはもしもの話だがな。だから付き合っているふりをしてた方がいい気がしたんだ。向こうからイベントが来る前に。」


そう言われてみればそうだ。7人?だめだ全然思い出せない。6人は名前も顔も思い出せるけど7人目を思い出せない。

でもエイクの考えは正しいかもしれない。七つの大罪ならシークレットキャラクターが1人居たという事になるぞ。だめだ叫び出したい衝動を抑える。


「どうしてこうなったー!」


「急にどうしたんだ。びっくりするだろう!」


叫んでしまった。エイクは少し驚いた表情を浮かべている。


「あなた恋人や好きな人はいないの?私と付き合っているふりをしてもいいの?私はマリアの記憶を持っているしマリアだった事も思い出した。あなたにはなんの罪もない。許しを乞うのは私の方いつもあなたに間違った選択肢を提示しては間違った選択肢を選ばせた。」


「それは君のせいではない。幸せだったんだよ俺は君のそばにいて君の笑顔を見られるだけで。だからこの世界でも君の笑顔を見ていたい。」


話を終えるとはっとして目を見合わせた。完全に前世の人格に乗っ取られていた。まあ私たちではあるから口調が変わるだけだとは思うけど。許しだとかは言うまでもなくマリアの記憶が話させたのだろう。彼もそうなのだろう口を手で抑えて驚いている。


「とっとにかくその心配はない恋人も好きな人も今はいない。だから利用してくれ、俺もお前を利用するから。」


「分かった。じゃあ壮真って呼ぶね。私の事は桃って呼んで。連絡先も交換しよう。」


「よしできたな。じゃあ俺帰るわ。この近くのマンションだから。」


「ああ私もこの近くのマンションだよ。」


「じゃあ途中まで一緒に帰ろう。誰かに見られたら付き合っていると言いふらそう。」


「うん。分かった。」


そうして初めてできた偽物の彼氏と帰る事にした。壮真はスポーツマンらしく細身だが筋肉が程よくあり顔も整っている。こういう状況じゃなければとても好みの男性なのに残念だ。

寮から出た所で壮真の友達に会い紹介され彼女のふりをする。それから校門の所にマコちゃんが居たのでマコちゃんに彼氏だと紹介する。マコちゃんのそばに医学部の友達がいたのでそれぞれ紹介しておく。これで知り合いには大体広まるだろう。その場を後にして歩く。


「桃これで当分は大丈夫だな。」


「うん。そうだね。広まるでしょ。私のマンションここをまっすぐなんだー。」


「ああ俺も同じ道だそこで曲がる。」


「私もそこで曲がる。」


私達は2人揃って馬鹿だった。マンションの前に来るまで住んでいる所が同じだとは気が付かなかった。


「先に言っておくが、ストーカーではないぞ。本当だ俺は昨日までなんにも知らなかった。本当だ。」


「一瞬揺らいだけど。エイクだから信じるよ。エイクはこんな事しない。」


それに違和感を感じないし。


「複雑だが、ありがとう。」


付き合う作戦は正しい選択肢だっただろうか?



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