36、サイコパス
家に帰っても壮真の傍から離れられなかった。私はせいぜい5時間程度だったけど、壮真は夕方から次の日の朝までずっとあの状態だったなんて。
「壮真。英子ちゃんが調べてくれたの。一応メールしておくね英子ちゃんに。」
「ああ。」
とりあえず英子ちゃんにメールをし重ねてお礼を送っておいた。
「壮真。本当にお人好しなんだから。あんなに長い時間。って口切れてる!誰にやられたの?私が。」
「大丈夫、さっき寝転がってた内の1人だから。」
「よかった。あの人達には手加減してないの。次は勝てるなんて思わせないようにしないと。でも手当てしないと。」
「桃、寝てないんだろう目が怖いぞ。ちょっとでも寝よう。大丈夫だから。」
「分かった。じゃあおいで壮真君。今日は甘えさせてあげよう。ほら。」
と言って腕を広げると、珍しく素直に私の胸に顔をすりつけている。子供みたいで可愛い。頭をよしよししているとすーすーと寝息をたてて寝始めている。
「昨日、何があったのか後で詳しく聞くからね。おやすみ。」
壮真の寝顔を見届けて私も眠りに落ちていった。
目が覚めると14時で3時間程寝ていたようだ。壮真はまだ寝ている。ゆっくりと抜け出しお母さんが作ってくれたご飯とおかずを解凍する。
「お母さんありがとう。まだまだあるし、本当に美味しい。」
音をたてないようにしていたけど壮真は目が覚めてしまったようだ。
「おはよう、桃。何だか幸せな夢を見た気がする。また一緒に寝てくれ。」
「うん、いいよ。ご飯食べる?それともお風呂に入る?」
「あーじゃあ風呂いいかな。入ってくるよ。」
「うん、どうぞ。」
壮真はすぐに出てきて私にまとわりついている。
「ちょっとご飯の準備しにくいから。」
「温めるだけだろう。」
「ぶっ飛ばすぞ。」
壮真は気にする事無く腰を抱き寄せ、髪を触ったり、耳にキスしたり、首をさすったりしてくる。
「どうしたの?何かされたの?」
「いや、人生何が起こるか分からないから我慢せずに生きて行こうと思って。」
「はあ、そうですか。」
「ああ、だからもう我慢しない。」
何を決意したのか知らないけど、やたら触るのはやめてほしい。
「もしかして、斎藤さんでしょ?」
少しギクリとした顔をして私を見る。
「いや、違うよ。」
ブレスレットが反応してるので嘘だとわかる。あの人に何を言われたんだろう。
「嘘でしょ。まあいいけど。」
ぴたりと触ったりする手が止んで、小声で話している。
「もしこの間に桃ちゃんが他の男を好きになって先にしちゃったらどうするの?って言われた。」
「言いそう。あの人なら言いそう。」
「だから本当はもっと長い間監禁して精神的にボロボロにする予定だったんだ。お前が助けに来てくれたから1日もなかったけど、でも充分長かった。あいつ、斎藤がずっと言うんだよ。桃ちゃん今何してるかな?もう愛想つかして他にいったかな?柴田君の事なんてもう忘れちゃったかな。俺誘っちゃおうかな?顔も性格も可愛いしあの胸もいいよねって。ああ、それとも今もう他の男といいことしちゃってるかな、夜だしね。って本当に怖かった。」
「あの人本当に最低だね。今から懲らしめに。」
「行かないでくれ。今日は傍に居てくれ。」
「分かった。お風呂に入ってくる。」
「えっこのタイミングで。まあどうぞ。お前の家だし。」
「出たよ。」
「早いな。5分も。んっ。」
キスをする。もうこうなったら仕方ない。壮真が1番好きだと伝えるしかない。
「駄目だ、服を着なさい。」
「いや、そんなに不安ならいいよ。あげる。私の全部あげるよ。私がそうしたい。」
「いや、駄目だ。」
壮真の手を掴み心臓の上にのせる。
「ねえ、私達こうなる運命だったんだよ。だから。」
「分かった。最初だから優しくとにかく優しく。」
「うん、でも最後までするからね。」
そして疲れ果てまた眠りについた。




