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35、壮真発見


7時30分に大学に着いた。なんだか落ち着かない。7時50分に英子ちゃんが来てくれた。


「おはよう、英子ちゃん。」


「おはよう、というか酷い顔大丈夫?」


「うん、壮真が傍にいないのがこんなにしんどいなんて。」


「まあ、壮真さんもあなたにそう思ったんじゃない?」


「えっなんの話?」


「はい、これどうぞ。」


英子ちゃんが差し出したのは茶色いA4の封筒。


「中にマコちゃんの情報が入ってる。後、行きそうな場所もまとめてあるから、今から一緒に。」


「ううん、大丈夫だよ。1人で平気。」


「えっでも男をつかって守らせてるよ。」


「うん、それも平気。英子ちゃん本当にありがとう。夜通し調べてくれたんでしょう。授業まで時間あるし休んで。私は大丈夫。全員、血祭りにするから。」


「えっ、ああうん。分かった。気を付けてね。」


「うん、本当にありがとう。またお礼をさせてね。」


英子ちゃんは本当に優しい。昨日寝ずに調べてくれてたのかも眠そうだったし。中にはクリアファイルに綴じられたマコちゃんの書類。どう調べたのか過去の事や両親の職業、大学での内申等も書かれている。怖い。とにかく場所は3ヶ所か行ってみよう。



3ヶ所目、昔マコちゃんが遊び場にしていた使われなくなった小屋。前に2人男の人がいる。確実にここだろうが、まずは話し合おう。


「すみません。人を探していまして柴田壮真ってご存知ですか?」


「知らないから、消えろ。」


「えー少しきつい言い方ですね。じゃあマコちゃんは知ってます?」


「うるせえなブス。」


ってこの人あの時のチャラお兄さんじゃん。


「あなた以前にマコちゃんをナンパしてませんでした?」


「なっなんでそれを。」


「じゃあやっぱりマコちゃんのお知り合いですぅ?」


「うるせえな!」


腕をつかんでくるので受け流す。


「やめてください。とにかく暴力はやめてください。」


「なんだ警察でも呼ぶのか?ブス。」


「呼びませんよ。でもあなたが中に案内したくなるようにしてあげます。」


「なんだと!せっかく逃げる時間をやったのに!」



「あー2人のすのに2分かー私の腕も落ちたかな?」


目の前の男の人達を見下ろしながら考えていた。全盛期なら1分でいけたな。ってのしちゃ駄目だった。案内してもらうんだった。


「お兄さーん。おーい。駄目だこりゃ。仕方ない入れるかな?」


木造の小さな小屋の扉をノックする。


「すみませーん!誰かいますかー?」


扉が開き先ほどと同じような普通の大学生とチャラお兄さんが3人出てきた。


「なんだって、こいつらどうした?」


「えっきたら寝てましたよ!すみません。柴田壮真ってご存知ですぅ?」


「なんだとお前あの男の!」


「中にいるんですか?!よかった入っていいです?」


「駄目に決まっているだろう。」


「えー私迎えに来たんです。」


「いやいや、帰れよ!あれか巨乳の女はやっぱり馬鹿だな。」


「なんだって?」


「いや、だから。」


「言えよ。」


「胸に栄養がいってるから馬鹿なのか?」



「やったー3人を1分だー!やっぱり怒りの……愛のパワーって偉大!お父さん稽古をつけてくれてありがとう。自分の身は自分で守れる女なりました!」


暴言を吐いた男を足蹴にして扉を開ける。中には椅子に縛られた壮真と、その前に顔が引き攣ったマコちゃんと、あのいつもナンパしてくる奴?と、マコちゃんの後ろの席の誰だっけ?がいる。


「壮真!」


「んー。」


口をテープで塞がれている。可哀想に。


「壮真迎えにきたよ!」


「桃ちゃん、あのその。」


マコちゃんが口ごもっている。


「マコちゃん、壮真のテープ剥がしてくれる?」


マコちゃんは、はっとしてテープを優しく剥がす。


「桃、無事だったか?よかったぁ。」


そう言って脱力している。なんとなく読めたな。


「壮真は私に危険がせまってるって騙されたのかな?」


「そうだ、マコちゃんが言いにきて捕まった。」


「そう。マコちゃんは言いたい事ある?」


「桃ちゃんごめんなさい。どうしても壮真さんに入ってもらいたかった。私、主人公だと知っているの。看護師の彼候補に無理やりでも壮真さんになってもらいたかった。ごめんなさい。」


泣きながら話しているマコちゃんを、許すも許さないも壮真次第だ。私が監禁されたわけじゃないし。


「だって壮真。どうするの?」


「とにかく縄を解いてくれ。」


マコちゃんはまたはっとして急いで縄を解く。そのまま走りより私を抱きしめてくれる。


「ああーよかった桃が無事で。色々言われたから、外にいた男達に襲わせるとか。」


「大丈夫、全員倒してきたよ。」


「怪我はないか!」


「うん。無傷だよー。あんまり喧嘩に慣れてなさそうだったし。私、寝てないし暴言吐かれたし、めちゃくちゃ怒ってるから強いよ!ここにいる全員1分以内で倒せるか試してみる?」


「分かった。それについては後で話そう。とにかく順番に片付けよう。マコちゃん、俺は君を許すよ。でももう2度と俺と桃に近寄らないで。それでこの件と桃に危害を加えると言った事はちゃらにしよう。」


「わかりました。」


「ああ、だから気にせずに楽しく生きるんだよ!許したからね!さあ帰るんだ。」


マコちゃんはそっと扉を開けて出て行った。


「次、そこの男の子!」


「佐藤信夫です。」


ああ、それでのぶ君か。


「君はマコちゃんの言いなりになり過ぎ。もっと自分で考えて拒否する事も大事だから。分かった?」


「はい、でも嫌われたくなくて。好きなんですマコちゃんが。世界中の誰よりも。」


泣きながら話す佐藤信夫は本当にマコちゃんに好かれたかっただけなのだろう、哀れな男に見えた。


「分かった。君ももう関わらないように。行っていいよ。」


「すみませんでした。」


佐藤信夫は頭を下げて出て行った。最後はいつもナンパしてくるこいつ。


「斎藤陸だよ。」


「分かってるよ!」


「いや彼女の方は分かってなかったみたいよ。」


「それでお前はなんでいるんだ?」


「えー桃ちゃん可愛いから、柴田君が他の人に行くなら、ラッキーって思って。協力はしてないけど行く末を見守ってた。」


嘘はついていない。できればついて欲しかった。


「お前は絶対にもう関わるな。」


「わかりました。彼女、柴田君にぞっこんみたいだし。諦めるよ。じゃあね桃ちゃん!」


「消えろ!」


壮真が叫んでも怯むことなくゆっくりと出て行った。


「はー。」


深いため息をつき私を見ている。


「えっと歩ける?おんぶしようか?」


「いや、大丈夫だ。もう一度抱きしめさせてくれ。」


近寄りギューッと壮真を抱きしめた。


「桃、無事で本当によかった。お前を襲うって言われてとても怖かった。まさか俺が狙われるなんて思ってもみなかったよ。」


耳元で囁かれる。


「壮真。大丈夫?私はこの通り無事だからね。」


「ああ、帰ろうか。」


「うん。」


いつの間にか手を繋ぎ歩き出していた。小屋の外に転がっている人達ついてお叱りを受けたけど、詳しくは家でと言われまっすぐ家に帰った。


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