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29、バイト最終日


バイトは2日目、3日目と続けるうちに楽になっていった。バイトは今日で終了し明日、海に連れて行ってもらって家に帰る予定だ。私はそのまま1人で実家に帰るつもりだったけど壮真がついて行くと断固として主張するので2人で帰る事になっている。


「今日でバイトも終わりかーキツかったなー。」


英子ちゃんは汗をかきながらスイカを食べている。瀬良君のお母さんがまた持ってきてくれたのだ。瀬良君のお家はお父さんとお母さんと瀬良君で住んでいる。瀬良君は実家から大学に通っているようだ。電車で1時間弱かかるらしい。

今お父さんは農協関係の出張中でお母さんしかおらずミカちゃんは毎年お手伝いにきているようだ。お父さんが出張に駆り出されたのでバイトを頼んだらしい。いつもなら家族総出で出荷作業をするらしい。大きなお家なのでバイト期間中は離れに泊まらせていただいている。

母屋の方には結局一度も入らなかったなー。瀬良君のお母さんがご飯も持ってきてくれて片付けもしてくれた。手伝おうとしたらやんわりと断られて勉強を教えてよとなるのだ。瀬良君はとても賢いがたまに選択肢を間違う。基本中の基本の部分なのだけど教えてと聞かれる。

スイカを食べながら英子ちゃんとおしゃべり。


「ふふ。そうだねー。これから夏休みどうするの?」


「そうだなー。佐藤さんと花火大会は行くかな?」


「うん、英ちゃんそうだね。」


「そっかぁ花火ねー。」


エイクは人混みと大きな音が苦手だったはず。ちらっと見ると目が合ってふっとそらされる。ふむやはり苦手なご様子。


「さあさあ休憩終了。後ちょっとだから頑張ろう。」


瀬良君の一言で皆が作業に戻る。残りは本当に後ちょっとなので1時間もせずに終わるだろう。今日の夜ご飯は何かな?



「ごめんなさいね。バイト代に気持ちだけつけておいたからそれで食べてね。」


と言って瀬良君のお母さんは母屋の中に入ってしまった。夏風邪にかかってしまったらしいお昼にスイカを出してくれた時も少しだけ具合が悪そうだった。私と壮真、英子ちゃんはそれぞれバイト代を受け取り瀬良君にお礼を言う。


「じゃあファストフードでも食べに行こうか。」


この辺りの地理は分からないので皆、素直に瀬良君について行く。どこにでもあるチェーン店で皆それぞれ頼んでいく。人が多く少し混んでいるので仕方なく2人組に別れて座る。英子ちゃんと佐藤さんはカウンター席に座ったようだ。瀬良君とミカちゃんテラス席へ、私と壮真はレジ近くに座った。


「ねえ、さっきの瀬良君?」


「ええ、そうよ。久しぶりに見たわー。やっぱり王子っぽいよね。」


「ああ、さっちんって高校クラス一緒だったもんね。そりゃそう思うよね。女子しか友達がいないんだよね。」


「うん、瀬良君っていつも女の子はべらせてた。」


「まあ実家もお金持ちだしそうなるんじゃない。気品があるし。」


「やめなさい。仕事中ですよ。」


へー瀬良君って結構有名なのかな。学生らしき店員さん2人は他の店員さんに怒られるまで瀬良君の話をしていた。もしかしたら知り合いだったから暑いのに外に行ったのかな?それにしても王子って大学ではそんな感じ無いし人見知りだって言ってたし。というか忘れていたけど彼は小さい頃からマリアを探していたんだった。それなら女子ばかりに声をかけるのも頷ける。でも女子しか友達がいない程マリアを探していた。


「さあ帰ろうか。明日海に行くんだもんね。」


「楽しみだなー。大学卒業しちゃうとこういう事出来なくなっちゃうからね。英ちゃん楽しもうね。」


「はい佐藤さん!」


「海斗君って泳げるの?」


「ミカって失礼だね泳げるし。」


皆、なんだ楽しそうだ。私達は瀬良君の家の離れに戻った。私は何か考えかけた事さえ忘れてしまった。



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