27、夏休みは続く
私の部屋に戻ってきて、またポストに手紙が入っていた。宛名も差出人も書かれていない封筒。もしかしてシークレット?
「壮真これ。」
「ああ、でもシークレットはお前を助けた。俺に居場所を連絡してきた。とりあえず開けてみよう。」
落ち着いて封を開けると1枚の紙が入っている。
マリア、君は警戒心が無さすぎる。我が助けなかったらどうなっていたと思う?もっと人を疑え。エイクは真面目な一直線馬鹿だから信じて構わないけど、ダニエルもデレクも人の皮を被った狼なのだよ。人の悪いところも見なさい。エイクもどうせ一緒にいるだろうから言うが、人を守るというのはずっと監視する事ではないのだよ。マリアを信じることも強さのうち。君は強い人だろうマリアを信じなさい。マリアは思いの外お人好し、あなたと一緒、一直線馬鹿なのです。似たもの同士頑張りなさい。
「真面目な一直線馬鹿。」
「お人好しな一直線馬鹿。」
「壮真は当たってるよねー。うんうん。」
「桃は当たってるよなー。うんうん。」
「壮真さん、喧嘩売ってる?」
「先に言ったのはお前だろう。」
「へーそういう事言うの!ほーそうですか!」
「なんだよ!」
「わかってるんだから壮真の弱点。」
「なっなんだよ!」
「壮真さぁーくすぐったがりでしょう。」
「いや平気だよ。」
「嘘じゃあここは?」
そう言って脇腹をつつくと、背筋が急にピシッとなって震えている、なんとか耐えようとしているようだ。私は調子にのってこしょこしょと手を動かす。
「もう無理!」
壮真は耐えきれず私の手を掴み倒れ込む何故こんな体勢になったのだろうか。私は床に寝転び両手は頭の上で壮真に掴まれている。壮真はいたたまれないのか目を合わせない。でも手を離してくれる気配も体を起こす気配もない。
「桃。」
そんな甘い声を出すのはやめて欲しい。私は。
「桃。可愛い。そんなに赤くなって。目も潤んで。」
壮真は私の手を掴んだまま唇にキスをして、瞼や頬にも口付け、耳たぶを甘噛みする。首筋に壮真の少し湿った唇がくっつくのが分かる。ふっと声が出てしまうのを聞き逃す筈もなく執拗に何度も首筋に唇をくっつけ舌を這わす。5分程その状態が続きふにゃふにゃにされたところですっと止まる。
「桃、だめだよ抵抗しないと。」
そう言うと壮真は手を離し体を起こす。私は床に寝転んだまま壮真を見上げる。壮真が私の頭の横に座ったのでずりずりと移動し壮真の膝を枕にする。
「壮真の馬鹿。壮真のばーか!意気地無しばーか!」
「だって今夢中になってしまった。お前のあの声を聞きたいってだけになった。」
「しても良かった。」
「えっ。」
「何でもない。」
「待つよ。結婚するまで待つ。」
「………本当に一直線馬鹿ね。」
「ああ、でもけじめが大事だから。」
「じゃあ私は頑張って誘惑するね!」
「なんでだよ馬鹿。ほらそろそろ昼だろう腹減ったか?」
「ううんお腹は空いてない。ていうか勉強しないとまずいから夜ご飯まで勉強しようよ。」
「ああ俺も空いてないから勉強するか。」
勉強するといいつつ私は他の事を考えていた。この世界にいるあの世界の人達。エイク、アラン、デレク、ダニエル、シークレット。
この中だとやはりデレクが厄介だ。彼は怒りのデレク、小さな事で怒り当たり散らし癇癪を起こす。私がそばにいないとそこら中を壊し家の執事さんやメイドさん達に暴力をふるうのでいつも同じクラスだった。
彼のルートに入ると誰とも話せなくなる。他の人から情報を得られなくなり、どんどん2人の世界になり疎外され結果、学園を辞めさせられる。デレクの両親は息子を穏やかにしてくれるマリアを手元に置いておく為にダニエルとの婚約を破棄させデレクの婚約者に無理やりさせる。
この幸せを壊すのはきっとデレクだ。
とスマホが光っているメールがきているようだ。瀬良君からで僕の実家でバイトしない?という内容だった。瀬良君の実家は農家さんで今年はスイカが大量にできて梱包とかが間に合わないので1週間手伝って欲しいと。英子ちゃんもくるし英子ちゃんの彼氏も来るからよければ壮真さんと一緒に来て欲しい3日後迎えに行くから。かどうしよう。それに高時給だ。
「って訳なの壮真はどうする?」
「桃が行くなら行くよ。行かないなら行かない。」
「シークレット手紙事件で夏休みを堪能してないし行く?海の近くらしいよ。」
「ああ、じゃあ行こう。」
瀬良君すぐに返事を返し私達は用意を始めた。




