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26、壮真の両親


「おはよう、目が覚めたか?」


「うん。おはよう。」


「もう11時だぞ。やっぱり疲れてたんだな昨日あんな事があったし。」


私は子供のように抱きつき顔を壮真の胸に押し付ける。


「おいまだ眠いのか?なら寝てていいぞ。今日は実家に行くだけだから。」


実家、壮真の実家。手土産だ!急にがばっと起きた私にびっくりしたのか壮真も起き上がっている。


「どうした?」


「壮真の実家に手土産を持って行きたい。最初くらいちゃんとしたい!」


「別に。要らないって。」


「絶対にだめ。あそこのカフェ、テイクアウトもできるからケーキだけ買いに行く。」


「じゃあ16時には家を出るからその時でいいよ。」


「ダメだよあそこ人気なんだから、さあ買いに行くよ!」


「分かったじゃあ着替えろ。」


「分かった。」


急いで洗面所に行って着替える。化粧もしよう。


「はいできたよ。」


「まだ10分も経ってないぞ。化粧までしてどうなってるんだ。」


「女子は気合いでなんとかなるよ。さあ行こう。」


2人でカフェに向かいランチを食べてテイクアウトを頼んだ。壮真のお父さんはモンブラン、お母さんはフルーツタルトにした。他にも何個か買っておく、チョコとシブースト、ショートケーキ。そうこうしているとマンションに帰って来たのは15時前になってしまった。


「ずっとスマホ鳴ってるけど大丈夫?」


「ああ母さんだよ。ずっといつ来るの?って送ってくるんだ。」


「ふふふ。じゃあそろそろ伺う?」


「いや、行くのが嫌になってきた。」


「壮真の部屋に帰ってきてずっとだらだらしちゃってもうすぐ16時だよ。」


「あー仕方ない行こう。荷物持つよ。」


「ありがとう。行こう。」


電車で3駅のところに壮真の実家があるなんて知らなかった。私の実家は新幹線出ないと帰れない田舎だ。


「さあここだよ。」


壮真のお家は洋風な白いお家で新築っぽい。


「可愛いお家。」


「さあ入ろう。母さんとにかくうるさいからな気を付けろ。」


「もうそうちゃん!お母さんを化け物みたいに言って!」


「母さん急に出てくるなよ。」


玄関から出てきた壮真のお母さんはとても優しそうで明るい人っぽい。前の両親とは全然違う。


「はじめまして竹中桃です。いきなり来てしまってすみません。壮真さんとは同じ大学です。」


「いいのよー。いつでも来てくれたら!お父さんと2人なんて家が暗くて!」


「おいそれはないだろう。それに早く入ってもらいなさい。」


「ああーそうねごめんなさい。どうぞー。」


お父さんもいい人そうだ。今回壮真は幸せな家庭に生まれたんだ。少し感動してしまう。


「さあお腹空いてる?ご飯しましょう。」


「はいありがとうございます。それとこれつまらない物ですが、召し上がってください。」


「まあ、気をつかわせてありがとうね。後で皆で食べましょうね。」


「さあ座って桃さん。」


食卓にはお寿司とおでんに唐揚げがのっていた。美味しそう。


「壮真が好きな唐揚げと私の得意料理のおでんとお祝いのお寿司!桃ちゃん嫌いな物とかは無理して食べなくていいのよ。」


「嫌いな物はありませんので!全部美味しそうです!」


「良かったわー。そうちゃんどこでこんなに可愛い彼女見つけてきたの?そもそもあなたは今まで浮いた話なんてなくてずっと勉強してるか友達と遊ぶかだから。」


「おい、変な事言わないでくれよ!」


「まあ、そうちゃんったら照れちゃって。」


「壮真、彼女大事にするんだぞ!」


「父さんまで。」


「ふふふ。楽しいです。壮真さんの話を聞かせてください。」


「ええ。後でアルバムを持ってくるわ。」


「ええ。見せてください!」


あっという間に楽しい食事の時間が過ぎて、お客様が1番風呂に入ってと壮真のお母さんに洗面所に押し込まれてしまった。早く出ようと10分程で出ると、リビングで壮真とご両親が話している。


「そうちゃん、桃ちゃん本当にいい子ね。可愛いし。」


「壮真、とてもいい子じゃないか。優しい感じだし。」


「2人共茶化してるだろ?」


「「茶化してない。」」


「だって初めてでしょう。友達すら家に呼ばなかったそうちゃんが恋人を連れてくるなんて嬉しくて。あなたどこか人と距離を置くでしょう。ずっとそうだったらどうしようって思ってたの。ねえお父さん。」


「ああ、壮真は優しい子だと分かっていたけど中々心を開かないだろう。心配だったんだよ。でも桃さんを連れてきて紹介してくれたそれだけでどんなに嬉しいか。ねえお母さん。」


「父さん母さん。ありがとう。」


「いいのよ。また来てね。」


「お風呂いただきました。ありがとうございました。」


「桃ちゃん!アルバム持ってきたの見ましょう!ほら壮真もお風呂入ってきなさい。しっしっ。」


「はいはい。」


壮真の小さい頃はなんだか身長も低くて可愛い。思わずスマホで写真を撮ってしまった。でも5分もしないうちに壮真があがってきてしまってアルバムを奪われた。


「ほら桃、俺の部屋に行くぞ。」


「えーまだ見てたのにー。」


「そうよーまだ話してたのにー。」


「母さん。真似しないで、もう寝るから。」


「はいはい。そうちゃん、大丈夫ですよ。父さん母さんはテレビのボリュームをあげますから。何をしても大丈夫ですよ。もう大人ですからね。でもちゃんとつけ。」


壮真がお母さん話を最後まで聞かずにバタンとドアを閉める。


「桃、気にするな。さすがに絶対にしない。」


「うん。壮真のお母さんって面白いね。」


「2人共ふざけているだけだよ。本気でそうは思っていない。」


「ふふふ。」


「でもまさか本当に俺の部屋に桃の布団をしくなんて。」


「いいじゃない。寝るだけなんだから。」


「まあそうだな寝よう。おやすみ。」


「うん。おやすみなさい。」


エイクの両親は息子に関心を抱かなかった。だからいつもエイクは1人で過ごしていた。マリアの家に泊まっているのも気付かない位エイクは目に入っていなかった。エイクは見て貰えるように試験もトップだったし委員長のような役職についていた。それでも無視され続けマリアを心の拠り所にしていった。


「父様母様、100点でした。」

「へえ。」

「先生に推薦して頂けました。」

「………。」

「マリアの家に行ってきます。」

「そうよあんな夫捨てるわ。あなたが1番。ふふ。」


これは前世のエイクだ。いつも両親の目に入ろうと必死に生きていた。ああ、目が覚めてしまった。まだ真夜中なのに、壮真もさすがに眠っている。なんだか心配になって壮真を見ると優しい顔で眠っているので頭をよしよしとなでていると急にぐっと手をつかまれて抱き寄せられる。


「眠れないのか?大丈夫だよ一緒に寝よう。桃おいで。」


ほにゃーとした口調で話す壮真は可愛いのだけど、力は強くて可愛いくない!せっかく布団を別に用意してくれたのに。ああ動けない、もしかして朝までこのまま?



「おはよう。2人共!朝ごはんまぁ!ふふ壮真がこんな必死にね。」


軽快なノックと共に壮真のお母さんが入ってくる。私はまだ壮真に抱きしめられたままだ。


「違うんです。そういう事はしてません。」


「ええ。そうねいいのよ。桃ちゃん!」


「ちょっと壮真起きて!壮真!」


「やだ、もうからかわれるって分かってるんだからまだこのままで。」


「壮真!いつから起きてたの!壮真!」


「分かったわ後1時間待つわ。」


「待って行かないでくださーい!」


「桃こっちにおいで。本当に可愛い好き。」


なんだか性格変わってない?こんな人だった?だいぶ柔らかくなっている。ふにゃふにゃしている可愛い。目を覚まさせてやろう。壮真に軽くキスをする。壮真は少しびっくりした様子でベッドから出て行き一言。


「桃の馬鹿。」


と言って部屋から出て行ってしまった。それから、壮真のお母さんの朝ごはん食べて帰る事になった。


「桃ちゃんまた来てね。お父さんも是非って言ってたから。」


「はい。ありがとうございます。」


「今度はお茶もしましょうね!」


「じゃあな。もう当分来ない。こんなに茶化されるなら。」


「もうそうちゃんは可愛くないんだから。」


「また電話するから。じゃあね母さん。」


「お世話になりました。ありがとうございました。」


「また来てね。ばいばい気を付けてね!」


頭を下げて歩き出す。駅について電車に乗る座れたのでゆっくりしていると壮真が話し出した。


「いい両親だろう?」


「うん、前のエイクの両親は酷かった。」


「ああ、あの2人はそういう事はしない。エイクの記憶が戻ってよかったと思う事の中に両親の事があるんだ。もっと2人に恩返しがしたいと心から思える。」


「私も記憶が戻って良かった。今の両親はお金も権力にも興味ない人達なの。ちょっとお金持ちだけどね。私にはもったいない位いい人達。」


「そうか桃の実家に行きたいな。」


「そうね車なら3時間はかかるかな。」


「意外と近いな。俺運転するよ。」


「ありがとう。じゃあ帰ろう。」


「とりあえず今日はお前の部屋に泊まらせてもらうよ。」


「心配性だなぁ。」




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