25、ネガティブシンキング
「壮真カレー食べたい。」
あれからずっと黙り続けていたけど10分経っても話しかけて貰えないのでこちらから話す。
「……。あっああ、朝から作ったから。」
「どうしたの?」
「結局、守れなかった。」
「いや、でも壮真に会った時から言われてたのに、すんなり飲んじゃったし。私が悪いよ。」
「それに気が付かなかった。シークレットに助けられた。」
「でもメールしてなかったら気付いてくれたでしょう。それに私だって反撃するし。空手の県大会で2位とったことあるんだから。」
「それに俺もお前をああしようとした。」
「でもしなかったし。今は壮真も変わったでしょう。ねえ帰ろうカレー食べたい。壮真大丈夫。大好きだから。」
「桃、本当にごめん。」
「こっちを向いて。私強いんだよ!体はお父さんのおかげで!でも心は今は壮真のおかげで!壮真が支えになってくれるとそばにいてくれると信じているから。」
「ありがとう。俺も強くなるよ。でも今日カレー食べたら実家に来ないかあのマンションに戻すのは怖いんだ。」
「分かったでももう遅いし壮真の部屋に泊まるよ。それで明日行こうよ。夜ご飯いただきに行こう。」
「分かったそうしてくれ。じゃあ帰ろう。」
「めちゃくちゃ美味しい。カレー美味しい。」
「おい語彙力が低下しているぞ。」
「美味しいカレー、何が入っているの?最高なんだけど。何壮真って何者なの?」
「実はエイクの時から料理が好きだったんだよ。知らなかっただろう?」
「ええ。知らなかった!おかわり!」
「ああどうぞ。そうだ明日彼女を連れて行くって電話するよ。」
「うん。お願い。」
ってカレーが美味しすぎて考えてなかったけど、あれじゃん噂の彼ママじゃんどうしよう。フェミニンなスカートとか持ってない。印象良くしないと!
「ああ、母さん明日夕方位にそっちに帰るよ。それで紹介したい人ができたんだ。うん明日。ああいいよそんな豪華にしなくたって、いやいや彼女だけど、うん、恥ずかしいからやめて本当に。って聞いてる!おいもしもし。」
壮真のお母さんっていい人そうだな。そして明るい人そうだ。電話越しで聞こえた声は明るくて楽しそうだ。
「ごちそうさまでした。えっとどうだった?」
「ああ絶対に帰ってこいって。彼女を連れてくるなんてお寿司赤飯?お父さーんお寿司?赤飯?って電話が切れた。」
「ふふふ。いいお母さんだね。」
「うるさいだけだよ。」
「ねえ、パジャマ取りに戻っていい?」
「じゃあ明日の泊まりの服も取りに行こう。一緒に行くよ。荷物持つから。その間に風呂沸かすし。」
「うん分かった。」
朝ぶりの部屋はなんだ久しぶりに帰ってきたみたいに感じた。適当に服を選びリュックにしまう。パジャマも2着入れると壮真が持ってくれる。そしてそのまま壮真の部屋に戻った。
「ありがとう。先にお風呂いただいたよ。」
「ああじゃあ入るよ。ベッド使っていいぞ。」
「ありがとう。テレビ見てもいい?」
「もちろんどうぞ。」
適当にテレビのチャンネルを変える。まだ8時頃なので色んな種類の番組がやっているけどふと冷静になると佐久間俊樹を思い出してしまう。怖い、でもダニエルも可哀想な人だったのだ。親から決められた相手を、エイクという好きな人がいるマリアと結婚させられるのだから。
ダニエルルートはエイクが深く関わってくるし。バッドエンドはエイクを無実の罪で幽閉し、エイクを忘れられないマリアを監禁する。
「桃、大丈夫か?全然テレビ見てなかったけど。」
「あっうん大丈夫。私のせいでって思わないようにしてるけどどうしてもネガティブになっちゃって。って眼鏡だ!」
「あっうんコンタクトだからな。変か?」
「ううんめちゃくちゃかっこいい。ネガティブ吹っ飛んだ。」
「そんな事で吹っ飛んだなら良かったよ。こっちにおいで。」
手で床をぽんぽんしているので言われた通り壮真の前に座る。
「お前髪の毛乾かしてないだろ。俺ドライヤー出し忘れてて。乾かしてやるから。」
「それですぐに出てきてくれたの?壮真優しいねありがとう。」
「はいはい。」
乾かしてくれるけどなんと優しい手付きなのだろう。全然乾かない気がするけど今はこの優しさに甘えていよう。
結局30分近くかかって乾かしてくれたのでお返しに壮真の髪の毛を乾かしてあげようとすると。
「いいよ。俺は乾いたから。」
と言ってそのまま後ろから抱きしめられたまま離してくれないので、体を預けてテレビを見ていた。さっきまで何にも内容が入って来なかったのに今は笑えている。壮真がいてくれると笑える。
「さあもうそろそろ寝よう。11時だぞ。」
「えー眠くない。」
「子供か。寝るぞ。」
と言って電気を消される。
「ねえ一緒に寝ない?ベッドで。」
「いやシングルだから無理だ。」
「ごめんね太くて…。」
「そうじゃないよ。シングルって狭いんだぞ。ずっと肩とか当たったままだぞ。眠れないだろ?」
「でもベッド使うのは悪いし。後、単純に怖い。さすがにさっきまであの、その。」
「分かった。じゃあそっち寄ってくれ。」
「ありがとう。おやすみ。」
となって1時間経つだろう。全く眠れない。壮真は私に手を出してくる筈もなくじっと動かない。ああ、どうしよう。別にそんなつもりはないけども。
「だから言ったろ眠れないって。」
起きていたのか。私がごそごそするからだろうな。
「うんごめんなさい。」
「ああ、そういえば前もこんな事あった気がする。小さい時お前は雷が怖くて、それで泊まりにきていた俺の部屋に来た。何故か雷は全然鳴り止まなくて、マリアの親は早く寝なさいとしか言わなかったまだ5歳位だったのに。お前はずっと泣いていて、冷たい布団に2人で入ると暖かくて手を繋ぐと泣き止んで、お前は先に眠ったんだ。その寝顔を見て俺も安心して眠った。」
「あの時からあなたが好きだったの。多分マリアは。」
「ああ、エイクもそうだ。前世に引っ張られるってお前は不安かもしれないし、傷付くだけって思うかもしれないけどいい思い出もあるし、エイクも俺なんだって認められると楽になったよ。だからあんまり他のキャラクターがマリアのせいでって思わないでくれ。俺はエイクとして幸せだったよ。」
私は何も言わずに壮真を抱きしめた。壮真も何も言わずにただ寄り添ってくれる。何かを察してくれたのかこの言葉は今の私には優し過ぎてどうしようもなかった。そしてそのまま眠りに落ちた。




