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24、佐久間俊樹 裏


体をびくっとさせて目が覚めた。小さくガタッという音がして気付く。足を椅子の脚に括られている。手は後ろで括られている。なんだこの状態は。ここはどこだなんだ。そうだ佐久間俊樹あいつだ。括られている箇所以外は痛いところも変なところもない。頭も痛くないし冴えているぞ寝たからかな。12時に集合してすぐに薬盛られて気を失ってどれくらい寝ていたのか?を知らないと。いや寝てる間に何もしてこないなら寝てるふりをし続けるのもありか、とりあえず目はつぶっておこう。耳だけに意識を。足音はしない、外の声も軽く聞こえるな子供の声って事は夜では無い。って目をつぶっててもどうしようもないか。はっ足音がしてきたやっぱり寝たふりしよう。


「桃ちゃん、まだ起きないの?あれから3時間は寝ているね。まああれだけごくごくと飲んだらそうなるかもね。ほとんど飲んでたし。もう少し待つか。」


と言って佐久間さんが出ていく音がしたのでそっと目を開けるとやはり誰もいない。普通の家だな6畳程の洋室、扉が1つにクローゼットがあって大きな窓に遮光カーテン。さっき3時間は寝ているって言ったから15時すぎなのか壮真のバイトは17時まで。ああー叫び出したい!でも今叫んだら絶対に口を塞がられる。それだけは避けなければ。というか話してみないと佐久間さんが何故こんな事をしたのかを考えよう。…………。いや分からない、分かる筈がない。だめだどうしよう。話すしかない。




「桃ちゃん、起きたかな?」


「ええ。今何時ですか?」


「今は16時30分位だよー。」


「そうですか、ありがとうございます。」


「時間がどうかした?」


「あの絶対に騒がないし暴れないのでトイレに行かせてください。」


「えーじゃあ可愛くおねだりして。」


「佐久間さんお願いします。」


「する気がないんだね。分かったいいよ。そういう性癖は無いし解くよ。」


ここで暴れてはいけないとにかくもう薬を盛られて閉じ込められているので、何をしでかすか分からないし、落ち着いて部屋を記憶する。私が居た部屋を出るとリビングでそこからすぐに玄関だ。よし覚えた。トイレを済ませて部屋に戻り素直に手を後ろで括られる。足は括られないようだ。椅子に座ると佐久間さんが話し始めた。


「桃ちゃん、君はびっくりしてるよね、会って2回目でこんな事にって。でもねマコちゃんにお願いしたんだ桃ちゃんを連れて来てってそのかわり好きな男を連れて行くからって。」


それで会う事になったからマコちゃんは浮気と思ったのか、それは確かにそう思うかも。


「何を考えているか分からないよ桃ちゃんって顔に出ないね。すごいよ昔から。」


「昔から?」


佐久間さんが笑いながら近付いてくる。頬を撫でられ鳥肌になる。怖い。


「マリアなんでしょう。僕はダニエルだよ。」


ブレスレットは反応しない。真実だ。佐久間さんはダニエルだ高慢な婚約者の。


「ダニエル。」


「ああそうだよ。僕は生まれた時からマリアの記憶があったそしてマリアを愛しているんだ。前世で一緒になったのだから今回だって一緒になろう。」


「…………。」


「それなのに君は恋人を作ったのか!信じられない。君は僕のものなのに裏切ったんだな!」


話についていけない。もうマリアって誰って言う事にしようかな。余計に火に油を注ぐかな。壮真のカレー食べたかったな。壮真。アンちゃん。英子ちゃん。マコちゃん。お母さん。お父さん。お兄ちゃん。さようなら。


「マリアだから僕のものにしよう。」


んっ?なんだってそれはどういう意味で。だめだ諦めるなマリアは幾度となくこういう状態から逃げ出したプロなのだから。いや半分以上は助けが来るんだった。でも私はマリアとは違う。絶対に1人で解決して壮真のカレーをお代わりする。


「ねえ一言も話さないけどいいの好きにするよ?マリアと違って大きいこの胸も。」


「いや待って。やめて本当に。」


「それだけ?」


「あなたはダニエルじゃなくて佐久間俊樹でしょ。佐久間俊樹として人を愛しなさいよ。この野郎。」


「そんな事を言って君はあの幼なじみのエイクと付き合っているじゃないか!」


「ええそうよ。でも壮真を好きになったの。エイクじゃない壮真を好きになったの!」


「聞きたくない。そんな話は聞きたくない!綺麗事をいいやがって!」


そう言って乱暴に抱き締められる。


「いいわよ!好きにすれば!でもあんたを愛したりなんてしない!これからも絶対にない。未来永劫!」


「君、今の立場わかってるの?君の初めてを奪っちゃう事もできるんだよ?」


「ふふふっ。ねえ、壮真とどれ程一緒にいると思ってるの?夏休み入ってずっと家にいるのよ?そんな事。」


「へーあのエイクが結婚する前にそういう事をするかな?」


「だからエイクじゃないって言ってるでしょ。壮真なのもうあんな事やこんな事もしてるわよ。キスマークも見たでしょうが。ばーか!」


してないけどね。佐久間俊樹は1度離れてリビングの方へ何か取りに行って、また戻ってくる。縄と鞭を持って来たのか。


「マリア確かに君はマリアとは程遠いなんだね。じゃあ僕が教育してあげよう。素敵な令嬢に。」


よしもう駄目だとりあえずぶっ飛ばしてやろう。合気道も空手も試合でいい所まで行った事あるんだから。手を後ろで括られたって大丈夫。足は自由だ椅子に括られている訳じゃないし。手は確か上から下に振り下ろしたら解けるんじゃなかったっけ?佐久間俊樹がこちらに突っ込んで来るのを受け流すそのまま倒れ込んだところに大事な部分を蹴り上げてやる踏み付けてなぶる。


「佐久間さんこんな事していいと思ってるんですか?私勉強頑張る前は武道一筋の強い女だったんですよ。」


そのまま腕を前に通し振り下ろすと縄が外れたのでその縄で縛っておく。この方法はテープだ、単純に緩かったんだな。お父さんありがとうあなたのおかげで暴漢を撃退出来ました。お父さんは合気道の達人だからね。


「おい。桃!大丈夫か!」


ドンドンと玄関のドアが叩かれる。開けると壮真が入ってくる。


「桃!大丈夫か?何かされたか?」


「どうしてここに?」


「知らないアドレスからメールがきててシークレットだマリアがダニエルに監禁された。ここにいるから助けに行けってだから助けにきた。」


そして私を抱きしめる。


「あのねダニエルどうしたらいい?」


「どうしたらってどういう事だ?」


「とにかくダニエルに話を聞こう。」


「佐久間さん。」


部屋を覗くと隅に座っている。


「なんだよ。警察にでも連絡しろよ。」


「佐久間さん何故、私がマリアだと知ってるんですか?」


「………。」


「言えませんか?もう1発殴りましょうか?」


「エイク!こんな女どこがいいんだ!マリアと似ても似つかないじゃないか!」


「佐久間さんはっ倒しますよ?」


「俺に質問するな。彼女の桃がこんな目にあって怒ってないわけないだろう。消すぞ。」


「郵便ポストに入っていたんだ。シークレットよりって、マリアは竹中桃、エイクが柴田壮真だと。もしマリアを手に入れたければ監禁してしまえと。その机の引き出しの中だ。」


机の引き出しを探ると確かに手紙が入っている。家に入っていた封筒では無いし何より手書きで書かれている。マリアが竹中桃、エイクが柴田壮真だ。と話し方も違う。


「壮真。これ。」


「ああ、桃に来たのと違うな。」


「佐久間さんもう私に関わらないでください。そうすれば私はこのまま壮真と帰ります。」


「そういう所は変わらないな!いい子ぶりやがって俺はそういうマリアが大嫌いだった。親の言いなりで俺がどれ程嫌がらせをしても笑顔で振り払うお前が!」


私も壮真も何も言わない。ただ泣いている佐久間さんを見つめている。


「………大嫌いで。……大好きだった。」


「佐久間さんあなたは佐久間俊樹です。ダニエルに縛られず自由に生きてください。それじゃあさようなら。」


壮真が佐久間さんの縄を解く、そして泣いている佐久間さんを置いて私達はマンションへと帰った。佐久間さんも結局、マリアに人生をめちゃくちゃにされた人なのだ。それでも慰めたりできないのは私が子供だからだろう。



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