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18、穏やかな時間


あれから壮真は余計に過保護になって朝も迎えにくるし帰りも迎えにくるようになってしまった。そして家で勉強して帰る。悪くいえば家に入り浸るようになってしまった。アンちゃんはその間ずっと隠れているのだ。壮真が勉強を教えてくれるので成績はうなぎのぼりだが。おかげで成績優秀者に贈られるご褒美のお金も貰えたし。でもその状態が1ヶ月程続き夏休みに突入しても変わらずバイト以外ずっと家にいる。夏休みはもう半分しか残っていない。


「壮真!もう大丈夫だから!」


「桃。まだこれ解けてない。」


「ああすいません。じゃなくて!シークレットは誰かも分からないし、壮真は壮真で好きな事しなよ!」


「俺は好きな人と一緒にいられれば1番幸せ。」


と言っておでこにキスをしてくる。壮真ってこんな人だっけ?


「なんか性格変わった?大丈夫?」


「エイクは全てを諦めて我慢してマリアに何も言わずに終わっただろう。だから今度はそうしない。俺は桃が好きで、桃も壮真を好きになってくれた。しかも誰にも邪魔されず大っぴらにしても非難されないし、手を繋いで外を明るい内に歩ける。それなのに桃がもし誰かに危害を加えられたりしたら俺は自分を許せない。閉じ込めたりはしないそれは間違ってるから。だけどせめてそばに居させてくれ。」


ああーなんて可愛い人なのだろう。本気で思っているんだこんな事を。でも私の為、また私の為。じゃあこの手で行こう。

座っている壮真に近付き、前に座る。壮真を背もたれにして両手をつかみ私の胸の下で握る。そのまま壮真に軽くもたれる。


「壮真いつもありがとう。でもね私のせいでエイクの人生がめちゃくちゃになったでしょう。エイクは騎士になりたくなかった筈、でも壮真は違うあなたが看護師という道を選んでここまできた。また私の為に犠牲になって欲しくないの、前にも言ったでしょう?」


壮真は少し前に倒れて力強くそのまま抱きしめてくれる。そして私の耳元で囁くように話す。


「怖いんだ桃を失うのが。今の幸せを失いたくない。いくらシークレットが協力すると言ってたとしても、桃がマリアだと住所も分かっていると宣言したに近い。それなのに誰なのかも特徴も分かっていない自分が歯がゆい。」


「うんありがとう。私も怖いよ。怖いけどそういう時に壮真が居てくれる。そうでしょう?ねえこの休みで両親に会わない?今度の両親はとてもいい人達なの。前の両親とは比べものにならない位。それにお兄ちゃんもいる。」


「ああ俺の両親もとてもいい人だよ。俺は1人っ子だ。俺の両親にも紹介したいよ。」


「ねっ私達の未来は明るいでしょう。前とは全然違うだから余計に失うのが怖い。私達幸せだね。」


「ああ、でもお前の家には入り浸ってやる。俺この夏休みは暇なんだ。」


「分かった、でも自分の好きな事もして欲しい。外に行くのも好きでしょ。映画館とか美術館とかも好きでしょ。そんな見た目で。」


こつんと頭を叩かれる。


「そんな見た目ってなんだよ。」


「だって細身だけど筋肉がついてる天パじゃん。」


「おい、天パってなんだ。これはちゃんとスパイラルパーマっていうのをかけて。」


「でももうあんまりパーマじゃないね。髪の毛も時間かかる事をやめてるんでしょ。」


「飽きたんだよ。ワックスでもできるし。」


「ねえ美容院について行ってあげようか?それか一緒に行こうよ。私もだいぶ伸びたからパーマかけようかな。」


「桃、ありがとう。大好きだ。なあキスしていいか。」


「なんでそんな事聞くの?」


「だって口には初めてだから。」


「恥ずかしいからやめて。」


ふっと笑って優しく口付けてくれる。向かい合って抱き合って初めてのキスは触れた箇所から熱をおびていく。私は溶け合ったような気がして、壮真をまた強く抱きしめた。


「あのさ俺エイクの時は1つになりたいと思っていたんだ。マリアと1つになって消えてしまいたいと。」


「うん。そうね。」


「でも今はそう思っていない。どれ程一緒に居ても1つにはならない、でもそれがいいと思える。お前から見た景色と俺から見た景色は同じ場所でも、全く一緒の景色は無い。だからいいんだ俺はそれを桃から聞いて俺が見たのも話して、2人で分かち合いまた出かける。そうやって2人で自分たちを形作るどういう人間になっていくか。そして2人で未来を作っていく。こんな感情を作ってくれたのも桃なんだよありがとう。」


「ふふっそれってプロポーズ?」


「茶化すなよ。本気でそう思ってるんだから。」


壮真はだいぶ会った時と性格が変わったようだ。無表情だったのに今は柔らかく笑顔で私を見つめている。でもエイクの性格とも違うのでちゃんと壮真の性格だ。さっき言った私と壮真が2人で形作った性格、私もだいぶ変わったのだろう冷ややかな部分が少なくなっている気がする。この温かい感情は壮真がくれたものだ。



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