12、マコちゃんの企み
食堂に着くと珍しく人がまばらで席取りをしなくてよさそうだったので2人共日替わり定食頼んで窓際に座った。周りには誰もおらず遠くの席で女性2人がお茶をしているだけになっていた。
「もう2時だもんな。」
「そうだね。授業中だし。」
「なあ瀬良と一緒で大丈夫なのか?」
「うんちょっとダメかも。でも私がマリアだと怪しんでるの。マリア相手だと何をしてもいいと思っているのかな。」
「うーん。でも普通マリアだと怪しむならこのゲームの主人公だと思うけどな。何故いきなり桃なのか。」
「ね!そう思うよね!」
「日替わり定食できたよー!」
「あっできたね。取りに行こう。」
「ああ。」
トレーに乗った定食を受け取り席に戻って食べ始めた。今日の日替わりはかつ皿だ。付け合わせに高野豆腐がついている。
「これから瀬良君が来たらすぐに連絡するね。我儘を言うけど本当に怖かった。」
「ああ絶対にそうしろ。遠慮するなよ。」
「本当にありがとう壮真。」
「気にするな。」
それから黙々とご飯を食べて次の授業まで食堂で勉強していた。壮真と帰りの約束をして次の授業の教室へ移動した。
この授業は席が自由なので後ろの方へ座る。
「桃ちゃん隣いい?」
「勿論。」
「今ゲームがいい所なの終わらせたい。」
「推理物?」
「うん犯人はわかっているのに証拠が不十分なの多分、探索が足りていないのね。」
そう言って英子ちゃんはスマホを操作している。この授業の教授は教壇から動かないので皆それぞれ色々な作業をするつもりのようだ。
授業が始まる5分前にマコちゃんが話しかけてきた。
「桃ちゃん!彼氏がいるってどんな感じ?」
「どんな感じって。楽しいよ。充実してる。」
「そっかどこが好きなの?」
「うーん笑顔かな。」
「えー無表情っぽい人なのに桃ちゃんの前では笑うんだ。興味あるな。」
「興味?」
「こっちの話じゃあまたね。」
そう言ってマコちゃんはのぶ君と呼ばれる男の子の横に戻って行った。
「なんだったんだ。」
「あの子には気を付けてね。」
「えっ。」
英子ちゃんは視線を外さずそれだけ言うとゲームに戻ってしまった。今日はなんだか散々だ。
結局、私も他の試験勉強をして授業は終わってしまった。もう早く帰りたくてさっと帰り支度をして英子ちゃんにまた明日と言ってから待ち合わせの場所に行くと壮真はマコちゃんに捕まっていた。壮真は少しだけ困った表情だ。近付いて話を聞いてみよう。
「桃ちゃんのどこが好きなんですか?」
「んー笑顔とよく食べるとこ。」
「えー女の子っぽくないですね桃ちゃんって。」
「そうかな。可愛いよ。」
「私、壮真さんが好きなんです。付き合ってください。」
「いや桃がいるから。」
「じゃあ壮真さん勉強で分からないとこあって教えてください。」
「またあの男の子に教えて貰えばいいじゃないか………………。」
「もういいです!」
途中で耳打ちした後マコちゃんは不機嫌になって行ってしまった。
「壮真マコちゃんに何を言ったの?」
「ああ見てたのか。またキスの約束してやればって言ったんだ。」
「それで怒って行っちゃったのか。ねえ私女の子っぽくないかな?」
「そんな事ないよ。すぐに照れるし可愛いよ。」
でたまたその笑顔。
「なんか恥ずかしい。マコちゃんって何がしたいんだろう?」
「本当になんだろうな。それより大丈夫だったか?」
「うん大丈夫。」
「じゃあ帰ろう。」
そう言って手を繋いでくれる。壮真は優しいエイクの時から優しかったもんね。いつも私を1番に考えてくれた。無条件に守ってくれた。マンションに着いたのでエントランスで話す。
「壮真いつもありがとう。」
「急にどうした?大丈夫だからな。俺がついてるから。」
「じゃあギュッてして。」
「えっでも。」
「してくれたら元気が出るかも。」
「わかったよ。大丈夫だ俺がいる。」
壮真が大丈夫と言って抱きしめてくれる。なんだか心地よくて温かい本当に大丈夫な気がする。明日は名前順に並ぶ授業があるけど頑張れる気がする。
「ありがとう。本当に元気が出てきた。」
「お前なぁ。他の男だと勘違いするぞ気を付けなさいよ。じゃあおやすみ。」
ああ行っちゃった。部屋に戻ってずっと抱きしめられた感覚を思い返していた。