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11、瀬良君と記憶


「桃ちゃんなんか最近ぼーっとしてへん?どうしたん?」


「んーこの教授の宿題まじでヤバいの。また瀬良君と組まされたのしかも発表しないといけないのよ。病気について2人で調べて発表しかも病気はくじ引きで決めてアルコール依存症。難しくない?」


「うん。ヤバいなまた関わってしまうんわヤバいな。」


「ねっヤバいでしょ。語彙力が無くなる位にヤバいの。とにかく今は調べている最中。アルコール依存症について。」


「そっか頑張りや。今日はカツ丼にしたげるわ。瀬良君に勝つや。」


「ありがとう。」


理由はそれだけじゃないけど。アンちゃんが作ってくれたご飯を食べて布団に入って考える。あれから数日経って壮真と帰りは一緒に帰っているけど何度帰ってもソワソワしてしまう。壮真に対するこの感情に名前を付けてしまうのが怖くてたまらない。


「桃ちゃん!朝やで。」


「アンちゃんおはよぉ。」


「ほら今日は瀬良と発表の授業あるんやろ!」


「授業は無いよ。発表は来週だけどね。今日は話し合いがあるの。」


「せやろだから気合い入れていきーや。」


「気合い?分かった。」


アンちゃんが早めに起こしてくれたので化粧をいつもより丁寧に行い、いつもより短いスカートもはいて髪もまいて完全武装な気分だ。


「桃ちゃんなんか今日めっちゃ大人っぽい。」


「ありがとう。じゃあ行ってきます。早めに行って図書館に寄るね。」


「うん行ってらっしゃい。」


この時間だからかまた壮真と出くわした。


「壮真おはよう。」


「ああ桃おはよう。今日はなんだか雰囲気が違うな。」


ちょっと近付いてまじまじと見てくるのが恥ずかしい。


「ちょっと近い。」


逃げ腰で後ろに引いてしまう。


「はは。照れたのか。こんな事で可愛いな。」


そしてまたあの笑顔で私を見ている。ああやっぱり落ちてしまいそうだ。というかもう落ちているかも。


「今日は早いんだな。」


歩きながら壮真が話しかけてくる。


「うん。発表の準備をしないと。ていうか壮真に言ったかな。私の前の席が多分アランかもしれないのでその人と組まされてるの。」


「えっ大丈夫なのかそれは?」


「うんまあ大丈夫。っていうかまた前にいるのマコちゃんじゃない?今度はあの同級生と一緒だね。マコちゃんの後ろの席の。」


「あーあの主人公らしい女の子な。」


「のぶ君私の発表ねエボラ出血熱なの代わりに調べてくれない?」

「マコちゃんそれは君の為にならないよ。」

「のぶ君とても賢いしそれに私、のぶ君しか頼る人がいないの。それに調べてくれたらチューしてあげる。私好きな人にしか言わないよ。こんな事。」

「うーんでも。」

「お願い。のぶ君しかいないの。」

「わかったよ。早めにしておく。」

「のぶ君ありがとう。大好き。」


2人のやり取りはこんな感じで前も見たようなきがするけど。


「桃はああいう事するなよ。」


「勿論、彼氏がいるし。」


「ははそうだな。まあなんかあったら頼れよ。」


と笑顔で優しく頭を撫でてくれる。髪の毛を崩さないように優しく、もしかして髪の毛も気付いてくれたんだ。嬉しいな。


「壮真ご飯連れて行って。」


「急だな次は何がいい?」


「こってり系のラーメン。発表が終わったらお願い。来週の月曜日には終わるから。」


「じゃあ来週の月曜の夜にするか?」


「うん。嬉しい楽しみに待ってる。あー今週勉強頑張れそう!」


「現金だな。」


そう言って笑う壮真も楽しそうだ。なんだか楽しみ、発表を無事に終える為に勉強頑張ろう。


「図書館に行くのか?」


「うん今日はそう。壮真は?」


「俺もそうだ。俺は試験勉強だ。」


「私もしよう。今度はトップとって優秀賞のお金欲しい。」


「あー頑張れ。応援してるよ。」


「ありがとう。」


図書館に着くと黙々と勉強し、気付けば発表の話し合いをする時間の10分前だった。行くの憂鬱だなー、ちらと壮真を見ると真剣な表情で問題を解いている。ヤバいなカッコイイ。ちょっとだけちょっとだけ我儘を言ってみよう。


「ねえ壮真。」


小声で話しかける。壮真も小声で応える。


「なんだ。」


視線は問題集に落としたまま。


「ねえ話し合い行きたくない。瀬良君が怖い。」


「お前頑張るって自分で言ったろ。」


「壮真、彼女に優しくしてよ。」


ほとんど人がいないとはいえここで偽物だろとエイクだった壮真は絶対に言わない。それを逆手にとって私も我儘を言っているのだ。


「その彼女はどうしたらやる気が出るんだ?」


「彼氏なんだから考えて。」


「ふーんじゃあこういうのはどうだ。」


そう言って私に近付いてくる。私が座っている椅子に右手を置いて、左手は私の後頭部を抑えて顔を近付けてくる、キスをされると思って目を閉じるとデコピンされた。


「子供のくせに何を期待したんだよ。」


そう言って何でもないみたいに笑っている。私はドキドキしながらとにかく話す。


「意気地無し。じゃあね。」


そして逃げるように瀬良君と話し合いをする会議室へ走った。

大学内に生徒が借りられる小さめの会議室が幾つかあって瀬良君が借りてくれたのだけど、本当に気が重い。個室に2人きりしかも1時間も。


「なんだか竹中さん雰囲気違うね。うん綺麗だね。とにかく発表までまとめてしまおうね。」


「ありがとう。私はこんな感じにしてみた。」


瀬良君にレジュメを渡す。瀬良君はまだ私を見ている。とりあえずスライドとまとめだ。


「ありがとう。竹中さんは事例と治療法をまとめてくれたんだね。僕は症状だからちょうどよかったね。最初に僕が症状とかを説明して、竹中さんが事例と治療法を説明して終わりでいいね。スライドも統合してしまうね。」


「うんありがとう。」


確かに内容はかぶっていないしスライドもすっとできてしまった。まだ後45分もある。


「じゃあ私自分が発表する部分の手元用の書類を作り始めるね。」


「ああ。スライドはもう出来るから終わり次第僕も自分のに取り掛かるよ。」


瀬良君は手際がいいな。アランってこんな感じだったかな?もっと弱々しい気がしてたんだけどなぁ。まあ新しい人生だからね環境も違うし、アランとは違う性格になったのかも。作業を続けて30分程経ったところで瀬良君が話し始めた。


「竹中さんって前世の記憶って信じる?」


「ん?急にどうしたの?」


「ごめんね。変だと思うだろうけど僕物心ついた時から前世の記憶があるんだ。」


「へーそうなんだぁ。」


来たやばいぞ。でも壮真にも嘘を見抜けないって言われたから普通にしてれば大丈夫だ。とにかくさらっと流して終わらせよう。


「それでね前世でとてもお世話になった女性を探してるんだ。マリアって言うんだけど。」


「そうなんだぁ。」


「ごめんねこんな話興味ないよね。」


「あっごめんねもう手元用の書類できそうだったから。」


「じゃあ作業しながら聞いててね。君に似てるんだよ。君は前世の記憶ってある?」


「無いよ。」


「そっか。じゃあ確認する手立てがないなぁ。」


少しづつこちらへ近付いてくる前の患者さん役の時みたいに。今度は横に座っていたので逃げられない。私は気付かないふりをして作業を続ける事しかできない、誰か助けて!


「マリアにした同じ事を君にすれば思い出すかな?」


急激にヤバくなった。何故どこで間違えたの。とこの状況でノックの音と共に壮真が入って来た。私は壮真が助けに来てくれた事が嬉しくて抱きついていた。


「壮真、会いたかったよー。もう終わるとこなの!」


「桃俺もだよ。迎えに来たんだ。」


「ああ、そうだね。じゃあもうお開きにしようか竹中さんの彼氏が迎えに来られたし。」


「ごめんね。今日は桃とお昼を食べる約束してたんだ。」


「いえどうぞ鍵は返しておきますので。」


「瀬良君ありがとう。じゃあまた授業でね。」


話す間中ずっと手を繋いでいた。壮真が来なかったらどうなっていた事か。瀬良君の配慮に甘えて私達は手を繋いだまま食堂の方へ歩いた。


「どうした大丈夫か?」


「壮真、本当にありがとう。来てくれなかったら危なかった。前世の記憶を思い出させる為に同じ事をしてやろうかって言われたの。」


「ああそれは危なかったな。なんだかお前が行きたくないって言ったのが気にかかったんだ。覗いてよかったよ。いきなり抱きつかれるとは思わなかったけど。」


「だってぇ。あのままどこかに連れて行かれたらどうしようって。」


「まあそうだよな。お前の中には監禁された記憶があるんだからな。ごめん。」


そう言って握る手が強くなった。また辛い記憶を思い出したのかも。だから私も強く握り返した壮真がこれ以上辛くならないように。


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