第7話 相手を形せしめる
「一つめの方法で相手がやめなければ、
必ず次は、
二つめの方法を試さなくてはならない。
二つめの方法は、
『教師に相談する』こと。
すなわち、
教師の力でやめさせてもらうことだった」
「…………」
「さっき倉打君は、
これをすると、
先生に告げ口をする
卑怯者になると気にしていたけれど、
それも
相手の都合に合わせてしまっている。
別に、
先生に頼まなくても、
『強力行使』をしたら、
自分でやめさせられるんだ。
でも、
このようなことをやりたくはないから、
わざわざ先に、
二つの方法を試すという
遠回りをして、
無血で終わらせる機会を
与えてやっているんだ」
「…………」
「すでに、
1つめの条件ができたならば、
すぐに担任の先生に相談だ。
――困っていることがあるので
相談がありますと、
はっきりと言いにいこう。
そして、
これまでのいきさつを正確に話して、
もし自分にも悪い原因があるのならば、
それも隠さず
正直に話さなくてはいけない。
このときに、
いじめられていると、
はっきり言ったほうがいい。
でないと教師は分からない。
相手がどうしてもやめないから、
間に入ってもらって、
やめさせるように
取りなしてほしいとお願いするんだ」
「…………」
「もし、
担任ができないと言うなら、
できる先生に相談しなければいけない。
相談を受けた先生は、
おそらく、
相手や他の生徒たちに、
それが事実かどうかの確認をとると思う。
そして、
倉打君の言ったことが事実そうであれば、
相手に二度とやらないように指導をして、
イジメは終わる。
普通のイジメであれば……」
「…………」
「しかし、
いじめっ子が
この状況を
自分でコントロールできると考えるならば、
イジメはやめない。
いじめっ子は、
こちらの悪い点だけに焦点を当てて、
教師の説得を試みようとしたり、
イジメではない絵に見せようとしてくる。
多くの先生は、
それを見破って打開することができない。
教師はイジメが何かを知らないし、
知っていても、
教師からイジメは見えにくい。
他にも経験不足だったり、
面倒に感じていたり、
好んでいじめっ子の肩を持つ場合など
様々な理由によって、
イジメの解決には至らない。
所詮
『教師に相談する』という、
他人に依存する方法では、
確実に
イジメを解決することなどできないのだ」
「…………」
「だがたとえ、
教師が協力してくれなくても、
解決できなくても、
問題はない。
ここでも重要なことは、
この二つめの方法を
間違いなく試したことだ。
だから、
『強力行使』をした後、
先生が
イジメの相談をされたことなど
覚えていないと言って責任逃れをしても、
倉打君は、
本当に
先生に相談したことを、
後から証明できなければいけない。
そのためには、
先生にも3回相談することだ。
3回もやれば、
それが確かなことを、
誰にでも説明できるはずだ」
「…………」
「1回めの相談では、
『強力行使』があることは言わずに、
教師を信頼してすべてまかせればよい。
それで、
翌日までに解決できないようであれば、
2回めの相談からは、
他の先生にも加わってもらうように
要請しないといけない。
相談に加わってもらう先生は、
多ければ多いほどいいが、
3人もいれば充分だろう。
特に天皇の悪口を言う先生がいたら、
その先生にも
加わってもらうとよい。
その先生は、
『強力行使』をした後、
警察沙汰にしたがらない可能性が、
他の先生よりも高いためだ。
他にも、
しっかり物事を説明できるような
同級生がいたら、
一緒についてきてもらうとなおよい。
そして、
教師には
3回しか相談しないことも、
事前に伝えておかなくてはいけない」
「…………」
「2度めの相談では、
これがイジメであることを、
教師に理解してもらわなければいけない。
教師は、
本当にイジメを分からないから、
自分が受けているこのような行為が、
うれしいことなのか嫌なことなのか。
ルールやモラルに違反してはいないかとか。
許容できるレベルと思うか、
どちらがわざと仕掛けている側か、
どちらが攻撃的か、
報復的なのか、
どちらが陰湿だったり、
ごまかそうとしているのかとか、
それをやらなければいけない事情は
どのようなものなのか、
どれほどそれをやる必要があるのか、
同じことを誰がしても
クラスを健全に運営できるのか
ということについて、
教師が判断できるように、
心の中で思っていることではなく、
もう一度、
起こった事実だけを教えないといけない」
「…………」
「そして、
それによって
自分がどういう
不利益な状況に置かれているかということを、
教師に説明しないといけない。
イジメは
いじめっ子からすれば娯楽で、
教師からすれば
生徒指導の問題のひとつという
だけかも知れないけれど、
こちらからすると、
安全がおびやかされている、
安全保障の問題となることを
分かってもらうんだ。
イジメは
学校の問題として扱わなければいけない。
だから、
警察や相手の親に報告するかどうかは、
教師が判断することだ」
「…………」
「それでも教師が解決できずに、
3回めの相談まできたら、
ここで、
『強力行使』をやれば、
自分でも解決することができることを
先生に教えてあげなくてはいけない。
自分でもできるんだと。
しかし、
そのようなことをやりたくないから
先生に相談しているのですと。
いじめられているということは、
ケンカを売られているのと同じことなのだと。
それを、こちらが我慢してあげているから、
ケンカになっていないだけなんだと。
もしこちらが我慢するのをやめたら、
いつでもケンカになる。
我慢も永遠には続かないと。
イジメはしてもダメだけど、
されることもダメだから、
解決しなければいけません。
もし僕がケンカをするときは、
最短で確実に問題を解決する
ケンカの方法でやることになりますと。
もし教師たちが解決できないなら、
そのときは、
自分で解決するしか方法がなくなりますと」
「…………」
「イジメは騙すことだから、
口実をつけてやります。
相手がイジメをする理由は、
僕が『強力行使』をしないからです。
『強力行使』をしたら、
イジメをやめさせられるんです。
でも、
これをやると犯罪になるから、
したくはありません。
しかし、
相手にやめる意志がなく、
先生たちでもやめさせることができないならば、
残った方法は自分でやるしかありません。
『強力行使』以外で
解決できる方法があれば
それをやりますけど、
他の方法を僕は知りません。
このままイジメをやられ続けるか、
『強力行使』をして終わらせるかの、
どちらかを選べと言われれば、
『強力行使』をやるほうを選びます、
と言って、
教師たちで解決できない場合は、
間違いなく、
『強力行使』をやることを伝えておくのだ」
「…………」
「このようにして、
3人以上の教師に3回相談しても、
イジメが解決されないようならば、
2つめの条件も満たされることになり、
負けない形が出来上がる。
つまり、
いつでも『強力行使』ができる体勢が
整うわけだ」