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マジシャンズ・ウォー  作者: 階堂 仁
1/1

プロローグ~01~

少し長くなりそうなのでプロローグをいくつかに分けます。

 城塞都市エリュシオン郊外、深い夜の森に激しい戦闘音を響かせ争っている三つの人影と無数の異形の影。


「おいクルトン!右からコボルトだ!」


 三つの人影のうち、帽子を目深にかぶった男が弓を引きしぼりながら叫ぶ。


「くっ、面倒くせぇ!オラァッ!!チェイスてめぇ!その弓は飾りかよ!!」


 クルトンと呼ばれた禿げ頭の冒険者がその手に持った大剣で目の前の犬の魔物、コボルトを死角から迫るコボルトごと両断しながら毒突いた。



「叫ぶな、無駄な体力を使う。それに敵はまだまだ多い油断するな。」


 手にした太い近接用の杖で骨の魔物スケルトンをその手に持つ粗末な武器ごと粉砕しながら黒いローブを纏った髭面の男が窘める。


「ネヒトさんよ!そう言うんなら強化だけじゃなくご自慢の広範囲魔術で数を減らしてくれよ!!いつまでたってもキリがねぇ!!」


 倒しても減らない魔物に業を煮やしたのかクルトンはネヒトに魔術の使用を迫る。

 クルトンの言う通り広範囲魔術を使えばこの場の魔物の数をいくらかは減らすことができるだろう。


「ハッ!馬鹿言ってんじゃないよ、これだけの魔物だ。きっと後ろにはアレがいるぜ?魔力は温存しなくっちゃな。そう思ったからアルテーアを街に走らせてんだろうが」


 弓使いの男、チェイスが狼の魔物ブラウンウルフに魔導弓を放ち仕留めると小馬鹿にしたように笑う。

 確かに彼らには懸念があった、今見えている魔物など比較にならないほどの脅威がこの群れの先に控えているであろうと言う懸念が。

 それに加え、一体一体は弱くとも底の見えない魔物の数に3人の冒険者は内心冷や汗をかく。

 援軍を呼びに使いに出した少女はまだか?今向かっているとしてそれまで自分たちは持つのか?という焦りと不安が募り始めた時。


「っ!?魔力が高まっている…クルトン!チェイス!!3時の方向!でかいのが一発来るぞ!」


 魔物の後方、未だ見えない場所から急激な魔力の高まりを感じた後衛型魔術師ネヒトの警告から数瞬後大きな火球が風切り音をあげながら飛翔する。


 ボンッッ!!


 直前まで2人のいた場所に着弾した火球は轟音と共に爆炎と土煙を撒き散らし2人を覆い隠す。

 


「クルトン!チェイス!!」


 心配するネヒトの叫びに遅れて土煙の中から砂埃をつけた二人が飛び出してくる。

  飛び出してきた2人はかすり傷を少し負っていたものの無事だった。


「あっちちっあっちぃ!!あの野郎とんでもねぇ無茶しやがる!」

「まぁでも、見ろよ。魔物が巻き添えくらって大分吹っ飛んでら」


 そう言ったチェイスの視線の先には飛来した火球を避けそこないまともに受けたブラウンウルフがその屍を晒していた。


「いやぁ、助かるねぇ。力をセーブしながら戦ってたんじゃあの群れは堪えたからね」


「ハッ!でもよ、一息ついてもいらんねえぞ。地獄の始まりはこっからみたいだぜ」


  軽口を叩く2人の視線は鋭いままだ。

 二人の視線の先、火球の飛んできた方向。土煙の向こうから喜びに満ちた笑い声が響く。


「アハハハ、死ななかった!!嬉しいわ!ウフフフフ・・・!!」


 土煙がはれ、火球を放ったであろう元凶が姿を現す。

 灰色のローブに血が乾いたであろう赤黒い染みを付け、ローブと同じ色の先のとがった帽子をつけている女はその手に大きなな木の杖を手にしていた。


「おい、ネヒト。ありゃぁ・・・」

「ああ、あいつは間違いなく」


「「魔女だ」だな」


 魔女と呼ばれたその女は三人を前に未だ笑い続けていた、周囲に魔物を付き従たその姿はまるで自分がこの場の支配者だと言いたげな振る舞いだ。


「なんてこった・・・まだ援軍も来てないってのに。別嬪なのはいいがあれは俺たちの手には余る相手だぜ?」


「まぁいいじゃないの、あのまま魔物相手にしてもジリ貧だっただけだし。それより奴さん俺たちと遊びたいってよ、ご希望の通り遊んでやろうじゃないの」


「二人とも軽口はそこまでだ。今から身体強化と対魔法防護の魔術をかける。援軍が来るまで何としても持ちこたえる」


 クルトンたちは内心の不安をかき消すかのように軽口を叩く、その間にも後衛型の魔術師であるネヒトが自分を含め三人に魔術をかけ、懐から一枚の紙を取り出す。


「こいつは奥の手だ。できることなら使いたくはないがな。リーダー使用の許可を」

「まっ!高かったが命には変えらんねぇ、許可する。タイミングは任せたぞ」

「わかった、任せておけ」


「作戦タイムは終わりだお二人さん!くるぞ!!」


 チェイスの声と同時に魔女が動き出す。


「アハハ!こんなので死なないでよね!」


 突き出されたその手に一瞬のうちに魔力が集められ先ほどと同じ火球が放たれる。

 うすら笑いと共に無造作に放たれたソレは確かな殺傷力と明確な殺意をもって三人に迫る。


「くそったれのアバズレが!!」


 体を逸らし火球を避け、大剣を構えたクルトンが魔女に走る。

 クルトンの進路を塞ぐようにスケルトンとコボルトが立ちふさがる。


 ヒュン!


 尚も走る速度を緩めないクルトンの耳のそばを風切り音が通り過ぎた。それは先頭のコボルトの頭に突き刺さるとコボルトを地に伏せる。

 ヒュンヒュンと音が連続で聞こえると、クルトンの前に立ちふさがったコボルトが次々と沈んでいく。


「クルトン!そのまま突っ込め!邪魔な魔物は俺とネヒトで受け持つ!見たところ笑喜の魔女だ、やつの炎には注意しろよ!」


「大地の魔、我は乞う、我が前に立ちふさがる数多の敵を縛る鎖を、撃滅せしその力を。クロックマジック、アースバインド」


 魔力を流した弓に矢をつがえ次々と放つチェイスのその言葉に続き、ネヒトが魔術を放つ。

 唱えられた魔術は大地を操る土系統の魔術、時間をかけてゆっくりと効力が高まるクロックマジックで放たれたその魔術はスケルトンの足元の地面を変形させ全身を拘束する鎖となる。

 拘束する力はやがて強まりスケルトンたちの骨をミシミシとしめつける。ついに限界を迎えたスケルトンの背骨はボキリ、と嫌な音を立てその活動を停止させる。


「ナイス援護だ!奴の前にはもうなにもいねぇ!このまま決める!!」


 己を守る魔物が倒されていくのを笑って傍観していた魔女がクルトンに合わせ動きだす。

 その手に持つ大剣が魔女に届くか否かその刹那爆発的魔力が魔女の周囲を覆い、激しい爆炎とともにクルトンを吹き飛ばす。


「があぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」


「クルトン!!」


 吹き飛ばされたクルトンをネヒトが受け止める。

 咄嗟に防御したようだが体の正面に負った大きな火傷を見てネヒトはすぐさま傷を癒す魔術を唱える。

 


「ハァッ・・・!ハァッ・・・!あんだけ威力がたけぇのに発動が速すぎだぜ・・・あれが魔法ってやつか・・・ズル過ぎだぜありゃぁ・・・」


「喋るな、クルトン。」


 ネヒトはクルトンの傷に魔力を流しながらその視線は魔女に向いている。

 魔術による治癒は熟練でなければその即効性は薄い、そこを攻撃されたらひとたまりもないだろう。

 それがわかっているチェイスは持ち前のフットワークと軽口でうまく治癒の時間を稼いでくれている。

「だがそれも長くは持つまい」と右手に持つ紙、高等魔術の刻まれたスクロールに魔力を込める。


「チェイス下がれ!スクロールを使う!インスタントフレイムブレス!!」


 警告と同時にスクロールから魔術が放たれる。

 スクロールにはその発動までの時間もさることながら、より魔女の扱う魔法に近しい高度な魔術が刻まれている。

 放たれた魔術をチェイスはその場から体ごと投げ出すことで避ける。

 チェイスの脇を抜けた魔術はチェイスを焼き尽くさんと迫る魔女の魔法ごと魔女を飲み込みその身を焼く。


「アアアァァァァァァッ!!!」


 戦闘開始見下すように笑っていた魔女がはじめて悲痛な叫びをあげる。

 炎の向こうで魔女の叫び声が響く様子を見て息も絶え絶えなクルトンは声を出し絞る。


「これは流石に・・・やったか・・・高い買い物をした甲斐があったぜ…」


「油断するな。やつらの魔法は我々の魔術と違う超常の力だ・・・アレでどうにかなるとは思え」


 ない、とネヒトが言い終える瞬間、魔女を包んでいた炎が掻き消える。

 クルトン達の期待をよそにそこには未だ余裕そうな表情を浮かべる魔女が立っていた。

 再び笑うその姿はまるで先ほどの悲鳴が嘘だったかのようだ。

  事実ローブの端を少し焦がした以外には変化はない。



「アハハハハ!!嬉しいわ!こーんな手を持ってたなんてね。さぁ次は?まだあるんでしょ?まさかもう終わり?」

 なら、と

「とっておきみせてあげる!!これは防がなきゃ死んじゃうわよぉ!!」


 そう笑いながら魔女は手に持つ杖に莫大な魔力を集める、魔力感知に鈍いクルトンですらわかるほどに。

 魔女の魔法発動態勢を確認したチェイスが即座に矢を放つが空間を歪ますほどの魔女の放つ高い魔力により矢は逸れていく。


「チェイス!俺の後ろに来い!俺が魔法防護結界を張る!」

「ネヒトのおっさんよ!防ぎきれそうかい!!?」

「それはわからん!!だがおそらく無理だろう、死なないことを祈れ!!」

「そりゃないぜおっさん!こんなことなら街であの娘とデートしとけばよかったぜチクショウ!!」

「こんな時まで冗談を言うな!来るっ!!」


 魔女が魔法を放つ。

 それはネヒトが今まで見た炎の中で一番の炎だったかもしれない。

 先ほどスクロールで放った炎の魔術はこの炎の前ではろうそくの灯のようだと錯覚するほどだ。

 そんな炎をを受け止めたネヒトの結界魔術は今にも脆く崩壊しそうだ。

 わずかな時間で結界魔術にヒビが入る、その炎の熱さが伝わってくる。

 万事休すか、そうネヒトが覚悟したその時。


「氷の魔、我は乞う、身を護る氷の盾を!クイックマジック!ブースト!アイスシールド!」

 

 突然、背後から氷系統の防護魔術の詠唱が響いた。通常の詠唱では間に合わないと判断のか発動速度を重視したクイックマジック、それによる強度の低下を防ぐために魔力を通常より多く込めるブースト、その二つによって現れた氷の盾がネヒト達の前で今にも崩れかかっていた結界の魔術を支える。

 十分な魔力を込められて発動された氷の盾だが、魔女の放った大きな炎に負け徐々にその身を溶かし始めている。

 それを放心し眺めていると背後から声がかかる。


「呆けている場合か!この盾も長くは持たない!!急いでこっちへ!!」


 そう声がかかるとハッ、としたチェイスが動けないクルトンを抱えネヒトも急いでその場から離れる。

 そのすぐ後、結界魔術への魔力供給が断たれる感覚と共に声のした方向へ爆風によって吹き飛ばされる。

  そこに小さな悲鳴と一つの影が駆け寄る。


「クルトンさん!ネヒトさん!大丈夫ですか!?街から助けを呼んできましたよ!!」


 ネヒトは吹き飛ばされた体勢のままかけられた声の方を見やると、街へ送り出した明るいシーフの少女と銀のプレートを首にかけた複数の同業者の姿を捉え、時間を稼ぎ切った安堵からかネヒトはそのまま意識を落したのであった。


お初にお目にかかります、作者の階堂 仁です。

文章力、国語力の無さ。至らぬところ多々あると思いますが生暖かい目で見守ってやってください。

文法の誤り、誤字脱字等ありましたら指摘してくださると幸です。

それがわたくしの成長の大きな力になります。

次回更新はなるべく早くしたいと思っておりますが少し行き詰っているのが実情であります。

気長に待ってやってください。

それでは長文によるお目汚し失礼いたしました。


また見てね!

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