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序章 事件の幕開け


「うぅ……頭が痛い……」


そう呟いてから、不謹慎だっただろうか、と少し反省する。


二日前の19時頃、僕が所属しているミステリ研究部のメンバーの一人が何者かに殺されたのだ。後頭部を何度も殴打されたのだという。


「伊月さん、大丈夫ですか?」


隣を歩く冨山が心配してくれるが、そういう彼女の目にも隈ができている。


冨山とは大学で事情を話している時に会い、夜も遅く、あんな事件の直後でもあるので、家まで送っていくことにしたのだ。女性と夜道で二人きりで歩くなど、普段であれば心踊るようなものだが、生憎今はそんな気分にはなれなかった。


「あぁ、ごめん、大丈夫だ。それに僕よりも旅井や張間の方が余程ショックだと思うよ」


そういえば、あの二人と事件以後会っていない。そもそも、警察からの取り調べや聴取、大学側から詳しい事情を聞かれたりと忙しく、先程やっと一息つくことができたのだ。


不思議なことに、仲間の一人を失ってとても悲しいはずなのだが、まだ一度も涙を流していない。それほど慌ただしかったんだな、と他人事のように思う。


「すみません、わざわざ送っていただいて。うち、ここなのでもう大丈夫です」


「じゃあ、疲れてるだろうからしっかり休んでね」


「はい、ありがとうございます。伊月さんもしっかり休んでください」


「ありがとう。じゃ、おやすみ」


「おやすみなさい」


冨山と別れた後も、やはり事件のことを考えずにはいられなかった。冨山にはああ言ったものの、こりゃしばらく眠れないな…と頭を掻く。


その時、ふとある友人のことを思い出した。


彼は高校時代の同級生で、僕の知る限り最も推理力に長けた人物だ。高校内で起きた大小様々なトラブルを見事に解決していた。


僕自身もいなくなった飼い犬を見つけ出してもらったことがあり、その時のあまりの手際のよさに感動したものだ。


だが、


「流石に殺人は……ないよなぁ……」


そう、今回は殺人なのだ。仔犬探しとは訳が違う。話を持ちかけたところで迷惑がられるだけに違いない。


しかし、この時やはり僕は疲れていたのだろう。久々に思い出した友人の声を無性に聞きたくなった。


「話を聞いてもらうだけなら……いいか」


携帯のアドレス帳に並ぶ懐かしい名前の群れの中から目的の名前を見つけ出し、電話をかける。






「……あ、もしもし? 久しぶりだな。天野」






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