愛と食欲
ただ一言、「大好き」
そんな言葉さえ、私の口から出ることはなかった。
私は臆病だ。
振られることを怖がっているだけの、ただの臆病者だ。
なんて私は馬鹿なんだろう。
私は、彼がほしかった。
彼の体を、心を、優しさを・・・
なら、どうしようか。
それなら私は、こうする。
私は、彼の首にかみついた。
口の中に鉄臭いにおいが広がると同時に、大きな叫び声が私の鼓膜を揺らした。
首から滴る血が、芝生をゆっくりと変色させていく。
「なんで、おま、エ・・・・・」
その言葉を最後に、彼はがっくりとうなだれた。
舌にのる血もゆっくりと温かさが消えていく。
やっと彼を、彼のやさしさを手に入れたんだ
「はは、あはは、アハハッハハハッハハッハ!!!!!」
空に響くくらい大きな声で、私は叫んだ
<上位技能『愛食』の完全開放に成功しました>
この時間、学校に人はいない。
さあ、もっと楽しもうね。
―――――信也君
後日、中学校の裏手で2体の死体が発見された。
2体とも大きな傷を負っていて、犯人はかなり大きな罪に問われるだろうとニュースで言っていたらしい・・・