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魔王、辞めます。  作者: 稲生景


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元魔王、両親と再会すⅤ

「――それでそのときのロストときたらな……」

「ふふっ、兄様らしいですね」

「だろう? でな、その話には続きがあって――俺がちょうど10歳の誕生日だったんだが、これがまた……」


 かれこれ数十分、グレゴリアとレティは和やかに談笑を続けていた。そんなとき、扉がノックされ、ひとりの侍女が丁寧に頭を下げながら入室した。


「失礼いたします、国王様、王妃様。ヴァルディ・フォルテ様とヴィオラ・フォルテ様がご到着なさいました」

「おお、もうそんな時間か……すまないな、ガルド、グレゴリア。これからヴァルディたちと明日の段取りの確認をせねばならん」

「そうか……それなら仕方あるまい。グレンとヴィオラちゃんの式、楽しみにしているぞ」

「……良い式になるといいな」

「ああ。それでは失礼するよ」

「グレゴリア、また後でね~♪」


 そう言って、バジュラ王とルピア王妃はダイニングルームを後にした。


「お母さん、ヴァルディ様って……もしかして」

「ん? ああ、ヴィオラちゃんのお父様だよ」

「やっぱりそうだったんですね。昨日、ヴィオラさんのお家に伺ったんですけど、お父様にはお会いできなかったんです。どんな方なんですか?」

「そうだな……一言で言えば『仁義』を重んじる男だな」

「仁義……?」


 そのとき、扉の方から静かに声がした。振り返ると、そこにはロストの姿があった。


「兄様!」

「『仁』とは、広く人や物を愛すること。そして『義』とは、物事の筋を通し、正しさを貫くことだ。つまり、他人に対する礼儀や誠実さのことだな」

「へえ……なるほど……」

「そういえば、さっきグレンが何か急いで出て行ったようだが、何かあったのか?」

「ロスト様、実は……」


 蟻人が、ヴィオラたちの到着についてロストに説明する。


「なるほど、ヴァルディ殿が来ていたか……あとでご挨拶に伺わねばな。それはそうと、レティ。さっき母上と何を話していたんだ?」

「はい、兄様の子供の頃のことを聞いていたんです」

「俺の子供の頃?」

「そうだ、レティちゃんがお前のことをもっともっと知りたいって言うからな。……お前、愛されてるな」

「あ、愛されてるって……」


 グレゴリアの言葉に、レティの頬がほんのり紅く染まる。


「ふふ、照れてるレティちゃんも可愛いな」

「お、お母さんっ、からかわないでください~……」

「からかってなんかいないさ。事実、可愛いからな」

「うんうん、レティちんは超可愛いよね~♪」

「母上とラピスの言うとおりだ。レティは本当に可愛い」

「あ、兄様……うぅ~……」


 三人から立て続けに「可愛い」と言われたレティは、嬉しさと恥ずかしさが入り混じり、顔を真っ赤にしてうつむいた。


「そうだロスト、お前から“あのとき”の話をレティちゃんにしてやったらどうだ?」

「“あのとき”?」

「お前の10歳の誕生日の出来事だよ」

「ああ……その話をしていたのか」


 落ち着きを取り戻したレティが、ゆっくりと顔を上げる。


「ちょうど聞こうとしていたときに、侍女さんが来て話が中断しちゃったんです。そんなに面白い話なんですか?」

「面白いかどうかは分からんが……確かゼノムの奴が、三日前に“誕生日ケーキは自分が用意する”って言い出してな。で、当日持ってきたのが……なんと3メートルのケーキだった」

「3メートル!? す、すごいですね……!」

「ああ、で、皆で分けて食べようとしたんだが、ゼノムが『僕のケーキを食べていいのは兄上だけだ! 他の奴は食べるな!』って叫び出してな」


 ロストの話に、周囲の蟻人たちが懐かしそうに天井を見上げた。


「懐かしいですね……」

「ゼノム様、あの頃がいちばん“こじらせて”たよね~」

「ああ、まったくだ。今も大して変わらんが……」

「いくら俺の誕生日とはいえ、俺ひとりじゃ食べきれないしな。それで父上と母上が説得して、なんとか皆で食べることになったんだが……今度はラピスがケーキの半分を奪って食べ始めて、それを見たゼノムが激怒してな」

「だって~、ゼノムちんの愛がぎゅ~っと詰まったケーキだったんだもん♡ 他の人よりたくさん味わいたかったんだよ~」


 ラピスは両手で頬を押さえ、体を左右に揺らす。


「ああ……あのときは大騒ぎだったよな……」

「ゼノム様、マジでブチ切れてたしね……」

「もしグレゴリア様が止めてなかったら、誕生日会は完全におじゃんだったよね~」

「お母さんが止めたんですか?」

「ああ、グーパンでな」


 そう言ってグレゴリアが右拳を軽く掲げると、ラピスが思い出したように両手で頭をさすった。


「うう……思い出したら頭がズキズキしてきたよ~……」

「あ、あはは……でも、いい思い出ですね」

「うむ。今となっては、懐かしくも楽しい思い出だ。……そういえば、その翌年の誕生日はな――」

「ええーっ!?」


 ロストの思い出話にレティが驚いたり、笑ったりしながら、温かな時間は穏やかに流れていった。

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