元魔王一行、竜王城でくつろぐⅠ
――竜王城の一室。
「レティ様、大丈夫ですか?」
「は、はい……。もう大分落ち着きました。皆さんにご心配をおかけして、本当に申し訳ありません……」
先ほどの一件の後、蟻人たちは顔を真っ赤にして固まっていたレティをそっと抱え、部屋まで運んでベッドに寝かせてくれた。彼女たちは優しく扇で風を送り、レティの顔を仰いでくれている。
「ロスト様には、レティ様のこと伝えとくねー」
蟻人の一人がそう言って部屋を出ていった。
「本当に……ごめんなさい……」
「いえいえ、レティ様は何も悪くありませんよ」
「実際、女性の前に褌一丁で現れたロスト様が一番悪いしな」
「ロスト様って、ああ見えてそういう気遣いがからきしだからな……」
「まぁ、『兄上に悪い虫が付かないように』って、ゼノム様が気がありそうな女性を片っ端から遠ざけてたのも、一因だけどな……」
『だよなぁ……』
蟻人たちがため息をついていると、扉が勢いよく開いて、ラピスが元気よく飛び込んできた。
「レティちん、大丈夫ー!?」
「ラピス様……。はい、もう大丈夫です。少し動転していただけですから」
「そっかー、良かったよー!」
「ラピス、入口の前で立ち止まるな。部屋に入れん」
「あっ、ごめーん、ロストちん!」
ラピスが脇に避けると、続いてロストが部屋に入り、レティに近づいてくる。
「レティ、さっき急に動かなくなったから心配したぞ」
「あ、兄様……」
その姿を見た瞬間、レティは先ほど目の当たりにしたロストの褌姿を思い出し、顔を真っ赤にして思わず目を逸らした。
「? どうして目を逸らすんだ?」
「い、いえ、その……」
「顔が赤いぞ。まさか、熱があるのか?」
ロストは心配そうに身をかがめ、そっと自分の額をレティの額に当てた。
「うん、やはり少し熱いな……」
「あ、あにさ……あ、あわわわわわわわわわ……!」
ロストの顔が間近に迫ったことで、レティの思考は一瞬で真っ白になり、顔は沸騰したように真っ赤になる。
「さらに熱くなったぞ!? 本当に大丈夫か、レティ!?」
「ロスト様、申し訳ありませんが、すぐに部屋から出ていただけますか!」
「だが、レティが……!」
「今回ばかりは、ロスト様が近くにいるとレティ様の回復が遅れます。ここは私たちにお任せください」
「……そ、そうか? わかった、任せたぞ……」
ロストはしぶしぶ部屋を後にした。
「うーむ……」
廊下に出ると、そこで待っていたグレンがロストに声をかける。
「レティさんは大丈夫だったのか?」
「ああ……だが、俺が近づいた途端、また顔を真っ赤にしてな……。お前は近くにいてはいけないと、あいつらに言われてしまった」
「近づいただけで顔が真っ赤に……?」
「ああ。何もなければいいのだが……」
「まぁ、すぐに元気になるさ。ところで、一風呂でもどうだ?」
「……そうだな。行くとしよう」
「……ぷはぁ、美味しいですね、この魔茶……」
ロストが部屋を出てからしばらく経ち、レティはすっかり落ち着きを取り戻し、冷たい魔茶を口にしていた。
「それにしても、ロストちんの顔を間近で見ただけで、あんなに真っ赤になるなんて。レティちんったらピュアなんだから~♪」
「い、言わないでください、ラピス様……」
「ごめんごめーん。でもさすがに褌姿で現れるのはどうかと思うよね~」
「ラピス様、その話題を出すと、またレティ様が思い出してしまいます……」
「あ~ごめんごめん、つい……」
「だ、大丈夫です! もう兄様の褌姿を思い出しても、動揺したりなんかしません!」
「おおー! レティちん、かっくいー!」
「ところでレティ様、今日はたくさん歩いて汗もかかれたでしょうし、夕食前に入浴されては如何ですか?」
蟻人が提案すると、ラピスが勢いよく椅子から立ち上がった。
「それいいね~♪ レティちん、私と一緒にお風呂入ろ~♪」
「えっ? お風呂って、一人ずつ入るものじゃないんですか?」
「あー、ロストちんのお家はそうだったかもだけど、むふふ~♪ この城の大浴場を見たらレティちん、びっくりしちゃうよ~」
「そ、そんなにすごいんですか? なんだか楽しみです」
「よーしっ! それじゃあ大浴場に出発しんこー!」
「きゃあっ!? ら、ラピス様、そんなに引っ張らないでくださーい!」
ラピスは勢いよくレティの手を引き、ベッドから彼女を起こして、大浴場へと元気よく向かっていった。




