元魔王、竜王国に行くⅡ
――出発してから、早くも数時間が経っていた。
ロストたちは、近くの草原に降り立ち、小休憩を取っていた。
「兄様、どうぞ」
「ありがとう、では……うむ、美味い! やはりレティの手作りサンドイッチは絶品だな!」
「本当ですね、これは美味しいです」
「レティ様、料理の腕がまた一段と上がりましたね」
「このタマゴサンド、ふわふわしてて美味しい~♪」
「こっちのハムサンドもなかなかイケるな」
「ふふっ、ありがとうございます」
皆がサンドイッチを頬張る様子を見て、レティは嬉しそうに微笑んだ。
そのとき、レティがふと思い出したように問いかける。
「そういえば、詳しく聞いていなかったのですが……竜王国って、どんなところなんですか?」
その問いに、蟻人たちが次々と答える。
「竜王国ザークは、巨大な山の麓に広がる王国で、様々な効能を持つ温泉が豊富なことで有名ですよ」
「温泉……ってなんですか?」
「えっ、レティ様ご存じないんですか? 温泉っていうのは、地面の中から湧き出てくるあったかいお湯のことなんですー」
「地面からお湯が!? すごいですねぇ……!」
「それだけじゃありません。城下には温泉街もあって、竜王国の名産品といえば、温泉卵や“竜泉饅頭”などがありますよ」
「竜泉饅頭?」
「はい。生地に温泉水を使って、蒸しの工程では温泉の蒸気を利用することで、ふっくら仕上げたお饅頭なんです」
「ひと口食べれば、ほっぺが落ちそうになるくらい美味しいんだよねー♪」
「いやいや、俺たちに“ほっぺ”なんて無いだろう?」
「えへへー、そうだったー」
みんなの楽しそうな会話に、レティも自然と笑みをこぼす。
「そんなに美味しいんですか……楽しみです!」
――数十分後。
サンドイッチを食べ終えたロストたちは、再び竜王国を目指してクロに乗り込んだ。
――さらに三時間後。
遠くに、大きな山と、それを囲うように築かれた城壁が見えてきた。その麓には、堂々とした造りの城がそびえ立っている。
「兄様、あれが……竜王国ですか?」
「ああ、そうだ。見事な城だろう?」
クロが城壁に近づくと、壁の上に立つ竜人の兵士が、青いランプの光を点滅させながら敬礼した。
「兄様、あの光は……?」
「城の中庭に着陸せよ、という合図だ」
ロストの説明にうなずきながら、クロは中庭を目指して滑空していく。
そのとき、城から小さな飛行物体がこちらに向かって飛んできた。
「ん? あれは……」
「ロストち~ん! レティち~ん!」
高らかに響くその声に、ロストとレティは顔を上げる。
「この声は……ラピス様!」
近づいてきたのは、竜王国第一王女、ラピス・ザークだった。以前にロストたちと親しく接した人物である。
「久しぶり~♪ 元気にしてた?」
「ああ、お前は相変わらずだな」
「ラピス様、お久しぶりです」
「レティちんも元気そうで何よりだよ~♪」
和やかな会話が続く中、クロは城の中庭に静かに降り立った。
ロストとレティがクロの背から降り、蟻人たちも荷物を積んだ箱から姿を現す。
「さぁさぁ、ロストちんたち、ようこそ竜王国へ~! 盛大に歓迎するよ~♪」
ラピスの呼びかけに応じ、中庭に集まった兵士たちが整列して一斉に敬礼を送った。
「ところでラピス、グレンの姿が見えないが……どこにいるんだ?」
「ああ、お兄ちゃんはねー……うふふふ♪」
何やら意味深に笑うラピスに、ロストは小首を傾げる。
「……?」
「それより~、お父さまたちが応接室で待ってるから、早く行こっ!」
「分かった、行こうレティ」
「はい、兄様」
ラピスに案内されながら、ロストたちは応接室へと向かっていった。




