元魔王、日常を満喫す
――ラックがロストの弟子になった翌日。
ロストの家の隣に、ぽつんと小さなログハウスが建てられていた。
「うおおおおおおお!」
その前の畑では、ラックたちが鍬を振るい、地面をせっせと耕していた。
「ふぅ……これだけ耕せば十分だろう」
「つ、疲れました~……」
「……畑を耕すって、こんなに体力使うんだ……」
ティアとシキは、力尽きたように地面に腰を下ろした。
「……ねぇ、ラック。なんで私たち、畑なんて耕してるの?」
「師匠が、まず最初に畑を作れって言ったんだ。……多分だけど、これは修行の一環なんだと思う!」
「畑仕事が修行……?」
「ああ! きっと師匠は、腕力や足腰を鍛えさせるためにこれをさせてるんだよ! 『日常の中に修行あり』ってやつさ! さすが師匠、深い……!」
「ほ、本当にそうなのかな……」
「本当だって! さあ、次は種まきと水やりだ! そのあとは薪割りだぞ!」
意気揚々と作業を進めるラックたち。その様子を、ロストは庭の縁側で日向ぼっこしながら眺めていた。
「……あの、ロスト様? あの少年、妙なことを言ってますが……あれ、本当に修行なんですか?」
「ん? 何の話だ?」
「畑仕事が修行だと……」
「いや、単にそろそろ魔野菜の種類を増やそうと思ってな。人手が欲しかったから、ちょうどよかっただけだ。……ずずっ」
「……やっぱりそうでしたか」
ロストのそっけない返答に、傍らの蟻人は深くため息をついた。
そこへ、レティが籠を手にやってきた。
「兄様、お菓子を持ってきました。今日はビスケットを焼いてみましたの」
「おお、それはありがたい。……ふむ、うまい! レティの菓子は本当に絶品だな」
「ふふっ、ありがとうございます。兄様」
レティはにっこり微笑むと、畑で働いているラックたちの元へと向かった。
「皆さん、お疲れさまです。皆さんの分もビスケットを焼いてきましたので、どうぞ召し上がってください」
「本当!? ありがとう、レティちゃん!」
「美味しそうですね~♪」
「……ありがとう」
「よし、早速いただこう!」
ラックたちは、笑顔でビスケットにかぶりついた。
「おいしい! めちゃくちゃ美味しいです、レティさん!」
「本当、こんなお菓子初めてだわ……」
「お茶とよく合って、幸せですね~♪」
「……絶品」
「ふふっ、皆さんに喜んでいただけて嬉しいです」
「レティ、魔茶のおかわりを頼んでもいいか?」
「あ、はい! すぐにお淹れしますね」
――こうして今日も、ロストとレティは穏やかな一日を過ごしたのだった。




