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魔王、辞めます。  作者: 稲生景


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19/50

元魔王、弟子が出来る

 ――ロストの家、リビング。


 ロストはラックたちを自宅に連れて帰ると、ラックを床に寝かせ、彼が目を覚ますまでくつろいでいた。


「兄様、魔茶をどうぞ」

「ありがとう、すずっ……うまい! やはりレティの淹れた茶は世界一だな!」

「ふふっ……ありがとうございます、兄様」


「「「………」」」


 ロストとレティの微笑ましいやりとりを、少女たちは呆然とした顔で見守っていた。


「皆さんも、どうぞお飲みください」


 そう言って、レティは魔茶の入ったカップを少女たちに差し出した。


「ど、どうも……」

「いただきます……」

「……ずずっ……」


 魔茶を一口飲んだ少女たちは、声を揃えてこう言った。


「「「美味しい!」」」


「ふふっ、お口に合ってよかったです」

「本当に美味しいわ、このお茶」

「喉ごしが爽やかで、後味もスッキリしますね」

「……絶品……」


 美味しいお茶に、少女たちは思わず笑顔をこぼしていた。


「当然だ。レティの淹れる茶は、俺にとって世界一だからな!」

「あ、兄様……」


 ロストの言葉に、レティは頬を染めて照れ笑いを浮かべた。


「……あの、ひとつ聞いてもいいですか?」

「ん? 何だ?」

「……あなたは魔族ですよね?」

「ああ、そうだが?」

「それなのに、どうして人間の少女を“妹”と呼び、傍に置いているんですか?」

「なんだ、そんなことか。理由は簡単だよ。一緒にいたいからに決まってるだろう」

「……一緒にいたい?」

「ああ。レティと一緒にいると、心が癒されるんだ。特に笑顔を見たときなんて最高だ。それに、日向ぼっこしながら魔茶と菓子を一緒に食べる時間は――」

「兄様っ! そ、それ以上は……恥ずかしいですから、言わないでください……!」

「なぜだ? ただ理由を言っているだけだぞ?」

「で、ですから……うぅ……」


 顔を真っ赤にしたレティが身を縮める。


「……なんか、最初に見たときと全然印象が違うわね」

「はい……あのときは恐ろしい存在に見えたのに、今はただの優しいお兄さんです」

「……本気で殺されると思ったのに……」

「……う、うぅ……」


 そんな会話の中、床に寝かされていたラックが呻き声を上げ、目を開いた。


「ラック!? 目が覚めたのね!」

「よかったぁ……」

「……ラック、大丈夫?」


 少女たちはすぐに彼のもとへ駆け寄る。


「みんな……あれ? ここは一体……?」

「おお、目が覚めたみたいだな」


 ロストがラックのそばに歩み寄る。

 ラックはロストの顔を見て、しばらく黙った後、口を開いた。


「……あなたは……誰ですか?」

「……ん?」


「「「「……えええっ!?」」」」


 ロスト以外の全員が叫び声を上げる。


「ラ、ラック? まさかとは思うけど……覚えてないの?」

「覚えてないって……何を……いっ!?」


 頭を抱え、うずくまるラック。


「そうだ……俺は確か、レティさんを魔物から助けて……そしたら空から何かが降ってきて……思い出した!」


 ラックは勢いよく立ち上がり、ロストを指さして言った。


「思い出しました! あなたは……」


 そして、堂々とした態度でこう宣言した。


「俺を助けてくれた命の恩人ですね!!」


「「「「「……は?」」」」」


 あまりに斜め上な発言に、全員が固まった。


「全部思い出しました! 俺はあのとき、魔族にまったく歯が立たず絶体絶命だった……そんなとき、彼が現れて魔族を倒し、俺たちを救ってくれたんです!」


 ……無言でロストがラックを見つめている。どこか遠い目で。


「ラ、ラック……それ、本気で言ってるの?」

「ああ、間違いない! 俺の記憶に曇りはない!」


「……いや、間違ってるって……」

「また始まった……」

「もはや呆れるしかないですね……」


 少女たちはため息をつきながら呆然とした。


 そのとき、扉が開き、蟻人たちが入ってきた。


「ろ、ロスト様〜……」

「置いていくなんてひどいですぅ……」

「つ、疲れた……」


 蟻人たちの姿を見たラックは目を見開いた。


「あれは……レティさんを襲った魔物!? なぜここに……そうか! そういうことだったのか!」


 またも勢いよくロストに詰め寄る。


「ロストさん、ですよね?」

「ん? ああ」

「あなたは、敵の魔物たちを懐柔し、仲間にしたんですね! なんて器の大きさだ……すごすぎます!」


「「「……はぁぁ……」」」


 少女たちは一斉にため息をついた。


 その様子も気にせず、ラックはロストの前に跪いた。


「ロストさん! 俺にお願いがあります!」

「……何だ?」

「俺を、あなたの弟子にしてください!」


『『えええええっ!?』』


 ロスト以外の全員が声をそろえて驚いた。


「俺は、ある目的のためにもっと強くならなければならないんです! でも、今日の戦いで思い知ったんです。俺はまだまだ弱いと……だから、ロストさん! お願いです、俺を弟子にして鍛えてください!」

「ああ、いいぞ」


『『そんなあっさり!?』』


 今度は蟻人たちが絶叫した。


「ほ、本当ですか!? ありがとうございます! これからよろしくお願いします!」

「ああ、よろしくな」

「ちょっ、ロスト様! 本気で言ってるんですか!?」

「ああ、こいつ面白いからな。弟子にしてやる。問題ないだろ」

「いや、問題ないって……はぁ……また出た、思いついたらすぐ行動するロスト様の悪い癖……」

「もう諦めるしかないねー……」



 ――こうして、勇者ラックはロストの弟子となった。






 簡易キャラ紹介

 ラック

 年齢:17歳

 ペルパニア王国出身の勇者。魔王討伐の旅の途中。

 記憶違いでロストを命の恩人と勘違いし、勢いで弟子入りを果たす。


 リリィ

 年齢:17歳

 弓使いの少女。ラックの旅仲間。

 突っ走りがちなラックに頭を抱える日々。


 ティア

 年齢:17歳

 魔法使いの少女。占いが得意だが、命中率は一割以下。

 ラックの旅仲間。


 シキ

 年齢:15歳

 無口な忍者の少女。好きな話になると一転しておしゃべりになる。

 ラックと共に旅をしている。

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