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魔王、辞めます。  作者: 稲生景


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17/50

勇者、現るⅡ

「シキ、後ろから何か来ているか?」

「ううん、今のところ何も来てないよ」

「ふぅ……ひとまず安心か。じゃあ、少し休憩しよう」


 金髪の少年は、握っていたレティの手をそっと離した。


「君、怪我はないかい?」

「え? えっと……その……」

「ん? 膝から血が出てるじゃないか。――ティア、頼めるか?」

「任せてください」


 紫髪の少女ティアがレティに歩み寄り、膝に手をかざす。


「《ヒール》」


 その一言とともに、淡い光がレティの膝の傷を包み込んだ。

 数分も経たぬうちに、傷は跡形もなく癒えていた。


「はい、これでもう大丈夫です」

「あ、ありがとうございます……あの、皆さんは……?」


 レティの問いにティアが柔らかく微笑み、答えた。


「私はティア。魔法使いです」


 ティアが名乗ると、他の三人も次々に自己紹介を始める。


「私はリリィ。弓使いよ」

「……シキ、忍者」

「俺はラック! ベルパニア王国の勇者だ!」

「……勇者?」

「……え? ひょっとして君、勇者を知らないの?」

「え、あの……私、何か変なこと言いました?」

「いや、そういうわけじゃないけど……勇者を知らない人に会うのは初めてだから、ちょっと驚いたんだ」

「そんなに有名なんですか?」


 レティの問いに、リリィとティアがうなずいた。


「ええ。今まで色んな場所を旅してきたけど、勇者を知らない人なんていなかったわ」

「勇者は、世界中の誰もが知っている“常識”ですからね……」

「そうなんですか……」


 レティが戸惑いを浮かべる中、ラックがふと思い出したように尋ねた。


「ところで、君の名前は?」

「私はレティと言います」

「レティさん、ここは魔物がうようよいる、人が寄り付かない危険な森だ。そんなところに、一人で何をしていたんだ?」

「えっと、それは……」


 レティが話そうとしたその時、シキが一歩前に出て、ラックを制した。


「ラック、ちょっと待って」

「どうしたんだ、シキ?」

「少し考えてみたんだけど……この子、怪しいよ」

「怪しい?」

「こんな危ない森に、人間が一人で居るなんて普通じゃない。それに、さっきの蟲人たち……この子のこと、“レティ様”って呼んでた」

「言われてみれば、確かに……」

「つまり、シキ。あなたはレティさんが魔物の仲間だと言いたいの?」

「……その可能性はある。もしかしたら、魔族の一員かも」

「え? え?」


 突然向けられた疑いの目に、レティは戸惑いを隠せない。


「――そうかっ!!」


 その時、ラックが突然声を上げた。


「ど、どうしたのよラック。いきなり大声出して」

「リリィ、俺分かったんだ! レティさんが何者なのか!」


 そう言うと、ラックはレティを指差して、堂々と宣言した。


「囚われのお姫様だな!!」

「……お姫、様……?」


 唐突すぎる発言に、レティはぽかんと口を開けてしまう。


「「「………」」」


 その場の全員が、微妙な表情でラックを見つめていた。


「そう! きっとレティさんは、魔族にさらわれたとある国のお姫様! かろうじて逃げ出したけれど、追っ手に追われて絶体絶命……そこに、俺たちが現れたんだ!」


 熱弁をふるうラックに、リリィが溜め息をついて口を開いた。


「……あの、ラック? 本気で言ってるの?」

「ああ! さっきの魔物たちが“レティ様”って呼んでたのも、彼女が高貴な身分だからに違いない!」

「はぁ……また始まったわね、ラックの妄想劇場……」

「ラックさん、前も似たようなこと言って騒ぎになってましたよね……」

「あの時は収拾つけるのが本当に大変だった……」

「えっと……」


 状況がよくわからず困惑するレティ。そんな時――


 ガサガサッ――


 背後の茂みが不気味な音を立てた。


「っ!」

「何だ!?」

「レティさん、下がって!」


 全員が即座に武器を構え、茂みへと警戒を向ける。

 すると、そこから数体の蟻人たちが飛び出してきた。


「見つけたぞ! レティ様を攫った悪党どもめ!」

「レティ様を返してもらうぞ!」

「レティ様、今こそお助けいたします!」


「ふざけるな! レティさんはお前らには渡さない!」

「レティさん、危ないから下がっていてくれ!」


「ま、待ってください皆さん、蟻人さんたちは悪い人じゃ……!」


 両者が交戦しようとしたその瞬間――


「グルォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!!」


 天地を震わすような咆哮が、空から響き渡った。

 全員が一斉に空を仰ぐ。


「り、竜!?」

「どうして竜がこんなところに……」

「しかも、あれは黒竜……最上位の竜種……!」

「クロちゃん……!」


 巨大な黒竜が木々をなぎ倒しながら、地上へと降り立つ。


「グルルルルルルルルル……」


 鋭い眼光でラックたちを睨みつける黒竜・クロ。

 その背に立つのは、漆黒のオーラを纏ったロストだった。

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