元魔王、幼馴染と再会すⅡ
――翌日、早朝。
ロストたちは、屋敷の玄関前に集まっていた。
「まさかあのタイミングで台が壊れるとはな……」
「今回も引き分けか。これで通算五百五十回目の引き分けだな」
「ああ。決着はまた次回に持ち越しだ……次こそは絶対に俺が勝つ!」
「いいや、俺が勝つ」
二人は最後まで火花を散らすように睨み合い、次の勝負を誓い合っていた。
その隣では、ラピスとレティが別れの挨拶を交わしている。
「じゃあね~レティちん、また遊びに来るからねー♪」
「さようなら、ラピス様。その時は……美味しいお菓子をたくさん用意しておきますね」
「ほんと!? やったぁ、絶対だよーっ♪」
和やかなやり取りの隣で、ロストとグレンは無言のまま、固い握手を交わしていた。
「さらばだ、友よ。式には、絶対に来てくれよ」
「ああ、もちろんだ」
「それじゃあロストちん、またねー♪」
グレンとラピスは翼を大きく広げ、空高く飛び立っていった。その姿は、朝焼けの中にゆっくりと溶けていく。
「とても……楽しい方々でしたね、兄様」
「だろ? 一緒にいると退屈しない、面白いやつらさ」
ロストはふっと笑い、続けた。
「――だがな、俺が一番、ずっと一緒にいたいと思えるのは……やっぱり、レティだけだ」
「あ、兄様……」
レティの頬が、朝陽のように真っ赤に染まる。
「さて……そろそろ朝食にしようか。レティ、今日のメニューは?」
「えっと、パンと……ポトフです」
「いいな、それは美味そうだ。よし、リビングへ行こう」
「はい、兄様!」
ロストとレティは並んで、ゆっくりと家の中へ戻っていった。
―同じころ、ロストの家から西へ数キロ離れた森の中。
朝靄の漂う森を、四人の男女が歩いていた。
「ねぇ、ティア。本当にこの方角で合ってるの?」
緑髪の少女――リリィが、紫髪の少女に問いかける。
「はい。占いの結果では、この方向で間違いないはずです……!」
自信ありげに言い切るティアだったが、すぐに横から冷ややかな声が飛んできた。
「……その占いが当たったこと、ほとんどないけどね」
黒髪の少女――シキが、皮肉っぽく言い放つ。
「だ、大丈夫ですっ! 今度こそ、絶対間違いありません!」
「……そのセリフ、もう十回以上聞いた。それでよく“間違いない”なんて言えるね」
「う、うぅぅ……」
ティアは涙目になり、今にも泣き出しそうだ。
「やめなさい、シキ。今回こそはティアを信じて進みましょう」
リリィが穏やかな声でなだめると、金髪の少年が大きく頷いた。
「リリィの言うとおりだ! 占いでもなんでも、信じる気持ちが大事だろ? ティアを信じて突き進もう! 目指すは――魔王城だっ!」
金髪の少年の名は、ラック。
ベルパニア王国が選定した、第1501代勇者である――。




