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魔王、辞めます。  作者: 稲生景


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15/50

元魔王、幼馴染と再会すⅡ

――翌日、早朝。

 ロストたちは、屋敷の玄関前に集まっていた。


「まさかあのタイミングで台が壊れるとはな……」

「今回も引き分けか。これで通算五百五十回目の引き分けだな」

「ああ。決着はまた次回に持ち越しだ……次こそは絶対に俺が勝つ!」

「いいや、俺が勝つ」


 二人は最後まで火花を散らすように睨み合い、次の勝負を誓い合っていた。


 その隣では、ラピスとレティが別れの挨拶を交わしている。


「じゃあね~レティちん、また遊びに来るからねー♪」

「さようなら、ラピス様。その時は……美味しいお菓子をたくさん用意しておきますね」

「ほんと!? やったぁ、絶対だよーっ♪」


 和やかなやり取りの隣で、ロストとグレンは無言のまま、固い握手を交わしていた。


「さらばだ、友よ。式には、絶対に来てくれよ」

「ああ、もちろんだ」

「それじゃあロストちん、またねー♪」


 グレンとラピスは翼を大きく広げ、空高く飛び立っていった。その姿は、朝焼けの中にゆっくりと溶けていく。


「とても……楽しい方々でしたね、兄様」

「だろ? 一緒にいると退屈しない、面白いやつらさ」


 ロストはふっと笑い、続けた。


「――だがな、俺が一番、ずっと一緒にいたいと思えるのは……やっぱり、レティだけだ」

「あ、兄様……」


 レティの頬が、朝陽のように真っ赤に染まる。


「さて……そろそろ朝食にしようか。レティ、今日のメニューは?」

「えっと、パンと……ポトフです」

「いいな、それは美味そうだ。よし、リビングへ行こう」

「はい、兄様!」


 ロストとレティは並んで、ゆっくりと家の中へ戻っていった。








―同じころ、ロストの家から西へ数キロ離れた森の中。

 朝靄の漂う森を、四人の男女が歩いていた。


「ねぇ、ティア。本当にこの方角で合ってるの?」


 緑髪の少女――リリィが、紫髪の少女に問いかける。


「はい。占いの結果では、この方向で間違いないはずです……!」


 自信ありげに言い切るティアだったが、すぐに横から冷ややかな声が飛んできた。


「……その占いが当たったこと、ほとんどないけどね」


 黒髪の少女――シキが、皮肉っぽく言い放つ。


「だ、大丈夫ですっ! 今度こそ、絶対間違いありません!」

「……そのセリフ、もう十回以上聞いた。それでよく“間違いない”なんて言えるね」

「う、うぅぅ……」


 ティアは涙目になり、今にも泣き出しそうだ。


「やめなさい、シキ。今回こそはティアを信じて進みましょう」


 リリィが穏やかな声でなだめると、金髪の少年が大きく頷いた。


「リリィの言うとおりだ! 占いでもなんでも、信じる気持ちが大事だろ? ティアを信じて突き進もう! 目指すは――魔王城だっ!」


 金髪の少年の名は、ラック。


 ベルパニア王国が選定した、第1501代勇者である――。

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