偵察
「んで、なんでこんなとこに何時間もいんだよ。」
「なんでって、言ったじゃないですかリンネ先輩。これは敵を知るために一番大切な偵察ですよ?!」
「んなことは知ってる!俺はなんでこんなとこにうずくまり続けてんのかって聞いてんだよ」
今は昼。
しかし学校は昼前に終わったので一応放課後。
同志となった私とリンネ先輩ははやめに昼食を済ませてこうして偵察待機をしている。
そして先程まであった学校のことだが……。
私は当たり前のように既にクラスから浮いている。
まあ初日からあんな権力の塊みたいな生徒会に目をつけられてる人と関わりたくないよね。うん、わかる。なんて思いながらも内心涙ぐむ。
って、今は偵察!
まずは敵を知るところからなので私と、同志であるリンネ先輩は共に校舎裏にやってきている。
このジメジメした陰鬱な場所に何時間かはうずくまっていると思う。
というのも……。
「あ〜あ。ほんとあの子ってつまんないわね。最悪だわ。久々にいいもの見られると思ったのに」
「まあ、そういうなって」
「来た!」
私はできるだけおさえた声でそういってリンネ先輩の方を振り返る。
しかしリンネ先輩の表情は相変わらず曇っている。
「どういうことだ?」
「生徒会の皆さん昼食買いに行かれてたんじゃないですか」
「いや、んなことは聞いてねえよ。どういうことだよ、ここに待機させられてんのは。さっさと生徒会に行こうぜって俺はさっきから何回も何回も……」
「ああ、そのことですか。ちゃんといってなくてすみません。盗み聞きですよ、盗み聞き。ここが生徒会室なんです。だからこうして声も聞こえる」
そういって壁に触れる私にリンネ先輩は絶句してような表情を見せる。
「お前……。生徒会室の裏手なんてどうやって知ったんだよ。新入生だろ?」
「地図みればすぐわかりますよ」
「……なんかこえー」
「な、なんでですか!地図くらい」
そういったところで見知った声がしてきて思わず息を止める私。
「失礼します」
「聞いたことない声だな」
私と一緒になって壁に耳をくっつけてるリンネ先輩が不思議そうに呟く。
「今日新しく入った生徒会役員ですから」
「あー、なるほどな」
「おー、レオくん、いらっしゃい〜。ほらここ座んな」
「けどなにか……置かれてますけど」
「あー、これな。どうせリンネのだろ。別にどかしていいぜ」
そういった直後ドサドサッと物が落ちる音がする。
「これで綺麗さっぱりかしら。ほら、レオ、お座りなさい」
なにあの気取った言い方。
お座りなさい、なんて先生だって言わないっつーの。
そう思う私の横で、私以上に怒りに打ち震えている人。
「あいつら、マジ許さねえ……!」
私はそんなリンネ先輩をまあまあとなだめながらも生徒会室の会話に耳を傾ける。
「そういえばあのチャラいサティロスの人って名前なんて言うんです?」
「あ?ケリーだよ、ケリー」
「へえ。意外と平凡な名前……」
そういった、次の瞬間だった。
座る位置を変えようと動いたらしいリンネ先輩が唐突に足を踏みつけてきた。
「いっっっ!」
あまりの痛みに呻きに声を上げてからはっとする。
後ろでは、自分が踏んづけてきたくせに「ばっか、お前なにやってんだ」という、私を罵る声が聞こえてくる。
「誰かいるわね。はやく、窓を開けて!」
そんなウンディーネ女の言葉に慌てて
「やばい!逃げましょう!」
という私と、「たりめえだ!」と答えるリンネ先輩。
私たちは死にものぐるいで逃げ出した……