同志
とまぁ、いろいろなことがあって今ここにいる訳だけど⋯⋯。
「とりあえず、トイレはでよう」
目元を必死にこすって外にでる。
「うわ⋯⋯赤くなってる⋯⋯」
鏡をみれば、ライトブルーの瞳を充血させ目元を若干赤くさせている自分がいる。
ふ〜っと大きく息をはくと自分のほおを思い切りはたく。
パシンっ。
「大丈夫、大丈夫」
呪文のように繰り返す。普段、これぐらいのことでへこまない私だけど、レオンが遠い人になってしまったのがすごくショックだった。
「なんでだろ⋯⋯」
つぶやいて悲しくなる。
その訳をわかりたくないのかもしれなかった。
とりあえず、この学校のトップである生徒会に目をつけられたのは確実だ。朝、エルン(生徒会長らしい)に会った時から私の運は底尽きていたのだ。
今はみんなホームルームをやっていて、私はお腹が痛い、という理由でトイレに逃げてきていた。
レオンはというと、生徒会のミーティングとやらで教室にはいなかった。
「よーーっし!いっくわよーっ!」
「おい、うるせえぞ、そこの」
「ヒヤァッ!?」
いきなりの声に悲鳴もとい奇声をあげてしまう。
「あっ、あなたは確か、リンネさん?」
生徒会の面々に散々いびられていたあのヒューマンだ。というか、今朝の入学式での生徒会の標的になっていた、といっても過言ではない。まあ、私も標的にされはしたが、この人の方が⋯⋯。そっか!この人ってきっと⋯⋯
「便所で、でかい声だ」
「あのっ、すいませんでした!!」
リンネさんの声を遮りそう言う。
「あの、私がちゃんと気づいていれば、あんな風に全校生の前でイジめられることもなかったのに!」
「はっ?」
深く頭をさげる。そう、きっとこの人はいじめられっ子なんだ。だから⋯⋯
「おい、お前勘違いしてねぇ?」
「そうですよね。恥ずかしいですよね。でも、大丈夫です!私も、小さい頃はよく近所の子にイジめられてて、その度に幼馴染に助けてもらってたんです!だから、私があなたを守りますっ!平気です!」
「あぁ〜、めんどくせぇ⋯⋯」
そういって頭をグシャグシャッとすると、深いため息をつくリンネさん。
「いいか、俺はな」
そういってドスドスと歩いてくるリンネさん。ここ、女子トイレなんだけどな⋯⋯。でも、リンネさんはみたところ猪突猛進という感じの人だし、それをいったところで聞いてはくれないだろう。
「イジめられてなんかねぇ。遊ばれてるだけだ!!」
「⋯⋯」
ガシリと肩をつかみそういうリンネさんには言葉がででこない。
近くでみると、この人、案外整った顔立ちだなぁ。いってることははちゃめちゃだけど。
焦げ茶色の髪はサラサラしてて、ルビー色の瞳は案外大きい。
「ぷっ⋯⋯」
「なっ、なに笑ってんだ!!」
「い、いえっ、なんか女の子みたいだな、と⋯⋯」
なんとか、笑いをこらえながらそういう。性格と見た目が正反対すぎる。
「う、うるっせぇ!今関係ねぇだろがっ!」
「はい⋯⋯まぁ⋯⋯くくく」
「いつまでも笑ってんな!」
リンネさんは深く息を吐きだすと真っ直ぐにこちらを見つめてくる。
「でも、お前、本気でやべぇぞ」
「へっ?なにがです?」
「入学早々生徒会に目をつけられたことだよ」
呆れたようにいうリンネさん。
そこであることに気付く。
「あのっ、リンネさんと私って同志ですよね!!」
「はっ?お前なにいって⋯⋯」
「なら、一緒に頑張りたいです!そうすれば、頑張れる気がするんです!」
一人だと、今にも崩れ落ちてしまいそうで。
いつも、隣にいてくれたあの人はここにはいない。もう、戻ってこないかもしれない。あのウンディーネ美女(名をルイカというらしい)を見つめるレオンの瞳を思い出してそんな風に思ったりもした。だけど、
「なにもやらないで後悔したくありません!それに生徒会の人達が大嫌いなので見返してやりたいですっ!」
「あのなぁ⋯⋯」
呆れたようにため息をつくリンネさん。
「俺も生徒会役員⋯⋯でも、まあ、頼られるのは嫌いじゃねぇし、助けたりしてやってもいい」
そう照れたようにいうとこちらをチラチラとみてくる。
私はとびっきりの笑顔を浮かべるとぺこりとお辞儀する。
「よろしくお願いします!」
顔をあげるともどついたリンネさんが。
「まっ、まあな。俺は超優しいできる男、だからな!」
⋯⋯うわぁ⋯⋯なんていうか、単純な人だなぁ⋯⋯。